第16弾:選手がみせた、その横顔 6
Inside the RICOH BlackRams
2011.10.07
優勝したい。だから今日まで続けているんだと思う(滝澤佳之)
リコーラグビー部のメンバーとして、11度目のシーズンをキャプテンとして迎えているHO滝澤佳之。山品博嗣監督も「口数は少ないが、大事なときにメンバーの心に響く言葉を発することができる」ことを、キャプテン指名の理由のひとつにあげるように、滝澤の言葉には、滝澤にしか出せない風合いがある。
試合後などに話を聞きにいくと、滝澤から自分の中で整理をつけた言葉が出てくることは少ない。質問をよく聞き、考え、その場で言葉を生み出そうとしているように映る。
「あんまり考えて話すほうではないですよ。思ったことを口に出しては後悔するタイプ」と、本人は否定するが、少しの"タメ"の後に出てくるのは、無骨だが真摯で正直な言葉だ。
「ラグビー以外ということですよね」
……
「うーん」
……
「ラグビー以外は、ないなぁ」
……
「やっぱり、ないです。これといって、趣味と呼べるような面白いものはないんですよね」
気分転換でする趣味のようなものは? という質問に対する滝澤の真摯な姿勢は、真っ直ぐ向かい合ってきたラグビーとの関係と重なる。
滝澤は、物心つく前にラグビーボールを渡されていたそうだ。
「だから、自分で選んだ道じゃないんですよ。それでも、やめずに続けてきたのだから、好きだったのかな」。以来、中学生の時に柔道やバスケットボールをかじったが「すぐに行かなくなった」らしく、今日までラグビー一筋といってよい人生を歩んでいる。「ラグビーをやらなかった人生は、想像もつかない」。
ラグビーをやめようと思ったこともないという。ただ、付け足した。「大学のときに優勝していたら、社会人で続けていたかはわからないですね。僕のゴールは大学だったので、もし優勝していたら、もういいかなと思ったかもしれない」。
高校は国学院久我山、大学は明治とラグビー名門校でプレーしてきたが、滝澤は全国制覇を経験していない。高校3年間は花園で4強が1回、8強が2回。ちなみに卒業の翌年、すぐ下の後輩たちが優勝を果たしている。入学前々年、前年と連続で大学日本一となっていた明大での4年間は、1、2年次が大学選手権準優勝、3、4年次は同選手権2回戦敗退。全国制覇の夢は、滝澤の目の前をかすめつつも叶っていない。
「ずっと、全国大会で優勝したいと思ってやってきたけれど、高校でも大学でも、(日本一に)なれなかった。じゃあ、社会人でなろう――で、今に至ると。そこがラグビーでの目標、ゴールなのかな。せっかくやっているんだったら、(日本一に)なりたいなと。
正直長くやってきて、そういう気持ちがぶれたことがなかったわけじゃないです。でも、結局どこかで持っていた。だから今日まで続けているんだと思う」
滝澤は同時にこうも話す。「確かに勝ち負けは重要ですけど、一体感というんですかね、チームの。それあってのリコーなんじゃないかなとも思う。喜びだったり、悲しみもそうだし、そういうものも共有したい」。
以前から、みせていたこの一体感へのこだわりからは、滝澤に目前の成績以上に、理想のチーム、ラグビーを追求する気持ちの強さを感じることもあった。
声高に宣言することこそないが、滝澤が目指すのは優勝だ。どのライバルチームよりも多くの勝利を重ね、頂点に立つことだ。その過程で「選手もスタッフも皆が同じ方向を向き一つになること」が欠かせないことを、人生を懸け"優勝"を追い続けてきた男は、身をもって知っている。
頂点に立つ。一つとなったリコーのラグビーで――。滝澤の胸の内にある思いをすべてのメンバー、スタッフが共有できるか。今季の成績を大きく左右しそうな命題だ。
- 滝澤佳之選手のプロフィールはこちら