第17弾:選手がみせた、その横顔 7

Inside the RICOH BlackRams

2011.10.21

 リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。

「ただ、負けたくない」。その結果、目標が優勝になっている(小松大祐)

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「これまでもずっとムードメーカーだったが、バイスキャプテンという役割を務めることで、さらに一皮むけてほしい」 今春、山品博嗣監督は小松をキャプテン・滝澤佳之を支えるリーダーのポジションに任せたことについてそう説明したのを覚えている。

ラグビーに対する向上心、自らを律する強さを備える"背中"で引っ張れる選手であり、同時に、親しみやすさ、明るさも持ち合わせている存在という点では、滝澤に似ているような気もする。まさに、今のリコーに必要な、ひとつのリーダー像をうかがい知ることもできそうだ。

「トップリーグ復帰」「残留」「初の7位」というチームのステップアップを、物怖じせず、生きのいいプレーを見せる"ニューカマー"として支えてきた小松と、リーダーという言葉が、まだうまく重ならないのも事実かもしれない。

「僕もですよ(笑)。山品監督からは『今まで通りプレーで引っ張っていってくれればいいから』と言われているので、意識しすぎず、一生懸命プレーすることがチームを引っ張ることにつながればと思っています。チームも大人なので。自分が特別何か言わずとも、みんなそれぞれわかっていますし。

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 もしチームの雰囲気が悪くなった時には、それを感じ取って、雰囲気が良くなるような行動をとったり、選手・コーチに積極的に言葉をかけたりはしていきたい」。チームに、いかに前を向かせるか。そこに小松はリーダーとしての役割のポイントを置いている。

これまで小松が多くのファンを惹き付ける最大の理由は、逆境を跳ね返してくれるのではという期待感かもしれない。押し込まれたチームが、小松の果敢なラインブレイクを機に息を吹き返すシーンを何度か観てきた。

「高校(宮城県・佐沼高校)のラグビー部は自分が入学した時点で先輩が10人、同期入部者5人という状況。とにかく『仙台育英に勝ちたい』という思いだけでやっていました。将来ラグビー選手としてどうなりたい、というようなことはあまり考えていなかったかもしません。大学(立正大学)も2部。そこから這い上がることに集中してプレーしていて、それがまた楽しかったんですよね。リコーに入社した年、トップリーグから地域リーグ・トップーイーストに落ちた時には、不思議だなと感じました」

壮大な目標を描き、そこまでの距離に悲嘆しモチベーションを落とすようなことは決してない。目の前の相手に勝つこと、目前の選手を倒すこと、目前のボールを奪うこと。そこに集中し続けられるところに、小松の強さはある。

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 3月11日の東日本大震災では、故郷の宮城県は大きな被害を受けた。実家の家族は無事だったものの、自宅を流された高校時代の友人もいたという。「リコーの東北出身の選手の記事を、地元紙に応援メッセージとして載せてもらったんです。読んでくださった方々から『元気をもらったよ』って言葉をたくさんいただきました。自分の活躍を故郷で見守ってくれている人がいる。このことを改めて知り、今度はプレーで、という思いは強くなりましたね」

今シーズン、チームは這い上がるというよりは、去年よりもさらに上を目指す。「それでも、気持ちは変わらない。目の前の強いチームに負けたくないというところが常に出発点。もちろん国内最高峰・トップリーグで闘う以上、目標は優勝です。キャプテンの滝澤さんの夢も一緒にかなえたいですから。 ただ、負けたくないが先。その結果、目標が優勝になっていると言ったほうが本心に近いです」

自らのシンプルな原動力「負けたくない」という気持ちに加え、バイスキャプテンという役割、東北に元気を届ける――という新たな使命を持って闘う今シーズン。ひと回り大きくなった『リコーの小松大祐』を観て欲しい。

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