【Review】第5節 vs.クボタスピアーズ船橋・東京ベイ

2025.01.23

後半の勝負所で逆転許す。最終盤は堅いディフェンスに阻まれる

リーグワンは第5節へ。リコーブラックラムズ東京(BR東京)は東京・スピアーズえどりくフィールド(江戸川区陸上競技場)で、5位のクボタスピアーズ船橋・東京ベイ(S東京ベイ)とのビジターゲームに臨んだ。今節も先制トライを奪い試合序盤を制したが、流れが相手に傾いた後半に連続トライで逆転を許し、18-26(前半15-11)で敗れた。

第4節に主将のHO武井日向、またここまでゲームドライバーを務めてきたSO中楠一期らが負傷。それにともないHOに佐藤康、SOにSHを務めてきたTJ・ペレナラが入り、SHに髙橋敏也が入る布陣が敷かれた。PRには昨季アーリーエントリーでの出場は果たしていたが、今季は初出場となるルーキー・津村大志が先発に名を連ねた。

試合の入りは、今節もBR東京がいい動きを見せた。2度のキックチャージを成功させてゴール前スクラムのチャンスを掴むと、これを足がかりにFWとBKが一体となった激しいアタックでモメンタムをつくる。前半12分、WTBロトアヘアアマナキ大洋のパスを受けたSO TJ・ペレナラがトライエリアに華麗に飛び込むと、FB伊藤耕太郎がCVを成功させ7-0。

その後、規律が乱れ15分ほどの間に6つの反則を犯す苦しい時間になるが15分、27分のPG2本による失点に食い止めると、29分に敵陣ラインアウトからのアタックで、WTBロトアヘアアマナキ大洋がトライ。12-6と引き離す。

しかし、直後の31分に故意のノックフォワードでイエローカードが出され1人少ない状況に陥ると、トライを許し12-11と詰め寄られる。だが、そこから冷静にプレーし、前半終了直前のアタックで反則を誘うと、PGを成功させ15-11で試合を折り返す。

後半7分、BR東京が先にカードを切る。PRサミュエラ・ワカヴァカ、パディー・ライアン、FL松橋周平を投入しもう一度流れを掴みにいく。S東京ベイも11分に6人を入れ替え対抗。この局面の変化の中でスコアしたのはS東京ベイ。13分にラインアウトモールから仕掛けた8番が、18分にラインアウトからワイドにボールを動かすアタックで13番がトライを決め、BR東京は15-23とリードを奪われた。

それでもセットプレー、特にスクラムで優位を築いていたBR東京は、23分に敵陣に入って激しく攻め倒れ込みを誘い、PGを決め5点差に詰め寄る。しかし27分にPGを返され18-26。最後の10分はアタックを重ねたが、スコアまでもっていくことができなかった。

第5節を終えて、通算成績は1勝4敗、勝ち点5。順位は11位となっている。

 

5試合を終えて見えてきたもの

新体制下でのブラックラムズが目指すラグビーは、5試合を戦い終えてかなり見えてきたのではないか。チームとしての強みのベースにあるのは頑強な肉体であるのは変わらない。ただやみくもに力勝負を挑むのではなく、FWが短いパスを入れるスキルなども挟みディフェンスを惑わす。後方のスペースが見えたときには、ポジションを問わずキックを蹴るケースも見受けられる。

竹内克コーチらが指導の中心となっているというブレイクダウンも洗練され、ボールをクイックに、クリーンに出せるものになっている。そこにTJ・ペレナラの世界レベルの判断力とパススキルが注入されたことで、ボールのリサイクルのスピードは上がった。おのずとモメンタムが生まれ、ゲインが可能になる。フェーズを重ね前に出ていく際の効率が上がってきている印象を受ける。

「ウイニングラグビーというのは、どこであっても、そこまで大きくは変わらない」。就任直後のタンバイ・マットソンヘッドコーチはそう話し、正攻法を高いレベルでやってのけるために、ラグビーにおける各要素をバランスよく伸ばそうとしてきたようだが、間違いなく成果は上がっている。

第6節以降、そうしたレベルアップを勝利という結果に繋げるために必要なのは、相手が最も集中力を高めるゴール付近でのデイフェンスを砕き、トライを獲りきるための手立てということになるのだろう。「クボタさんは長い時間ディフェンスしていても問題のない、そういう自信のあるチーム。そういう相手には自分たちも長い時間アタックする準備をしなければいけなかった」と話したのはTJ・ペレナラ。“獲りきる”ために必要なのは、新しい仕掛けやアイデア、発想というよりは、激しい攻防の中でもエラーを出さずにアタックを継続させる精度、我慢強さということなのだろう。TJ・ペレナラが「いいエフォートを勝利へと繋げていけるように」と言葉を締めると、隣に座るマットソンHCは「その通りだ」とつぶやいて頷いた。

PR大山祥平も「(課題は)ペナルティとハンドリングミス。ここはもう練習で突き詰めてやるしかない。そこに尽きるからこそ、悔しい」と振り返る。示されたプランは正しく、それをやりきれれば勝てるのだという実感からの言葉であるようにも聞こえる。選手たちにゆだねる領域が広がったという声もある今季のコーチングだが、それは選手たちに「自分たち次第なのだ」という責任感をもたらしているようにも映る。エラーがなぜ起きたのかを細かくレビューし、選手たちが主体的に改善に取り組んでいく。勝利はそんな地道な努力の先にある。

 

メンバー入りを目指す選手たちがトレーニングマッチでアピール

第5節の翌日、1月19日(日)には、東京・世田谷のリコー総合グラウンドで、S東京ベイとのトレーニングマッチが開催され、前日のリーグワンのゲームに出場しなかった選手たちがプレーした。試合はWTB高本とむ、CTBラズロー・ソードといった若いBKがキレを見せ、それぞれトライを挙げて17-14と前半をリードして終える。ソードは狭いスペースを突きトライまで持っていく非凡さで2トライを記録。SHで先発した稲葉聖馬も冷静な球出しでアタックをうまくオーガナイズした。高本は23歳、ソードは21歳、稲葉は22歳と若いが、リーグワンの舞台までの距離は決して遠くないと予感させるプレーを披露した。

後半は2トライを奪われ逆転を許したが、29分にラインアウトモールからトライを返し2点差に迫る。あと1本が奪えず、前日のゲームに続いてクロスゲームを落とすかたち(24-26で)にはなったが、印象深いプレーは多く見られた。笹川大五や千葉太一、新加入のシオネ・アフェムイといったルースヘッドプロップ(3番)を務められる選手たちが準備の整いつつある様子を見せてくれたのは収穫だろう。アフェムイはブレイクダウンでスティールに成功するなどして、早速ファンを沸かせた。

また、試合を通してSOに入った堀米航平、FL湯川純平、WTB西川大輔、FBで入った山村知也といったすでにリーグワンを経験している選手たちも、メンバー入りに向けて鍛錬を重ねている様子をうかがわせた。BK陣からはコミュニケーションを図る声が盛んに飛び交い、コネクトを切らさずに守り、攻めようという強い意識が感じられた。マットソンヘッドコーチは2戦続けてバックフィールドへのキックへの対応を課題に挙げている。解決に向けて、この日躍動した選手たちの抜擢があるかどうかに注目したいところだ。

第6節は2月1日(土)12:00から、兵庫・神戸総合運動公園ユニバー記念競技場で開催されるコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S/現在6位)とのビジターゲームとなる。神戸Sとはリーグワンがスタートしてからは3度対戦し1勝2敗。タレント揃いの強豪から2年ぶりの勝利を目指す。

 

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

いいエフォートを見せているのに結果が出ないというのはすごく残念です。負けてしまい、ボーナスポイントを獲れないというのは本当に残念なんですけど、それでも僕は彼らの見せてくれたエフォートを誇りに思っています。今日もすごくいいパフォーマンスを見せてくれた選手がたくさんいました。ビジターとしてのゲームではありましたが、自分たちもいいプレッシャーをかけられたと思います。ただ、相手はうまくそれを吸収したというか。クボタさんはしっかり自分たちのチャンスを活かして、最後はプライドを持っていいディフェンスを見せていました。コネクションの強いオーガナイズされたチームだと思いました。今日も裏にキックを入れられて苦しめられたので、バイウィークの間、次のブロックに向けて、そこはビッグフォーカスになると思っています

— TJ・ペレナラ選手を10番でプレーさせた理由は

彼がプレーしたいというので(冗談めかして)。ディシジョンの1つは、先週何人かケガ人が出てしまったが、バック3を動かさず、安定させたいというのがありました。(伊藤)耕太郎も成長中の10番なんですけど、後ろを安定させることのほうが大事かなと。経験のある9番の(髙橋)敏也もずっと辛抱強く待っていてくれました。そして、TJもワールドクラスのコンペティター、ゲームドライバー。10番での経験もすごくある。ですので、結構簡単なディシジョンでした。ゴールキックをどうするのかという部分以外は。

— クロスゲームが増えていて、試合数も増えている。ローテーションということも少し考えるか

本当にいいリーグです。接戦が多く、エキサイティングでチャレンジング。先週から9名の変更がありました。それはケガなどの関係で起きているものなんですが、バイウィークを終えて戻ってくるメンバー、よりフレッシュなメンバーが増えてくるとは思います。最初のブロックは終わりましたが、まだ多くの試合が残っているので、一応そこ(ローテーション)は考えたりもします。

 

SO TJ・ペレナラ

この試合もいいスタートを切れました。練習してきたこともしっかり出せて、そこから得点できて、プレッシャーをかけることもできたかなと思います。前半のディシプリンのところは残念でした。そこで相手が自分たちにプレッシャーをかけるチャンスを与えてしまった。ショットも狙わせてしまい、ペナルティからスコアもされているので、この部分はレビューポイントになる。でも、たくさんいいこともやっています。1勝4敗ということで自分たちが求めている結果は出せていないんですけど、4敗の中にも勝つチャンスはあったかなと。そこもしっかりと振り返って、いいこともしてきているということも理解して、いいフィニッシュができるように。いいエフォートを勝利へと繋げていきたいと思います。

— 10番でプレーする上で気をつけたことは

キーフォーカスは全員がちゃんとゲームに入りやすいようにすることでした。ドライバーとしていかにチームをいいポジションに入れるか。また特定の選手にいいキャリーをしてもらおうとか、そういうことも考えながらやりました。すごく楽しめました。敏也は9番としていい選手ですし、イケ(池田悠希)も12番ですごくいいパフォーマンスを見せてくれています。いい未来が待ち受けている素晴らしい選手に囲まれてすごくやりやすかったです。

— 後半は相手陣内に入ったが獲りきれなかった。何を修正するべきだと考えるか

いくつかありますが、まずクボタさんがいいディフェンスをしていた。そこは間違いない。なぜ彼らが倒しにくい相手となっているのか、それを証明していたと思います。あとは自分たちが長く実行し続けられなかった。クボタさんは長い時間ディフェンスしていても問題ない、そういう自信のあるチームだと思うので、そういう相手に対しては自分たちも長い時間アタックするための準備をしなければいけなかったと思います。

— 先発での10番は初めてとのことだが、背番号をもらったときどんな感じがしたか

そこは9番でプレーするときと変わらないというか。僕はいろいろなものを与えてくれたラグビーに感謝しています。必ず儀式のような感じでジャージを見るんです。チームにこの機会を与えてもらっていること。自分の好きなことをやらせてもらっていること。そういうことに感謝しながら。だから、10番だから、というのは特にはないんです。

 

PR 大山祥平

結果は残念でした。でも久々の先発でいつもより長い時間出場できて、スクラムも最近の試合では一番よかったんじゃないかと思います。個人的には次に繋がる試合ではありました。

— 前半をまかされた。どんなことを意識したか

チームとして“finish strong”というテーマがありました。後半に入るとだんだん調子が落ちてくるというのが課題ではあったので。そこでインパクトをというのがあって、パディー(PRライアン)が後半に回ったというのもあったと思います。ただ、前半に出る自分たちが試合を崩しちゃいけないので、とにかく責任を果たそうと思っていました。

— ここまでの試合は後半に苦しんだケースもあったが、スクラムは健闘していたようにも

ヘッドコーチから先発でいくと伝えられたとき、調子を聞かれたんです。個人的な感覚でしかないのですが、だんだん調子は上がってきていると思っていたのでそう答えたら、タブス(ヘッドコーチ)もそういう風に見えると言ってくれた。自己評価とコーチ陣の評価が近かったので、自信を持ってプレーできた。

— どこを修正すれば、惜敗を勝利に変えていけるか

ペナルティとハンドリングミス。ここはもう練習で突き詰めてやるしかない。そこに尽きるからこそ、悔しいんです。あと少しのところでミスして獲りきれない、それで勝ちきれないというのは昨シーズンから続いてしまっていることではある。ただ、そういう試合のあとにテンションが落ちていく感じはないと感じています。

 

HO 大内真

個人としては久々にシーズン戦に出場できたことが率直に嬉しいです。一方で、やっぱり(HO武井)日向がケガで欠場というところで、彼が身体を張ってずっとここまで引っ張ってくれていたので、その代わりだという重みも感じながらプレーしました。日向もすごく応援してくれていたので。

— コンタクトの激しさなど、公式戦でしか味わえないものもあったと思うが

このオフはニュージーランドに行き7試合くらい出させてもらっていたんです。そういう経験も含めてやってきたことが通用したかなというのは、自分としてはあります。緊張するということもなくて、自分が準備していたものは出せたかなと。

— 後半からの出場だった。どんなことを心がけていたか

チームとして“finish strong”ということを意識していました。全てのことにおいて。それも終わりだけよければいいんじゃなくて、自分も入った瞬間から集中してやりきることを目標にしていました。強みのキャリーの部分だったりは、できていたかなと思っています。

— それ以外にS東京ベイという相手に挑む上で意識していたことは

身体が大きくて強いフィジカリティのあるチームというイメージはあるんですけど、自分たちだって身体は大きいしフィジカリティは強みなんだと。そこで引いてはいけないと。特に得点できていない後半のラスト20分、その部分で引いてしまってモメンタムをなくすようなことはあってはいけない。そんな話をしていました。

— ダイレクトに身体をぶつけていくプレーを選んでいく場面も多くあった

ただ、ダイレクトにいきながらも速いラグビーをしたいので、短いパスを入れたり、ブレイクダウンではサポートする選手がしっかり相手を止めて、停滞しないようにすることを徹底したりしています。

 

FL ブロディ・マクカラン

今日は25分くらいだったかな。前の試合から少し空いたので。でも今週はいい準備ができて、みんなめっちゃ自信を感じながら試合に臨めたんです。勝てるぞっていう雰囲気もあった。でかい選手がたくさんいてセットピースは強いけど、自分たちもでかいんだから十分勝負できるって。でも、後半にいいトライをされて、それで厳しくなってしまったね。最後は22mの先に入れてはいたけど、点数が獲れなかったのは残念でした。イージーミス、ペナルティとか。でも、それさえなくせればよくなる。

— 試合の終盤は相手も集中して守っていた。プレッシャーを受けていたか

いや、そういう感じはなかった。焦ってもいなかったし。最後、ペナルティを獲ったところはトライする自信もあった。

— 2週間空くが、その間にどんなことをしたいか

長い時間、試合に出ていた選手もいるのでまずはリカバリーですね。そしてスコアゾーンに入ったときに、どうやって点を獲っていくかの部分。

 

SH 髙橋敏也

もともとTJ(・ペレナラ)は一番好きな選手だったので、9番、10番を組めたのは単純に嬉しかった。すごいやりやすかったです。プレシーズンも何回かは僕が9番でTJが10番というのをやっていたんですけど、今週はそれを本格的にやって、準備の段階でいいコミュニケーションがとれていたので。

— TJに預けるというかたちばかりではなかった

チームとして15人でアタックするというマインドで、TJがどこにいるかではなく、スペースがどこにあるかを探しているので。

— いい試合はするが、勝ちきれない試合が続いている

今日はフィニッシュのところを大事にしていたんですけど。チャンスはあったんですが、やっぱそこをものにできないっていうのが続いてしまっている。2週間、次のブロックまでいい準備をして、いい結果が出せるように。

— 個人として意識したことは

TJに替わって9番に入ることになったんですけど、そこを意識しすぎず、自分のプレーをやろうと。パスのところと9番回りのシェイプ。そこのオーガナイズをしっかりやろうと思っていました。あとは、自分を信頼して選んでくれたチームをがっかりさせたくないという思いですね。でも、今シーズン初めての先発だったので少し緊張しました。

 

試合ハイライト

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=411

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

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