第15弾:選手がみせた、その横顔 5
Inside the RICOH BlackRams
2010.12.30
リコーブラックラムズ(リコーラグビー部)を支える選手たちの、ラガーマンとしての思いや、これまでのキャリアに関するエピソードをご紹介します。リコーというラグビーチームは、彼らの個性と歩んできた道程、積みあげてきた経験が混ざりあって、今の姿があります。
グラウンドを離れて知った、支えてくれる人の存在(津田翔太)
2010年5月15日。横河武蔵野アトラスターズとのオープン戦で、津田翔太は右ヒザ靭帯を切る大ケガを負った。17日に入院し、20日に手術。その後約1ヵ月入院した。現在もリハビリは続く。
昨シーズンはトップリーグに初出場、多くの試合でメンバー入りを果たした。実戦で学んだことをさらなる成長につなげようと臨んだ3年目。思いは強かった。大ケガの経験は、中学生の時に鎖骨を折ったことぐらい。病院のベッドの上で、そして退院後松葉杖をつきながら、津田は悩み、自分を見つめ直した。
「いろんな人に話を聞きました。焦らずじっくり治せと励ましてくれる人もいれば、どこまで回復するかの可能性を厳しく現実的な視点で話してくれる人も。どれもがありがたかった」
助言を得て、状況と自分の感情を整理した。「しなくちゃいけないこと、できること、やりたいことの3つに分けて考えました」。
特に気にかかったのは、会社のことだ。
「ケガをしてすぐに入院してしまったので、自分で仕事の引き継ぎをする時間がなかった。取引先からも注意を受けてしまいました。同部署の人たちには、本当に迷惑をかけてしまった」
恩返しがしたい――。ケガが癒えチームに合流するまでの仕事中心の時間を、社員として、ラグビー部員として今後に活きるよう過ごす。それが津田にとって「しなくちゃいけないこと」であり「できること」であり「やりたいこと」になった。
「会社にいる時間が増えたことで、仕事の知識も増えたし、営業的なスキルも少し高まったと思う。今の頑張りは、復帰後、社業とラグビーを両立させる力を伸ばしてくれると思う。そういう意味ではラグビーのためにもなっている」
毎日の生活は大きく変化した。変化は津田に気づきをもたらした。
「グラウンドを離れる時間が増えて、これまであまり交流のなかった人と出会うことが増え刺激を受けました。それに、そういった人たちの中にも『がんばって』『あの試合の、あのプレーが…』って声をかけてくれる。自分の知らないところで見ていてくれたんだなって。ケガをして、環境が変わって、それに気づけたのは良かったと思います。
でも、気づいただけじゃだめ。行動に移さないと。ちゃんと足の怪我を治して、試合に出て今回サポートしてくれた人や、みんなが喜ぶプレーを見せて恩返しをしないと」
ケガを機に支えてくれる人の存在を再認識した。津田は彼らの声を力に変え、ピッチへの帰還を目指す。