2016-2017シーズンスタート! 馬渕主将インタビュー
2016.05.20
2016-17シーズン、リコーのキャプテンは、今年で8年目のLO馬渕武史選手が務めることに決まりました。ゲームでは常に体を張り、存在感を示してきたリコー屈指のタックラーを先頭に、チームは再スタートを切ります。新リーダー・馬渕キャプテンに聞いた、今シーズンに臨む心境です。
コミュニケーションが足りず、納得しきれないまま臨んだ試合があった
––新キャプテン就任、おめでとうございます。これまでのキャリアでリーダーの経験はありますか?
リコーに入ってからはありませんが、高校(所沢北)と大学(日大)ではキャプテンを務めていました。
––キャプテンにならないかという話はいつ頃聞いたのでしょうか?
3月4日に行われたラグビー部の納会のすぐあとに、神鳥監督からお話をいただきました。ラグビーを一生懸命やるという姿勢を評価してもらえたようです。1週間くらい時間をもらって、同期の仲間に相談した上で返事をさせてもらいました。
––昨シーズンは、日頃からチームを鼓舞する発言が多かったような気がします。
そういう役割を他の選手に任せてしまっているなという反省はいつもありました。チームのために、自分はどうあるべきか、何をすべきかという形でチームのことを考えてはきましたが、チームはこうあるべきだ、というような考え方はあまりしてこなかったんです。
ただ、昨シーズンは少し意識したかもしれません。ケガの影響で第5節の近鉄戦で初めて試合に出たのですが、苦しい状況にあったチームを後から加わるメンバーが盛り上げなければと考え、鼓舞するような発言は意識的にしていきました。
––昨シーズン、良い結果がでなかった理由はどのあたりにあると考えていますか?
1試合にかける思いというか……。一人ひとりが常に100%を出し切れていなかった印象があります。いつもムラがあったというか。コンスタントに自分たちの力を出せていた感じがありませんでした。
開幕時はメンバーを外れていたので、あくまで外から見ていた印象ですが、なんとなく「いけるだろう」という空気があったように思います。その前のシーズン、下位リーグではありましたがセカンドステージで6勝(1敗)して、それがあったからか。今思えば、あの雰囲気はどうだったんだろうと思うこともあります。
––シーズンが深まるにつれて、チーム内のコミュニケーションが増えていったという声があります。
選手同士、選手とスタッフでよく話をしましたね。みんな自分の意見を持ってても飲み込んでしまって言えていないことがあった。完全に納得してプレーできていたかといえば、そうではなかった。「こっちのほうがやりやすいんじゃないか」とお互いに思っていたのに、伝え合わずに試合に臨んでいたんですよね。
––具体的に、そういうケースが生まれたのは?
シーズン中にシェイプ(攻撃時の組織的な動き・隊形)の変更が一度あったんですが、そのときかな。結果が出ず春からやってきたシェイプを変更したのですが、うまくフィットしなかった。時間が足りなかったのもあるけれど、選手が消化しないまま試合に臨んでしまった。
最後は元に戻したんですけど、戻したからよくなったと言いたいのではなくて、十分なコミュニケーションをとれずに、選手が納得しないまま試合に臨んでしまったことがよくなかったですよね。
終盤は細かなユニットでのミーティングなどもかなり増えて、それにつれて理解が深まったとは思います。
––試合中も、状況に合わせた対応を、選手同士で話し合って決めることはあると思います。ゲームプランを貫くか、微調整を加えるかといった……。
選手それぞれでいえば、リコーには、状況をみた判断ができる選手は多いと思います。ただ型にはめがちな選手もいるので、ピッチ内でのトークや、ハーフタイムのミーティングという短い時間で同じ方向を向けるようにしないといけない。
昨シーズンは、そこでのルールも確認したりしましたね。誰かが話し出したら必ず話を遮らずに聞くとか。終盤は問題を明確にしてピッチに戻ることができるようになっていったと思います。
ひたむきに、一生懸命に、あきらめない姿を見せたい
––昨シーズンを戦った中で、手応えを感じた試合はありましたか?
やはり順位決定トーナメント第2節のNEC戦(2016年1月16日・三重交通G スポーツの杜鈴鹿)です。勝てたことはもちろんですが、準備段階からすべきことを明確にできていたという点で。
その前の試合で豊田自動織機に逆転負けをしたんですよね。あの試合は前半から攻めてなんとかリードを奪って終えたのですが、ブレイクダウンのプレッシャーをかなり受けていい球出しができず、かなり疲労していたんですよね。それなのに、後半もそのままの流れでいこうとして、うまくいかず逆転されてしまったんです。
NEC戦では、その失敗を繰り返さないように、前半は攻めて、後半の立ち上がりは落ち着こうという合意のもとで準備して、その通りの試合ができた。そこに手応えを感じます。
––後半に逆転された試合はほかにも何試合かありました。
第6節のサントリー戦で、負けはしましたが自陣から攻めていく試合をやり、形が作れたんですよね。僕らも攻めたい気持ちはあるので、いいマインドでやれていました。
次の第7節のクボタ戦も同じように攻めて、前半で3トライを獲れた。このときはスタミナを考えて、後半の入りを抑えめでいったんですよね。その結果、キックカウンターを受けたり、ラックの近場を攻められてブレイクダウンで一気に劣勢になったりして主導権を渡し逆転されてしまった。
今思えば、あの試合の前半は、そこまでプレッシャーを受けていなかったので、まだ体力的に余裕があったように思うんです。後半の入りも前半と同じ勢いで攻めていればどうなったかなと。消耗を見ながら、意思統一を図りながら戦術をスイッチするということが、うまくやれなかったなと。
––キャプテンとなり、チームとの向き合い方は変わりそうですか?
誤解を恐れず言えば、基本的にはあまり変わらないのかなと思います。小松(大祐)さんや野口(真寛)みたいに、説得力のある強い言葉で引きつけるようなことは苦手なので、一生懸命な自分を見てもらって、それに何かを感じてもらって引っ張っていくことになると思います。それは今までとあまり変わらない。期待と不安は半々くらいですが、やると決めたらやるだけなので。がんばります。
––一生懸命さ、ひたむきさというのは、何かきっかけがあって心掛けるようになったのでしょうか。
いや、ラグビーを始めたときから変わりません。僕、同期の仲間にもよく言われるんですがすごくマイペースで、あまり他の人の影響を受けないんです。決めたスタンダードを落とさないようにひたすら頑張る。プライベートなどはマイペースすぎて文句をいわれることもありますが(笑)。そういうやり方は、これからも変わらない気がします。
––同時に、チームでも屈指のいじられキャラだという声もお聞きします。
誰からでも話しかけられる存在ではあると思います。同期からは「特殊なリーダーだな」と言われることもありますが、メンバーは遠慮なく、気を遣わず接することができると思いますし、そういうのもよいのではないでしょうか。
––W杯、スーパーラグビーとラグビーが盛り上がっています。その中でもリコーの試合を観にきたいと思ってもらうには何が必要だと考えていますか?
ひたむきに、一生懸命に、あきらめない姿をお見せすることでしょうか。そして最終的には勝つことですよね。そこで社員やファンの皆さんを惹きつけられるようにがんばります。
自分も代表戦やサンウルブズの試合を観て、もっとやらなきゃだめだと駆り立てられています。あの試合に出ているようなメンバーを止めなければ勝てないわけなので。今のままでは置いていかれてしまうという思いは強いです。