第48弾:選手がみせた、その横顔 38
Inside the RICOH BlackRams
2012.07.06
リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。
同期2人のリーダーを支える 闘志溢れるラガーマン(湯淺直孝)
存在感のある選手だ。プレー中、周囲とのコミュニケーションを図り続ける湯淺の声は常に響き、途切れることはほとんどない。
感情表現も豊かだ。プレーがうまくいけば笑顔に、いかなければ心の底から悔しそうな表情を浮かべる。リスタートからの切れ味ある仕掛けやサイズの差などなんとも思っていないような闘志溢れるタックルなど、持ち味もはっきりとしている。だからか「あの試合のスクラムハーフは湯淺だった」という記憶が、しっかり残るような気がする。
ラグビー以外の"横顔"というテーマについては少し困った顔をしていた。
「少し前にチームのメンバーと趣味とかある? という話になりました。趣味を持っているメンバーもいたけれど、自分は思い浮かばないって話になって。強いて挙げるならウェイトトレーニングとかなんですが、それもラグビーの一環だから趣味とは言えない。まあ時々野球観戦に行くぐらいですかね。この春、オフを利用して、メジャーリーグのチームが日本で試合をしたときには、東京ドームに観に行きましたヨ」
熱烈なファンの多い福岡ダイエーホークス(当時)の地元福岡県に生まれた湯淺。小学校6年生まで野球少年だった。「トップバッターで、セーフティバントばっかりやっていた」とのことだが、何だか湯淺の相手の隙を突く鋭いリスタートのイメージと重なって想像しやすい。だが、野球少年の心をラグビーが奪う。6才上の高校3年生の兄が所属していたラグビー部の引退試合を観て、その一生懸命さに心を打たれた。湯淺は地域のラグビースクールに通うことを決め、中学では陸上部に。土日はラグビーで、平日は陸上部の練習に汗を流した。「陸上部では1500メートルがメイン。ラグビーがやりたかったけれど、陸上部の練習も真剣に取り組んでいました。陸上部の大会は平日であることが多かったので、ラグビーと両立できました」
ラグビー以外の部分というテーマに少し困っていた湯淺だが、話を聞くとラグビーに必要なことはラグビー以外の世界にもあると考え、それを吸収しようとする姿勢は人一倍強いように感じる。周囲とのコミュニケーションを大切にして、そこから学ぶべきことをしっかり学び、リフレッシュしたりする。「これまで、仕事で学んでラグビーに生きたことはとても多い。自分たちのことを理解してくださっているお客さまも多いですし。そうしたお客さまや、ラグビー部ではない部署の人との交流は多いほうです。食事に行っていろいろな話をしますが、それはリフレッシュになっているかもしれないです」
今季キャプテンになった小松大祐、バイスキャプテンになった山藤史也とは同期。山藤は大学時代のチームメイトでもある。湯淺もかつてリーダーを経験しているだけに、大変さはよく知るところだろう。「2人とも同期ですから。支えていきたいと思います。これまでは自分たちよりも上の世代の先輩が引っ張ってくれていました。チーム全体に言うべきことを言ったり、若手へのアドバイスや気遣いは先輩たちにまかせていたんですよね。でも、これからは自分たちの世代がやっていかないと。自分も、自分の口から言うべきことがありそうだったら、積極的に発言するようにしたい」
数年前、試合や練習でミスをすると大きな声でメンバーに謝る湯淺の姿を観た。責任感が強いのだな、と感じたものだった。だが最近は謝るよりも先に次のポイントに駆け、声を出しチームが次のプレーですべきことを確認する。
ハートのタフさに磨きをかけた湯淺が、大きな声で声援を送る多くのファンの皆さんを魅了する。
28才の情熱派、湯淺にとってのベストシーズンを目指して欲しい。