NO.8マイケル ブロードハースト選手インタビュー

2013.08.15

 昨秋、日本代表に初招集されたNO.8マイケル ブロードハースト選手が、この春再び代表に招集されました。アジア5カ国対抗ラグビー、パシフィック・ネイションズカップ、ウェールズ代表とのテストマッチの全10試合でフル出場。GPSなどによる計測でも好値を出し、エディ ジョーンズヘッドコーチら首脳陣から高い評価を受けたブロードハースト選手に、“ジャパン”のメンバーとして体験してきたことを聞きました。

「7番は好きなポジション。気分よくプレーできました」

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―― 4月後半から6月後半は試合続きでした。タフな春だったと思います。2度目の代表招集でしたが、前回との違いはありましたか。

ブロードハースト: はい。前回はLOとしての招集でしたが、今回はバックロー(FL、NO.8)特に7番をやってほしいというリクエストでした。代表チームにケガ人が出ていたのも関係していると思います。7番は好きなポジションなので、とても楽しかったです。

―― リコーで7番で出たことは…

ブロードハースト: 昨シーズンはNTTコミュニケーションズ戦で1度ありました。リコーではNO.8が多いですね。ただ、バック5(LO、FL、NO.8)はどこでもプレーできます。行くように言われたポジションでやりますよ。バックローはボールキャリーでも、ディフェンスでも自由度が高い。スクラムにずっとつかまっているわけでもないし、ショートラインアウトではボールを持って走ることもある。選択肢が開かれていて、走り回れるポジション。だから好きなんですよ。

―― では、前回以上に気分よくプレーできましたね。

ブロードハースト: そうですね。間違いないです。

―― ブロードハースト選手から見て、日本代表はどんなチームですか。

ブロードハースト: しっかりと考えられた組織だと思います。ジョーンズHCは、細かなところまでよく見ている人。少しでも間違っていると厳しく指摘してくれる。選手は常に正しくやらねばという気持ちでプレーしています。今回の代表には若い選手もいましたが、彼らがラグビーを学ぶ場としてすごく良い環境だと感じました。
練習はいつもハードですね。でも試合の途中、僕らがまだ平気なのに相手が疲れてくるという場面が何度もありました。そんなときにはハードワークの価値が実感できました。
練習以外でも、選手とコーチが集まり食事をしながら交流する時間が週に2回ありました。メンバーやスタッフの間の関係はタイト。仲が良いと思います。

―― 代表メンバーで、親しくなった選手はいますか。

ブロードハースト: 今回、FLは一緒の部屋だったんです。伊藤鐘史選手(神戸製鋼)、菊谷崇選手(トヨタ自動車)などと一緒にいる時間は長かったですね。あとはヘンドリック ツイ選手(サントリー)やマレ サウ選手(ヤマハ発動機)、英語の上手な小野晃征選手(サントリー)ともいろいろと話しました。

―― チーム内の結束も結果につながっていたのでしょうか。

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ブロードハースト: それでもアジア5カ国対抗が終わり、パシフィック・ネイションズカップが始まって、トンガ代表やフィジー代表のような身体の大きな選手が多いチームとの試合は苦労しました。
大きな選手を相手に戦うのに慣れるには何試合か必要なんです。試合に勝ったカナダ代表やアメリカ代表との試合が先で、そのあとトンガやフィジーと戦ったのなら違う結果になっていたかもしれない。(トンガ、フィジー戦は敗戦)
チームは1戦ごとに成長していました。それは試合を見ていても感じてもらえたんじゃないでしょうか。

―― 一番印象に残っている試合は。

ブロードハースト: やはりウェールズ代表との試合ですね。惜しくも敗れた最初の試合も、相手よりもいいプレーができていると感じていました。一部問題がありましたが、2試合目ではそこを改善し勝利できたんです。日本代表がこれまで勝ったことのない相手に勝てたのはやはり誇りに思います。

―― 秩父宮では何度も試合をしていると思いますが、あのような盛り上がりは初めてだったのでは。

ブロードハースト: 入場者数は2万人を超えていたんですよね? 特別な雰囲気。特別な瞬間。ああやってスタジアムに足を運び、声援を送ってくれたファンの期待に応え勝てたのはうれしかったです。
今回、チームというのは強くなって、勝てば勝つほど、ファンやサポートしたいと思ってくれる人は増えるのだと確信しました。

「オールブラックスと対戦することも、NZのラグビー選手の夢」

―― 日本代表の一員としての自覚もいっそう強くなりましたか。

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ブロードハースト: 日本代表に入るのは難しいことです。まず、いい選手が育ってきています。それに一時のパフォーマンスが良いだけではだめで、今回で言えば3ヵ月間、厳しいトレーニングを続けられないといけない。ラグビーの内容もトップリーグよりずっと高いレベルが要求されます。もちろん「日本代表でプレーしたい」という強い気持ちもないといけない。そういう厳しい環境で挑戦できることには、やりがいを感じます。
2019年にラグビーW杯が日本で行われるとき、自分がプレーしているかはわかりません。でも今、自分たちが良いプレーをすることで、2019年の日本代表を支える若い人たちに「ラグビーをやりたい」「もっと頑張りたい」と思ってもらうことはできると思います。
プレスカンファレンスでジョーンズHCが話していましたが、日本の子供たちの集団に「日本代表でプレーしたいか」と聞いたら、3人か4人しか手を挙げなかったそうです。でも、僕の生まれたニュージーランド(NZ)で「オールブラックス(NZ代表)に入りたいか」という質問をしたら、全員が手を挙げます。1人でも多くの子供たちに「日本代表でプレーしたい」と思ってもらえるよう、状況を変えていきたいと強く思いました。

―― オールブラックスといえば、テストマッチが11月に組まれました。出場のチャンスもありそうです。どんな気持ちですか。

ブロードハースト: NZのラグビー選手は「オールブラックスに入りたい」と誰もが思っています。ただ、その次の目標を「オールブラックスと対戦する」というところに置く選手も多いんです。世界でベストのチームにチャレンジできるのは選手として誇らしいことですから。
強い相手ですが、負けると思って試合に出るつもりはありません。そういう気持ちでやるならラグビーをやめたほうがいい。代表のメンバーは全員が楽しみにしているはずです。僕もとても楽しみです。

―― 代表での時間は、本当に充実していたようですね。もっと試合をしたかったようにも見えます(笑)

ブロードハースト: いやいや、休息も大事ですから(笑)。リコーでのトレーニングに参加する時間を取れていなかったので、そのための時間も必要。今、今年のリコーのラグビーを、急いで学んでいるところです。去年から大きく変わったところもあるので。僕もまだ100%理解しているわけではないので、しっかり合わせていきたい。その点、同じポジションにコリン(ボーク)がいるのは心強いです。自分が間違っていたらしっかり教えてくれるし、わからないことはすぐに聞けるので。

―― 代表とクラブ、切り替えは難しいものですか。

ブロードハースト: 難しいところもあります。でも、繰り返すうちに慣れてきました。以前よりは対応できるようになったと思います。去年はラインアウトでコールを間違えたりしていましたから。

「日本に来なかったら、今もラグビーを続けていたかわからない」

―― 個人的な意識として、今シーズン変えていこうと思っているテーマはありますか。

ブロードハースト: 積極的にボールに触り、ボールキャリーしていきたい。今シーズンのリコーは、ポジションを問わずいろいろなスキルを求められます。フォワードでもパスを求められたりするので、そこは磨いていきたい。

―― 日本に来て5シーズン目に入ります。自分で成長を感じることはありますか。

ブロードハースト: できているといいなと思います。日本に来た当時の自分のプレーを見返すことはあまりないのでなんとも言えませんが。ただ、体重は10kg増えました。タックルは決まりやすくなっているし、少しは成長したのかな。

―― ブロードハースト選手は、日本のトップリーグで成長を遂げた外国人選手の1人だと思います。日本の環境についてどう思いますか。

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ブロードハースト: 日本に来たのは、ちょうどラグビー以外の人生も考えていた頃でした。ああいう転機が来なければ今もラグビーを続けていたかわからない。自分は幸運だったと思います。
ある意味でリラックスしてラグビーと向かい合える日本の環境は、自分に合っていました。NZのチームは、シーズン中は週末でも厳しく節制を課します。でも日本はある程度個人に裁量を持たせてくれる。当然自己管理できない選手が評価を得ることはありませんが、オンとオフのコントロールを一部まかせてもらえる環境はやりやすいです。

―― 激戦続きの代表戦で活躍し、ケガなく戻ってきてくれてリコーファンは喜んでいると思います。

ブロードハースト: リカバリーはかなり意識していました。冷たいアイスバスに1日3回も4回も入ったりするのは大変でしたけど。そのおかげで体調面はかなりいい状態です。あとはリコーの戦術の理解を深めれば万全にトップリーグに臨めます。期待していてください。

―― 今日はありがとうございました。

(文 ・ HP運用担当)

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