第32弾:選手がみせた、その横顔 22

Inside the RICOH BlackRams

2012.02.17

リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。

「今日一日の努力」重ねる最年長選手(池田渉)

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 ラグビー日本代表で主将を務め、三洋電機(現パナソニック)ワイルドナイツでは日本一も経験したSH池田渉がリコーに加入して4シーズン目。その在籍期間は、チームが描いた「トップリーグ復帰」「残留」「2年連続のベスト更新」という上昇曲線と一致する。特に接戦を制するなどトップリーグを闘い抜く力をつけつつあるこの2年。改めて池田の経験がチームにもたらしているものの大きさを感じることは多い。

以前試合中の判断について聞いているとき、印象的な説明があった。「数プレー先はこうなるだろうというイメージが頭の中にできあがります。テレビゲームのようにグラウンドを見渡す視点で。そこで、狙うべきところや危いところを発見していく」。予測能力もさすがだ。だがそれ以上に、自分の内にある高度な感覚やイメージを、ラグビー選手ではない人にもわかる言葉で伝えようとしたところに姿勢を感じた。思えば、試合後のインタビューなどでも同じ。どんなにタフなゲームの後でも、実況席で解説をしていたのではと思わせるほど冷静に試合を総括する。そして丁寧な言葉で、簡潔・明瞭に説明できる選手だ。

池田の価値は、多彩で華のあるキャリアと、それを言葉にしてチームすべてのメンバー、スタッフに還元するための言葉を持っていることではなかろうか。では、池田は「言葉」の人間か。それも違う気がする。ベテランとなり、チームでそう呼ぶのはランス・ヘイワードコーチぐらいのようだが、愛称"Monkey"が示す通り、野性や直感も池田の個性だ。

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「子供の頃、家と家の間の塀の上を歩くって遊びやりますよね。当時それをみていた塀の持ち主だった近所の方に最近、言われたんです。『あなたがスポーツ選手になることは想像できた。ふつうの子供は歩いていたけれど、あなただけは、あの十数センチの幅を走っていたんだもの』って」。

小さな頃から身体能力は図抜けていた。長距離走は小学校から中学校までずっと1番。中学までやっていた野球ではショートを守り、守備なら誰にも負けなかった。「ワイルド? そうですね。ケガにも無頓着でポジティブ。腫れたり、痛んだときも『ケガに身体がちゃんと反応している』と、前向きに考える。ときには練習も続けていた。コンディションづくりも『自分の身体を一番よく知っているのは自分』という考え方で、他人に意見を求めることはあまりない。それは誰しもに、良いやり方とは言えない。でも、自分はそれでやってきたので、もう変えられないんですよね。それを理解してくれるリコーというチームに出会えたのは、自分にとって幸せなことだと思います」

今シ―ズンで36才。これからを考えることもありそうだ。「とりあえず40才までプレーするという目標はあります。選手としてのモチベーションを維持したいので、その後について考えることはまだない。指導者? 20代前半にNTT東北をやめたあと、すこしコーチをしていたのですが、むずかしかった印象がまだ残っているので……」

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 好きな言葉は「今日一日の努力」。
多くのファンから愛された小兵力士、寺尾の座右の銘でもある。寺尾は39才で土俵を去ったが、スターティングメンバーに名を連ね、判断力で、ボールさばきで、相手の裏をかく仕掛けで、存在感を出せる今の池田なら、軽々とその先へ到達してしまいそうだ。

  • 池田渉選手のプロフィールはこちら

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