松橋周平バイスキャプテン インタビュー
2018.06.29
新キャプテン・濱野大輔選手を支えるバイスキャプテンは、同期の松橋周平選手が務めることになりました。1年目からリコーでレギュラーの座をつかみ、瞬く間に日本代表を支える選手に成長。サンウルブズでもインパクトを残しました。現在は、昨秋見舞われたケガからの完全復帰を目指す松橋選手に、今の思いを聞きました。
「ケガをしたのは、心技体が整わなくなっていたときだったように思う」
――副将就任。これまでもグラウンド上ではよく発言していたし、リーダーシップは見せていたように思います。
かなり前から神鳥監督とは話をしていました。将来のリーダーについてはぜひ務めたい役割でした。その上で昨年11月のケガ、個人としての目標、日本代表、サンウルブズなど現実的なところも話して決めていきました。
――リコーの一員になってからの2年を振り返ると、入団早々に活躍を見せ、評価を高め状況が動いていきました。
僕としては、大学生から社会人になって、環境が変わって、まずはリコーでやっていくんだと思っていたのですが、早い段階で日本代表、サンウルブズでプレーする機会をいただきました。こんなに早くチャンスがやってくるとは思っていませんでしたが、目標にはしていたことなので、驚いたり戸惑ったりというのはなかったですね。
あの場でプレーさせてもらったことで、もっと成長したい、もっと高いレベルにいきたいという思いが芽生え、ハングリーになれたと思います。代表としての自覚と責任を持ってラグビーに取り組むのは楽しいです。
――そして、トップリーグ新人賞を獲って、サンウルブズのメンバーにもなり、そのまま2年目のシーズンに入っていくと。
サンウルブズでは10試合に出て、7月のストーマーズ戦ではスーパーラグビーの「チーム・オブ・ザ・ウィーク」(週間ベストフィフティーン)に選ばれたり、かなり感覚をつかんでいました。ただ、ほぼ休みのないままトップリーグが始まりリコーに合流しました。
結果的に1年半試合に出続けたんですよね。年間30試合のペース。成長を意識しながら、勢いのあるプレーはできていたのですが、やっぱり身体にダメージが出てきていて、気持ちをうまくコントロールできていない感覚はありました。心技体が整わなくなってきたときにケガが出てしまったように思います。
試合が続いていたことで身体づくりができていなかったのかもしれないし、心をリフレッシュする機会も必要だったように思います。ケガをした場面でも、熱くなり「まだできる!」とプレーを続けてしまったのですが、リスクを冷静に考える判断力も必要だなと思いました。一流選手たちは、長いシーズンを見て自分のコンディションをコントロールすることをうまくやっているんですよね。
――大きなケガをした選手は、パフォーマンスが取り戻せるか不安を感じることも多いように思います。
そこは大学時代にも経験があったので、心配していなかったです。自分のやっていることを信じて、どれだけやれるか。常に成長していこうという思いでした。11月に手術をして12月に退院。JISS(国立スポーツ科学センター)を使わせてもらってリハビリに取り組みました。
「自分ができることはケガの前よりも増えている、という手ごたえがある」
――ケガを経て、何か変えたことなどはありますか?
身体のつくり方、身体の使い方、そういうものにさらにこだわってみようと。ラグビーでのある動きに対して、どんな可動性が必要か? その可動性を生み出すには、どんな柔軟が必要か? 重心の乗せ方は? そういうことを考えるようにしたんです。
これまではそういうことを感覚でやっていたのですが、それだとパフォーマンスにばらつきが出てしまう。もちろん試合では無心で身体を動かしますが、練習のときに考えながら身体を動かしておくと、質の高い動きができるようになっていくと思うので。
そんな考え方をトレーニング全般に採り入れて、質の高いプレーを続けていくことに取り組んでいるのですが、これが本当に楽しいんです。ケガをして落ち込みましたし、復帰に向けての焦りもありますが、自分ができることはケガの前よりも増えている、という手ごたえはあります。ここから登っていくぞという思いです。
――2年目のシーズン、リコーのチームとしての成長は感じていましたか?
感じていました。1年目のシーズンよりも強くなっているという自信を持って戦えていたと思います。ほかのメンバーもそうだったのでは。もちろんまだまだ隙や成長すべき点はありましたが。
――松橋選手が離脱した後半節はケガ人が相次ぎ、やや苦しくなっていきました。
リーダーとして考えたときに、選手層というのはリコーの課題だと思います。昨シーズのBチームの試合は、組織で戦えていないことが多く、結果がついてこなかったように思います。チーム全体で戦い方への理解を深めていきたいですね。どのチームでも終盤はケガ人が出てくるものなので、そんな機会を生かして、戦力になる、レギュラーになる、というモチベーションが生まれてくれば。
チームが目指している目標を達成するために、メンバー全員が自分にプレッシャーを与えて、成長していく。そういう環境をつくるために何をするかは僕らリーダーが考えていかないといけない。
――今シーズンの目標は優勝に決まりました。
はい。チャンピオンを狙っていきます。もちろん簡単ではありませんが、近い将来に必ず達成できるように成果を積み上げていきたい。チーム全体で高い目標に向かっていくシーズンにしたいです。濱野とよく話すのは、「居心地のいいチーム」にしてはいけないということ。常に成長が求められるよう促していく必要があると思っています。そこはブレずにやらなきゃいけない。まずはリーダーである僕らからです。
また、今年は選手主体でやっていく、というのもテーマにしています。ラグビーは最後は選手が判断しないといけない部分も多い。選手がどんどん前に出ていく組織をつくっていきます。だから、僕と濱野で完結していてはだめで、先輩方によるリーダーズグループからの働きかけをお願いしています。コミュニケーションを活発にして、チームで課題を共有し、必要があればこちらからスタッフにどんどん求めていくようなムードが生まれればと。
――リーダーとしてコンビを組む濱野選手とは、かなり話していますか? 勝ちたいという気持ちの強烈さは、共通するように思います。
まあ、同期ですしね。濱野は帝京大学という高いレベルでやってきていて、まじめな性格。グラウンド内外を問わず“ちゃんとやる”。その姿でチームを引っ張っていってほしいと思っています。
僕が果たそうと思っているのは、自分なりのラグビーとの向かい合い方をしている選手とのコミュニケーションです。人にはそれぞれ個性があるので、全員が濱野のようなやり方をする必要はないと思います。それは認めた上で、やるべきことをやっているかに目を向け、やれていなくて、パフォーマンスを出せていないのであれば、しっかり指摘する役割は必要だと思うんです。個々にアプローチしていく感じですね。ここは守ろう、やることはやろう、と。
――それは日本代表やサンウルブズでの経験なども生かした発想なんでしょうか?
うーん、どうかな。向こうにいる人はパフォーマンス出していたし、ピークに持っていく術をしっかりわかっていましたからね。ただ、一流選手でもオフの使い方は人それぞれだというのは感じました。遊びにいく人もいれば、ゲームをしている人もいました。僕だけ妙にまじめに過ごしている、そんな感じでした(笑)。
――厳しくも、柔軟性のある大人の組織に。とはいっても、リコーの選手は外国人選手も含め、献身的でチームへの協力を惜しまない選手が多いように思います。
僕が知っている2年について言えば、本当にそうです。やるぞ、という空気があるので、あまり心配はしていません。
「攻守の切り替えで、うまくスイッチチェンジできるチームに」
――ラグビーの話を。このトップリーグで優勝するためには、当然ながら、昨シーズンのリコーよりも上位に入ったチームを倒す必要があります。そのために何が必要だと感じていますか?
うーん。そうですね……。(少し考える)
ラグビーってきついじゃないですか。そのきついときに、アタックであればどれだけ正確な判断で、スピードに乗って、スペースを突けるかが大事。ディフェンスであれば、早いセット、コミュニケーションなどが大事になってくるのかな。おおまかにですが、大事な部分ははっきりしている。それが完璧にできたら勝てるわけです。
それができなくなるのが、攻守の切り替え、トランジションの場面です。アタックからディフェンス、もしくはその逆。そこでスイッチチェンジがうまくできるのが強いチームだと思うんです。その意識を高める必要はあるのかなと。
――試合の多くの時間で、いいアタック、いいディフェンスを見せながら、一歩届かなかったという試合は、そこで差がついている。
そうだと思います。リコーにとってディフェンスは強みのひとつ。このディフェンスはアタックへのチャンスなんだとマインドチェンジしていければ、強みをさらに強化できると思うんです。そこにこだわっていった方がいいのかなと。フィットネス、判断、スキル、どれもが必要ではありますが、すでにそれを意識したトレーニングにも取り組み始めています。楽しみですよ。相手からすれば、さらにしぶとくて、少しでも隙を見せたらやられる、そんなチームになっていきたいですね。
――FWとしてはどうでしょう。濱野選手がBK、松橋選手がFWというのもあるので、リードの領域分けみたいなものもあるのかなと。
FWは僕だけが引っ張っていくという感じではないかな。ラインアウトなどではマイキー(ブロードハースト)がリーダーシップを発揮しますし。
セットプレーの出来は試合を左右するので、今シーズンもこだわっていきます。徐々に良くなってきていると思いますが、少し波がある。例えばスクラムなんかは、他チームに脅威を与えられていると思いますが、キープ率のようなスタッツ(統計値)にしてみるとあまりよくない。印象に残りにくいところでミスをしたりしている。そうではなくて、いつでも力を発揮できるようにならないといけませんね。
――この2シーズンの成績を受けて、ファンの期待も膨らんでいると思います。
でも、僕にしてみれば最低限の成績。勝てていない試合で感じた悔しさのほうが強く残っています。ヤマハ発動機戦など、勝てるチャンスが訪れながら落とした試合もある。自分も納得のいくパフォーマンスを出せなかった。だから、まだまだ。もっと上を目指していきます。
いいシーズンにします!