【Review】第16節 vs.トヨタヴェルブリッツ
2026.04.30
初のプレーオフに王手をかけ挑んだ一戦。勝敗を分けた、トライライン付近でのわずかな差
勝てばプレーオフ進出決定。ついに目標に手が届くところまでやってきたリコーブラックラムズ東京(BR東京/9勝6敗/4位)は、東京・秩父宮ラグビー場でのレギュラーシーズン最後のホストゲームとして開催されたトヨタヴェルブリッツ(トヨタV/6勝9敗/7位)戦に挑んだ。前節にアクシデントに見舞われたLO山本嶺二郎、NO8ファカタヴァアマト、CTBラズロー・ソードらがメンバー外となり、替わってLOハリソン・フォックス、NO8リアム・ギル、CTB PJ・ラトゥが先発。リザーブにはLO岸佑融、CTB栗原由太が入った。前節に続きリザーブ8人のうち6人をFWとし、SHのリザーブを置かない布陣で臨んだ。
前半4分、蹴り合いに勝って押し込んだトヨタVがクイックスローインからアタック。左サイドを破って先制トライを挙げる。トヨタVはその後も積極的に攻め、BR東京は我慢の時間が続く。しかし、NO8ギルのインターセプトで敵陣に入るとSH TJ・ペレナラがトライを奪い追いつく(17分)。20分、23分にもトライゾーンにボールを運んだが、反則やノックフォワードが出てトライは認められず。だが、30分に互いのアンストラクチャーからのアタックの応酬を制し、CTBラメカ・ポイヒピがトライを決め14-7と勝ち越した。
しかしこの攻勢をかけた時間帯に2人が脳しんとうのチェックで、また2人が負傷交替でピッチを離れることに。結果的に前半だけで4人の交替が発生する異例のゲームとなった。それでもリードを保って戦い前半終了が迫ったが、39分に自陣で与えたスクラムからのアタックでトライを許し、14-14で折り返す。
後半は2分にSHペレナラのスペースへのキックに反応したFBアイザック・ルーカスがトライを奪って21-14。このトライで流れを掴むかと思われたが、5分にゴール前でアグレッシブなディフェンスを見せていたCTB栗原由太にイエローカードが出る。トヨタVは数的優位を得た時間帯に2つのトライ(6分、10分)を重ね、BR東京は21-28と逆転を許した。
しかし、スクラムでの優勢を利用し敵陣深くに入ってプレッシャーをかけていくと、19分に相手にイエローカードが出て状況は反転。23分にNO8ギルのトライとSO中楠一期の角度のあるCV成功で28-28に追いつく。なおも数で優位という状況だったが、反則から自陣侵入を許すと、ゴール前で相手の手からこぼれさせたボールがヘディングで前方に落ち、それをグラウンディングされる。カオスな状況でのトライが生まれ勝ち越される(27分)。
28-33の5点差、残り時間は10分以上あった。BR東京はチャンスをつくるところまではいった。スクラムでの反則奪取やキックチャージなどビッグプレーも飛び出したが、ラインアウトの不成功やブレイクダウンでの被ターンオーバーなどが挟まり、これまで逆転勝利を挙げてきたゲームのように、相手を締め上げていくようなプレッシャーを生み出すことができなかった。
残り5分。BR東京が自陣10m付近からボールキャリーで突破を図った直後、トヨタVが渾身の力でプレッシャーをかけラックを崩す。転がり出たボールを奪われトライゾーンに運ばれた。これが試合を決めるスコアとなり、BR東京は28-40(前半14-14)で敗れた。
通算成績は9勝7敗。総勝ち点は41から伸ばせなかったが、5位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)も敗れたことから4位をキープ。東京SGとの勝ち点差は1。6位の東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)との勝ち点差は6。プレーオフのボーダーとなる7位のトヨタVとの差は8。次節でプレーオフ進出を決めるには、7位チームとの勝ち点差を6以上、もしくは直接対決の対戦成績でリードした上で5以上にする必要がある。
「こういうスコアになったのは、自分たちの中に何か原因がある」(PR津村)
シーズン中盤より状態を上げて巻き返し、プレーオフ圏内を目前としているトヨタVにとっても、この試合は当然重い意味を持つものだった。懸ける思いは鋭いリアクションと接点でのエフォートというかたちで可視化されていた。
そんなトヨタVに対し、BR東京が対抗できていなかったということはない。トライ数は相手の6本に対し4本も、トライゾーンまでボールを運んだシーンの数は同じだけあった。よいプレー、そうでないプレーの数も互いに同じくらいあったのではないか。それがどういう順序で並ぶかにおいて、トヨタVにわずかに分があったようにも映った。
「気持ちが空回りしたっていうのもあるかもしれないです。何かを起こそうとしすぎたというか、何かプラスアルファを生み出そうとしすぎた」
今季最長のプレータイムとなったCTB栗原は、責任を感じ、悔しそうな表情を浮かべながらこうも言う。
「いい自信は持っていました。入ったときもフィジカルでやられているという感じはなく、自分たちもやれそうだという手応えだった。それで逆に、変にブレイクダウンに(プレッシャーを)かけにいってしまったのかもしれない」
やはり今季最長のプレータイムだったPR津村大志は、こんな見方をする。
「今までいい試合をしてきて、いい練習を積み上げてきたというのはあるんですけど、こういうスコアになったのは、自分たちの中に何か原因があると思うんです。〈今までどおりでいけるやろ〉っていうのがあったと思う」
今までどおり自分たちのラグビーを再現すれば勝てるんだという自信がチームに備わるのは素晴らしいことだ。だが津村は、「今までどおり」が、本当に勝ったときと同じものかにも目を向ける。
「今までのよかった試合って〈勝ちにいく〉〈絶対勝てる〉〈俺ら絶対いける〉っていうのがあったと思うんです」(PR津村)
勝って反省する。自信を手にしながら、課題を修正しレベルアップしていく。それはチームが強くなっていく上での最高のプロセスかもしれない。ただ、勝ちながら自分たちを高めていくことの難しさもある。勝利を重ねる強者が乗り越えてきているもの。それに触れた一戦だったのかもしれない。
「誰でも感じられるプレッシャーではなく、特別なもの」(SHペレナラ)
シーズンのクライマックスが迫り、重みのある試合を前に、チームはメンタルプレッシャーにいかに適応するかを意識していたようだ。SHペレナラは練習でのエナジーや緊張感はパフォーマンスに密接に繋がっているからこそ、自分たちは自らにプレッシャーをかけることを意識してきたと話す。成功した(目標に手が届いた)チームというのはイージーオプションを選びがちだが、そんなときには目標を適切に引き上げ、緊張感を取り戻していく必要があるとも言い、プレッシャーをポジティブなものとしてとらえているようにも映った。
試合後、ペナルティの数や内容などを指し、プレーオフ進出を前にしたプレッシャーの有無を聞かれたペレナラはこう返した。
「メンタルプレッシャーの要素はあったと思います。それは誰でも感じられるプレッシャーではなく、特別なもの。自分たちのチームには、そういうポジションに今までなったことがないメンバーもいます。今日はまだプレーオフゲームではないんですけど、彼らが今日味わった感情は、プレーオフで感じるものに似ている部分もあるはず。プレーオフにに進出できたときに役立つ、いい経験だったと思います」
大事な試合を戦う際のプレッシャーは、敵にも味方にもなる。それを感じられることを誇りに思い、自分たちを高めるものにできるか。ここからの2試合、選手たちに重圧がかかるのは間違いないが、プレッシャーといかに対峙していくかを学ぶ上では、最高の機会であるともいえる。
「僕はアーリーエントリーから数えて3年目なんですけど、一昨年は入替戦で、昨年は惜しくも7位で。今年はもっといい位置を狙えるところにいてる。チームがレベルアップしているところに自分もいてるなって感じてるんで。今年こそトップ6に入って、プレーオフに出て、チームの歴史を変えたい。自分がその場に携われてることをすごく嬉しく思いますし、ワクワクしています。これからまだまだやらなあかんなと」(PR津村)
ビッグゲームに臨めることを心から楽しみにしている津村のような若手選手たちにとって、最高の学びの場となるであろうシーズン最終盤。プレッシャーを味方につけ、ベストのラグビーを見せてくれることに期待したい。
次節第17節は5月3日(日・祝)13:00より、福島・ハワイアンズスタジアムいわきで行われるホストゲーム、クボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ/13勝3敗/3位)戦となる。ここまで総得点、総失点、反則数いずれもリーグ2位と充実の内容で勝利を重ねてきた。昨年12月、第2節の対戦では28-50(前半13-26)で敗れている。S東京ベイはプレーオフ進出を決めているが、シード権が得られる2位以上に入る可能性を残しており、是が非でも勝利とボーナスポイントを狙ってくるとみられる。試合の序盤から激しく攻め、主導権を掌握し、試合を決めにくることだろう。これに対し受けに回らず、身体を張って相手にプレッシャーをかけられるかが最大のポイントとなる。
チームはアクシデントが相次いでおり、これまでとは異なる布陣となる可能性もある。これまでの積み重ねが試される総力戦でどんなラグビーを見せられるか。この大きなチャレンジに勝利できれば、他チームの結果にかかわらずプレーオフ進出と5位以上が確定する。
「トレンドマイクロスペシャルマッチデー」として開催。試合終了後には特別表彰も
この試合はトレンドマイクロ株式会社の協賛による「トレンドマイクロスペシャルマッチデー」として開催した。試合終了後には、トレンドマイクロ株式会社より特別表彰を実施。「トレンドマイクロスペシャルマッチデー」には、NO.8ギルが選ばれた。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
まだちょっと振り返っているところなのですが、秩父宮での今季最後のホームゲームが、少し残念な結果になってしまいました。スコアがそのままパフォーマンスを表すものだったかどうかはわからないですが、残念です。でもこれまでと変わらず、来週に集中して、修正すべきことを修正していくだけかと思います。(以下日本語で)以上です。ごめんなさい。
SH TJ・ペレナラキャプテン
まずは、トヨタさんにおめでとうございますと伝えたいです。今日は素晴らしく、プレッシャーのかかる場面でもいいプレーをしていたと思います。彼らは僕たちが与えたチャンスをしっかりものにしていました。その場面のいくつかはソフトなもの(ディフェンスでうまくプレッシャーをかけられなかったもの)だったのは少し残念ですが、そういうところでスコアする力が彼らにはありました。
学べることが多くあった試合でしたが、秩父宮での今季最後のホームゲームが、こういうパフォーマンスになったのはすごく残念です。でも、ここから教訓を得て進んでいけたらと思います。今シーズンは試合が残っているので、まだ成長できると思います。でも、自分たちが設定した目標を達成するためには、やるべきことをやり、さらに学び、よりよくなっていかないといけない。
最後にもう一度、トヨタさんは今日よかったです。おめでとうございますと伝えたい。今日だけではなく、ここ2ヵ月ぐらい本当にいいパフォーマンスを見せていると思います。今日もいいラグビーでした。
質疑応答
——最近のスタンダードから考えると反則が多かった。手を焼いたものがあれば
TJ・ペレナラ:そうですね、少しペナルティが多かったですね。もちろんそれはプラスにはならないです。今、思い出せることでしか話せないんですけど、一番がっかりしたのは与えてしまったトライに、いくつかすごくソフトなものがあったことです。ハーフタイム入る直前に与えてしまったトライとか(前半39分)。スクラムから9番のランでラインブレイクされスコアを許したものとか(後半10分)。あとはイエローカードの後、モールで獲られてしまったトライもですね(後半6分)。
相手に苦労させて、それから獲られたトライであればいいんです。相手が頑張ったということですから、称えればいい。でも簡単に獲られてしまうのはよくないですね。それ以外のものも含めて、最初の2、3フェーズで与えてしまったトライが4つくらいあったのではないですかね。いいチームを相手にそういうゲームをしてしまうと、勝つのは難しくなってしまうかと思います。
——この試合に勝てばプレーオフが決まるということはどれくらい話していたか?
マットソンHC:少し話しましたが、自分たちのフォーカスは自分たちのプレーのスタンダードを示すことで、シーズンの初めに設定したゴールについて、ここで改めて長く話すことはしませんでした。フォーカスしたのはコンシステンシー(一貫性)を持つこと、ゲームプランをしっかり遂行すること、相手に動き負けないこと。そういうことができないと強いチームはスコアしてくるものなので。そういうフォーカスで試合に臨んでいれば、ビッグゲームでチャンスを掴んだときに、違いを生み出せると思っています。そういう話をしていました。TJが言ったようにまだ2試合残ってるので。地平線ばかり見て歩いているとつまずいてしまいますから。
TJ・ペレナラ:メンタルプレッシャーは多少あったと思いますが、それはいいことだと思います。(プレーオフが決まるゲームだということは)チームとして大声で言わなくてもみんなわかっていること。自分たちが何ポイントリードしているかとか、権利を獲得するためにどうなればいいのかとか、そういうことはみんなわかっています。そのために高いレベルでプレーしようとしています。
メンタルプレッシャーの要素はあったと思います。それは誰でも感じられるプレッシャーではなく、特別なもの。自分たちのチームには、そういうポジションに今までなったことがないメンバーもいます。今日はまだプレーオフゲームではないんですけど、彼らが今日味わった感情は、プレーオフで感じるものに似ている部分もあるはず。プレーオフにに進出できたときに役立つ、いい経験だったと思います。質問の答えになっているといいのですが。
——獲れるチャンスで獲りきれなかったシーンがいくつかあった。根本的な要因はどこにあるか?
TJ・ペレナラ:ミスですね。僕がスクラムの後方でノックフォワードしてしまったり(後半20分)、(LO山本)秀もボールをはたかれてノックフォワードになった(前半23分)。(WTB西川)大輔がWTBマーク・テレアを押したという判定になったものもありました(前半20分)。自分たちがミスをしたということ。ただ、ミスは起きるものだと思います。それでも28点を獲れていますから、僕は勝てたはずだと考えます。ですので、さっきも話したように、ソフトな失点が多かったということに戻ってくるのかなと。
マットソンHC: 僕もそれ以上言うことはないかなと。TJも言っていましたが、ここ6試合ぐらいトヨタさんはすごくいいプレーを見せていますね。ここからトップ6に入ってきても驚きはないです。
——トヨタVのSHアーロン・スミスについて。最後の対戦になるかもしれない試合だったが、今日の対戦を振り返ってコメントを
TJ・ペレナラ:いい友達です。ラグビーを超えた関係で、人生や家族の話もしてきました。これが最後の対戦になるとは思いません。僕はまだ契約が残っていますし、彼のシチュエーションはわかりませんが、最近よいパフォーマンスを見せているので。とにかく、彼との全ての時間が大切なもの。僕をよりよい選手にしてくれたと思います。僕も何らかのかたちで彼にインパクトを与えられていたらいいなと。ラグビーの関係よりも、それ以外の関係のほうが確実に大きい、そんな存在です。
試合ハイライト
■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、選手インタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=459
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉、ブラックラムズ東京