【Review】第3節 vs.三重ホンダヒート
2025.12.31
ラスト10分、ゴール前で全員が身体を張る一体感あるDF。4点差を守りきる
リーグワンは早くも第3節へ。今節はリコーブラックラムズ東京(BR東京)の保有企業である株式会社リコーの創業者・市村清氏の生誕の地であるという縁から、佐賀県鳥栖市・駅前不動産スタジアムに三重ホンダヒート(三重H)を迎えてのホストゲームとして開催された。昨季は開幕戦と最終戦で戦い1勝1敗。開幕戦ではラストワンプレーで逆転を許す忘れがたい敗戦を喫した相手とのゲームは今回も接戦となったが、終盤の粘り強いディフェンスで三重Hの猛攻を跳ね返し続けたBR東京が32-28(前半7-14)で勝利した。
試合当日、攻守の要といっていい働きを見せてきたNO8リアム・ギルの欠場が決定。代わってNO8サミュエラ・ワカヴァカが今季初先発を果たした。昨季はPRに挑戦しており、NO8としての先発は2023-24シーズンの5月以来となった。
BR東京は前半4分、CTB PJ・ラトゥにイエローカードが出て14人となったが、うまく対応し失点を許さず、逆にNO8ワカヴァカのスティールなどを端緒に攻め、この時間帯(前半10分)にPR西和磨がトライを奪い先制する。しかしその後はチャンスは迎えるもののスコアにできず、もどかしい時間が続く。するとハーフウェイ付近のペナルティでピンチを招くと、キックカウンターからモメンタムをつくられる。前半21分にFLフランコ・モスタートのトライで同点に。
チャンスは迎えながらもトライが遠い状況は続き、前半終了が迫る。しかし三重Hは、自陣スクラムからNO8アセリ・マシヴォウがボールを真横に持ちだし、左側に数的優位をつくると大外のWTB山下楽平に長いパスを通し左サイドをえぐる。内へのキックを手中に収めたCTB岡野喬吾にトライを許し、7-14とされて試合を折り返す。
後半はBK陣の積極的なランで状況を打開していく。2分、FBアイザック・ルーカスが自陣からキックカウンター。ディフェンスの目前でステップを刻み、縫うように走り突破。カバーに回ったSH土永雷のタックルで転倒したが、タックラーが立ち退く時間を与えずサポートが入り反則を奪う。約40mのPGを決めて10-14とする。
さらに後半5分には、SO中楠一期が自陣から仕掛けると、わずかにできたギャップを再びFBルーカスが突いてブレイク。NO8ワカヴァカ、CTB池田悠希と繋ぎトライを奪い17-14と逆転する。
試合はめまぐるしく動く。後半7分、再開のキックにプレッシャーをかけた三重Hがペナルティを獲ると、ラインアウトモールでトライを返し再逆転。BR東京も10分にモールでトライを奪い返し22-21となる。BR東京は15分にも規律の乱れを突いてPGを決め25-21とした。さらに21分にも敵陣で得たFKをタップスタートしアタック。SO中楠の強いキャリーとオフロードパスからWTBメイン平のトライが生まれ、32-21とする。3連続ポイントで11点差としたが、三重Hは3分後の24分にまたもラインアウトモールでトライを奪い、32-28と詰め寄る。
試合は第1節、第2節と守勢に回った課題の後半の最終盤へ。BR東京はペナルティが重なり、今節も自陣に押し込まれる苦しい展開に。だが、リザーブメンバーを加えた15人の選手たちが集中力を維持した激しいディフェンスで、攻める三重Hにプレッシャーをかけ続け、守りきる。終了直前、FLフィリックス・カラプのスティールでボールを奪い、ホーン後にWTB山村知也がキックアウトしてノーサイド。ゴール前でのディフェンスという自分たちの強みで三重Hを振りきり、待望の今季初勝利。勝ち点4を挙げ、順位は12位から10位へと浮上した。
テーマは“Stay in the moment”
後半21分、WTBメイン平のトライで32-21に。「今回もここまではうまくもってきたが……」という思いを抱いた方も多かったに違いない。キックオフの処理のミスからトライを許し、24分で32-28。1トライで逆転という点差になると、ここから暗転した第1節、第2節の記憶がよぎった。
だが選手たちは冷静だった。
SH TJ・ペレナラは試合後、「ああやって最後まで粘り強く迫られたのはイメージ通りだった」と、三重Hが粘り強く追いかけてくるチームであることは十分想定していたと明かした。
後半の勝負どころを支える役割を務めているHO大西将史は「フィジカルや持久力の部分では戦えていると思うので、自分たちのラグビーができれば」と話し、試合終盤に押し込まれてきた現状について、自分たち次第で改善できるものだという認識だったと語る。
LO山本嶺二郎は、試合に向けたテーマとして、“Stay in the moment”(その瞬間に集中しようという意味)言葉があったと語る。点差や時間、結果を意識するのではなく、その瞬間において正しいプレーを実行することだけを考える。そんなラグビーをチームは目指したようだ。
最終盤の10分ほどはディフェンスの時間となり、5分くらいはゴール前に釘付けにされただろうか。ペナルティは犯してしまってはいたが、スイッチを切れる瞬間をつくらず、無心でディフェンスを繰り返す。強いフィジカルをうかがわせながらも、単独で、一発で仕留めようとするようなタックルは誰も繰り出さず、組織として三重Hに立ち向かっていた。
率先して身体を張るSHペレナラの闘争心と献身。SO中楠、CTB池田、WTBメイン、FL山本秀といった今秋日本代表に絡んだ選手たちが漂わせる、昨季以上の自信。PR谷口祐一郎、笹川大五、NO8ワカヴァカらレギュラーを狙い努力を重ねてきたタレントたちのモチベーション。ラスト10分、身体をぶつけ前進を阻み続けるディフェンスには、BR東京の今が凝縮されていた。
「ディフェンスには、そのチームのカルチャーが表れる」
ヘッドアシスタントコーチのマット・テイラーがよく口にする表現が、この日ほどしっくり来た日はなかったかもしれない。
今季初勝利で10位に浮上。次節は9位のトヨタVと対戦
「会社のルーツともう一度コネクトできたことは、このクラブにとってすごく重要なことだと思いました」(SHペレナラ)
試合後、主将はリコーラグビー部の部歌をリード。歓喜の歌がグラウンドに響いた。彼のチームのカルチャーやバックグラウンドに関心を持ち敬意を欠かさない姿勢には、本当に学ばされることが多い。
前述の通り、今回の佐賀でのホストゲームの開催は、株式会社リコーの創業者で、ラグビー部が誕生した際に社長を務めていた市村清氏が佐賀に生まれた縁から実現したが、聞けばこの部歌も市村氏と親交があった作曲家・神津善行氏により制作されたもの。市村氏がいなければ生まれていなかった作品ということになる。1973年に初披露されたこの曲が佐賀で歌われたのは、もしかすると初めてのことだったかもしれない。ラグビー界のレジェンドによるルーツとクラブのコネクト。感慨深いものがある。
ペレナラはこう続けた。
「(佐賀での試合が)一生忘れられないゲームとなり、自分たちを長く応援してくださるファンになってもらえていたらいいなと思います」
積み重ねられた歴史によって今がつくられ、今の積み重ねが未来をつくっていく。
試合終了後には特別表彰も
この試合は「SAGA SSP Presented by 佐賀県」として開催された。試合終了後には、佐賀県よりこの試合でチームに貢献した九州・宮崎県出身のメイン平選手に花束を贈呈した。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
まずは佐賀でのこの試合がどれだけ自分たちにとって大事だったかというのを、お話しさせてください。リコーの創業者で、ラグビー部の創設者にもなる市村さんが生まれた場所。そこでエキサイティングな試合ができ、勝利をお届けできたことはよかったかなと思います。リーグワンになってから初めての佐賀での試合でもありました。
試合については、後半に相手にチャンスを与えすぎたかなと思ったんですけど、その中でも選手たちは強い意志を持って、最後の10分、3、4本ぐらいのディフェンスセットで勇気を見せ、いいディフェンスをしてくれたと思いました。若い選手にとってはすごくいい経験だったんじゃないかなと思います。
SH TJ・ペレナラキャプテン
僕もまず佐賀で初めての試合ということで、会社のルーツともう一度コネクトできたことは、このクラブにとってすごく重要なことだと思いました。自分たちはこの試合がどれだけ重要かを理解していました。そうした思いと、サポートしてくださった方々のエナジーがマッチしたことは素晴らしいことでした。
今日は初めてラグビーを見る方や、リーグワンの試合を見るのが初めてという方もいらっしゃったと思いますが、こういうゲームが見せられてよかったです。一生忘れられないゲームとなり、自分たちを長く応援してくださるファンになってもらえていたらいいなと思います。
試合の方は、もう少しこうやれたらとか、うまく実行できてればとか、思い返すことはたくさんあります。最後、厳しい時間帯が10分ぐらい続いたので。そういうふうにならないのがベストですが、学ぶことも多かったかなと。勝利をつかむには十分なパフォーマンスだったかもしれないですけど、プレーオフに向かうという意味では少し足りないパフォーマンスだったと思います。まだそのレベルに向けてビルディングしているところですね。ただ、本当に必死になった最後の10分からは自信を得られたと思います。お互いのために身体をしっかり張って戦えば、あれだけの力を発揮できるんだと。
ホンダさん(三重H)は素晴らしかったです。今週に向けての準備で彼らが粘り強いチームであると警戒してきました。自分たちはいいゲーム運びができていたと思いますが、それでも最後、4点のリードしかない状況になり、ああやって最後まで粘り強く迫られたのはイメージ通りでした。よいチームだと思います。
質疑応答
——佐賀で今シーズン初勝利。価値ある1勝となった
TJ・ペレナラ:はい、価値はすごい高いと思います。シーズン全体で考えれば、1勝でしかないし勝ち点4でしかないですが、勝ち方というのはすごく大事かなと。僕もいろいろなところでやってきましたが、ああいうハードゲームを取ると、カルチャーやアイデンティティが形づくられたりするもの。チームにとって、こういうきつい状況で強いプレッシャーかかる中でも、お互いのために身体を張って戦い、やり遂げることができた大事な試合だったと思います。
――前半苦しい時間帯があってリードされたが、後半の最初はいい入りになった。ハーフタイムで話したこと、変えたことは
マットソンHC:22m内のアタックでラインアウトのミスが続いていて、そこでチャンスを失ってしまっていました。自分たちはボールを動かしたいのでミスはあると思うんですが。ただ、ターンオーバーに成功して自分たちにチャンスが回ってきたときに、またすぐ相手にターンオーバーされてしまったりしていたので、そういうところの話はしました。あとはポイントを取ったあと、自陣を抜け出すところもあまりうまくできてなかったのでそこも。自分たちで自分たちにプレッシャーをかけ続けたかなっていうところはありました。
――後半の入り、リラックスを促しているような様子もあった。前半に硬さがあり、それを解こうとしたようなところはあったか
TJ・ペレナラ:僕はそうは思わなかった。ただ、もしかしたら前半の後半の部分、最後の方はそれはあったかもしれない。パスのミスを見てストレスを感じているのかなとは思いましたが、そのときが初めて。その後にすぐ失点(前半40分)してしまったので、ミスの後の失点で、少し硬くなった感じはありましたね。
でも失点したあと、ゴールポストの下でパディー(・ライアン)さんや西(和磨)さん、松(橋周平)さんから「いいことはたくさんやってるから、最後の2つのプレーに持っていかれちゃいけない」っていう話があって。もちろんがっかりしたし、しないのがベストなんですけど、そんな話があって。ハーフタイムにはコーチからもクリアなメッセージをもらえたので。アタックのプランや、相手のディフェンスの形の話です。そこがクリアになって、あとは楽しむだけっていう気持ちで後半をスタートできたのかなと思います
――後半の入りは、ボールが動きスペースを突いた
TJ・ペレナラ:(有賀)剛さん、アタックコーチのおかげですね。プレビューとちょっと違っていたんですが、相手の傾向みたいなのを見抜きハーフタイムに話してくれたんです。選手はそれをベースにプレーするだけでした。
――WTB高本とむが思いきったランを見せた(後半15分)
TJ・ペレナラ:よかったですね。あのままスコアすると思いました。パスなど他のオプションもあったと思うかもしれないですけど、スコアするチャンスがあると自信を持ってやったいいプレー。結果的にあそこからペナルティを誘って3点を獲れたんでしたね。自分を信じチャレンジをする選手はサポートしたい。若い選手には自信をもってプレーしてほしい。彼はいいゾーンに入ってきていると思う。活躍は嬉しいです。
――NO8サミュエラ・ワカヴァカは今季初出場。評価を
マットソンHC:すごくよかったと思います。結構直前だったんですけど、NO8リアム・ギルがフィットネステストを通らなくて(先発に入った)。リアム・ギルはベストプレイヤーの1人なので、その代わりを務めるのは大変だけど、サム(ワカヴァカ)も数多く台頭してきている優秀な若手世代の1人。嬉しかったです。
――粘り強いディフェンスができた要因は
マットソンHC:1週間、トライラインディフェンスにはフォーカスしていました。ディフェンスコーチが、そこで勇気あるディフェンスを見せ続ければ勝利は近づくという話をずっとしていて。それをやってくれた。チャンスは与えすぎてしまったかなと思うんですけど、あのエリアでのディフェンスはすごくよかったかなと思います。
試合ハイライト
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=435
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉