【Review】第11節 vs.静岡ブルーレヴズ

2026.03.19

強靱なフィジカルで圧倒される時間を耐え抜き、逆転で4連勝

今シーズン3度目のバイウイーク(休止週)を挟み、リコーブラックラムズ東京(BR東京)は4つめのブロックへ。第11節は駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場に静岡ブルーレヴズ(静岡BR)を迎えた。

前節のゲームでアクシデントがあったPR谷口祐一郎が今季初めてメンバー外に。リザーブを務めていたPR西和磨がスタートに回り、PR中村公星がリザーブに。中村は昨季第10節の三菱重工相模原ダイナボアーズ戦以来約1年ぶりのメンバー入り。2試合欠場していたLO山本嶺二郎、CTB池田悠希らも復帰した。

ゲームは静岡BRが強靱なフィジカルで各局面でプレッシャーをかける。BR東京は前半2分にPGで先制したが、その後は主導権を渡す。6分に接点への強烈なプレッシャーからターンオーバーされ、そのまま走られてトライを許すと、20分にもエッジを破られ連続トライを奪われる。このトライはアタックを阻まれ、キックで打開を図るも強力なランナーのカウンターアタックに差し込まれ、エッジにスペースをつくられたことが起点になっており、静岡BRの狙い通りのかたちだったようにも映った。

時間が深まると状況が変わる。前半31分、CTB PJ・ラトゥがディフェンスをはねのけて中央を突破し、サポートしたFL松橋周平の2試合連続トライで反撃開始。34分にはFBアイザック・ルーカスのバックスペースへのキックでチャンスをつくると、ゴール前ラインアウトからのアタックでLO山本嶺が仕留め逆転。しかし、前半最終盤にHO大西将史にイエローカードが出るとトライを奪われ、20-21で前半を終える。

後半も3分にモールでの強力なプッシュとWTBセミ・ラドラドラの突破でつくったチャンスでトライを許し20-28。だが、ブレイクダウンの傾向を見抜いたPRパディー・ライアンによるスティールを狙っていこうという提案が流れを変える。

後半14分、SH TJ・ペレナラの低いタックルを受けた静岡BRのFB杉本海斗が前のめりに倒れたところに、PRライアンが手を差し込みノットリリースザボールを奪うと、ゴール前ラインアウトからモールでトライを奪い25-28。その後も接点で反則やミスを誘うプレーが続く。さらに試合を通じて優位を保ったキッキングゲームでも押し込んでいく。

静岡BRも後半28分、接点へのプレッシャーでターンオーバーしラインアウトを得ると、右サイドに斜めにランナーをなだれ込ませるアタックでトライ。25-33と再び点差が拡がる。

残り10分をきり8点差、2回のスコアが必要な状況となったがBR東京は冷静だった。後半33分、相手のダイレクトタッチで得た敵陣ラインアウトから、ワイドにボールを動かしつくったスペースをCTB池田が突き、エッジのLOジョシュ・グッドヒューのトライで30-33。

後半35分、静岡BRのWTBマロ・ツイタマの強烈なキャリーを、WTBメイン平が低いタックルで倒し、FL山本秀とNO8フィリックス・カラプが仕掛けまたも反則を奪う。SHペレナラが雄叫びを挙げ鼓舞する。

後半36分、敵陣ラインアウトを確保しSHペレナラがグラバーキック。ノックフォワードを誘いBR東京スクラムに。ここでFWが会心のヒット。コラプシングを奪う。

ゴールまで15mほどのラインアウトからモールを組みトライラインに迫ると、CTB池田らがフィジカルにディフェンスに挑んでいく。LO山本嶺の丸太でぶち抜くようなキャリーの直後、SHペレナラがピックゴー。ディフェンスを貫き逆転トライ。最後のリスタートキックを確保し、スタンドにカウントダウンの大歓声が拡がる中、ホーンを待ちキックアウト、ノーサイド。

80分間強いフィジカルを見せ続けた相手に苦しめられながらも、それを利用するかたちでスティールを連発して状況を打開し、37-33(前半20-21)で逆転勝利した。リーグワンでは初となる4連勝で通算成績は7勝4敗。総勝ち点を31とし5位をキープ。4位の東京サントリーサンゴリアスとの差は5、6位の東芝ブレイブルーパス東京との差は6となった。

プレーヤーオブザマッチはCTB PJ・ラトゥ。自身初の選出となった。応援アンバサダーの俳優・高橋光臣さんが選ぶ「俺のベストプレーヤー」はLOグッドヒュー、静岡BRからはSH北村となった。。また、前節でクラブ50キャップを達成していたWTBメインは、この試合で公式戦50キャップを達成した。

また、静岡BRのHO日野はこの日公式戦150キャップを達成。日本代表やサンウルブズで親交の深いFL松橋から花束を渡し、全員で偉業をお祝いした。

「インプレーのキープ」と「ジャッカルチャンス」

「ゲームの大半で、ブルーレヴズはブルーレヴズのゲームをしていた」(マットソンHC)

ボールを持たせれば、中央では激しく当たり、サイドではスペースにランナーをなだれ込ませ制圧した。こちらがボールを持っていても、激しくプレッシャーをかけられ、ゲイン以前にフェーズを重ねることすら難しかった。それは試合の入りで顕著だったが、脅威は80分間維持された。端的に静岡BRは素晴らしいラグビーをした。

そんなタフなゲームで、いかにして勝ち筋を見いだしたのか。SH TJ・ペレナラが挙げたポイントは2つ。1つはインプレーをキープすることだ。

「フィットネスには自信があったので、キックバックして相手のインプレーの状態をキープして、どれだけハードワークできるかっていうのを試すような感じでした」(SHペレナラ)

走らせれば即脅威をつくりだす相手だが、それでも走らせる。走らせ続けたときに生じるブレ。そこで活路を探った。肉を斬らせ骨を断とうとした。

もうひとつはディフェンスブレイクダウンでの対応だ。

「パディー(PRライアン)さんが、相手がコリジョン(衝突)に勝っていて、自分たちのディフェンスを越えるような感じで倒れてきていたので、それがジャッカル(スティール)チャンスだと気づいていました。それを聞いてより意識するようにしました。まずはいいチョップ(低いタックル)を決めて」(SHペレナラ)

ボールキャリアとタックラーが衝突したあと、タックルが勝ればボールキャリアは後ろに倒れる。キャリーの勢いが勝れば突破することが多いが、タックルがうまく入っていれば、ディフェンス側の芝生に前のめりに倒れることもある。静岡BRのキャリーは強烈だっただけに、BR東京側にめり込むようにして倒れていた。PRライアンはその倒れたところを狙うことを提案したのだという。

どちらかというと、BR東京はブレイクダウンではボール奪取よりも、その後のディフェンスに備え防御網を固めることを志向することが多かったようだが、この日はゲームの中でそれを調整した。

映像を確認すると、後半14分、22分、23分、25分、35分にブレイクダウンでのボール奪取に成功。14分のケースが非常にわかりやすく、SHペレナラが相手を自陣側に送り出すように倒し、待ち受けたPRライアンがスティールを決めていた。冷静な判断と確かなスキルが、逆転劇を引き寄せていた。

「選手はみんな自分を信じている。その選手が決めて動いたら周りがサポートする」(CTBラトゥ)

今回は活路を見いだしたが、プレッシャーを受けたブレイクダウンなどは、何かしらの修正が行われるだろう。ラインアウトもここ最近のレベルを考えるとやや精度を欠き、脅威を与えられるアタックの場面が増えなかった要因になっていたようにも映る。

課題も出たが、モールやモールディフェンス、ディフェンスにおけるコネクションの維持といった連携の精度では、相手を上回っていたように映った。

「完全に全員が同じページに乗れていない状態でも、いい結果に繋げられる時間帯もあったかなと思います。選手はみんな自分を信じている。その選手が決めて動いたら周りがサポートするかたちができている。上手くいかないときも、とにかくタフなキャリーを何回かしっかりやってプラットフォームをつくってBKがアタックするとか」(CTBラトゥ)

最初からビジョンの共有がなされたプレーだけではなく、自信を持って仕掛けた誰かのプレーにチームが追随し、徐々に連動していくようなプレーへの手応えをラトゥは語る。そんな自律性が磨かれてきたことは、多少苦しい展開になったゲームでも、最終的に勝ち筋を見出せていることと強く繋がっているのかもしれない。

次節12節からは今季対戦済みのチームとの2度目の対戦がスタートする。最初の再戦の相手は第7節で対戦した埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK/10勝1敗/2位)。熊谷スポーツ文化公園ラグビー場でビジターゲームとして開催され、キックオフは3月21日(土)14:30。

1ヵ月半前のゲーム(第7節)では、雪が降る中お互いのスキルが極端に制限される状況でのゲームではあったが、6-13(前半3-10)と接戦を演じた。現在トップ3に位置するチームとのゲームは当然タフな戦いとなるが、トップ3を追いかけるチームの中での差をつくり序列を上げていくチャンスで、勝ち点獲得は大きな意味を持つ。

SHペレナラは前回対戦時、埼玉WKに対しこんな印象を述べていた。

「彼らは同じことを何度も何度もやることをいとわない。システムを守るディシプリン、信じる力が根付いていて、それを長い間続けられる」

埼玉WKは前節、クボタスピアーズ船橋・東京ベイを相手に激闘を演じたが、80分経過のホーン後の同点トライは38フェーズを重ねて奪った。ペレナラの言葉はディフェンスを指したものだが、前節の勝利は埼玉WKの“同じことを何度も何度もやる”力の脅威をまざまざと見せつけるものだった。そんなチームにいかにして勝つか。ペレナラの答えはシンプルだ。

「自分たちがそういうチームを倒したいんだったら、それ以上に長く同じことをやらなければいけない」

一貫性、再現性。長く日本ラグビーをリードしてきたチームの最大の強みに挑むゲームとなる。

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

まずはこの結果を嬉しく思います。最初の20分、相手にフィジカルでドミネートされました。この試合は彼らにとって重要なものですし、スタートがすごく重要だと思っていました。ゲームの大半で、ブルーレヴズはブルーレヴズのゲームをしていたと思います。本当に危険なチームで抑えるのはすごく難しい。そんな相手との戦いで、カムバックする方法を見つけ出してくれたチームを本当に誇りに思います。また、お互いがどういう順位かといったことは関係なく、選手のプレーからはお互いに対してのコミットメントやネバーギブアップの精神がすごく見えてきました。そこも本当に誇りに思います。

SH TJ・ペレナラキャプテン

僕もヤマハ(ブルーレヴズ)さんは素晴らしいパフォーマンスをしていたと思います。前半だけでなく、試合を通して。相手のメンバーを見れば、どんなゲームプランで来るのかはある程度わかります。それを本当にうまく遂行されて。ラックへのプレッシャーはすごかったです。ジャッカルしてこなくても、ブラスト(ブレイクダウンをオーバーしてくる動き)のプレッシャーもすごくて。ディフェンスというのは1対1をしっかり決めないとうまくいかないんですけど、相手には6人から7人くらいタックルを決めるのが難しい相手がいました。彼らはすごくいいゲームを見せたんじゃないかなと思います。

あのタンバイ(マットソンHC)さんも言ったように、彼らもこの試合をターゲットにしていたと思います。自分たちもこのゲームの重さをしっかり理解していました。その中でしっかりファイトし続けて勝つ方法を見つけ出せた。勝ち点4だけではなく、スピリットや自信、そういったものをたくさん得られたゲームだったと思います。

質疑応答

——レッドゾーン(22m内)に入った回数は相手が多く、今日は少ないチャンスを活かした

マットソンHC:来週はパナソニック(埼玉WK)戦なので、コーチとしては次の試合のことを考えてしまうんですけど。レッドゾーンでのプレーはすごく大事です。ベストチームと戦うときにはたくさんはもらえないので。今日はうちのペナルティが少なかったにもかかわらず、たくさんチャンス与えてしまったと思うんですよね。22mの中でミスしたり、キックオフとか、エグジット(自陣脱出)がうまくできなくて。そこは月曜日からしっかりフォーカスしなきゃいけないところかなと思ってます。

相手の22mの中での、こちらの遂行力を評価しているかですよね。よくはなっているかな。ファーストラインアウトがミスになって、用意してきたオプションにいけなかった。そこについてはまだレベルアップできるところもある。やっぱり、いい相手には正しいオプションを使わないといけないなと思います。

——22mの中でのディフェンスでよく止めていた

TJ・ペレナラ:22mの中のディフェンスは、正直なところトレーニングのかたちとは少し違ったかもしれないですね。パディーさんが、相手がコリジョンに勝っていて、自分たちのディフェンスを越えるような感じで倒れてきていたので、それがジャッカル(スティール)チャンスだと気づいていました。それを聞いてより意識するようにしました。まずはいいチョップ(低いタックル)を決めて。

我々のディフェンスは、ボールに仕掛けるというよりは(次のアタックを)カバーしようとすることが多い。でも、今日はスティールのチャンスがあるとパディーさんが自信を持って言ってくれて。その情報とリーダーシップが助けになりました。

コーナーフォールドする(ブレイクダウンを回り込んで守りに備える)とか、拡がって相手がいるところにポジショニングすることよりも、相手のアタッカーがどこに倒れてくるかを見て、そこに入るチャンスをうかがったんです。すごくいいリーダーシップでした。

——最後のトライはスペースが見えていた?

TJ・ペレナラ:そっち(右側のブラインドサイド)に戻せっていうコールがあって。でも、当てたい人にパスをするコースがなかったので、自分でキャリーしようと思いました。

——7勝中6勝が逆転。ハーフタイムをどう過ごしているか

マットソンHC:ハーフタイムにロッカールーム入ったとき、コーチとして一番心配になるのが静かなときです。ロッカールームに入ったときにみんながしゃべっているときは、自分たちでトークして解決策をお互いにシェアしていると思うんですね。今季は選手たちは一回ロッカールームに集まって休んで、自分たちで改善できるポイントを話し合っていて、チャンスだったけど掴みきれなかったシーンを確認しあったりしています。ビハインドでハーフタイムに突入するのはあまり好きじゃないんですけど、今はそれがうまくいってるみたいですね。

もうひとつ、80分の戦いっていうところに、自信を持ち始めたかなとは思います。最後、ゲームが終わるときにリードをしていなきゃいけないわけですが、以前はビハインドだったときにちょっと、「あー」っていう雰囲気もあったかもしれないんですけど、今はそういうことが全くありません。

——リードされているとき、どんなことを声がけをしているのか

TJ・ペレナラ:ゲームによって違います。このゲームは相手のFWパックがすごくよくて。過去の試合であれば、もう少しスクラムに頼ったり、レフリーのディシジョンプレッシャー(反則を誘うようなプレーを通じた圧力)、疲れとかを生かして戦ってきたんですけど、今日はボールをインプレーにすることを自信を持ってできました。相手が大きくて、フィジカルで。終盤にかかっても8点ビハインドだったと思うんですけど、ボールをできるだけ動かし続けよう、インプレーにしようっていう話をしていました。残り6分か5分くらいのところでもトライを獲って。多くのチームはキックアウトすると思うんですけど(後半32分のトライ後、リスタートキックから自陣脱出を図る際にタッチに出さなかった場面を指しているとみられる)。フィットネスには自信があったので、キックバックして相手のインプレーの状態をキープして、どれだけハードワークできるかっていうのを試すような感じでした。まあ、試合によって違います。今日に関しては、1週間の準備が必要な答えを導き出すに足るものだったのではないかと思います。

——ペナルティの数が少ないから逆転できているというのもある

マットソンHC:オンサイド(オフサイドしないこと)はかなりプライドを持って取り組んでいて、ブレイクダウンは結構レフリングしやすいと思います。あとはセットピースもかなり安定しています。この3つが基本です。リザーブが入ってくるとさらに変わってくる。あとは前にも言ったかもしれないですけど、経験ある選手がベンチにいる。今日であればCTB池田(悠希)だったり、PRパディー(・ライアン)だったり。そういう選手がリザーブにいると、(終盤の)ペナルティに大きく影響するのかなと思います。

 

 

試合ハイライト

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=443

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

PAGE TOP