SH山本昌太選手インタビュー
2018.11.30
的確な読みに基づく安定したプレーや鋭い仕掛けを武器に、リコーのハーフ団の中心を担ってきたSH山本昌太選手も6年目。今シーズンも成長を見せる若手選手と競い合いながら素晴らしいパフォーマンスを見せてくれています。リコーというチームがいまどのような段階にあるのか、ここから上にいくためには何が必要なのか、感じているいることを聞きました。
「『こうすれば勝てる』『こうなったから負けた』というのが、はっきりしてきた」
——トップリーグのリーグ戦はパナソニックから勝利を含む4勝。敗れた3試合もすべて7点差以内でボーナスポイントを獲得。チームは成長を継続できているように映ります。
年々自信つけているというのは感じています。以前のトップチームとの試合では、勝つイメージが湧かないというか、試合終わったときに「なんか負けたな」という思いと結果だけが漠然と残る試合がありました。
でもここ数年は、負けたとしても、強いチームがなぜ強く、自分たちがなぜ負けたかが明確にわかるんですよね。こうすれば勝てたというイメージがだんだんついてきている。まだ勝ちきれない試合が圧倒的に多いんですけど、それでも少しずつ変わってきているとは思います。
成長できているのは、一貫性を持ってやってこれたからだと思う。リコーのアタック、リコーのディフェンスというのが確立されてきた。それができてきたから「こうすれば勝てる」「こうなったから負けた」というのが、はっきりするようになってきたと思っています。
——アクション。ラインスピードを上げ、低いタックルを決める。そんなディフェンスをベースにするのがリコーのラグビー。
しっかりタックルするとか、前に出てディフェンスするとか、簡単なパスミスをしないとか。ある意味では高校生でもできることを、いかに正確にやり続けることができるか。トップチームはそれができているんですよね。
——数年間にわたり、そこにこだわり続けた結果が出ていると。さて、リーグ戦での大きな勝利となったパナソニック戦では試合の勝負どころでピッチに立ち、チームを勝利に導きました。
今シーズン初めてのベンチスタートで。スタートからと途中から試合に入る場合とでは感覚は違い、いろいろ考えたりもするのですが、あの試合に関してはスタートのメンバーがすごくいいラグビーをしてくれて、流れは完全にこちらにあったので、何かを変えようと苦労したというのはないんです。ピッチに立ってみると、これまでの試合のようなパナソニックの嫌らしさ、常に余裕を持ってプレーしている感じがなかったのを覚えています。
僕以外のリザーブのメンバーも役割を完全に理解していい仕事をした。コリン(NO8ボーク)はトライを奪ったし、ティム(CTBベイトマン)はディフェンス。ポヒ(LOロトアヘアポヒヴァ大和)も大事なところでノットリリースザボールを2回くらい獲りましたよね。
試合以外の時間に、外国人選手たちが与えてくれているもの
ティムのリーダーシップはやっぱり印象的で、出場する前の時間帯もボール追いかけ出場しているメンバーに何かを伝えたり、リザーブメンバー集めて自分たちが何をすべきかを説明したりしてくれて、それもよかったと思います。
——グラウンド上にコーチがいるような。
本当にそう。今シーズン加わった外国人選手のそういう部分のインパクトはすごくある。スキーノ(LOジェイコブ スキーン)もラインアウトを引っ張っているし、みんなそれこそ何年もリコーにいたんじゃないかと思うくらいです(笑)。僕らのことも理解しようと努めてくれますしね。
——ベイトマンなどは日本でのプレー経験が豊富なことも生きているんでしょうか。
そうですね。ブライス(SOへガティ)もそうだし。でも、初めて日本でプレーするディコ(FLエリオット ディクソン)も、すぐにチームになじんで日本語も覚えようとしているし、何よりも明るい。性格ということになるんですかね。
——同じBKとして、ベイトマン、へガティらと話をすることは多いと思いますが、印象に残っていることはありますか?
ディフェンスですよね。練習から中心になってくれて。システムには完全に決めごとにしていない、臨機応変に対応しようという部分があったのですが、そこをクリアにする提案をしてくれたんですよね。個人個人の役割をはっきりさせてくれたので、スクラムからのディフェンスなどは良くなってきていると思います。
進め方も僕らの話をいつも聞いてから。「僕としてはこう思う。だけど話しあって、みんながやりやすいほうにしよう」という感じ。だから選手間のコミュニケーションも自ずと増えていくんですよね。
——ここから勝利を重ねていくにあたって、課題としてはディフェンスの安定感での若干のばらつきなどの修正があるように思います。敗れた試合では失点がかさみました。
そこはわかりやすくて、失点が増えた試合は、タックルで低く入れなかったケースや素早くサポートに入れなかったケースが明らかに多かったと数字に出ていました。
そういうプレーがなぜできなかったのか。もちろん低くタックルできない状況もあったのですが、個々の意識で解決できたはずのものもかなり多い。あとはサイドの選手からの、声でのサポートなどが足りなかったケースもありました。レベルアップするために何をしなければいけないかは、はっきりしてきていると思います。
「どうしたら勝てるか」は見えてきていると思うんです。それを分厚くして、高くしてという段階。やることがわかっていても、それが試合に出せなければ負けに繋がるし、負けたということは、やるべきことができなかった、させてもらえなかったということなんだと思います。
——自分たちのベストを試合に出していくために何をするかが大事。
そのためには日々の積み重ねしかないんですよね。毎日の練習をいかに試合でのプレッシャーやモチベーションに近いもので取り組めるかが大事なのかなと。そのためにはミーティングも大事になってくるし、平等にある試合までの時間をどう使うかは大事ですよね。そこはまだまだ改善できる。今でも練習が終わったときに、今日はあまりよくなかったなと思うことはありますから。まだ足りない。3つ落としているわけですしね。
主体性のある大人のチームになってきている
——抜擢された若いリーダーたちも頑張っています。
若いCTB濱野(大輔)やマツ(NO8松橋周平)がいいパフォーマンスを見せたり、厳しいことを言ってくれたりすると、彼らより年上の選手はやっぱり刺激を受けるし自分たちもやらなければって思いますよね。同年代の若手も、リーダーたちのようにいいパフォーマンスを見せれば、自分たちにもチャンスが回ってくると発奮する。
——チームに広くいい影響を与えている。
彼らもすごいし、そのほかのリーダー経験者、WTB小松(大祐)さんだったり、FL武者(大輔)だったり、いい影響を与えられてるかはわかりませんが一応僕もそうだし、それからさっき挙げた外国人選手たちもそう。リーダーシップを発揮できる選手が増えたことで、若いリーダーを支えることができていると思うし、チームとしての主体性にも繋がっていると思います。
——大人のチームになりつつある。
すごく感じます。それはチーム全体に広がりつつあって、リザーブやメンバーに入ることが少ない若手選手が言葉を発することも増えてきています。SHであれば、敏也(高橋)とかヨネ(米村龍二)から、「あそこはどうすればよかったんですかね?」と質問されることもよくある。2人とも向上心を見せてくれています。
——それこそが、チームが強くなっていく過程なのかもしれない。
結果を残すにはタイミングとか運もあるけれども、もう1段階上にいけるように。いい結果を残せれば、大学の素晴らしい選手たちにもリコーに興味を持ってもらえると思うし、本当にチャンスが来ているので。
——ここから3試合は優勝を目指した真剣勝負。最高の成長の機会ですよね。
いや、1発勝負のつもりで戦わないと。トーナメント初戦の神戸製鋼と戦いますが、プレッシャーは勝って当たり前の向こうにかかっているはずですから。
——パナソニック戦のように、思い切ってやろう、楽しもうという声も聞こえてきます。
まずはやるべきことやる。「楽しむ」はその先にあるものだとは思います。ただ、パナソニック戦の最後のディフェンスは確かにみんな楽しんでやっていました。大きなチャンスなのでこれを活かしたいと思います。
文:秋山健一郎
写真:川本聖哉