【Review】第2節 vs.クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

2025.12.24

後半に反撃。“ペイシェンス(我慢)”を貫き1点差に迫ったが、終盤に一貫性を欠く

リーグワン第2節は、千葉・フクダ電子アリーナでのクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)とのビジターゲームとなった。昨季ファイナルまで進んだ強者からの勝利を目指した一戦は、後半に反撃し1点差に迫る意地を見せたが、終盤に突き放され28-50(前半13-26)で敗れた。

BR東京は開始直後の2分にスクラムから攻め、CTB池田悠希がギャップを抜けビッグゲイン。ゴール前のポイントから右に展開すると、走り込んでパスをもらったFL山本秀が突破。今秋、日本代表にも名を連ねたホープのリーグワン初トライで先制。SO中楠一期がCVを決め7-0とする。

その後も反則を突いて敵陣に入っていったが前半17分、ブレイクダウンでの激しいプレッシャーでターンオーバーを許すと、さらにハイボールバトルでノックフォワード。S東京ベイに自陣スクラムからアタックを仕掛けられゲインを許す。ゴール前に入られるとラインアウトモールでトライを許し同点となる。さらにハーフウェイ付近のラインアウトでのボールロストを足がかりにアタックされ、連続トライを許し7-14(前半20分)。

S東京ベイは前半27分にもハーフウェイ付近へのキックを確保したFBショーン・スティーブンソンがアタック。ディフェンスが乱れる中、左に展開しWTB木田晴斗がトライ。約10分の間に3トライを奪われ7-19となった。(前半27分)

BR東京はS東京ベイが重ねる反則を突き、前半31分にPGを返し10-19。しかし前半35分、ディフェンス裏へのショートパントの争奪でターンオーバーを許すと、外に振られトライを許し10-26に。BR東京は前半終了間際にPGで3点を入れたが、13-26とリードを許し試合を折り返す。

後半もBR東京が先にスコア。2分、規律の乱れを突いて敵陣に入ると、ラインアウトからNO8リアム・ギルがブラインドサイドを突いてさらにゲイン。ゴールに近づいた位置で再度ラインアウトを得るとモールを組む。素早くボールを持ち出したSH TJ・ペレナラがディフェンスを振り払って右中間トライゾーンへ持ち込み18-26に。

後半8分、S東京ベイにイエローカードが出て数的優位に立つ。PGを1本返されたが、15分にスクラムに押し勝つとゴール前ラインアウトからモールを組む。このチャンスで、一度こぼれかけたボールを手中に収めたHO大西将史が、左中間トライゾーンに持ち込みトライ。25-29とする。

15人対15人に戻ってからもBR東京は勢いを維持。後半21分、S東京ベイの密集での反則を突きゴール前ラインアウトを得ると、BKまで加わったモールでトライを狙う。ここは押し切れなかったが、展開すると荒々しくスティールを狙うS東京ベイにオフフィート。正面やや右のPGを決めて28-29と1点差に迫る。

しかし、後半のラスト20分はS東京ベイが持ち味を発揮した。25分、BR東京が自陣で反則を犯してしまうと、ゴール前ラインアウトにしてS東京ベイがモールを押す。2度にわたって前進を阻んだが、ボールを動かすよう指示が出てからの5秒間をフルに使った攻撃でさらなる前進を許し、ぎりぎりでパスアウトされたボールでトライを許した。29分、36分にもラインアウトを起点としたアタックでトライを奪われ、28-50と点差を拡げられノーサイドを迎えた。

「(逆転を許した場面は)振り返ると、自分たちでコントロールできたところは多い」(SHペレナラ)

S東京ベイのペナルティは15に及んだ。大半はBR東京のラックのスローダウンやスティールを狙って生じたもの、またはマイボール時にスティールを阻もうとするものだった。BR東京のテンポを上げた攻撃や、第1節に繰り返したラックでのターンオーバーへの警戒が、ペナルティの様相からは見て取れる。S東京ベイがアタックでオフロードパスやディフェンスライン裏へのキックを活用してきたことも、前に出てくるBR東京ディフェンスをブレイクするための選択のようにも映った。積極的なディフェンスの攻略に向けた丹念な準備がうかがえた。

「アタックして、自分たちにモメンタムがあるときに相手にペナルティが出たことも多かった」(CTB池田悠希)

ただ、ペナルティに終わっていた以上、思惑通り自由にやらせていたわけでは当然ない。ラックでの激しいプレーに手を焼きながらも、ペナルティを重ねさせていたのは、BR東京側のプレーに質がともなっていたからだろう。何よりも相手よりも先にペナルティを犯しておらず、規律意識は高く保たれていた。荒々しく挑んでくる相手に決定的な仕事をさせず、ときにはペナルティを奪いながらうまく戦っていく。60分までは闘牛士のようなラグビーで相手の背中に迫り、昨季2位の強豪を仕留める流れはつくっていた。

それだけに残り約17分の戦いは、悔いが残るものとなった。後半、突き放された場面についての選手たちの言葉だ。

「ほとんどがエラーからスタートしたかなと。(略)振り返ってみると自分たちでコントロールできたところは多いのかなと」(SH TJ・ペレナラ)

「ちょっとしたミスで自分たちが勢いを失って、相手が勢いに乗る。ラグビーはエリア獲りと勢いのつかみあいだと思うんですけど。勢いを簡単に渡してしまっていることが大きなダメージになっている」(FL松橋周平)

「格上の相手に対して、自分たちが戦って勝ちきるっていうさらに強いメンタルが必要なのかなっていうのは、個人的には思います」(WTBメイン平)

この日のBR東京のペナルティはわずか4つだったが、この局面で2つが出た。SHペレナラの言うように、コントロールできる余地はまだあるのだろう。この悔しさを噛みしめつつも顔を上げ、前を向けるか。

「一番早く改善できたチームが、上に、トップ6にいける」(WTBメイン平)

「自分たちにとって来週はすごく重要な週になります。ランキングとかシーズンのことだけを考えて言っているわけではないです」

SHペレナラの次節への言葉は重みがあった。「このままでいいのか」と自問しているかのようにも見えた。チームとしての意地とプライドを懸けて挑む意思の表れか。WTBメイン平も言う。

「一番早く改善できたチームが、上に、トップ6にいけると思う。改善の早さを一週間で見せて、また来週いい試合をしたいなと思います」

課題と真っ直ぐに向かい合い、全員で修正する。チームは流れを変えるための準備を進める。

第3節は、12月27日(土)の13時5分より佐賀・駅前不動産スタジアムでホストゲームとして開催される三重ホンダヒート戦となる。

BR東京の保有企業である株式会社リコーの創業者・市村清(1900-1968)氏の故郷が佐賀だったという縁から実現したものだ。現在は公園となっている生家跡からスタジアムまでは10キロと離れておらず、まさにゆかりの地での開催となる。

市村氏はBR東京の前身である1953年(昭和28年)の理研光学工業(のちのリコー)ラグビー部(当初は同好会)発足時の社長で、その成長を見守った。1968年(昭和43年)に初めて全国大会に出場した際には、大阪・花園ラグビー場に駆けつけ選手を激励したという。残念ながら同年末に病に倒れ他界したことから、その後の黄金時代を目にすることは叶わなかったが、ラグビー部が日本一となるまでの道を整え続けた人物である。チームのために尽くした人物の情熱に思いを馳せる機会は、自分たちが戦う意味を再確認し、闘志を再燃させるきっかけにもなるはずだ。

ともに未勝利、ともにマストウィンの一戦。簡単な試合になることは絶対にない。BR東京は戦い続けてきた人たちの思いを胸に、激しく、苦しく、熱い80分間の戦いに挑む。

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

スコアボード50点とついてるのは、すごく残念です。このチームに来てから一番ヘビーなロス、負けかなと。最後の20分をしっかりレビューしたいと思います。後半ファイトバックして、29対28で残り20分という状況まで持ち返したんですけど、クボタ(S東京ベイ)さんは素晴らしかった。最後はパワープレーで、自分たちが犯したミスに罰を与え、点差も開いてしまった。先週も言ったかもしれないんですけど、相手にプレッシャーをかけている瞬間もあるけれども、そういった瞬間にしっかり自分たちのポイントにする機会がまだ足りないかな。それでもまだ、このシーズンに向けて期待は高いです。いいパフォーマンスを見せて、勝利をつかみたいと強く思います。

SH TJ・ペレナラキャプテン

まず、今日はクボタさんがよかったと思いました。自分たちもいくつかエラーを犯してしまって、それをポイントにしてきました。それはクオリティが高いチームの証拠だと思います。自分たちも部分的にはいいところもありましたが、28-29で残り17、8分ぐらいというゲームだったのが、最終的に50点を奪われてしまったというのは残念です。いいプレーはできています。でも、失点に繋がった部分だったり、自分たちの実行力が低くなってしまった部分は、正直に見直していく必要があるかなと思います。

僕も自分たちのチームに対しての自信は失っていないです。できればこういう(敗戦という)結果を残して学ぶ流れはつくりたくないですが、そういう学びが必要なのであれば、それをラウンド1、2で学べたというのはよかったのかなと思います。

自分たちにとって来週はすごく重要な週になります。ランキングとかシーズンのことだけを考えて言っているわけではないです。チームとしてコンプリートなパフォーマンス、それに近いものを見せたい。この2試合はいいこともたくさんやれてるんですけど、それが長く続かなかったりっていうところがあるので。それを試合を通して見せられたらと思います。

質疑応答

——後半少しずつ点差が離れた理由

TJ・ペレナラ: 理由は1つじゃないかもしれないんですけど、ほとんどがエラーからスタートしたかなと。FBショーン(・スティーブンソン)からのキックで、僕が落として、タッチラインの外に出てしまって。そのセットピースからスコアされていました。最後のトライはペナルティを犯し、コーナーからのアタックで生まれたトライでした。振り返ってみると自分たちでコントロールできたところは多いのかなと。「自分たちが改善しもっとよくプレーできれば変われる」と思えるのはいいこと。でも同時に、それが今日できなかったっていうのはすごく残念だなって思います。

マットソンHC(会見後、ミックスゾーンで補足):キックオフを少し変えてきたり、それまで以上にフィジカルに来た。それで、タックルミスや2人で1人を倒しにいかざるを得ないシーンが増えた。そういうこともあって、彼らの強みの1つのモールのチャンスを与えてしまった。

——FBスティーブンソンのタッチキックは取りづらかったか

TJ・ペレナラ:どうしたいのかに迷いがありました。外でキャッチして投げることもできました。中でキャッチするとか、どうしようかっていう迷いがあったので。決断ができていなかったです。

—— 今日、FL山本秀が初先発。彼の評価を

マットソンHC:日本代表に参加しているメンバーはすごい高いレベルで戻ってきてくれました。ラインアウトだったり、ブレイクダウンだったり、すごくコンシステンシー(一貫性)を見せてくれました。今日も瞬間瞬間で、彼がすごくいいリーグワンの選手になれるというのが見えたんじゃないかなと思います。

——結果的に2連敗に。3戦目に向けて、次の1週間どのようなことを意識して臨むか

マットソンHC:もう少し高いレベルのプレーをもう少し長く見せなきゃいけない。ハイボール、ラインアウト、あとはディフェンスですね。ターンオーバー(されて)からのディフェンス。2週間、ここがやっぱり失点に繋がるポイントになっていたかなと思うので。次は佐賀でのホームゲーム。佐賀はリコーという企業の創設者の市村(清)さんの故郷なんですね。ブラックラムズ東京としては初めての試合です。リーグワンができてから佐賀で試合が開催されるのも初めてだそうです。そこで、忘れられないようなパフォーマンスを見せたいと思います。来週はいいプレーをしたいと思う理由はたくさんあるかなと思います。

——22m内に入ったあとのスコアへの繋げ方、ディシプリンなどについてはよい面もあり、それが試合中盤の反撃に繋がった。冷静さがあったようにも見えたが

マットソンHC:レッドゾーン(22mの内側)では、ラインアウトをしっかり決め、ペイシェンス(我慢すること)が重要かなと思います。3点(PG)、トライと繋いでいけてはいたのですが。レッドゾーンでいうと、ここ3年のクボタさんが敗れた試合というのは、そのゾーンへの侵入回数が少なく抑えられていました。平均で8回以内。今日は13回入られており、少し多かった。ああいうチームに簡単にゴール前へのエントリーをさせてしまうと、どこかのタイミングでスコアはされてしまう。

——フクダ電子アリーナは、ラグビーをするのにどうでしたか?(S東京ベイホストエリアの船橋の子供記者からの質問)

TJ・ペレナラ:すごく特別でした。グラウンドのコンディションはこれ以上ないのでは。これよりいいところでプレーしたことはないぐらいでした。あと、ファンの方の応援や存在をすごく感じられるグラウンドでした。ここでプレーできることはすごく幸運なことだなと思いました。

マットソンHC:(スクラムなどでグラウンドを少し荒らしてしまう可能性があるため)サッカーのグラウンドキーパーさんは、この試合のあとお怒りになるんじゃないかなと思います。素晴らしい質問をありがとう。

試合ハイライト

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=433

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

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