第41弾:選手がみせた、その横顔 31
Inside the RICOH BlackRams
2012.05.18
リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。
スポーツ一家に生まれたインドア系男子(森谷和博)
「社会人3年目は、これまでで一番食いつけたと思うんです。自信がついてきたのはセットプレー。大学の途中までバックス(CTB)としてプレーしていたので、フィールドプレーはともかく、ラインアウトなどの経験が足りなかった。そのあたりが補えてきました」
拓殖大学の同期でもあるWTB横山健一、FBダニエル・ピータース、ほかにもPR桑原大祐、柴田和宏、NO.8森山展行、LO馬渕武史ら、ともにリコーに入社したメンバーの多い、いわば"リコー団塊の世代"。その仲間と切磋琢磨しながら3年を過ごし、チームの中心世代に近づいていっている森谷。4年目となる今季は、念願のトップリーグ出場、さらにその先を目指すシーズンだ。
「開幕に合わせるなんてことは言っていられない立場なんで。春からどんどんアピールしていきますよ」
小学校までサッカーをやっていた森谷は中学校1年生でラグビーを始めた。「サッカーは小学校で限界を感じたんです」。少し早すぎる見切りにも感じるが、聞けば森谷の父は野球、母はバレーボールで実業団チームに所属していたという。「だから、求められるレベルが高いんですよ(笑)」。ちなみに森谷は三兄弟の長男で、弟二人は同じ正智深谷高校からそれぞれ法政大学、帝京大学に進みラグビーをやっている。まごうことなきスポーツ一家だ。
そんな一家の中にあって、意外にも森谷の小さな頃の夢は建築家だったそうだ。
「インテリアには今でも興味があるし、デザインが好きだったんですよね。一応、中学のときは勉強していたんです。だからラグビーをやる前提でスポーツ推薦で高校進学を決めたときには、担任の先生から本当にいいのかって何度も聞かれたんですよ。
高校のときも指定校推薦が取れそうだったので高校でラグビーをやめて、大学で建築の勉強をする道もなくはなかった。で、少し真剣に考えたこともありました。といっても3日間ぐらいですけど(笑)。大学に進んでからはラグビーしか考えないようになりました。とにかくトップリーグでプレーするぞと」
スポーツ一家の血が勝ったといった感があるが、インドア志向は健在だ。「どっちかというとオタク気質というか。漫画が好きで、実家には兄弟三人で買いためて、寮には持っていけずに残された漫画が大量にあって、漫画部屋ができました。フィギュアも持っているし、ゲームもやる。あと、プラモデルも好きで大学時代からよくガンプラ(テレビアニメ・機動戦士ガンダムに出てくるモビルスーツのプラモデル)をつくってました」。ちなみに拓殖大学同期・横山健が"モデラー仲間"だそうで、横山によると「自分が連邦軍、森谷がジオン軍を担当している」とのこと……。
「今はすごくいい環境でプレーさせてもらっています。相談できる同期も多くいるし、弟たちのラグビーを見るのも楽しみ。仲がいいので弟たちの試合結果は、いつもチェックしています。いつか同じグラウンドでプレーできたらいいなと。同じチームなら最高だけど、相手でもいい。少し年が離れているので簡単ではないと思うんですけど」
森谷は、昨シーズンの終盤、脳震とうで全体練習から外れた。それは入部してから3年目で初めての経験だったという。ケガへの耐性は、さすがスポーツに秀でた両親の息子といったところだが、長くプレイヤーであるためには欠かせない才覚。三兄弟が一緒にグラウンドを走る夢は、今後の森谷次第で十分実現可能だ。そのために踏み出すべき大きな一歩を踏み出せるか。「春から全開」を宣言した森谷が、4年目の飛躍に懸けている。