【Review】プレーオフトーナメント準々決勝① vs.東京サントリーサンゴリアス
2026.05.29
17点差を逆転し掴みかけたセミファイナル。ホーン後4分の猛攻で決した勝敗
レギュラーシーズン(リーグ戦)を5位で終えたBR東京は、プレーオフトーナメント準々決勝へと駒を進め、東京・秩父宮ラグビー場でリーグ戦4位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)と対戦した。大一番を前にPRパディー・ライアン、HO大西将史、LOジョシュ・グッドヒュー、NO8ファカタヴァアマト、CTB池田悠希といった今季チームを牽引してきた選手たちが復帰。プレシーズンから選手のコンディショニングをサポートしてきたメディカルとS&Cの積み重ねが、実を結んだかたちだ。
タンバイ・マットソンヘッドコーチはビッグゲームを前に、旧約聖書の『ダビデとゴリアテ』の物語を引いて意気込みを語った。少年が巨人を倒す物語に、賢くチャレンジングに戦えばどんな相手であっても勝機はあるという考えが重ねられた。これは東京SGと戦った開幕戦前にも口にしていたのだが、今回はもう少し言葉を連ねた。
「ダビデは戦いを前に鎧を授けられるんです。でも、それが重く自分に合わないものだから脱いでしまうんですよね。使い慣れた装備で自分らしく戦い、そしてゴリアテに勝つんです」
チームはフィジカリティとエフォートで立ち向かった。今季よい結果を残せていた試合は、結局のところシンプルにそこで相手を凌駕していたからだ。そこで引いてしまえば、東京SGはダイナミックにボールを動かすアタッキングラグビーで牙を剥いてくることは、リーグ戦での2試合で痛感させられていた。
試合の入りは圧倒された。14分までに3つのトライを許し0-17とリードを許した。前に出るディフェンスでボールの展開を果敢に阻みにいったが、東京SGはプレッシャーをかけられたあとの対応も巧みだった。これまでの対戦で何十回と蹴り込まれ、チャンスをピンチに変えられてきたSH流大の裏へのキックはこの日も高い精度を見せ、苦しめられた。
それでもBR東京は、ハイボールを使った攻撃が奏功し敵陣に入っていく。相手の反則で得たチャンスをものにして1トライを返すと(26分)、試合は第二幕に入ったように感じた。優位をとれる要素の発見とフィジカルなアタックをすれば前に出られるという手応えが空気を変えていく。スローワーのHO大西将史、コーラーのLO山本嶺二郎、躍進のシーズンとした2人が引っ張ったラインアウトも安定。最終的には100%の成功率を記録した。
反則を重ねた東京SGの規律を突きPGで10-20とする(35分)が、38分にSO中楠一期が相手の山なりのパスに手を伸ばしノックフォワードとなり、不当なプレーとしてイエローカードが出る。この反則をきっかけとしたアタックで東京SGにトライが生まれ(39分)、10-27でハーフタイムへ。
昨季までのリーグワンのプレーオフ全18試合で、前半のビハインドをひっくり返し勝利したケースは5試合。最も大きな逆転劇でも12点差(平均5.6点差)。苦しい後半が予想された。
しかし、17点を追いかける展開が、BR東京に自分たちに見合わぬ鎧を脱がせたか。後半の巻き返しで勝利を重ねてきたリーグ戦で手にした自信が、チームに腹を決めさせたようにも映った。熱源はかつてSH TJ・ペレナラが「彼が発している自信というのはチームに伝わっていくようなところがある」と評したWTBメイン平だ。
ペレナラが蹴り上げるハイボールを繰り返しキャッチしスタンドを沸かせると、ジャパンのレジェンドを鋭いステップでかわし1トライを上げる(後半9分)。ペレナラとのコミュニケーションでポジションを調節した後、スクラムから展開したボールをトライゾーンにきっちり運びトライを重ねる(23分)。ハーフ団に強くパスを要求するアクションも見せ、厳しさでチームを鼓舞した。
規律を突き攻め込んで奪ったペレナラのトライのあと(27分)、センタースクラムからのアタックでメインがラインブレイク。40mを走りポイントをつくると、左に展開しHO大西将史のトライが生まれる。スコアは32-33(31分)。
さらに、相手の後方へのパスを読み、アタックラインの裏へ走り込んだSO中楠一期のインターセプトを足がかりに得たPGを成功させ、BR東京は35-33と逆転する(38分)。スタンドは地鳴りのような歓声が轟いた。
BR東京はモールやラックを駆使し残り30秒まで時間を使うと、東京SGにペナルティ。右サイドゴールから40mほどの位置だったが、チームはショットを選択。準備の間に時間が経過しホーンが鳴る。決めるか、デッドボールラインまでボールを届かせればノーサイドという場面だったが、ボールは非情にも右にそれ、トライゾーンでのキャッチを許す。
アタックに転じた東京SGは、コネクトが切れたBR東京のディフェンスにプレッシャーをかけ、反則を奪いながら前進していくと、トライゾーンまでボールを運んで逆転。歓喜の時は6分間で幕を下ろし、セミファイナル進出は幻と消えた。
翌日のゲームの結果を受け、今シーズンの順位は5位で確定した。
「だからみんなラグビーが好きなんだろうなと思うようなゲームだったかなと」(マットソンHC)
「個人個人が自分の力で何とかしてやろうという方法に走らなかったのがすごくよかった。(略)失点が続いたときに自分の力だけでなんとかしようと思って、ペナルティが重なって大敗したこともあったので。今日の試合はチームでコネクトし続けることができた。ペナルティはありましたけど、チームがひとつになって戦えたのはすごくよかった」(LO山本嶺二郎)
「前半はディフェンスの時間がかなり長くてアタックできていなかったんですけど、前半最後の方から、ハイボール、コンテストボールに手応えがあったので、そういったものを使いながら、自分たちがアタックする時間を増やしていこうとして、それはうまくはまったかなと」(CTB池田悠希)
「試合の部分、部分をどうコントロールしていくかが改善点。試合がハードになってシンプルになれば僕たちはすごくうまくできる。(試合の入りのような)強度が高くてスピードが速いときに苦労してる感じがある。それでも、勝つために全てをやろうとした。いいスタートが切れなかったとしても、勝つチャンスを掴むために、自分たちにチャンスを与えるために、できることを全部やる。そういうマインドセットをつくり上げるには時間がかかる。今シーズンだけではなく、プレーオフまであと少しだった昨シーズンがあったからこそ、こういうゲームができるチームになれたのだと思う。今日の結果も、若い選手たちにはいい経験になる」(FL/NO8リアム・ギル)
選手は悔しさを噛みしめながらも、誇るべきものをしっかり誇った。その権利はある。
マットソンHCはらしさを保ち、明るく、軽やかに、取材陣を笑わせながら両チームの選手にとっておそらくは最高の褒め言葉を贈った。
「だからみんなラグビーが好きなんだろうなって思うようなゲームだったかなと」
かつては歌っている人の人数がわかるほどで、空席も多かったスタジアムに反響していた応援歌を、数千人が歌った。その歌声は、猛攻を仕掛ける選手たちを鼓舞し、試合後はうなだれる選手たちを包み込んだ。敗れたにもかかわらずだ。チームの成長だけでなく、大きく広がったコミュニティとの強い絆を感じた瞬間だった。
悔しくも誇らしく、やっぱり悔しいシーズンのゴール。リーグワン初のプレーオフトーナメント進出を果たし、選手は我々に新しい景色を見せてくれた。だが選手たちも、顔を上げた先に広がる、一生忘れられない景色を目にしたはずだ。
「遠く」を見て、ぶれずに進み続けた先に
FL/NO8ギルは試合後に、こんな言葉を選手に伝えたと語る。
「もっと遠く(horizon)を見よう」
敗因を特定の場面や最後のキックに求めるべきではない。近視眼的にならず、遠くを見据える視点を持たなければ、本当の課題は見えてこない。そんな意味がこめられていたようだ。
その言葉を聞き、このチームが長らく遠くを見据えながら何が必要かを考え、なすべきことを、ぶれずにやり続けてきたことを思った。まだ頂点は先にあり感慨にふけるのは早い。だが、このゲームに辿り着けたのは、その成果であることは間違いない。
十数年前、チームは強くなるためのヴィジョンを描き直した。
「多少時間はかかっても、チームの土台となってくれる選手を育てる。選手は宝物」
「かつて日本一になったときがそうだったように、日本代表に入る選手が数多く出てくるような状況をつくる」
「力を借りる海外出身選手は、できるだけ長くコミットしてもらい、このチームを深く愛してくれる選手を」
「粘り強く、ひたむきに、泥臭く」
階段をスムーズに登り続けられたわけではない。結果が出ず入替戦に臨んだシーズンもあった。だが、そうしたときでもヴィジョンは揺らがなかった。
土台となったLOロトアヘアポヒヴァ大和、FL松橋周平やSH髙橋敏也。その世代の活躍を目にしBR東京を選んでくれたHO武井日向やNO8ファカタヴァアマトら次世代。宝物たちは切磋琢磨し、日本代表に絡めるレベルの選手もかなり出てきた。
海外出身選手については、この準々決勝を観たならば何も言う必要はないだろう。ここまでチームにコミットし、若い選手たちの成長を本気で願い、その上でこのチームで勝つために全力を尽くせる選手たちは、かけがえのない存在だ。
あわせて思うのは、彼らが素晴らしい人間性を兼ね備えたアスリートであることは疑いようがないが、その力の全てを引き出したのは周囲ではないかということだ。フロントや首脳陣、日本人選手やスタッフたちが心から成功を望み、力を尽くしていることが伝わらなければ、全てを捧げるプレーは望むべくもない。
遠くを見て、一歩ずつ。築いてきた足場は盤石だ。それをさらに高く、強くーー。やることはクリアだ。
試合後の記者会見でマットソンHCは来季について「すごく興味深い1年になるんじゃないかなと思っています」と英語で述べ、最後に日本語で「たのしみ!」と付け加えた。
顔を上げ、遠くを見ると気づく。こんなにもワクワクするオフの始まりは経験したことがない。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
まずは多くの方に感謝の気持ちを伝えたいと思います。ファンの皆様には佐賀や福島、いろいろなところに足を運んでくださり、大きな敗戦の後も大きな勝利の後もずっとサポートしていただきました。感謝を伝えたいです。そしてリコー、自分たちをサポートしてくれた会社にも感謝いたします。BR東京は素晴らしいラグビーチームですが、会社のサポートなくしては戦えません。感謝を伝えたいと思います。
そして選手全員、スタッフも含めて、すごくいいジャーニーだったと思います。今シーズンはスタッフも選手もサポートチームもみんなで目標だったトップ6を達成し、皆さんに誇らしい思いをしてもらうことができたのかなと思います。
サントリー(東京SG)さんにも感謝を伝えたいです。自分たちの最初のプレーオフゲームの対戦相手となったサントリーさんは本当に歴史的で、長らく成功を収めてきたチーム。この秩父宮でそうした相手とやれたことにもすごく感謝しています。
試合はサントリーさんにすごくいいスタートを切られ、その実行力により自分たちは大きなプレッシャーを感じました。チームのバランスがすごくいいですし、よくコーチングされているなとも思いました。
自分たちは80分間とにかくファイトし続けること。ハーフタイムは結構ビハインドだったんですけど、その中でリーダーたちが素晴らしい姿勢を見せてくれて、最後までリードしてくれました。最後の1分まで戦い続ければ何か特別なことが起きるということをみんなで信じてやれていたと思いますし、実際それもできたかなと思います。
本当にこんな素晴らしいゲームに関われてすごく嬉しいです。特別なことだと思います。もちろんヘッドコーチとしてはすごく残念ですし、悔しいです。最終的な責任は自分にあります。
でもラグビーにとってもクラブにとっても素晴らしいチャレンジでしたし、すごくいいコンペティションだったと思います。だからみんなラグビーが好きなんだろうなって思うようなゲームだったかなと。最後まで諦めずにファイトし続けるということ。サントリーさん、本当におめでとうございます。またタフな1週間が待っていると思いますが、頑張ってほしいなと思います。
SH TJ・ペレナラキャプテン
僕はもうそこにプラスすることは他にないです。チームのみんなをとても誇りに思います。今シーズン達成したことを本当に誇りに思います。もちろん試合の結果はすごく悔しいものですが、勝てるポジションまでは自分たちを持っていくことはできた。最後に勝ちきれなかったところはしっかりレビューして、そこから学んで成長に繋げたいと思います。
ファンのみなさんには今シーズンの素晴らしい応援をありがとうございますと伝えたいです。僕はすごく幸運なことに、キャリアを通じてスペシャルなチームと多く関わることができています。ドラマチックな感じにしたいわけではないけれど、本当に素晴らしいファンだと思ってます。勝っても、負けても、引き分けても、いつもそこにいて自分たちのことをサポートしてくれるファンの皆さんの今シーズンのサポートには感謝しています。
僕もサントリーさんにおめでとうと伝えたいです。今はまだ受け入れるのは難しいんですけど、観る方々にはすごいいいゲームだったんじゃないかな。僕が見直すかどうかはわからないですけど。
(見させます、とマットソンHC。笑いが起きる)
当分は見ないかなと思うんですが(笑)、サントリーさんは本当にクオリティの高いチームで、彼らもオンフィールド、オフフィールドの両方でいろんなチャレンジがあったと思うんですけど、だからこそ素晴らしい、歴史の深いチームなのかなと。いいリーダーがいて、いい基盤ができていて、それを守って長く成功を収めてきているチームだと思います。来週も頑張ってください。グッドラックと伝えたいです。友人も何人かいますしね。心から願っています。
質疑応答
—— 最後のPGを選択は?
TJ・ペレナラ:僕のディシジョン(判断)です。(SO中楠)一期が1人であの判断をしたとは思ってほしくなくて、僕が決めて、彼がゴールキックを蹴りました。最終的には僕の判断です。そういうところがレビューするときに少し辛い理由ではあります。
——他のキッカーが蹴る判断はなかったか?
TJ・ペレナラ:ないです。彼に決める自信がありました。もし決まらなくても奥(デッドボールラインの向こうへ)に蹴る自信がありました。僕も彼を信じていたので。
——まずは決めるのがベストで、それができなくてもデッドしようとしたと
TJ・ペレナラ:はい。今こうやって座っていると、残り30秒、スクラムもうまくいっていたことを思うと、スクラムの選択もあったのかなと。今だったら選択すると思います。とにかく、あの判断は僕の責任です。
——昨シーズンから新たなチームをつくってきて、今日は勝ちかけるところまではいった。その点は満足しているか?
マットソンHC:もちろんです。クラブは毎月、毎年、少しずつ成長していると思います。その多くはシニアプレーヤーのよいリーダーシップによるもので、準備のスタンダードレベルも上がっています。来シーズンはカテゴリーも変わります。すごく興味深い1年になるんじゃないかなと思ってます。楽しみ(日本語で)。
——最後のキックが外れたあとのディフェンスについて
TJ・ペレナラ:キックの前に話していたのは、前のラインに14人、後ろに1人という陣形で、ブレイクダウンではあまりコンピートしないようにということでした。ただいつでも競っていいライセンスを持っている選手はいるので、それ以外は競らないようにと。結果として一番最悪のシナリオになってしまいました。ペナルティを与え、ラインアウトから6フェーズを守りましたがまたペナルティ。そして最後にトライを奪われた。トライの前にはゴールの正面でペナルティを犯してもいました。僕の悪い判断からエラーが続く流れになってしまった。そこが振り返る上で一番辛い部分です。
僕はいつでもチームファーストで考え、その瞬間のベストな判断をしようとしていますが、間違えることもあります。リーダーとしてそこから顔を背けるのではなく、間違えたときは自分の責任として認め、次に同じような状況が訪れたときには、チームのためになる判断ができるようにしたいです。
——試合の入りに東京SGに攻め込まれた。どんな状況だったか
TJ・ペレナラ:僕らもスイッチは入っていたと思いますが、最初の9分間? 相手が本当にすごくよくて。今週はキックオフプランも用意していたのですが、3本目が開始から8分ぐらいの時点で出てしまうのは予定外でした。(LOハリー・)ホッキングスに捕られて、(WTBチェスリン・)コルビに渡し、そこからトライされたものですね。8分の時点であの3本目をやるプランではありませんでした。相手にとっていろいろなことがうまくいっているスタートでしたが、自分たちもいいチームだとわかっていたので、自分たちがやれることをやり続ければ17点は獲り返せると信じてやり、追いつくことができました。
(拍手の中、2人が退場)
試合ハイライト
■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、選手インタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=462
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉、ブラックラムズ東京