山品新監督インタビュー
2011.05.26
5月28日(土)に行われる近鉄ライナーズとの定期戦を皮切りに、2011-12シーズンの春季オープン戦が始まります。4月末に就任が発表された山品博嗣新監督に、今季目指していくラグビー、動き出したチームの現状、そして社員やファンの皆さんに注目して欲しいポイントなどを聞きました。
シンプルなプレーを「速く」「強く」「高い実行力」で
―― 監督への就任おめでとうございます。
ありがとうございます。
―― 今シーズンも、早くもオープン戦が始まります。どんなラグビーを目指しトレーニングを行っていますか。
難しいことは考えていません。ラグビーの原理原則に則って物ごとを考えていこうというテーマで取り組んでいます。一対一では絶対に勝つ、セットプレーを安定させる、しっかりとしたフィットネスレベルを維持する、、、そんな、最低限の部分を徹底することが大切だと考えています。練習もそうした領域にフォーカスしています。
―― 方針は、これまでコーチとしてチームを見てきた経験から導き出されたものなのですか。
はい。私自身の答えはシンプルだったんです。ラグビーというスポーツは、ルール改正なども多く、時代時代で細かな変化はあります。でも本質は変わらない。シンプルなプレーを「速く」「強く」「高い実行力」でやっていくことが大事なのだと思います。
複雑なことをやろうとしすぎると、状況判断やコミュニケーションでミスが起こりやすくなり、メンバー間で意志を共有するのが難しくなることもあります。なるべくシンプルに、グラウンド上でメンバーが考えを合致させられることを重視して闘いたいと考えています。
それはトップリーグのライバルチームから学んだ部分でもあります。例えば、サントリーは、よくアタックのチームだといわれます。でも、そんなイメージの一方でタックルの成功率もとても高い。パナソニック(三洋電機)は鉄壁のディフェンスのチームですがトライも非常に多い。上位に進出するチームは色=特長を持っています。でも、それ以前にアタックでもディフェンスでもしっかりとしたベースがある。その上に強みを築きあげることで、勝利を重ねることができている。
―― まずは基礎をつくり、強みを磨き上げるような練習はその後に?
もちろん、チームとしての特長も今後磨いていきます。勝ち切るためにはそうした領域をしっかり持つことが重要です。リコーの強みは何かといえば、それはスピードでしょう。特にバックスのスピード、チーム全体としての運動量も武器です。これは磨くべきものです。
ただ、その場合でも選手に一番最初に求めたいのは、ランニングスピードとか、パススピードとか、そういうものではないんです。それらも非常に大切ですが、やっぱりまず原理原則の部分。リアクションの速さとか、コンタクト後すぐに立ち上がって相手より素早くセットするといった、意識によって決まってくる部分。それをまず高めていきたい。
―― 意識という言葉がありましたが、グラウンド外も含め、選手たちとのコミュニケーションを通じ、求めていこうとしている意識、気持ちはありますか。
ひと言でいうならば、「満たす」ことを大事にしたいです。不安要素を取り除いてグラウンドに立てるように配慮する、といえばいいのでしょうか。不満があるなら聞き出す。出させる。それに対してディスカッションする。当然、なんでも聞き、認め、甘やかすわけではなく、解決する必要があることについてはする(解決する)ということです。命令・号令だけではないコミュニケーションを重視していきます。
チームの決定事項についても、可能な場合は、選手たちに決定までの過程を伝えたい。過程を開示することは、メンバーそれぞれがチームに参加している感覚を育んでいく。「このチームは自分のチームなのだ」という意識をより強いものにできると考えています。時間に限りはありますが、できる限りやっていきたい。
―― チームのムードが変わってくるのでは、という印象を受けます。
緩くなることがないように注意は必要です。そこは監督やコーチがうまくコントロールすべきところでしょう。これまでの言葉でいえば、"attitude"が下がるようなことはあってはならない。自分たちのスタンダードを意識して、維持し、上回っていけるような厳しさを保っていきたいと思います。
ゼロベースで考え、すべての選手にチャンスを
―― キャプテンにHO滝澤佳之選手、バイスキャプテンにSO河野好光選手、PR高橋英明選手、WTB小松大祐選手が就任しています。小松選手はこういった立場を務めるのは初めてですよね。
小松はユーモアもあってムードメーカーとしてチームにいい雰囲気をもたらしてくれていましたが、ラグビーに対する姿勢も素晴らしい選手です。リーダー役に就くことは彼のキャリアの中でもアクセントになると思いますし、彼自身も、チームも、成長できるのではないかと思います。すでに練習中の発言も多くなっていて、気持ちが変わってきているのを感じます。
キャプテンの滝澤は昨シーズン、多くの試合でゲームキャプテンを務めました。身体を張って、プレーで引っ張っていけるのが滝澤。言葉の数は少ないのですが、心に響き、選手が奮起するようなメッセージを発することができる選手ということで任せました。
キャプテン、バイスキャプテンを中心とした、キャリアを積んできた選手たちには、チーム全体をまとめる役割に加え、技術や経験を若手選手に伝える形での貢献にも期待しています。もちろん、それは本来コーチの役割ですし、彼らはポジション争いをしなければならない立場でもあります。自分のトレーニングに集中させてあげたいという気持ちもあります。
ただ、トップリーグを勝ち抜く上でチームの底上げは大切なことなので、キャリアを積んだ選手には協力を求めています。
―― 春季オープン戦の位置づけは、どう考えていますか?
昨シーズン以上の成績を残すためには、チーム内の新しい才能を見出し、伸ばす必要があると思っています。これまで中心となってきた選手にも当然頑張ってもらいたいのですが、ゼロベースで、すべての選手にチャンスを与えたいと思っています。
ある意味、既存のポジション概念も壊してベストな15名がフィールドに立てるようにしたいと考えています。
―― レオン・ホールデン新ヘッドコーチも5月23日(月)に来日されました。
これまでもEメールなどを使って、方針の共有は進めてきました。練習、オープン戦を通じ、私も含めてコーチ同志のコミュニケーションもしっかりとっていきます。コーチ間に上手く"横串"を入れていければと考えています。
―― オープン戦を観戦する際には、リコーのどこに注目すればいいでしょうか。社員やファンの方々に観戦ポイントのアドバイスを。
どれだけクイックにボールを動かせているか、ですね。ゲインラインをいかに勝ち獲り、ボールを素早く動かせているか。ラグビーの原理原則の部分で、どのチームもこだわるところですが、それ以上にこだわっていきます。
―― 今日はありがとうございました。
ありがとうございました。社員、ファンの皆さん、今シーズンも熱いご声援をよろしくお願いいたします。
(文 ・ HP運用担当)