【Review】第7節 vs. 埼玉パナソニックワイルドナイツ

2026.02.11

今季初の世田谷・駒沢での開催。雪降る中の矛と盾の対決

NTTジャパンラグビー リーグワンは休止週を挟み第7節へ。第6節を終え8位(3勝3敗)のリコーブラックラムズ東京(BR東京)は、東京・世田谷の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でのホストゲームに6勝無敗の首位・埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)を迎えた。世田谷での開催は今季初。待望のホームでのゲームだったが、低気温、そして雪が降り続けるあいにくのコンディションに見舞われた。

凍えるような寒さがハンドリングを難しくしていることが伝わってくる試合となったが、両チームとも集中力を切らすことなくぶつかりあいタイトなゲームに。BR東京は埼玉WKの強固なディフェンスに激しくチャレンジしゴールに迫るシーンを何度もつくる一方、ディフェンスでも規律を保ち、トライはラインアウトモールからの1つに抑えた。しかし、最後までトライを奪うことができず、6-13(前半3-10)で敗れた。

通算成績は3勝4敗となったが、7点差以内の敗戦で得られるボーナスポイントを確保し勝ち点は13に。順位を7位へと1つ上げた。プレーオフ圏内の6位・静岡ブルーレヴズとの勝ち点差は2。

スターティングメンバーにはLOジョシュ・グッドヒューとWTB高本とむが復帰。リザーブにはNO8松橋周平と第5節のコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)戦で好プレーを連発したUTB秋濱悠太が名を連ねるなどの変更が行われた。

BR東京はキックオフ直後に猛攻。果敢なカウンターアタックから両エッジを破りゴール前まで前進。PKも得ながら、約4分にわたり埼玉WK陣内で攻めた。しかし我慢強く守る埼玉WKは、こぼれ球を確保するとキックを放ちBR東京陣内へ。さらにラインアウトの反則を突いて深く攻め込むと、わずかにずらして押し込む巧みなモールでトライ(前半5分)。CVも決めて0-7とした。

BR東京がエネルギッシュに攻め、埼玉WKが守りからの逆襲を狙う図式を軸に試合が進む。BR東京はアタックからのターンオーバーでWTBマリカ・コロインベテにブレイクを許したが、CTB池田悠希、WTB西川大輔、FLマクカランブロディらが追い、パスを繋いだLOジャック・コーネルセンを倒しスティールを決めるビッグプレー(前半10分)で極寒の中で声援を送り続けるスタンドを沸かせる。だが自陣浅めの位置で反則を犯すと、約40mのPGを決められ0-10に(前半15分)。

BR東京は攻め続けながらも決定機をつくれずにいたが、前半29分にFBアイザック・ルーカスのカウンターアタックからダイレクトに攻め、力で押し込んでいく。ゴールまで1mの位置でスティールを許したが、その前に埼玉WKにノットロールアウェイがあったためPGを選択。これを成功させ3-10に。

埼玉WKの「システムを守るディシプリン」の壁

激しいプレーと雪の影響でボールが乱れ、互いを行き来する。スコアが生まれないまま試合が進み後半へ。11分、BR東京は敵陣ラインアウトを確保し、CTB池田悠希の強烈なキャリーで前進。ゴールに迫ると埼玉WKにノットロールアウェイ。ここでもPGを成功させ、BR東京は6-10と迫った。

BR東京は、埼玉WKの巧みにスペースを突くキックへの冷静な対応、そして危険な位置のラインアウトでスティールを繰り返し加点を阻んでいく。

しかし29分、自陣でラインアウトを奪った後のブレイクダウンでノットリリースザボール。ほぼ正面からPGを決められ、6-13と点差を拡げられた。ラスト10分はハーフウェイ付近で埼玉WKの固いディフェンスをなんとかこじあけようとフェーズを重ねたが、隙を見いだせなかった。

「彼らは同じことを何度も何度もやることをいとわない。システムを守るディシプリン、信じる力が根づいていて、それを長い間続けられる」

「そういうチームを倒すには、それ以上に長く(同じことを)やらなければいけない」

SH TJ・ペレナラの試合後の言葉。天候の影響もありラインアウトやハンドリングではリズムを乱す場面もあったが、試合の締めで“らしさ”を発揮した埼玉WKに逃げ切りを許しノーサイド。

13点というのは、2022年のリーグワン創設後、埼玉WKの最少スコア。結果の主因が天候にあるのは間違いないが、BR東京が果敢なアタックを長い時間仕掛け、またディフェンスに回った際にしっかりとエフォートし続けたことも影響しているのは間違いない。今季かさむことが多かった失点をコントロールできたという誇らしさと、強者を倒す大きなチャンスを逃したという悔しさ。双方が入り混じるゲームとなった。

敗れたが、開けた視界

雪と低い気温。それは、いつも通りの力が出しにくい環境である一方、自らの深くに備わっているものや、信念の強さが表れる環境だったようにも映った。試合開始直後、風に舞う雪の向こうでいつもと全く変わらないアグレッシブな動きを見せつけたのがSH TJ・ペレナラだ。テンポよくボールを動かし果敢に攻める。ボールが滑ることへの恐れなど一切感じさせず、いつも通りチームの強みをぶつけにいく。

メンバーもそれに応え、ピッチ上に誰の目にも明らかなモメンタムが生まれた。右サイドをWTB西川大輔とCTB池田悠希が、左サイドをWTB高本とむが鋭く突き、いきなりゴールに迫る。改めてこのチームのアイデンティティはアタックにあり、それでこのリーグの制覇に挑んでいるのだという決意を感じさせる、電光石火の攻勢だった。

それでも、80分をかけてもトライラインの向こうにボールを運ぶことはできなかった。守りをアイデンティティとする埼玉WKの盾は強固で、特に最終盤に堅さを増したように見えた。だが前述の通り、SHペレナラが試合後に発したのは、このまま進むべきだというメッセージである。

「自分たちはもっと我慢強く、彼らと同じくらい自分たちのシステムを信じてやっていく必要があります」

このリーグの首位に立つチームと戦い、この道は正しいという結論を得られた意味は大きい。やりきることさえできれば、どんなチームにも勝利できる選手と戦術が、今のブラックラムズには存在する。敗れはしたが、確実に視界は開けた。

もうひとつ、記しておきたい具体的な収穫は、アタックにおいてターンオーバーを許した局面のディフェンスへの遷移だろうか。これはブラックラムズにおいては開幕前から表出していた課題だった。アタッキングラグビーについて回る逆襲によるスコア。埼玉WKはそれを得点源とする代表的なチームでもあったが、この日は本当によく対応した。

前半11分、相手のWTBマリカ・コロインベテがパスのエラーを突いてブレイクした場面。最初に追ったCTB池田悠希のタックルをあえて待ち、オフロードパスで無力化してサポートのLOジャック・コーネルセンに繋ごうとしたようにも見えたが、さらに3人が素早く戻りコーネルセンをも倒しボールを奪った。フィットネスに抜群の自信を見せるFLマクカランブロディと、攻守でフィールドを駆け巡ることが職責となる西川大輔と高本とむの両WTBのバッキングアップ。1人でも欠けていれば、間違いなく2つめのトライが生まれていた。

「神戸S戦ではああいったターンオーバーが失点に繋がっていました。チームが正しい方向に一歩前進できたことは誇りに思います。それができた理由の多くはエフォート(努力や執念)です。(相手を止めるには)タックルをしなきゃいけないしジャッカルもしなきゃいけない。でも、まずはそれをするポジションに入らないとできない。そこに入るためのエフォートがすごく大事なんです。みんなが見せてくれた戻ってポジションに入ろうとするエフォートには、学ぶべき点がありました」(SH TJ・ペレナラ)

“ポジションに入ろうとするエフォート”は、ほかにも数多く見られた。WTB竹山晃暉のカウンターアタックにリアクションしたSO中楠一期が見せたアンクルタップ(前半12分)。同じく竹山の突破に対し、逆サイドからカバーに走ったWTB髙本とむのディフェンス(前半39分)。裏に抜け出したLOコーネルセンのドリブルに対応したSO伊藤耕太郎のセーブ(後半27分)などだ。

埼玉WKを13点に抑えることができた要因は天候、アタックの継続力、キックによるエリア管理の成功、ラインアウトディフェンス、スクラムでのアドバンテージなど多岐にわたる。だが、シンプルに相手のランナーを必死に止めにいこうとする個々の姿勢も、賞賛されるべきものだった。

またこの日は、今シーズン応援アンバサダーに就任した、俳優・高橋光臣さんが来場。プレイヤー・オブ・ザ・マッチの表彰後に「アンバサダーが選ぶプレイヤー」として、埼玉WKのSO山沢拓也(POTMも受賞)、BR東京はNO.8ワカヴァカが選出された。

次節はカルチャーを背負い戦う「事務機ダービー」

次節第8節は2月14日(土)12時より、横浜キヤノンイーグルス(横浜E/10位)と東京・秩父宮ラグビー場で対戦する。リーグワンは第6節よりカンファレンスをまたいで対戦する交流戦に入っているが、第8節からの4試合(vs.横浜E、vs.浦安DR、vs.BL東京、vs.静岡BR)は、今季1度しか対戦がない相手とのゲームとなっている。1試合の結果がそのまま両チームの勝ち点差に反映されるため、最終順位で近いポジションになりそうな相手に対しては、勝利が大きな意味を持つ。

横浜Eとは昨季、2025年3月に対戦し27-20(前半10-3)で勝利。両チームでレッドを含む3枚のカードのほか、脳しんとうのチェックもあり選手の出入りの激しいゲームとなったが、セットプレーでのプレッシャーなどを活かし勝ちきった。11月にはプレシーズンマッチが組まれ互いに主力が出場。このときもスクラムでよく押し、36-33(前半10-7)で制した。

保有企業の事業分野の重複から「事務機ダービー」としてラグビーファンに認知される今カード。互いに背負うものがある一戦は、過去の対戦成績や今シーズンの戦績だけでは予測がつかないゲームになるものだ。前節で今季初勝利を挙げ勢いに乗る横浜Eを相手に受けに回ることなく、全力で攻め、守るラグビーで果敢にチャレンジし、勝利を掴みたい。

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

チャンスを掴みきれなかったかなっていう感覚です。 もちろん最初に感じたのは、悔しい思いです。過去に20回戦い、1回しか勝っていない相手だと思いますが、今日は勝つチャンスがあったと思います。最後までしっかりとファイトし続けたチームのことを誇りに思います。この試合は自分たちが埼玉WKというチームを相手にどれだけやれるか、テストの機会にしたいと思っていました。チームとしてしっかりチャンスをつくることはできていました。でも、あちらもいいチームなので、そこから、ただで何かもらえるということはなかったですね。ただ、今回得たボーナスポイントは今シーズンの結果に繋がる大きなものになると思います。

SH TJ・ペレナラキャプテン

彼らは本当にいいチームです。何年も日本のラグビーを先頭にたちリードしてきたチームだと思います。 今日はチャンスがありましたが、それを掴みきれなかった。それはとても残念に思います。

ただ、この試合から得られたポジティブな部分もたくさんあります。先ほどタンバイとも話していたんですが、自分たちは数週間前、神戸(コベルコ神戸スティーラーズ/神戸S)に大差で負けました。あのゲームがチームの自信に影響を及ぼした可能性はある。でも自分たちは、あのパフォーマンスは自分たちの本来の姿ではないと考えてやってきました。パナソニック(埼玉WK)という強い相手にしっかりと挑めたこと、また勝つことができなかったという悔しさ、それはチームにとっての糧になる。

ヘッドコーチも言ったように、数は少なかったものの、相手は自分たちにチャンスを与えてくれたかなと思います。 でも彼らを崩すのは難しいと思いました。精度を高いレベルで維持し続けないと崩せない。より長い時間ファイトを続け、正確にプレーすることの大切さを学びましたね。こういうゲームに一貫して勝ち続けられるようになるには、それが必要なのかなと思っています。

質疑応答

——精度が出せなかった理由は

TJ・ペレナラ:理由はいくつかあると思うんですけど。疲労だったり、天気だったり、(アタックラインの)深さや幅、相手のディフェンスのプレッシャーなどたくさんあると思います。明らかなのは雪でしたね。ボールが結構濡れていて。ただ、天気は変えられないものですが、自分たちのセットアップを変えることはできる。どのくらいの深さや幅で、どこにアタックするか。そういうところの対応が少し足りなかったのかなと。すぐに思い浮かぶのはそういうところです。やはり雪が降れば降るほど寒くなって、スキル(の維持)はかなり難しくなりました。相手がどのように話していたかはわからないのですが、彼らも同じように、スキルにかなりプレッシャーがかかったと感じたんじゃないかと思っています。言い訳はしたくないですが、80分間雪が降って、濡れている中でボールをパスする、キャッチするというのは難しいことだと思います。そこにアジャストしていかないといけなかったですね。

——このような天候もあり、ターンオーバーされる場面は何度かあったが、それをトライに繋げさせなかった。そうしたトライを重ねられた神戸S戦から改善が進んでいると考えてよいか

TJ・ペレナラ:月曜日のディフェンスレビューでそこはポイントになってくるのかな。何回かターンオーバーされてしまって、プレッシャーもかけられたんですけど。すぐ戻って失点を防ぐことができました。イケ(CTB池田悠希)がチェイスして、(WTB西川)大輔がジャッカルして、ペナルティをもらったシーンがあったと思うんですが(前半11分)、神戸S戦ではああいったターンオーバーが失点に繋がっていました。チームが正しい方向に一歩前進できたことは誇りに思います。それができた理由の多くはエフォート(努力や執念)です。(相手を止めるには)タックルをしなきゃいけないしジャッカルもしなきゃいけない。でも、まずはそれをするポジションに入らないとできない。そこに入るためのエフォートがすごく大事なんです。みんなが見せてくれた戻ってポジションに入ろうとするエフォートには、学ぶべき点がありました。

——埼玉WKのディフェンスの強さはどこにあったか

TJ・ペレナラ:シンプルにディシプリン(規律)のよさにあるのかなと思います。ペナルティカウントがどうだったかわからないですけど、そんなに多くなかったと思います。ディフェンスでのペナルティも、そんなになかった。ハイタックルがあったぐらいですよね。彼らは同じことを何度も何度もやることをいとわない。システムを守るディシプリン、信じる力が根づいていて、それを長い間続けられる。

それはプレビューしていましたしわかってました。彼らのディフェンスがいいことは。自分たちがそういうチームを倒したいんだったら、それ以上に長く(同じことを)やらなければいけない。最初のポゼッションでそういう部分も見せられたとは思うんですけど。相手の22m内でプレッシャーをかけることができて、相手も崩れる寸前までいっていた。あと一歩だったと思います。自分たちはもっと我慢強く、彼らと同じくらい自分たちのシステムを信じてやっていく必要があります。

まあ、それが難しいんですけどね。攻撃側でボールを持って攻めていても、全然前に進んでないなとか、ディフェンスに首を絞められてるような感覚になることがあると思うんです。そうすると、無理やり何かをつくりだそうとしてしまう。

でも、相手にもっとタックルをさせることや、規律を守り続けさせることでかかってくるプレッシャーというものもある。22m内であればディフェンスはより厳しくチェックされるものなので、そういう場所でラックをつくらせ続けることは、大きなプレッシャーになる。すぐにスコアできなかったとしても、そうしたプレッシャーをビルドしていけば、試合の後半に効いてくる。疲労やレフリングへの影響として。そういうことも頭に入れて、自分たちは我慢強くアタックを継続する必要がある。

試合ハイライト

 

■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、フィリックス・カラプ選手、中楠一期選手、伊藤耕太郎選手、池田悠希選手のインタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=439

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

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