選手を支えるコーチ陣の横顔 3
Inside the RICOH BlackRams
2013.01.09
選手たちを日々サポートするコーチ陣。これまでのキャリアに関するエピソードはじめ、人となりなど、ファンの皆さんと普段あまり接する機会が少ないコーチ陣の横顔を紹介します。
ラグビーを楽しむ意識を持つことは、選手たちと目指してきた共通のテーマ(ロブ ホードリー BKコーチ)
32才の若きバックスコーチ、ロブ ホードリーBKコーチ。
昨年5月に来日した。1999年、19才でイングランドプレミアシップのロンドンアイリッシュでプロとしてのキャリアをスタート。2004年に同じロンドンのワスプスに移籍。
2009年に引退するまで10年にわたりCTBとしてプレーした。引退後はワスプスのコーチを2シーズン務めたほか、09年に日本で開催されたIRBジュニア世界選手権ではウェールズU-20代表のディフェンスコーチとして帯同している。
ロンドン生まれ、ロンドンのチームでプレー。クラブチームのコーチとしての第一歩もロンドンで刻んだホードリーコーチ。いわば生粋のロンドンっ子。異国・日本の地でコーチに就くこと大きな挑戦だったに違いない。
「そうだね。僕にとっては、イングランドのロンドン以外のチームに行くだけでも大きな環境の変化。日本に行くというのは、それを飛び越えた大変化だったね。でも、貴重な機会だと思いました。異なる環境でのラグビーの指導を通じ学べることは多くあるはずですから。新しい文化の中で、いろいろな人と仕事に取組み、一緒にチャレンジしたいと思い決断しました」
日本にやってきて、実際に目にしたリコーの選手たちにはこんな感想を抱いたという。「スキルレベルは高いなと。そしてスピードのあるラグビーをすると思いました。ラックからの球出しもクイック。あとはモチベーションの高さも感じました。ラグビーを学ぼう、もっとよいラグビーをしようという気持ちの強さが伝わってきたんです。そういう選手と一緒に闘えるのは幸せなことです」
―― 「真面目」という印象?
「そういう部分はありますね。ただ、ラグビーをエンジョイしているとも思います。その中で一流を目指すために、学ぶべき部分は責任を持って学ぼうとしているように見えた、といえばいいのかな」
―― 今季、ラグビーを楽しもうという声はチームから何度か耳にしました。
「私は、社会人になっても、こうやってスポーツができること、それ自体が素晴らしく幸せなことだと思っています。スポーツで生きていくことは、誰にでもできることではありません。せっかくそのチャンスをもらっているのですから、時にはエンジョイしたっていい。ラグビーはそもそもゲーム。シリアスに考えすぎず、楽しもうとする姿勢がいいプレーに結びつくこともあります。
でも、『楽しむ』というのは勝っているときはとても簡単なのですが、負けが続くとなかなか難しい。そんな中でも、ラグビーを楽しむ意識を持つことは、選手たちと目指してきたテーマです」
コーチとして3年目のシーズンを過ごすホードリーコーチだが、選手時代は指導者の道は考えていなかったそうだ。
「なんて言えばいいのかな、僕は、その、自分のアイデアを主張するタイプの選手で、コーチたちと議論になることも多かった。正直扱いにくい選手だったんです(笑)。だから、人をコーチングするというイメージがまったくなかった」
はじめてみたコーチ業は、とても面白いものだと気づいた。
「指導に対する選手からのフィードバックをもらったり、成長している姿を見られることにはやりがいを感じます。問題を一緒に解決したり、才能を最大限に生かす手助けすることができるのは、やっぱり面白い。もちろん難しいと感じることも多いけれどね。
どこでプッシュするのか、どこで突き放すのか、どこで手を貸すのか、そこのタイミングを見計らうときには、過去に指導を受けたコーチや選手としての経験を参考にしています。選手の視点から考えるようにもしているかな。
ただ、気づかされるのは選手にとって、必要なことはすべてを優れたコーチの指導から学んだわけではないのだな、とも思います。経験から学んだことも多い。極端なことを言えば、よくないコーチの存在から、大事なことを学ぶこともあると思うんです」
ラグビーに無数の戦術があるように、コーチングのアプローチもコーチの数だけある。選手時代、コーチとぶつかった経験も、他のコーチには伝えられない何かを、選手に伝えるメソッドを生み出し得る。コーチとしての大きな強みになっていることだろう。