【Review】第6節 vs. 三菱重工相模原ダイナボアーズ
2026.01.28
HO李が初のメンバー入り。FLギルは日本での公式戦50キャップを達成
NTTジャパンラグビーリーグワンは第6節へ。8位のリコーブラックラムズ東京(BR東京)は、9位の三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)と神奈川・相模原ギオンスタジアムでのビジターゲームに挑んだ。前半に3トライを許し追いかける展開となったが、後半を粘り強く戦い逆転。7本のプレースキック全てを決めたSO中楠一期のホーン後のPGで点差を9とし、順位を争う相模原DBのボーナスポイント獲得を阻み、今季3勝目を挙げた。通算成績は3勝3敗で総勝ち点は12。順位は8位をキープ。プレーオフ圏内の6位・静岡ブルーレヴズとの勝ち点差は3となっている。
タンバイ・マットソンヘッドコーチは相模原DBに対し、「ダイナボアーズ(ダイナミック〈活動的な〉とボアー〈猪〉の造語)という名前のイメージに近いね。ダイレクトでシンプルなラグビーで強みを見せるチーム」と印象を語り、準備を進めた。選手たちは前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦での厳しい敗戦からの修正が求められる1週間となったが、ウォーミングアップなどからこれまで以上に大きな声が飛び交い、明るさを感じさせるトレーニングを行っていた。
スターティングメンバーには、前節のゲームで負傷したHO大内真に替わり大西将史が今季初先発。リザーブのHOには李淳弘が名を連ね、こちらは初のメンバー入り。LOはマイケル・アラダイスが開幕戦以来の先発。FL(6番)には日本国籍を取得したマクカランブロディが今季初先発。前節、試合直前で入替となったCTBラズロー・ソードも復帰を果たした。またFLリアム・ギルは、トップリーグとリーグワンの合計で50キャップに到達。メモリアルな一戦となった。
FBルーカスが華麗なランでトライ演出。SO中楠はキックで18得点。またも逆転で今季3勝目
前半はBR東京がPGで先制(前半6分)。しかし、敵陣ラインアウトからのアタックでミスが出て、一気にトライを奪われ逆転されると(前半14分)、WTBメイン平のタックルでのアクシデントが絡んだプレーで突破を許すやや不運なトライで追加点を奪われ、3-12と点差を拡げられた(前半22分)。
前節の大きな課題だったターンオーバーボールをトライに繋げられる歯がゆい立ち上がりとなったが、もうひとつの課題といえるハイボールバトルでは好プレーが続いた。メインに替わりピッチに立っていたWTB伊藤耕太郎、また前節から奮闘を見せるWTB西川大輔らが果敢にキャッチに挑みチャンスをつくっていくと前半28分、FBアイザック・ルーカスが華麗なランでブレイク。22mラインを越えると、このチャンスをFLマクカランが仕留め、1トライを返し10-12とする。
しかし、規律の乱れから自陣侵入を許すと、FWのダイレクトプレーから展開されトライを許し12-19。PGで3点を返したものの、終了直前にPR笹川大五にイエローカードが出てしまい、ビハインドと数の不利を背負って前半を終える。
だが、BR東京は1人少ない10分間を今節もうまく戦った。逆にPG1本を返し(後半7分)、16-19と点差を縮める。一時退出を終えた後半14分には、一貫性のあるプレーを継続するLO山本嶺二郎が敵陣ゴール前で価値あるキックチャージ。ここから攻め、入替直後のPR西和磨が力でディフェンスをねじ伏せてトライ。大きなトライで23-19と逆転に成功。
相模原DBの規律が乱れ2枚のイエローカードが出ると後半23分、ゴール前スクラムをプッシュし、NO8サミュエラ・ワカヴァカが持ち出しトライ。30-19とした。それでも闘志を失わない相模原DBは13人でアグレッシブに挑み、ハイボールの再獲得からチャンスメイク。後半27分にトライを返され、30-24と詰め寄られる。
1トライ1ゴールでひっくり返る6点差のまま試合は終盤へ入ったが、リーグワンデビュー戦となったHO李らリザーブメンバー、そしてブレイクダウンで圧倒的な存在感を見せるFLギルの奮闘でスコアを阻む。
「低い姿勢で相手を止めたい。大学からリーグワンにやってきて、入りたての頃はフィジカルに差を感じてきたけれど、スキルの大切さを知り、それを実行すればうまくタックルできるとわかった。スキルと気持ちが大事だなと」(HO李)
試合前にそんな思いを語っていた李は最終盤、相手主将・FL吉田杏に低いタックルを決め転倒を誘う。そこにFLギルの手が伸びスティール成功。ホイッスルが響くと、李は控えめに跳ね喜んだ。このプレーで得たPKを、SO中楠が3点に変えノーサイド。
苦しい前半を乗り越えたBR東京が、必死に試合の流れをたぐり寄せ、接戦をものにした。プレイヤーオブザマッチにはFBアイザック・ルーカスが選出された。
「試合がシンプルになってくると、脅威になれる選手にいいプレーをさせる決断が下せている」(FLリアム・ギル)
今節も後半を制しての勝利。試合の半ば以降にうまく回り出すことが多い理由はどこにあるのか。
「互いに消耗してきて、試合がシンプルになってくると、脅威になれる選手にいいプレーをさせる決断が下せていると思う。それをちゃんと1試合を通してコントロールする方法を見つけていかなきゃいけない」(FLギル)
試合において、状況ごとに効果を生む戦い方は異なる。それに合わせ前面に出す強みを変えていくことが求められるものだが、FLギルは、後半にはそれができており、いいディシジョンを下せていると見ている。
「(前半に)相手が見せてくれた絵に対して、自分たちはどこで攻撃したらダメージを与えられるかっていうのが拾えているのかなと」(SHペレナラ)
SHペレナラも近い見方だ。そして、前半に行ったサーチを、後半に活かす術をさずけてくれるコーチ陣への感謝も述べる。
「ポイントする力は今までよりついてきているかなと思ってます。チームでもそれを信じて、ボールを持って自分たちのアタックをしようとしている。正しいエリアで、というのは必ず入ってくるけれども、そういうところをチームで共有して、信じられていると思ってます」(SO中楠)
中楠は自分たちのアタックする力を信じ、ボールを持って攻めようとするマインドの浸透にカギがあると考えているようだった。日本代表に参加した経験はもとより、チームが目指すラグビーへのフィットも、漂わせる自信の背景にある。そんなゲームドライバーの自信は、チーム全体に好影響を与えているようにも映る。
一方で、逆転勝利には「リードを許す」という前提条件の達成が必要となる。今節も前半に3つのトライを奪われた。1本目は、前節を思い出させるような敵陣ラインアウトでのボールロストを一気にトライに繋げられたもので、改めて修正が求められるものだった。
「ラインアウトを前で捕ったプレーみたいなもの。ああいう単純な判断。ゲームコントロール。もう少し冷静にできるようにしていければ」(FLギル)
FLギルはラインアウトを前方で合わせる判断などを検証したいと話す。選手の実行上のミスも課題に挙げつつも、ゲームディシジョンの修正でも、苦しいことになることが多い前半を変えていけるとみている。
マットソンHCは、ラインアウトの成功率をポイントに挙げ、そこに打開策があると語る。そしてその修正に自信を見せた。
「絶対にできる。ブロック1(第1〜3節)、ブロック2(第4〜6節)と試合を重ねてきて、成長のタイミングに入ってきている」
これは昨季の経験からの手応えなのかもしれない。昨季もラインアウトの改善はチーム状況の改善とリンクしていた。FWがコミュニケーションを重ね、HO大内真の台頭などもあってラインアウトが安定していくと、効果的なアタックは増えていった。スクラムに加え、ラインアウトという武器を手にしたとき、チームは次のステップに進めるのかもしれない。
レギュラーシーズンは全18試合のうちの6試合、1/3が終了。1週間の休止週を挟み、第7節は無敗で首位を走る埼玉WKと対戦。2月7日(土)13時から東京・世田谷の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でホストゲームとして開催される。
昨季は埼玉WKとは2度戦い、1月(第3節)は16-39(前半9-17)、4月(第16節)の21-27(前半7-17)と未勝利ながら、第16節は後半40分まで3点差と接戦を演じた。強者である埼玉WKに誰一人臆せず、強気に80分間を戦い抜き、逆転でのプレーオフに望みを繋ぐ勝ち点をもぎとった。SOとして先発した伊藤耕太郎がステップでディフェンスを翻弄して奪ったトライ、SH TJ・ペレナラのFWかのようなゴール前の強烈なキャリーで奪った2つのトライは、強く記憶に刻まれるものだった。
新体制のもとでさらに強みを磨いている埼玉WKに対し、前述の通り、マットソンHCはラインアウトの精度をポイントに挙げている。ラインアウトから効果的なアタックをし続けることは、相手の得意とするターンオーバーの機会を潰していくことでもある。矛と盾のぶつかり合いを制し、中盤戦に勢いをもたらす勝利を期待だ。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
まずは、結果が自分たちにとって大事だったので、ここで勝利を収められたのは本当にハッピーです。本当にタフな勝利でした。前半は相手の方が上回っていましたし、後半もレスリングのような揉み合うような感じになりましたが、イエローカードやペナルティで自分たちに生まれたチャンスを選手たちがしっかり活かしてくれたかなと。80分間、最後まで戦い続けてくれたことも大きかったと思います。セカンドブロックの最後の試合(2度目の休止週の前の試合)の勝利は、(プレーオフ出場という)自分たちの目標に向かっていくために、本当に大事なものでした。
あとは若いスノン(HO李淳弘)がファーストゲーム。新人選手が出るにはタフな試合で、コンディションもタフだったと思うのですが、よかったのではないかと思います。あとは私たちの10番、一期(SO中楠一期)も完璧なキックスコアをしてくれて、最終的なスコアに差をもたらしました。大事な役割を果たしてくれました。
SH TJ・ペレナラキャプテン
この結果を本当に嬉しく思います。全てがプラン通りかと言ったらそうではなく、イメージしていたかたちとは違う勝ち方でしたが、ラグビーはそういうこともあるので。ゲームプランは自分たちの思っていたレベルで実行しきれなかったんですが、それでも勝つ方法を見出せたことはよかったと思います。HO李がファーストゲームできたっていうのもよかったですね。残り10分くらいで出場したんですかね?(「15分だね」とマットソンHC)6点差で、手強いラインアウトをしてくる相手。よくやってくれたと思います。そのエフォートも称えたいなと。
タブス(マットソンHC)からもありましたが、順位表、自分たちが目指すシーズンの目標を考えたときにも、すごく大事な勝利だったと思います。こういうタフなゲームを勝ち切れるかどうかというのはすごく大事。目標を達成できるかどうかの差になってくると思うので。また、ポイントとなる部分をレビューしたりして、あとは数日間休んで、ブロック3に向けて準備していきたいと思います。
質疑応答
——これで3勝目だが、どの試合も後半に逆転して勝っている。後半に逆転できている要因は
TJ・ペレナラ:後半に巻き返せたゲームは、相手が見せてくれた絵に対して、自分たちはどこで攻撃したらダメージを与えられるかっていうのが拾えているのかなと。他の試合でも伝えてきたんですが、コーチからのいい指摘やいいメッセージは大きいです。相手のディフェンスやアタックのかたちについてのアドバイスだったり、それに対してどう実行すべきかを伝えてもらえると、選手としても自信を持ってプレーできるので。もちろん選手がシステムを信じてハードワークをしてひっくり返してきたんですけど、コーチングに助けられた部分も大きいと思ってます。
——劣勢のときにどんな声をかけているか
TJ・ペレナラ:どういう状況かにもよりますけど、他にもいるリーダーたちが声を挙げてくれます。今日も後半に少しプレッシャーを感じているときに、PRのパディー(・ライアン)が「押せるから、スクラムでいかせてくれ」とリーダーシップを見せてくれました。ほかにも、僕が少し追い風を意識して「ロングキックを使っていこうか」と思っていたときに(SO中楠)一期が「空中戦は勝てているから」と意見してくれて、それを採用してコンテストキックを蹴り、少しプレッシャーをかけることができた場面もありました。最後の意思決定はキャプテンの僕がするんですが、そうやって助けてくれるリーダーたちがいるんです。
——ゲームプランとパフォーマンスの間で最も大きなズレはどこにあると考えているのか
マットソンHC:明らかなのは、ラインアウトのエクスキューション(実行)でしょうね。結構、リハーサルもしてるので、ラインアウトからのプレーは。ラインアウトがうまくいくかどうかの要因はいろいろとあると思うんですけど、今はそこまでうまくいってない。そこが一番大きいですかね。ラインアウトからいいアタックが仕掛けられていない。
ただ、ボールを持ったときには、マルチフェーズとか他のアタックソースから相手にプレッシャーをかけられてると思います。今日もボールをワイドに動かそうとしてミスが出た場面はあったんですけど、ヘッドコーチとしてはそういう姿勢はポジティブなものだと思っています。重要なのはコネクションやタイミングをよりよくすること。そういった練習を今後もやっていきたい。
ラインアウトは次の対戦相手、パナソニック(埼玉パナソニックワイルドナイツ/埼玉WK)に対しても重要なポイントになってくると思います。成功率を85%から90%にしたい。数少ないチャンスになってくると思いますが、そこでコネクトしていかなきゃいけない。でも、それは絶対にできる。ブロック1、ブロック2と試合を重ねてきて、成長のタイミングに入ってきていると思います。
——ラインアウトからのアタックが安定したものになれば、得点がもう少し取れるはずだというイメージか
マットソンHC:スコアすることもそうですが、ハーフタイムのときにビハインドになっているのは、アタックをしている場面でターンオーバーされてスコアされてしまうケースが多いから。自分たちのアタックがもっと効果的で効率のよいものになれば、チャンスを相手に渡すことが減り、チャンスでスコアにする力も上がる。トライや得点は増えると思っています。
——イエローカードで1人少ない状況で後半に入り、入りのところで先にスコアできたのは非常に大きかった。どういう意思統一をして臨んだか
TJ・ペレナラ:あまり言いたくないですけど、13人だったり14人だったりっていう状況でプレーすることが今まであったので。もちろん今後は続けたくはないんですが、答えは持ってるのかなと。誰かが一時退出になったとき、BKは余った選手がエッジからエッジにがちゃんと移動して人数を増やす。ラック後のFWも、通常よりも多めに動かないといけない。カバーしなきゃいけない仕事が増えることは、みんなが理解していると思います。時間を進める意識なども当然ありますが、インプレーのときは、みんなそういったことを注意してプレーしていると思います。
試合ハイライト
■公式ファンクラブ『RAMOVE』限定コンテンツとして、リアム・ギル選手、中楠一期選手、PJ・ラトゥ選手のインタビューを公開しています。マイページよりログインいただきご覧ください。
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=438
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉