CTB小浜和己・LO赤堀龍秀選手インタビュー
2013.09.04
3月31日から6月22日まで、CTB小浜和己・LO赤堀龍秀両選手がニュージーランド海外研修に参加しました。現地のクラブチームのメンバーなどとして、ラグビーの本場で過ごした12週間の体験と、今シーズンへの意気込みを聞きました。
首都ウェリントンの“クラブ”と“アカデミー”でトレーニング
― 今日はよろしくお願いします。お二人はこれまで海外へ行ったことはあったのですか。
小浜: 小学生1年生のときに、NZに行ったことがあります。父がラグビーのクラブチームの監督をしていて、そのチームの遠征について行ったんです。
赤堀: 自分は一昨年、セブンズの日本選抜として「シンガポールクリケットセブンズ2011」に出場したのと、大学の卒業旅行でアジアに。あと、旅行ではありませんが、父親の仕事で4歳までアメリカにいました。記憶はあまりないんですけど。
―― 研修の参加はいつ頃決まったのですか。
赤堀: 参加させてもらえるかもしれないという話は、結構前からいただいていたのですが、最終的に決まったのは3月の中旬だったと思います。
―― 向こうでの主な活動について教えてください。
小浜: まず滞在させていただいたのは、NZ北島の南端にある首都ウェリントンです。そこのクラブチームであるMarist St Pats(MSP/マリスト・セイント・パッツ)に加わり、練習や試合に参加させてもらいました。MSPには、オールブラックスの6番、8番としてプレーするヴィクター ヴィトも所属していたことがある名門チームなのだそうです。
赤堀: ほとんどのメンバーは仕事をしながらプレーしていて、年齢も様々。
小浜: 時々、大ベテランのような選手も来て一緒にプレーしました。
赤堀: 練習は火曜日と木曜日の夜から。僕たちが参加した4月から6月にかけては、公式戦が行われていたので、毎週土曜日には試合が組まれていました。
小浜: それとは別に、平日の朝7時からウェリントンライオンズのアカデミープログラムというものにも参加しました。“ライオンズ”というのは、ウェリントンの優れた選手を集めた州の代表チームで、ニュージーランド州代表選手権(ITMカップ)を戦っています。“アカデミー”は、この州代表に入る可能性を秘めている選手を対象に指導するもので、参加しているのはほとんどがウェリントンのクラブチームでプレーする若手選手でした。毎週試合のあるMSPでは、試合に向けた実戦的な内容をやり、アカデミーではジムでのトレーニングや、パスやタックルなどポイントを絞ったスキルの指導、食生活についてのレクチャーなどを受ける感じですね。
―― MSPでは何試合ぐらいに、またどんなポジションで出たのですか。
赤堀: 僕たちが参加したのは、“Premier(プレミア)”というクラブのトップチームの試合と、その次のクラスのチームの試合でした。ほぼ毎週試合があったので12試合は出ました。それに祝日のある週は試合がたくさん組まれたので、加えて2~3試合は出たと思います。主にFLとNO.8として出ました。
小浜: 自分は基本的にはCTBでしたが、メンバー次第でSOやFBをやった試合もありました。
―― コンタクトの激しいNZで、毎週試合というのはハードでしょうね。それに初めて出会う、しかも言葉も十分には通じないメンバーとプレーするのもなかなか大変そうです。
赤堀: 最初の3週間くらいは結構きつかったです。試合後のリカバリーもリコーでやっている通りにできるわけじゃないし。でも、だんだん慣れてくるんですよね。きついんですけど、みんなが楽しんでやっているから、その雰囲気のおかげで、自分も頑張れるんです。
小浜: そう、楽しかった。みんな別に仕事をしながらラグビーが大好きでやっている人たちで、本当に楽しそうなんです。プレーしていて本当に楽しかった。
僕はバックスなので、ムーブとかサインの意思疎通は正直大変でした。でも、だんだんと単語で会話できるようになりましたね。
「自分でやらねば、という意識が高まった」(赤堀龍秀)
―― 試合を通じた経験や、コーチからの指導で印象に残っていることはありますか。
小浜: やっぱり、コンタクトしていく姿勢ですね。NZの選手は、コンタクトしたがるというか、ボールを持ったらまず自分で行くという意識が強い。それを通して存在をアピールしようとする。それは自分が成長させなければと思っていた部分だったので、刺激を受けましたよね。
それからアカデミーではウェリントンのスーパーラグビーのチーム、ハリケーンズのコーチにアドバイスをもらう機会もありました。タックルで倒した相手からのボールの奪い方や、ボールキャリアにどう付くか、といったかなり細かいことを教えてもらいました。新しく教えてもらうこともあって、自分の引き出しが増えたと思います。
赤堀: 自分はタックルですね。とにかく倒すことを意識して、低く飛び込みがちだったのですが、ボールの下に入ってそのまま倒さずにドライブする、ボールを動かすことを封じるタックルもあるのだという指導は印象的でした。
毎朝のアカデミーで教わった内容を、毎週末の試合で試せるのもよかった。もちろん簡単にはうまくはいきませんでしたけど。
―― その他の時間は、どのように過ごしていたのですか。
小浜: 朝7時からのアカデミーのプログラムを終えて、9時頃に帰ってくるんですけど、帰り道に食材を買ってきて二人で自炊して食事をしていました。メニューはアカデミーで教えてもらった「肉と野菜とポテトを1:1:1で食べる」という指導に従ってつくっていました。
赤堀: 午後は、アカデミー参加者は自由に使えるジムが市内にあるので、そこでトレーニングしていました。試合後のリカバリーをやることもありました。リコーだとメディカルスタッフがいろいろと気づかってくださり、それに甘えて少し薄れていたけれど「自分でやらなければ」という意識が高まりました。
小浜: あとは、今回いろいろと御世話になった現地の日本人指導者の竹内克さんのお誘いで、地域の学校を訪問させていただく機会もありました。小学生にあたる年代から高校生まで。一緒にラグビーをプレーしたり、日本語を学んでいる生徒に日本語を教えたり。貴重な体験でしたね。向こうの小学生がフルサイズのグラウンドで試合しているのには驚きました。日本は半分のサイズでやるのが普通だったので。
赤堀: それからスーパーラグビーのハリケーンズの試合を3回観戦しました。地元ウェリントンでのハリケーンズ人気はやっぱりすごい。いろいろなところでユニフォームを着ている人がいて、街中で盛り上げている。ラグビーが人々の生活に根ざしたものになっていました。
小浜: スーパーラグビーの試合は、生で観てレベルの高さを再認識しました。あそこでプレーしている田中史朗さん(ハイランダーズ)と堀江翔太さん(レベルズ)は本当にすごい。NZのチームでプレーしている田中さんは、かなり有名で、僕らがNZの人に「日本からラグビーをしに来ました」と話すと「タナカ!」って返ってくるくらいでしたから。
赤堀: 今回は小学生から、高校生、クラブチームの選手、その上の州代表チームやスーパーラグビーの選手やコーチングスタッフの方まで、幅広く交流できました。NZのラグビー文化について、深く理解する機会になりました。
―― お二人は、環境が変わっても、ストレスなくなじめたようですね。
小浜: そうですね。これといってストレスはなかったです。
赤堀: 僕もそうですね。
小浜: ただ、ちょっと夜寒かったというのはありましたね。寝袋を借りて寝ることで解決しましたけど。苦労したのはそれぐらいです。
「“何かを変えたい”と思っていたときに、良い機会をいただけた」(小浜和己)
―― 6月後半に戻ってきて、チームに合流。今度はチーム内での競争が始まるわけですが。
小浜: リコーが進めてきたチームづくりの状況を理解して、少しでもはやくなじめるよう努力しています。その点において「NZに行っていたから」というのは言い訳にはできませんから。帰ってきてからすぐに菅平合宿などもあったので、だいぶ理解できてきています。
赤堀: 神鳥監督とは、NZ滞在中もメールなどでコミュニケーションを取っていました。どんな練習をしていたか、試合はどうだったかを伝えたり、リコーの状況を聞いたりしていたので。焦りはそんなにありません。
小浜: 決めごとを覚えるスピードというのは、ラグビーでは、とても大事だと思うので。これも良い機会だと思っています。
―― 新チームの雰囲気はどうですか。
小浜: 発言する選手が増えた気がします。
赤堀: 緊張感もあるし、声を掛け合ってハードにやれている。練習の合間にゲームを取り入れたり、毎週頑張った選手を表彰する“アワード”など、厳しくも楽しく、やりがいを持って練習に取り組めています。いい雰囲気なんじゃないでしょうか。
―― 最後に、今シーズンの具体的な目標を教えて下さい。
赤堀: 昨シーズンは、メンバー入りはできましたがスターティングメンバーには入れませんでした。まずは試合の最初から出場するのが目標です。あとは、これまでは第3列(FL、N0.8)が多かったので、今シーズンはLOとしてのスキルも磨きたいと思っています。ラインアウトの核になっている生沼(知裕)さんやポヒヴァ(ロトアヘア)のように、ラインアウトのコールを担当できるくらいの存在になりたい。
NZでは、きつい練習をアグレッシブに楽しみながら取り組むメンタルが養えたと思います。網走合宿からプレシーズンマッチと続きますが、自分を追い込んでいきたいです。
小浜: 昨シーズンは、コーチや監督から評価の言葉をかけていただく機会もあり、トップリーグ初出場も果たせましたが、自分としては満足感をあまり得られなかったんです。それで、何かを変えないといけないと思っていたところで、NZでラグビーに集中する貴重な時間をいただけたのは本当にありがたかったです。じっくりとラグビーと向かい合うことができました。
スターティングメンバーとしての出場、それから10試合に出るということをひとつの目標に置いています。コンディションはばっちりなので、今年はやりますよ。
―― 期待しています。今日はありがとうございました。
(文 ・ HP運用担当)