【Review】第6節 vs.コベルコ神戸スティーラーズ
2025.02.06
「チャンスを活かしきれるか否か」に差。テンポアップを封じられ苦しい展開に
2週間のインターバルを空け、第6節を迎えたリーグワンはカンファレンスをまたいだカードが組まれる交流戦へ。リコーブラックラムズ東京(BR東京)は、兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)に挑んだが、繰り返し許したターンオーバーからのアタックに苦しみ、15-44(前半8-21)で敗れた。
WTBメイン平やPR笹川大五といったケガとの戦いで長く公式戦から遠ざかっていた選手や、2022年の入団から3シーズン目にして初出場の機会を得たCTBラズロー・ソードがメンバー入り。LOジョシュ・グッドヒューやSO中楠一期といったチームを牽引してきた選手や、バックアップメンバーとしてチームへの帯同が続いていたWTB山村知也もリザーブに入って今季初出場のチャンスを掴んだ。激戦でややダメージを負っていたチームだが、戦力の高まりを感じさせる布陣でこの一戦に臨んだ。
前半3分にCTBラズロー・ソードのブレイクを起点に攻め込み、ゴール前でのリスタートから、WTBメイン平が右隅に先制トライ。12分には、深く攻め込むことで迎えた相手のトライラインドロップアウトから反則を奪い、PGで3点を加え8-0とした。しかし、BR東京がその後迎えた3度の決定機でスコアを逃す一方、神戸Sは17分にキックカウンターより、29分にラインアウト奪取より、38分にスクラムからのアタックより3つのトライを決め、8-21とされて試合を折り返す。
前半の終了間際に神戸Sにイエローカードが出て、人数の優位を得て迎えた後半だったが、規律が乱れPGでの失点が重なる。修正を果たせぬまま時間が過ぎ、後半20分、27分にゴール前ラインアウトからのアタックに対し粘れず連続トライを許し8-39と大きく引き離された。35分にゴール前ラインアウトからモールを押し、LOハリソン・フォックスの低い姿勢のキャリーでトライラインに迫ると、ピックゴーでねじ込んだFL松橋周平がトライ。しかし40分にも密集でのスティールからのリスタートでトライを許し、今季最多となる失点での悔しい敗戦となった。
「一番ディフェンスがしづらいのはターンオーバーボール」
「前半、リコーさん(BR東京)が素晴らしかったというところは認めなければいけない。テンポが速いプレーの中で、自分たちは常に乗られている(後手に回る)状況でディフェンスしていた。でも後半は、真っ直ぐ相手に向かってディフェンスラインを上げていって、ドミネートタックルをできる状況が増え、ダブルタックルも可能になった。そうなるとブレイクダウンのスピードを落とすことができ、テンポも上がってこない。自分たちは次のディフェンスによりよい状態で向かえた」
試合後、神戸Sの主将であるLOブロディ・レタリックの振り返りは端的だ。アタックを仕掛けるBR東京に鋭く迫ってプレッシャーをかけ、テンポアップを阻み、さらにはエラーも起こさせる。そうしたディフェンスの徹底が、BR東京がスタンダードを保てない状況をつくっていたとみられる。
「僕らを勢いに乗せないように、うまくやられた感じがします」というLOハリソン・フォックスのコメントからも、神戸Sのモメンタムを発生させないための対処が、よく効いていた様子がうかがえる。そして、相手のディフェンスのプレッシャーを受け、エラーが生じた際の対応が次のポイントだったか。タンバイ・マットソンヘッドコーチはこう解く。
「一番ディフェンスがしづらいのはターンオーバーボール。相手にアンストラクチャーな状況でアタックするチャンスを与えてしまったことが、ディフェンスを難しいものにしていた」
繰り返しギャップが生まれ、そのカバーに振り回されるようなディフェンスが続いていた印象は、多くのディフェンスの起点がターンオーバーにあったからだという見解だ。ハンドリングエラー、ブレイクダウンでのスティール、ラインアウトでのスティールなどを合計すると27回にも及んだというボールの喪失を神戸Sが高い確率でスコアに繋げたことが、この点差をつくりだしたといえる。アタックを阻まれ、それを起点にしたアタックでスコアされていくと、どうしても点差は開いていく。
「自分たちからアクションする。それしかない」
「そういうことも起こるのがラグビーなので、どう切り替えて試合中に自分たちのかたちに戻れるかが真価というか強さ。まだ僕たちはその部分が弱い」
ゲームキャプテンを務めたFL松橋周平は、試合の中で進むべき方向を見失ったチームが、もう一度同じ方向を向き直すことができなかったことを悔いているように映った。
惜敗が高める、勝利への渇望。それが空転したかのような歯がゆい試合展開だった。勝ちたいという思いを、勝利のためにしっかりと駆動させ、ポジティブなものすることが今必要なことなのかもしれない。PR津村大志が一案を述べる。
「自分たちはこういうプレーをする。これに強みを置く」というところにフォーカスしないといけない。相手に何かをされてからアクションするのではなく、相手が何かする前に自分たちが先手を打つ。相手を見て、後手に回るんじゃなくて、自分たちからアクションする。それしかないと思う」
自分たちの強みを再確認し、それを我慢強くぶつけていく——。マットソンHCは次節に向けて“リビルドする”と語ったが、おそらくはそれも近いニュアンスだろう。相手に一番ダメージを与えられる自分たちのプレーを愚直に遂行し続ける。その先に光がある。
リーグワンは3月末まで交流戦が続く。第7節は2025年2月8日(土)12:00より、福島・Jヴィレッジスタジアムにて、BR東京のホストゲームとして開催される静岡ブルーレヴス(静岡BR)戦となる。ここまで4勝を挙げ5位につける静岡BRは手強いが、誇りを持って、勇敢に、我慢強く戦えば必ず勝機は見いだせる。BR東京の意地に期待したい。
監督・選手コメント
タンバイ・マットソンヘッドコーチ
謙虚にならざるを得ない、トラウマティックな日でした。ホームから離れるといいプレーをするのは難しくなるものですが、自分たちのゲームをしっかりできず、こういうふうに罰を与えられるかたちになってしまった。序盤のチャンスを生かしきれず、試合を通じて27回にわたりターンオーバーされた。そうなるとゲームをうまく進めるのは難しくなるのかなと思います。自分たちとしては、もう一度スタートに戻り東京で最初からリビルドしていかねばならないと思っています。
— バイウィークを挟んだ2週間に取り組んだことは
ひとつはみんなをリチャージさせること。(第5節の)クボタ(S東京ベイ)戦に向けては9人のメンバー変更がありました。ケガをしている選手もいたので。ゲームに関しては、Aゾーンでの実行力の部分。そこに関しては前進できておらず、すごく残念です。あとはセットピースも。ですがラインアウトのところは、次節に向けてしっかりやっていかないといけない部分だと思います。
— 今日のパフォーマンスについて。驚きに近いものか、今まで感じていた何かしらの課題が繋がった結果か。印象を
これだけひどいスコアになったときは、自分たちがよくなかったというのが現実だと思います。許したターンオーバーも多く、許した際には必ずといっていいほど罰を与えられて、逆にチャンスが来たときにはそれを生かしきれなかった。(そうして生まれた)スコア自体は、ビッグサプライズです。
ハーフタイムの時点で8-21。ラインアウトやボールコントロールの問題を修正し、ペナルティカウントを低く維持することができれば、まだいけると思っていました。実際には後半はペナルティカウントも上がってしまい、ラインアウトも失敗し続け、そこで神戸さん(神戸S)に罰を与えられたのかなと。
FL 松橋周平ゲームキャプテン
今日はありがとうございました。自分たちが誇りに思えるような試合ができなかったことが非常に残念です、会場に足を運んでくれた皆さん、ブラックラムズのファンの皆さん、東京で僕らを待っているノンメンバーの選手たちに対し申し訳ない気持ちです。
一週間を通し、神戸Sのラグビーへの対策、このラウンド5までの反省を生かした試合をしようという点ではすごくいい準備ができました。それでいい試合への入りはできたんですけど、ボールをロストするシーンが増え、さらに相手に簡単にトライを獲られてしまっていくうちに、どんどん自信を失っていったという印象です。
でも、そういうことも起こるのがラグビーなので、どう切り替えて試合中に自分たちのかたちに戻れるかが本当の真価というか強さだと思っています。まだまだ僕たちは、その部分が弱いかなと感じますし、僕自身もこの試合のゲームキャプテンとして、選手として、どう改善できるかを考えて、東京に戻りしっかり一からやり直したいと思います。
— 前半のチャンスで獲りきれなかった理由について。神戸Sのディフェンスがよかったのか。自分たちに問題があったのか
神戸Sのいいディフェンスもあったのかもしれないですが、結局は自分たちが仕留めるか仕留めないか。本当にそこでスコアするかしないかはすごく大きな差になってくるので。
— ディフェンスのコネクトが切れてしまう場面もあったように映った。理由に思いあたるものは
自分たちが乗れないとき、ミスが続いたりして自信を失っているときは、ディフェンスに立ち返ったりしないといけないんですけど、それ(ミス)を引きずってコネクトが切れたり、ターンオーバーされて相手の勢いのまま持ってかれたりということがあったと思います。
(マットソンHCが補足)一番ディフェンスがしづらいのはターンオーバーボール。相手にアンストラクチャーな状況でアタックするチャンスを与えてしまったことが、ディフェンスを難しいものにしていたと思います。
PR 津村大志
本当にこの結果は残念です。今日は自分たちのペナルティの積み重ねでこういう結果になってしまった。負けを反省してなんとか次につなげていかなければなりませんが、今日の試合はほんまにペナルティという目に見える部分。特に後半ですね。僕らは後半の失速が課題でしたが、そこでペナルティも重ねたら絶対しんどいんで。
— スクラムはペナルティは出てしまったが、しっかり組めたときには押せていたようにも
はい。前半は特に、感覚的にいいかなと思っていました。
— アタックでは自ら抜けるシーンも。ただそういうプレーが出た時間帯を過ぎると、うまくモメンタムが生み出せなくなった。しんどい時間帯で我慢しきれず、取り急いでしまっていた。細かいディテールの部分がよくなかったかなという風には思います。あとはミス。自分たちでしんどい方向に向かっていってしまった。
— 試合が終わって、チームの雰囲気は
こういう試合になったので正直、よくはなかったのですが、でもここでうじうじしていても意味はないんで。改善して次に繋げるというよりは、次の試合に向けてもう1回、ゼロから準備し始めるくらいの切り替えが大事なのかなとも思います。
— PRとしての競争も勝ち抜いてきている。武器は。
自分の一番の強みはメンタルだと思っています。試合に出られない時期、しんどい時期もあったんですけどずっと準備はしていて、(出場機会が巡ってきたS東京ベイ戦は)やっと来たかっていうぐらい強気な気持ちで臨めたので。
— スクラムのコーチングも少し変わった
自分のスクラムの引き出しに新しいものが増えたという感じです。もともと持っていた知識も使いながら試行錯誤をしています。一気に全部変えるとしんどいんで、いいところといいところをミックスするというか。それで、今はいい状態に持っていけていると思っています。
— 次節に向けて
引き続き、しんどい時間帯にどれだけ我慢できるかというのはありますが、フォーカスを自分たちに向けて、「自分たちが何をするのか」というのが一番の肝になるかと思う。「相手がどうしてくるか」じゃなくて「自分たちはこういうプレーをする。これに強みを置く」というところにフォーカスしないといけない。相手に何かをされてからアクションするのではなく、相手が何かする前に自分たちが先手を打つ。相手を見て、後手に回るんじゃなくて、自分たちからアクションする。それしかないと思う。
LO ハリソン・フォックス
— 3試合続けて先発。長い時間プレーをして掴んだものもあるのでは
いい感じです。ゲームフィットネスが戻り、ラグビーに対する自信が戻ってきている感じがします。「一貫性」がもたらすものが僕を助けてくれていると思っています。試合では、そういうプレーの一貫性の部分と、セットピースであったりタックルやキャリーのようなコリジョン(衝突)など、僕がチームに貢献できる部分にもフォーカスしています。
— 今日の試合の率直な感想を
がっかりしています。なかなか乗れなかった感じがしました。僕たちが調子づくようなプレーを絶対にさせなかった相手がうまかったのかなと思います。勢いに乗せないように、うまくやられた感じがします。
— 最後に奪ったトライの前には、低い姿勢のキャリーでゲインした
あれは僕の好きなプレー。ああいうかたちだとレッグドライブが可能になるので。あの場面は苦しい試合の中でのポジティブな部分。
— ラインアウトは修正ポイントになる
でも自信を失ってはいけない。(目指してやってきているのは)いいラインアウトだと思っているので、実行するのみだと思っています。
— チームを見ていて、自信を失っていると感じる時間帯も
すべてがそうではないが、ときどきがっかりしているときはあったかもしれない。でもそうならずに、「次の仕事にいく」ということをやらなければいけない。
— 後半の入りは人数的に有利な状況。ハーフタイムはまさに切り替えるチャンスだった
全くその通りですね。フォーカスでした。後半を前半と同じようなスタートにしようという話をしました。(そこで神戸Sにいいプレーをされてしまった?)そうです。
CTB ラズロー・ソード
試合前はナーバスだったんですが、1回ボールに触ったら、スイッチオンできたと思います。
— プレシーズンからよく試合には出ていて、先日のトレーニングマッチもすごくよいプレーを見せていた。初キャップを掴めそうだという手応えがあったのでは
はい。ありました。100%ありました。プレシーズンに役割をちゃんと果たせるように一生懸命練習してきたので。コーチともよくコミュニケーションをとり、いろいろなことを教えてもらってきました。自分の強みはボールキャリーだと思っています。ゲインラインをチームにもたらすっていうところ。
— そのあたりの成長が、自信をもたらしていた
それもそうですし、ワイドエッジのディフェンスも成長できたことのひとつです。タックルですね。そこは改善したいと思って取り組んできました。
— お兄さん(イジー・ソード/S東京ベイ)に続いてのリーグワンデビューとなったが、何か話は
しました。「プレシーズン、よく頑張ってきたのだから権利はあるよと。遠慮せずにいきなさい」と。今年はお互いファーストキャップを獲ることが目標だったので、本当に嬉しいです。
試合ハイライト
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=412
文:秋山 健一郎
写真:川本 聖哉