LOジェイコブ スキーン選手インタビュー

2018.11.23

フィジカリティとワークレート、ラインアウトでのパフォーマンスなど随所で存在感を示しているLOジェイコブ スキーン。加入1年目ながら早々にチームにフィットし、優勝を目指し戦うリコーを支える屋台骨となっている彼に、これまでの経歴や加入の経緯、日本での生活、リコーについて思うことなどを聞きました。

 

決断までは1週間。日本でプレー経験のあるチームメイトやコリン(ボーク)に相談

——最初にリコーに加入する話があったのはいつ頃だったのですか?

 

3月ですね。1週間くらいで決断して、1ヶ月半くらいで手続きは終わりました。スピーディでしたね。僕はニュージランド(NZ)の国内リーグに所属するワイカトというチームでプレーしていて、同じワイカトに本拠地を置くスーパーラグビーのチーム、チーフスを目指していました。

 

ただ、もうひとつの目標として海外のチームでプレーするというものもあった。ワイカトに所属するようになってある程度時間が経っていたし、違う環境でプレーがしたいと思っていたんです。だからリコーからの誘いは大きなチャンスだと感じました。

 

日本には、NZ大学代表チームのメンバーとして過去に3回来たことがあって、秩父宮ラグビー場でも試合をしたことがあります。そのとき日本にいたのはいずれも1、2週間でしたが、すごく印象がよく楽しい滞在だったので、それはすぐに決断できた理由でもあります。

 

——誰かに相談しましたか?

 

6年間日本でプレーしたユーティリティバックスのドウェイン スウィーニー(宗像サニックスブルースなどでプレー)ですね。彼はNZに帰国したあとワイカトに加入していて、親しくさせてもらっていました。僕の判断が正しいかを彼に尋ねたりはしました。すると彼がリコーの素晴らしさ、ロケーションなどが非常に恵まれていることなどを教えてくれたんです。それを聞いて、良いオファーをもらったのだと嬉しく思いました。

 

ちなみに今年の春、スウィーニーの家にホームステイしていたのがヨシ(PR吉村公太朗/NZ研修でワイカトに滞在)。彼とは一緒にトレーニングする機会もありました。ちょうどリコーに行く話が進んでいた時期だったので、よろしくと伝えていました。

 

リコーに加わることが決まったあとになりますが、NO8コリン(ボーク)にも連絡を取りましたね。面識はありませんでしたが、彼の存在は知っていたので、メールを送りコミュニケーションをとっていろいろなことを教えてもらいました。

 

あとは自分でどんな選手が所属していたのかを調べたり、ネットで見ることのできる映像を見たりはしましたね。でも、リコーがどんなチームなのか、細かい部分は実際にチームに加入し、自分の目で見なければわからないと思っていました。

 

——そして5月に合流。“Action”というスローガンを掲げトレーニングを続けているチームを見て、どう思いましたか? あなたのプレースタイルにも合っていたように思います。

 

“Action”はラグビーのすべてのプレーに通じるテーマ。ラグビーでは相手チームの同じ背番号の選手よりも多くアクションすることが大事。いい言葉だなと。自分の武器は繰り返し、繰り返しやっていくワークレートの高さだと思っています。だから目指すテーマは自分に合っていたと思いましたね。あとは練習のやり方や時間帯、シーズンの進み方なども似ていると感じました。

自分にとっては初のパナソニック戦。でも、その重さは伝わってくるものがあった

——海外のチームへの所属は今回が初めてということですが、コミュニケーションや食生活はうまくいっていますか?

 

コミュニケーションは時には難しいと思うこともありますが、通訳の方々にサポートしてもらっているので大丈夫です。キーワードはだんだんとわかるようになってきました。最初に覚えたのは「おつかれさま!」ですね。みんなが言うので、気になってしまって。

 

ラインアウトをリードする役割を務めていることも日本語を覚える上でもプラスになっていると思います。たくさん話さなければいけないですからね。ゆくゆくは日本語を読んだり、書いたりまでできるようになれればいいなと思っています。

 

食生活は、これまで日本に来たときに日本の食事情はだいたいわかっていて、自分に合っていると感じていました。来てからも問題は感じていません。今は家で自分でつくっていますが、トレーニングで疲れているときなどはクラブハウスで食べさせてもらっています。メンバーと二子玉川まで食事に出ることもありますね。
好きなメニュー? ラーメンかな。

 

——実は大学生でもあるとお聞きしました。

 

はい。自分は高校を卒業したあとワイカト大学に通いながらアマチュアとしてプレーしていて、その後ワイカトに加入してプロになったんです。プロになってからも大学に籍を置いて、少しずつですが単位を取ってきました。

学んでいるのはビジネス系で、マーケティング戦略などです。普通の大学生と比べると少し時間がかかっていますが、あと2単位取れば卒業できるんです。そのために11月はオンラインの授業を受けていました。学んできたことはラグビー選手を引退したあとの人生に活かせればと思っています。

 

——さて、トップリーグはどうですか。リーグ戦7試合、カップ戦にも出場してフル回転してきましたが、どんな印象を持ちましたか?

 

ラグビースタイルでいえば、やっぱり速いですよね。フィットネスが重要になってくる。もちろんNZでもフィットネスは必要ですが、それ以上だと思います。フィットネスは自信のある要素ですが、それでもNZ時代は115キロくらいにしていた体重を、日本では110〜111キロくらいに落として対応しています。

 

試合で印象に残ってるのは、やっぱりパナソニックに勝った試合ですね。僕は初めてでしたが、この試合がどれほど重要なのかは、周りのみんなを見ていて強く感じました。だから、僕にとっても意味のあるものとして臨むことができました。「勝ちたい」という思いが伝わる試合ができたと思います。

 

——勝てる感覚はありましたか?

 

はい。あの試合は準備の段階でチームから自信を感じていました。勝つ力があるなと。あの試合はカンファレンスの4位以内が懸かった試合だったのですが、それを意識して萎縮するのではなく、掲げた“Swing the bat”というテーマの通り「思いきってやってみる」ことができた試合だったと思いますね。

 

——トーナメント初戦でぶつかる神戸製鋼は今季好調です。でも、引き続きそうした精神が大事なのかもしれません。

 

そうですね。相手が何をするかにフォーカスするのではなく、自分たちにフォーカスして戦うべきだと思います。パナソニックとの試合に状況は似ていて、やはり「やってみる」ことが大事。ポジティブにとらえたいと思っています。状況を、ラグビーを、楽しんで。決勝戦までいってやろう、そんな気持ちでいます。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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