【Review】第4節 vs.トヨタヴェルブリッツ

2026.01.14

スクラムを支えに19点差を逆転。荒天の激闘を制し、連勝で7位浮上

開幕から3試合を終えて1勝2敗、勝ち点4で10位につけるリコーブラックラムズ東京(BR東京)は、福岡・ミクニワールドスタジアム北九州で、9位のトヨタヴェルブリッツ(トヨタV)と対戦。年をまたぎ2戦連続となった九州でのゲームに臨んだ。春を思わせる陽気と強い南風の中で始まった一戦は、後半に強雨に見舞われるなど予測不可能なコンディションに。試合もそれに合わせたかのように前後半で展開が激変。前半を10-29で終えたBR東京は、後半に3トライ3ゴール、2つのPGを決めると相手を無得点に抑え守りきり、37-29で逆転勝利を収めた。これにより勝ち点を8に伸ばし7位に浮上した。

前節・佐賀での三重ホンダヒート戦からは、先発メンバーを数名変更。LO/FLハリソン・フォックス、FL松橋周平に替わりFLリアム・ギルと山本秀、WTB高本とむに替わりシオペ・タヴォを起用。PRパディー・ライアン、CTB PJ・ラトゥがインパクトプレーヤーに回り、PR笹川大五とCTBラズロー・ソードを先発に抜擢する入替なども行われた。

試合は開始1分、ラインアウトからのアタックでCTBソードが突破。WTBメイン平がトライを決め、幸先よく先制したが、その後は苦しい展開に。ハイボール処理や規律の乱れから自陣に侵入され、ゴール前ラインアウトからのアタックでトライを返され7-7の同点に(前半10分)。直後にラックでのサポートプレーでHO大内真にイエローカードが出され数的不利を背負う。さらにハイボールの再獲得からFB高橋汰地に右エッジを走られ、7-12と勝ち越しを許した(前半13分)。

BR東京は敵陣で得たペナルティで2度ショットを選択。時間を使いつつ3点を追加し10-12(前半17分)と迫る。14人の時間をうまく戦っていたが、21分にNO8ブレア・ライアルに突破を許すと、WTBマーク・テレアにトライを奪われ10-19。15人に戻った24分にも、ターンオーバーからのアタックで攻め込まれてトライを許し10-26とされる。ここから粘りをみせたが、前半終了間際にPGを決められ10-29で試合を折り返した。

13人の時間を耐え抜き、終盤に2つのチームトライ

後半は風上に立ったものの、19点差を跳ね返すには早い段階でのスコアが求められた。5分、スクラムで得たPKで敵陣に入るとトヨタVがさらに反則を重ねゴール前へ。ラインアウトモールから攻め、SO中楠一期がトライを決め、CVも成功させて17-29とした。理想的なスコアとなった。

その後、SO中楠が脳しんとうのチェックで約7分ピッチを離脱。さらにLOジョシュ・グッドヒュー、WTBメイン平にイエローカードが出て13人で戦わねばならない窮地に陥る。そこに強雨が降り注ぐ波乱の展開となったが、BR東京は動じることなく優勢だったスクラムを活かして相手にペナルティを重ねさせ前進。リスクを管理しながら時間を使っていく。後半16分、20分にペナルティを誘い2本のPGを成功。23-29と詰め寄って苦しい時間を終え、15人対15人に戻した。

ピンチのあとにはチャンスが訪れる。後半24分、トヨタVにイエローカードが出て数的優位に立つと攻勢をかける。32分、右サイドへの展開でディフェンスを引き寄せると、折り返してCTBラトゥが左中間のスペースを走る。ゴールに迫るとFLギルに繋いでトライ。CVも成功し、BR東京は30-29とついに試合をひっくり返した。

最終盤もBR東京が支配する。35分、NO8サミュエラ・ワカヴァカのタックルが落球を誘いターンオーバー。アタックに転じると右エッジをFLギルが突きトライゾーンへ。惜しくもノックフォワードとなったが、再開のドロップアウトを確保し再びゴール前へ。ラインアウトモールから狭いサイドを攻め、CTB池田悠希がディフェンスを破り右中間にトライ。CVも決まり37-29としノーサイドを迎えた。最後のCVでボーナスポイント獲得(7点差以内の敗戦)を阻むかたちとなり、今後順位争いでしのぎを削るであろう相手からの価値ある1勝となった。

プレイヤーオブザマッチには2試合連続でSO中楠一期が選出。この試合で22点を記録した中楠は、総得点を52点としてランキング2位に浮上。1位のバーナード・フォーリー(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)の68点を追いかけるかたちになっている。

「一個一個の部分で、ちゃんと100%を出す。その先にトライがあるみたいな感じ」(NO8サミュエラ・ワカヴァカ)

試合のポイントとなったのは、やはり後半11分からの13人となった時間のパフォーマンスか。改めて振り返ってみるとここから後半26分までの15分間でBR東京は1つのペナルティも出していない。それどころか驚くことに、アドバンテージが出た状況での果敢なプレーを除くと1つのエラーも出さなかった。相手ボールになったのはSO中楠がPGを決めたあとのリスタートキックと、その後の蹴り合いくらいで、ほぼフェーズディフェンスをしていなかったことになる。ボール保持に成功することで、数的不利な状況をほぼ無効化していた。

ボール保持においては、FWの安定が際立った。スクラムで4回(アドバンテージ含む)、ラインアウトで1回、モールで1回、相手の反則を誘った。

「BKとしては、FWにビールを1杯、2杯、おごらなきゃいけないのかなと思っています」

SH TJ・ペレナラから、そんな言葉が。それもよくわかる、7人しかいない状況でのほぼ完璧なパフォーマンスだった。

ただ、これは危機を脱する上での優れた対処で、この勝利の価値をより感じられたのは、19点を追いかけていく際の我慢強い姿勢かもしれない。

「難しいことやろうとか、自分がどうにかしてやろうっていう気持ちよりは、システムの中での自分の役割を遂行しようっていう話はしていましたね。トライを獲りにいくっていうより、我慢を続けて、フェーズ重ねていれば、絶対どこかでチャンスが来るから、その結果としてトライを獲れればいいっていう。結果よりもプロセスをしっかり大事にしようっていう感じでしたね」(FL山本秀)

「(今日のテーマは)“Stacking the moment”です。一個一個、いいプレーを続けて、重ねていこうみたいな。一個一個の部分で、ちゃんと100%を出す。その先にトライがあるみたいな感じで」(NO8サミュエラ・ワカヴァカ)

点差をつけられれば、トライが欲しくなる。システムから離れたプレーを選んででも、相手の隙を突きたくなる。勝利を強く望む選手であればあるほど、そういう気持ちが沸いてくるものだろう。それをぐっとこらえ、本当のチャンスが来るまでフェーズを重ねる我慢強さが、逆転勝利を引き寄せた。

「(中楠が)今日のようなプレーをして自信を見せているときには、どんなチームが相手でも勝つチャンスがある」(SH TJ・ペレナラ)

「TJに、僕が自信なくしたりして違うチョイスをしたりすると、それはチームに伝わり影響するから、いつでも自信を持てと」

1つのトライと4本のコンバージョン、3本のPGを決め、前節に続きプレイヤーオブザマッチに選ばれたSO中楠は、キッカー、そして試合をドライブする役割を務める上でのメンタリティについて、SHペレナラからの言葉を紹介しながら語った。

前半15分、右中間の10mライン付近でPKを得たシーン。ゲームキャプテンのSHペレナラがFLリアム・ギルと相談しているところにSO中楠が歩み寄り、みずからショットすると言ってボールを受け取った。結果的にこのPGはこの日唯一の不成功に終わったが、SHペレナラは中楠の姿勢を称える。

「(中楠が)今日のようなプレーをして自信を見せているときには、どんなチームが相手でも勝つチャンスがある。(略)若い選手が自信を持ってプレーできているというのはチームにとって大きい」

NO8サミュエラ・ワカヴァカはFLリアム・ギルと、バックローとして初めてともにプレーした。FLギルはトレーニングから9歳年下の若きペネトレーターを気にかけ、アドバイスをしているところを目にした。

「リアムはベテランで、自分がチームにどんな影響を与えていくべきかを考えている。ゲームプラン、試合をどうやって見るべきかとか。彼はすごい。試合中は、立ち上がるスピードがちょっと遅かったら『早く!』とか、細かいアドバイスをもらっています。コーチが隣にいるみたいな感じ(笑)」

プレイングコーチを務めるPRパディー・ライアンは、職責として選手の育成や指導にも回っているが、試合では背中で見せる。スクラムでの強烈なインパクトだけではなく、果敢なキックチェイスで相手のFBに真っ先に迫っていくプレーなども、後半のチームのエフォート面の改善を促すプレーではなかったか。

「若い選手たちに進むべき道を示す」という役割を果たすための、世界を知るプレーヤーたちの積極的な行動を目にする機会は多い。若いチームの加速度的な成長を実現すべく、彼らが見せる尽力には敬意を表したい。

次節は昨季は未勝利の神戸S戦。規律を高め、本来のラグビーを見せられるか

1月17日(土)に開催される第5節もビジターゲーム。兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で、3勝1敗で現在3位につける神戸Sと対戦する。キックオフは12:05。昨季は2度戦い、初戦が15-44(第6節)、2戦目が24-27(第13節)と勝利を手にできなかった。

惜敗した13節のゲームでは、2トライを先取し、さらに相手に2枚のイエローカードが出て15人対13人となる好機が訪れながら、その時間帯にペナルティを重ね、神戸Sが優勢だったセットプレーの機会を与え逆転を許した。今回のトヨタV戦とは対照的な試合だったといえる。BR東京と神戸Sはともにここまで、ペナルティの数やイエローカードの枚数など規律面に改善の余地を残しており、ここをどれだけ修正できるかは、やはり勝敗を分けるポイントになりそうだ。

九州での2試合では、重要な局面でのディフェンスで精度を見せた。試合後半の持久力やシステムにのっとったディフェンスの実行、選手同士のコネクションや選手の戦う姿勢など、チームとしての完成度が高まっていることは証明した。アタックの時間を増やしながら、本来のディフェンスをさらに長い時間維持できれば、得点は増え、失点は減り、勝利の可能性は高まっていくはず。鎮魂の日の一戦。全てを出し切って向かってくるであろう神戸Sに正面から挑み、最高の試合を期待したい。

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

まず、アウェーで勝利をつかむということは自分たちにとって大事なことでした。後半のかたちは、チームのスピリット、ギブアップしない姿勢などを見せられたんじゃないかなと。本当に誇りに思います。過去に率いてきたチームでも、ハーフタイムであれだけスコアが離れると勝ちに繋げられないこともよくあったので。ですが、自分たちはより高いところを目指しているので、月曜日にしっかりレビューしたいと思います。前半は改善しなければいけないところがたくさんありました。ただ、あのようなコンディションの中で、いいファイトバックができたんじゃないかと思いました。

SH TJ・ペレナラキャプテン

ヘッドコーチにアグリーです。後半はいい戦いを見せられたと思います。前半は自分たちで自分たちにプレッシャーをかけてしまったので、そこはレビューしたいと思います。ハーフタイムの時点で19点差をつけられて勝つことはなかなかできない。それを勝ち切ったということで得られるものはたくさんあったと思うので、それを持って次に進みたい。ただ今後は、できるだけこういう(点差をつけられる)状況には陥らないように。自分たちのチームは今すごくいいエナジーがあり、いい雰囲気です。こういうチャレンジに向き合っていけるというのはすごくよかったと思います。ただ、前半についてはやらなきゃいけないことがまだまだたくさんあると思います。明日、月曜日などを通じてしっかりとレビューして、神戸(コベルコ神戸スティーラーズ/神戸S)戦では改善できるように、いい準備をしたいと思います。

質疑応答

——後半、13人になった時間帯のコミュニケーションについて

TJ・ペレナラ:FWにかなり頼ったかなと思います。PRパディー(・ライアン)がグラウンドに立ったこともあり、スクラムにかなり自信があって。スクラムはいくつかあったと思いますが、ペナルティが獲れる感じがありました。あの状況でFWに頼れるというのはすごく大きい。スクラムをやると1分くらいかかります。そこからペナルティが出れば、そのあとのディシジョンまで30秒くらいかけることができる。そうやってうまく時間をコントロールしながら戦いました。BKとしては、FWにビールを1杯、2杯、おごらなきゃいけないのかなと思っています。

——19点差をひっくり返した。自分たちが変えたこと、相手に感じた変化などあれば

TJ・ペレナラ:ひとつは風があったと思います。観客の皆さんからはどう見えたかわからないですが、予測していたよりも強かったかなと。前半、いいチームであるトヨタさん(トヨタV)に対して、効果的だと思われるゲームプランを立ててしっかり準備してきたのですが、それをうまく使えなかった。風に向かっていかなければいけないのに、少し自分たちの殻にこもってしまい、相手にコントロールさせてしまった。後半は自分たちが今週やってきたことを信じることができた。コーチに準備してもらったゲームプランを信じてやるというところが変わったかなと思います。

——活躍したSO中楠一期に対する評価を

TJ・ペレナラ:チームにとって大事な選手だと思います。今日のようなプレーをして自信を見せているときには、どんなチームが相手でも勝つチャンスがある。前半、14人になって風も向かい風で、40メートルくらいのペナルティがあったのですが(前半15分のPG?)、彼はみずからキックすると言ってくれた。決められるし時間も使えるからと。ああいう若い選手が自信を持ってプレーできているというのはチームにとって大きい。

マットソンHC:リーグ全体を見てもゴールキックが差になることが多いと思いますが、彼はそこにフォーカスして努力していて、上達してくれていると思います。

——順位の近い相手に、勝ち点を1つも与えずに勝った

マットソンHC:まず勝つということが自分たちにとって大事でした。今、2勝2敗というチームが結構多いと思いますが、ボーナスポイントはかなり重要なポイントになってくると認識しています。相手のボーナスポイントを阻止できたかどうかは、(順位が決まる)5月にかなり大きな影響があると思っています。

試合ハイライト

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=437

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

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