【Review】第7節 vs.静岡ブルーレヴズ

2025.02.13

“姿勢”再確認し挑んだ一戦。フィジカリティで張り合うも、反則がかさみ届かず

リーグワン第7節は、福島・Jヴィレッジスタジアムに5位・静岡ブルーレヴス(静岡BR)を迎えて、ホストゲームとして開催。リコーブラックラムズ東京(BR東京)としては同会場での初のゲームとなった。日本代表のNO8ファカタヴァアマトとWTBネタニ・ヴァカヤリアが戦列復帰。もう一人のWTBにはセミシ・トゥポウが選ばれ今季初先発。前節復帰を果たしたメイン平はFBに入り、攻守の要となる仕事が期待された。強風下での一戦はフィジカルバトルとなったが、風下に回った後半、自陣に釘付けにされたBR東京はペナルティも重なり、32-24(前半14-18)で競り負けた。

前半の入りは自陣に攻め込まれたが、モールディフェンスなどで意地を見せ、スコアを阻む。13分に先制を許したが、相手にイエローカードが出て14人となった10分間にしっかり攻め、19分と24分にトライを奪ってリードした。しかし、30分を過ぎるとペナルティで自陣侵入を許す場面が増え、1トライ1PGを奪われ1点差に。37分にはキックオフボールを使ったアタックでブレイクを許し、そのまま走られてトライを奪われ、14-18と逆転されて試合を折り返す。

風下に回った後半は、開始直後にPGで1点差に迫るが、スクラムやラインアウトが安定せず、ペナルティも重なり自陣からの脱出ができず苦しんだ。23分にはイエローカードが出て人数的に不利に陥ったが身体を張ったディフェンスで粘り、2つのトライは許したものの、コネクトと戦う姿勢を保った。36分、ようやく敵陣に入るチャンスを掴むと、FLマイケル・ストーバーグがトライを獲りきって24-32と8点差まで詰めたが、さらなるスコアは生み出せず、ノーサイドを迎えた。

 

「1人で何とかしよう、試合に勝とうっていう行動が少しある」

今季最多となったペナルティが、自分たちの首を絞めた。一方で、闘志は見せた。この試合を見守った人たちの多くは、そんな印象を抱いたのではないだろうか。“ペナルティ”と“闘志”は背中合わせだったようにも感じた。

「(それぞれが)1人で何とかしよう、試合に勝とうっていう行動が少しある。相手が向かってきたときにワンチームで戦おうとすることが大事。(中略)ただ、それは『自分が頑張ろう』っていうポジティブな思いから生まれているものでもある。頑張りすぎちゃった結果みたいなね」

LOジョシュ・グッドヒューの振り返りだ。この見解は前節が9、今節が10とかさんだ後半のペナルティの数とも関係がありそうだ。リードを許して試合を折り返し、反撃しなければいけない後半。その思いの強さが、規律意識にぶれをもたらしたか。加えてこの日については、特に後半、風下の自陣から脱せずゴールを背負ったタフなディフェンスが続いたことも一因だろう。タンバイ・マットソンヘッドコーチはペナルティが増えた理由にディフェンスの時間が長かったことを挙げている。意識で減らせるペナルティも少なくはないが、最終的なペナルティの総数は様々な要素が絡み合って決しており、規律という言葉に単純化してしまうと実態は見えなくなる面もある。事象を丹念に解きほぐした先に、解決策がある。

 

「僕はこのグループとプランというものに対しては大きな自信を持っている」

記者会見でTJ・ペレナラは、マットソンHCに投げかけられた「今、一番自信を持っていることは何か」という質問の後、近しくも少し言葉を変えた質問を受けたが、それを制するかたちで、「今の質問に自分も答えてもいいか」といって続けた。

「僕が一番自信持っているところはこの“チーム”」

「僕はこのグループとプランというものに対しては大きな自信を持っている。自分たちに必要なのはそれを信じること。それが全員の中に必要」

「『ツールは揃っているんだ』という自信を磨き続けていく」

自らが選びジョインしたBR東京というチームへの信頼を改めて語る言葉は、メンバーへのメッセージのようでもあり、サポーターへのメッセージのようでもあった。「ツールは揃っているんだ」という言葉は、「自分たち次第だ」という意味にもとれよう。

次節リーグワン第8節もBR東京は東京・江東区夢の島競技場に浦安D-Rocksを迎え、ホストゲームを戦う。公式戦では初対戦となるが、前身のNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安とはリーグワン初年度の2022年に、同じ夢の島競技場で対戦している。ともに勝利に飢えた者同士であり、タフな一戦になるのは間違いないが、苦しいゲームが続く中でも声援を送り続けてくれる人々が待ち望む勝利を、全てを懸けて掴み取りにいかねばならない。

 

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

残念な敗戦となりました。ハイライトになるようなシーンもいくつかありましたが、ブルーレヴズ(静岡BR)さんにチャンスを与えすぎた。トライスコアリングエリアに入れさせすぎてしまったかなと。そこで決め続けられるという流れだったかなと思います。後半はそれにプラスして、ゲームのテンポをうまくコントロールされました。彼らにフィットした流れになり、勝利に繋げられたのかなと思います。

 

SH TJ・ペレナラゲームキャプテン

僕もヘッドコーチと同意見です。ブルーレヴズさんは、自分たちにフィットするテンポでプレーできていたと思います。特に後半はゲームマネジメントもよかったし、自分たちがペナルティを多く与えてしまったので、なかなかボールを持って相手のディフェンスエリアでチャンスを生み出せなかった。76分にトライを獲れましたが、あれが後半では最初のアタッキングゾーンでボールをキープできた場面だったかなというような感覚でした。ですので、まずはディシプリン。相手にチャンスを与えないためにディシプリンっていうところは改善しなきゃいけない。ブルーレヴズさんも、そのチャンスを生かしきったっていうところは彼らのよかったところかなと思います。

 

質疑応答

— 規律が乱れた原因は

マットソンHC:ペナルティはディフェンスでのもののほうが多いですよね。それは今日はディフェンスの時間が長かったから。(そうなったのは)ボールをコントロールできなかったから。もっとボールをキープできれば、ペナルティの数も減るのかなと。あとはタックラーのロールアウェイ。アシストタックルが高くなり、地面に倒れたときに相手側に倒れてしまったこともあった。それとオフサイドペナルティが4つあったことは僕としては残念でした。

—ペナルティの多さが試合を進める上でやりづらさとなったか

SHペレナラ:もちろん。ペナルティは18くらい? どんな試合でも、どんな相手でも、18のペナルティを取られたら、勝つのは難しいですから。

—1週間、どんな準備をしてきたか

マットソンHC:ターンオーバーを減らすことを考え、もうちょっとフィジカルにと。ブルーレヴズもフィジカルなチームなので。そこはよくなったと思います。今日はフィジカルに戦ってくれました。そこは誇りに思います。

— フィジカルやエフォートの部分に関しては上向き

マットソンHC:よくなっていたと思います。前半、相手のモールを3本止めていました。いいエフォートができないと止められないと思うので。

— ゲームキャプテンとして、試合中にどんなメッセージ出していたか

SHペレナラ:シチュエーションによって違うところですけど、基本は次の仕事は何かを示すこと。ペナルティを取られた。相手がスコアした。自分たちがスコアした。どんな状況でも次は何ができるかを示す。過去に起きたことはどうしようもないので、次のアクションを考えようと。今はもう試合が終わったので、改めてしっかりゲームを全体的にレビューして、そこから直していくんですけど、ゲームの中では次の瞬間どうやって勝つかみたいな次のことを考えて話しています。 

— イエローカードが出て苦しくなった時間帯、ある程度粘ることができた。そうした切り替えができていたようにも

SHペレナラ:(あの場面は)ディフェンスのセットアップがちょっと変わったので。役割の調節などもあった。それをしながらでした。FWがセットピースからいいディフェンスを見せられていて、その状況でブルーレヴズがややじっくり攻める選択をしてきたので、それに助けられた面もあった。

— 今チームで一番自信を持っていること。それから早急に改善しなければいけないと考えていることを

マットソンHC:難しいですね。外からは見えないかもしれないですけど、準備の一貫性はすごくいいです。まだゲームフィールドには直接繋がっていないのですが、フィットネスのレベルなどは伸びてきている。修正しなければいけない要素で一番大きいのは、Aゾーン(ゴール前)でしっかりコンバート(スコア)することですね。

SHペレナラ:僕が一番自信持っているところはこのチーム。すごくいいプレーヤーグループで、コーチングスタッフもいて、自分たちの方向も間違っていない。もちろん今は結果が出てないからフラストレーションはあるんですけど、僕はこのグループとプランというものに対しては大きな自信を持っています。自分たちに必要なのはそれを信じること。それが全員の中に必要だなと。チームの最終的な目標は優勝です。でもそこに達するには、毎週一貫性のある準備をして、グラウンドでも一貫性のあるパフォーマンスを見せていくことから。そして「ツールは揃っているんだ」という自信を磨き続けていくことで、こういうブルーレヴズのような相手とのタフな試合に8点差で負けるのではなく、4点差で勝つようなことができるようになる。そういうゲームに勝てるチームなんだという自信が備わってくると、また変わってくるのかなと思う。

 

LO ジョシュ・グッドヒュー

今週は先週に比べたらベターにはなったのかなと思います。でも、ディシプリンに問題が生じて、大事なキーモーメントのところで獲りきれなかった。ただ、ブルーレヴズというチームの強いフィジカリティに対応することはできたかなと。そこはよかったと思います。

ペナルティについては、1人で何とかしよう、試合に勝とうっていう行動が少しあるのかな。相手が向かってきたときにワンチームで戦おうとすることが大事なのかなと思います。システムで守るというか。そういうところを信じるべきかなと。ただ、「自分が頑張ろう」っていうポジティブな思いから生まれているものでもある。頑張りすぎちゃった結果みたいなね。

— 「頑張りすぎた結果」のペナルティは調整できる

はい。

— ラインアウトは苦しい状態が続いてしまっている

今日のような風が強い状況に合わせた準備というのは難しいですよね。自信を取り戻していくために、ややシンプルなコールにフォーカスしていたんですが、ちょっとまだ課題として残った部分かなと思います。

— 次節に向けて、自分から発信するならば。そういうタイプかはわからないけど

そうね。どちらかっていうとアクションタイプなんだけど(笑)。自分の仕事をやり続けるってことかなと思います。(勝つために)必要な選手は揃っていると思うので、15人全員が自分の仕事をやり続けること。負けると他のポジションのことが気になったりしがちですが、それぞれが自分にフォーカスし続けることが大事かなと思います。

 

LO 山本嶺二郎

— 今季初出場となった

自分のプレーはできたと思っています。シーズン開幕からしっかり準備してきて、今日はアピールするチャンスだったので、よかったかなと思います。

— 試合に向けて、ヘッドコーチなどから言葉は

「いつも通りで」と言ってもらっていました。何か特別なことをするというよりも、自分のプレーに集中することと、リザーブからなのでエナジーを出していいインパクトを与えられるようにと考えていました。

— メンバー入りするために、どんなところに力を入れてきたか

1週間頑張ったけれどもメンバーに入れないということが続き、気持ちのバランスをとるのが難しいところもあったんですけど、とにかくやり続けるっていうところにフォーカスして、波のない安定したプレーをし続けられるように意識していました。

— アーリーエントリーは経験したが1年目となる。大学とリーグワンで違うと思うのはどの辺か

やはりフィジカルの部分が大きいかなと思います。フィジカルで負けてしまうと試合も大きく変わってしまうので、1対1のところで絶対負けないようには気をつけています。ただ、気持ちだけでいってしまうとケガのリスクもありますし、チームのシステムもある。頭も動かしながら、スキルも使ってやれば、ちゃんと通用すると思っています。(具体的には?)タックルの低さだったり、入り方だったりですね。

 

CTB 池田悠希

残念ですね。試合中にあれだけペナルティをしてしまって、シンビンも出てってなるとゲーム的にはきつくなってしまうんで、そこは自分たちがまず改善しないといけないところ。

— 相手はフィジカルに強みを持つチームだけに、激しくやりあう必要もある。その中で

ゲーム終わってからチームで少し話したんですけど、例えばディフェンスであればボールを取り返そうとして、ちょっと頑張りすぎたり、行き過ぎたりしている部分でペナルティになったりもしていますし、自分たちで防げるものは結構あった。しっかり我慢して、何回フェーズを重ねても粘り強くディフェンスする。自分たちはそれをできる力を持っていると思うので、もう一度それをやりたい。

— チームの雰囲気は

先週の神戸(神戸S)戦は内容的によくなくて、雰囲気的にも少し落ちてしまったのはあります。でも今日の試合に関しては、ペナルティは確かに多くて負けてしまったとはいえポジティブなところもすごく多かった。自分たちがボール持っている間のアタックっていうのはよかったと思いますし、個人のエフォートもフィジカリティの部分も、先週より絶対よくなっていました。そこはポジティブな面としてチームとしてとらえています。改善するところは改善して、次のゲームに向かっていこうという切り替えはできているかなと思います。

— 終盤に反撃し流れを掴みかけた

展開的には特に後半に関してはモールのペナルティとかもすごく多くて、風も風下で、なかなか解決策っていうのを見つけづらい展開ではあったんですけど、やっぱり継続してアタックすればチャンスは生まれましたし、敵陣に入ってスコアできた。そこはポジティブにとらえています。

— フィジカリティとエフォートを見せられているとき、継続できればチャンスはやってくる

そうですね。その時間をどれだけ長くするか。そう考えたとき、ディシプリンっていうのはすごく大事だなと思っています。自分の首を絞めるようなこと。特に中盤でペナルティが出ると、セットプレーを強みにしている相手のペースになってしまうので、絶対に出してはいけなかった。

— BKの連携という面での手応えは。TJ(SHペレナラ)のプレーへのアジャストなど

よくなっていると感じています。やっぱりテンポも早くなりますし、その中でしっかり、それ以外の選手が早くセットして、早くオプションになって、早く何をするか明確にするっていうところは今週話していたことだったのですが、そこはだんだん形にはなってきているかなと思います。

 

FB メイン平

ブルーレヴズさんはすごくいいチーム。最後まで戦い続けられたのは誇りに思ってもいいと思います。ペナルティの多さなど自分たちの悪いところはしっかり見直して。来週も大きな試合があるので、そこに向けて頑張りたいと思います。

— チームとしては再起の1週間でもあった

自分たちのやっていることには自信を持っていますし、1週間、間違ったことはやっていない。練習でも常にベストを尽くしているし、やるべきことは本当にやれているっていう、チームにそういう雰囲気はある。まだ試合の結果には繋がっていなくて、結果が出ないときは本当に苦しいんですけど、もう一回信じて、同じことをやり続けることが大事なのかなとは思います。

— BKとしては、なかなか力を発揮しにくい展開

(風下の)後半、ボールを回して自分たちから勝負しようっていう話をしていたんですけど、なかなか自分たちのやりたいことができない時間帯になった。でも、ディフェンスでは本当に自分たちのシステム通りにやれて、相手の外に回してくるアタックを止められたので、そこの自信はついたと思っています。

— アタックについては

相手のゴール前までいくプレーは、チームとしても仕上がっているなとは思うんですけど、ゴール前での精度ですね。これは毎試合、レビューで出てくる課題ではあるので、そこさえ直し得点に繋げていければ本当に景色が変わってくると思うので、チームとしてもう1回頑張りたいです。

— 15番での出場だった。バックスリーの仕事の部分についての振り返りは

今日はペナルティが多くて、BKのオフサイドも多かった。バックスリーは一番端にいるので、アシスタントレフリーとコミュニケーションを取って、もうちょっとコントロールできたかなとは思う。相手が蹴ってこずボールを回してくるラグビーをしてきていたのですが、それに対してスペーシングを広げたりして、やりながらアジャストするっていう力はついてきたかなという手応えはある。

— ブランクを感じさせず、試合にすっと入っていっている印象を受ける

自分の中では今日のパフォーマンスに納得はいっていない。でもそこは場数だと思う。焦ることなく自分にフォーカスしてもう一回いい準備をしたいと思います。

 

試合ハイライト

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=413

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

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