【Review】第2節 vs.東京サントリーサンゴリアス

2024.12.30

同じ轍は踏まない。1点のリードを死守し、今季初勝利

リコーブラックラムズ東京(BR東京)は、ホストゲームとしての開幕戦となるリーグワン第2節、東京・秩父宮ラグビー場で東京サントリーサンゴリアス(東京SG)と対戦。日本代表の FLファカタヴァ アマトと昨季のリーグワンベストフィフティーンに輝いたFBアイザック・ルーカスらキープレーヤーが今季初先発を果たしたゲームは第1節に続き大接戦となったが、猛追する東京SGを振りきり33-32(前半19-20)で勝利した。

先制PGは許したものの、すぐに主導権を握りチャンスをつくっていくと前半6分、敵陣ラインアウトから展開、外を突きWTBネタニ・ヴァカヤリアがトライ。10分にはLOジョシュ・グッドヒューのキックチャージから、14分にはFBルーカスの巧みなキック処理とカウンターアタックから、3連続トライで19-3とした。

しかし19分、反則で自陣に入られラインアウトからの展開でトライを許す。イエローカードが出て数的不利となると、31分にもトライを許し19-17と2点差に。41分には自陣浅めのスクラムで反則を犯し、PGで19-20と逆転を許した。

後半に入ると再びペースをつかみ、敵陣で精度の高いアタックを継続。5分、SH TJペレナラとFBルーカスの連携にSO中楠一期が絡む形で守備網を破りトライ。9分にはNO8リアム・ギルのキックチャージをきっかけに攻め、今度はペレナラとルーカスにCTB池田が連動してトライを奪い、33-20とリードを拡げる。

東京SGは16分、23分と2トライを返し33-32と1点差に詰め寄る。BR東京にもチャンスが数度訪れたがここで加点できず、試合はもつれたまま終盤へ。37分を回ってからは自陣でのプレーが続き、PG1本で逆転というプレッシャーの中での戦いとなったが、反則を犯さずによく守り、最後はタッチライン際を走ったランナーをSO中楠が止めてトライを阻み、熱戦にけりをつけた。

BR東京が東京SGに公式戦で勝利するのは2004年以来。今季1勝目は、チームにとって記念すべきものとなった。プレーヤー・オブ・ザ・マッチにはSHペレナラが選出。

これで勝ち星は1勝1敗、勝ち点は5。第2節を終えての順位は7位となっている。

接点の安定感と自信がもたらす好循環

ゲームまであと2日の木曜日の練習後。タンバイ・マットソンヘッドコーチが、プロテクターを着用しタックルを受け止めていた。相手はPRパディー・ライアン。続いてFBルーカス。豪代表キャップを持つ36歳のベテランと昨季のリーグワンベストフィフティーンを呼び止め、マイクロスキルの指導にいそしむ。

その少し前に、全体練習を終えたコーチ陣がグラウンドでトークを重ねていたことについて有賀剛アシスタントコーチに聞けば、自分たちのコーチングについてのレビューだという。

「木曜日は難しい。試合が近いのでシャープにやらせたくなってしまう。でも、必要な指導はしなければいけないよねと」(有賀AC)

開幕戦は厳しい結果に終わったが、ポジティブであるよう努め、ベクトルを自分たちに向け、適切な影響を与えていこうとする指導者たちの姿があった。

「クリーンにボールを出してくれていたので、それを続けられるように。そうすればトライをつくりだすチャンスを自分たちから生み出せるはず」(SHペレナラ)

開幕戦を終えた際、レジェンドが称え再現を期待したチームのフィジカリティは、この日も一貫性を見せ勝利を引き寄せる主因となった。ブレイクダウンでの個々の強さや激しさはもちろんのこと、ボールを持った選手のリリースや周囲の選手のリアクション、サポートへの入り方などにも精度があった。密集で相手にボールを渡すことになったケースは、おそらく1度しかなかったはずだ。反則の総数がある程度抑え込めているのは、規律意識はもとより、接点の安定とそれがもたらす自信が関係しているようにも映る。

12月初頭、マットソンHCはSHペレナラを“ラストピース”と呼んで迎えたが、2戦を終えその言葉の意味はより深く実感できる。ペレナラという存在がチームを完成に導くものであることは言うまでもないが、チームも彼を加えたとき彼のゲームを支配する魔法のような力を最大限活かすために基盤を着実に固めていた。それが伝わってくる戦いが続いている。

次節は試合巧者・埼玉WKとの決戦

熱戦を終えての記者会見で、マットソンHCは東京SGという相手に対し、「このリーグのスタンダードを設定し、リードしてきたチーム」とリスペクトを語った。BR東京にとっては、リーグワンディビジョン1のチームの中では最も長い期間、勝利できていなかった相手だ。接戦を演じたことは何度もあったが、勝つことができなかった。僅差に迫ることと勝つことの間にあるものを、常に突きつけてくる存在でもあった。そのボーダーを乗り越える記念すべき日となった。

「チームとして一段上のレベルにいけたんじゃないかって、今日の試合で実感できました」(FL松橋周平)

常に高いレベルを目指し、決して満足することなくチームを鼓舞してきた松橋の言葉だけに、選手が感じた手応えの大きさが伝わってくる。ただ、もちろんこれはまだ始まりに過ぎない。マットソンHCもチームを称えながらも、「これからが本当のテスト」と気を引き締める。目指す場所は、まだまだ先にある。

次節リーグワン第3節は、1月4日(土)13:00から東京・世田谷の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場で、今節に続きBR東京のホストゲームとして開催される。相手は昨季準優勝の埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)。フィジカリティをベースに状況に素早くリアクションしていくラグビーで、リーグワンきっての試合巧者に食らいつき、勝利をつかみたい。

「アクセンチュアマッチデー」として開催。試合終了後には特別表彰も

この試合はアクセンチュア株式会社の協賛による「アクセンチュアマッチデー」として開催した。試合終了後には、アクセンチュア株式会社より、この試合でチームに貢献した中楠一期選手に「Greater Than Award」を贈呈した。

監督・選手コメント

タンバイ・マットソンヘッドコーチ

とてもハッピーです。最後にサントリー(東京SG)さんに勝ってからだいぶ時間が経っていると思います。サントリーさんはこのリーグのスタンダードを設定してきて、リードしてきたチーム。自分たちにとってはスペシャルな日になったと思います。でもコーチとしては、あと7日でパナソニック(埼玉WK)との試合があるので、前に進まないといけない。

— 先週(第1節)は残念な負け方をしたが、気持ちを落としている様子がなく、ブレイクダウンでもラインディフェンスでも自信を持ってやっているように見えた

試合後、ロッカールームではクラブ全員を褒めました。すごくいいトレーニングウィークが過ごせたので。ポジティブにいこうというのは意識し続けていました。先週は負けはしましたが、(レベルについては高かった)エフォートだったりフィジカリティだったりを同じレベルで見せてくれて、本当によかった。僕にとってはそこが一番重要なので。

— 後半の入りに盛り返した。ハーフタイムに出したメッセージは

(前半は)ターンオーバーが相手が8、自分たちが2、またラインアウトは62%(相手にボールを渡す場面が多かった)。そういったところの問題解決をしっかりしていこうという話をしました。あとは自陣でのターンオーバーについても話をしました。選手たちがハードキャリー、ハードなディフェンスをするチョイスをしてくれたので、その中でチャンスが生まれたかなと。アンストラクチャーなところなどでも。

— 一貫性をテーマに掲げてきた。前節に続いて試合の終盤に苦しい時間が訪れたが、そこはさらに求めていくか

すごくタフなリーグなので、マッチの最後のほうは必ず苦しむ時間はあるもの。今日は最後まで戦うということにコミットしている姿は見えた。シーズンも始まったばかりで、パナソニック、トヨタ(トヨタV)、クボタ(S東京ベイ)と続くので。これからが本当のテストなのかなと思っています。

HO 武井日向キャプテン

本当に嬉しい結果がついてきたと思います。長く勝てていなかったサントリーさんに勝てたことも嬉しいですし、先週もそうでしたが、接戦を勝ちきれないということが多かったので、それに勝てたことも嬉しい。少しチームとしても成長できたのかなと感じています。タブス(マットソンHC)と同じになりますが、シーズンはここから続いていきますし、勝っても負けても次の試合が来るので、来週に向けしっかり準備していきたいなと思っています。

— チームに昨季との違いを感じるか

全員がやるべきことをやろうとしているというか。これもタブスが言っていましたが、試合までの1週間、チームとしていい準備ができていて、そこはレベルアップできているのでは。ノンメンバーを含めた選手たちがみんなで本当にいいアタック、いいディフェンスをしてくれるおかげで、自分たちもいい準備ができ、それが結果に繋がっていると思う。あと昨季は出せなかった一貫性の部分。今年はまだ2試合しかやっていませんが、先週と同じフィジカリティ、気持ち、ハードワーク、エフォートが出せた。これを毎試合見せていくことが大事だと思いますが、先週から今週にかけて再現できたことは、レベルアップできているところではないかと思います

— TJ・ペレナラ選手がチームに与えている影響は

リーダーシップをすごく発揮してくれていますし、ラグビーの理解度もすごく高く、9番として非常によくコントロールしてくれています。また彼自身が本当にハードワークする。アクションで見せてくれる選手なので、僕たちもやらなきゃいけないと思わせてくれる。そういう相乗効果が生まれていることを感じます。

— 試合の後半、テストマッチのような反応の速さを感じた。ゲームに入っていくメンタリティなどについて変化は

ラグビーは判断のスポーツだと思うので、誰かが判断して、それに対していかにしっかりリアクションできるか。アタックコーチの(有賀)剛さんも、判断に対してリアクションしろという話をしてくれるのですが、瞬間のディシジョンに対しリアクションしていこうとする姿勢は、チームとして成長している部分だと思います.

— 最後の局面、どんな気持ちで見ていたか

やってくれると信じていました。メンバーは役割をやりきってくれましたし、最後までハードワークしてくれました。最後の(SO中楠)一期のところもそうだったと思いますけど、あきらめない気持ちをチームから感じていたので、本当に信じて見ている感じでした。

HO 佐藤康

勝てたことが嬉しいし、チームとしても大きい。開幕戦でああいう負け方をして、僕らのリザーブからの仕事っていうのも大事になってくるってところで、インパクトプレーヤー、リザーブメンバーもしっかり準備していこうと。最後、いいディフェンスをして粘ることができたので、そこはよかったんじゃないかなと。

— 前節はリザーブメンバーとしては悔しさもあったのでは

でも、やってきたことは間違いなかったので。負けて落ち込むのは簡単ですけど、切り替えてもう1回ハードワークしようと声をかけあっていい準備ができた。それで結果が出たと思う。

— 終盤のスクラムは我慢の場面が続いた。試行錯誤していたのでは

レフリーとのコミュニケーションもとっていたんですけど、対応が難しくて。最後のスクラムは、ここで反則したらPGを狙われるというのはあったので、自分もしっかり声をかけてもう1回集中を求めて。ただ自分としてはネガティブな感じはなく、緊張で押しつぶされて自分たちのスクラムが組めなかったとか、そういうのはなかった。ただ、結果としてあれを見せてしまうと、ほかのチームに分析されると思うので、もっと修正してしっかり組めるようにやっていきます。

FL 松橋周平

相手のアタックに対しては、しっかり低くタックルして、2枚目がしっかりファイトすれば、いい方向に向かうと考えて戦っていました。どちらかといえばディフェンスよりはアタックに強みのあるチームではあるので、こちらがアタックするときは我慢強く継続して、ディフェンスをさせたいと思っていました。そうすることで崩せた場面もあったのと思う。

— 接戦を勝ちきった

チームとして一段上のレベルにいけたんじゃないかって、今日の試合で実感できました。これまでのブラックラムズはいいところもあるけれど弱い部分もたくさんあった。新しいヘッドコーチになり、新しいメンバーが入ってきて、全てを捨てるのではなく、もう1回信じて、1人1人が自分の役割を意識して、瞬間瞬間にしっかり集中する。1人の判断に対して全員がリアクションする。そこをしっかりやっていくことで、いいラグビーができるようになってきたのかなと。

先週のラグビーで見えた課題を修正し、サントリーを相手に自分たちのラグビーができた。何よりもそれが大きい。次のパナソニック(埼玉WK)戦は自分たちが変わってきていること示すいいチャンス。もちろん勝ちたいし、彼らに勝つための準備に集中し1週間を過ごしたい。

— 今季は自分たちで考えてプレーすることも課されている

もちろんシステムはあるのですが、その中でも前を向いて。システムから外れたときにも全員でリアクションするというか、そこが大事になってきていています。やっていて楽しいですよ。

— 接点からクリーンにボールが出てきている

今まではジャッカルされて相手にモメンタムが持っていかれていたんですけど、今季はブレイクダウンまわりのトレーニングをしつこく積んできたので。速くレースに入って、しっかりボールをキープする。細かいミスも減らせているのでアタックを高い割合で継続できている。今日もそれはできていて、強みになっていると思う。今日はFWとBKもよく連動していました。

NO8 リアム・ギル

誇らしく思う。このチームは数シーズン、こういう接戦を落としてきた。だからこそ大きな意味を持つ勝利。それを喜ぶみんなの反応が見ることができて嬉しいです。

— このチームでプレーするにあたり、どんなことを心がけているか

システムやストラクチャーに自分をはめてやっていく。コーチも新しくやってきていて、ワールドクラスプレーヤーもいる。その中で自分は、システムの中でプラスになれるように。経験を生かして、ゲームにビッグモーメント、コントロールをもたらせるようにすることも意識しています。できる限りこういう結果を出し続けられたらと思う。

— このチームの新しいスタイルは自分に合うと思うか

すごく好きです。TJ(SHペレナラ)もいるし、アイザック(FBルーカス)、代表合宿に呼ばれた(SO中楠)一期のような選手もいる。彼らにディシジョンさせていく戦い方。

いいトライも獲れているし、相手にタフなディシジョンをさせることもできている。ストラクチャーもあるが、選手に重きが置かれている。自分たちが見たもので判断するスタイル。

— 来週は埼玉WKとの対戦となる

すごくフィジカルで、いい判断をするチーム。ベーシックなラグビーとは少し違う。だから楽しみですね。

SO 中楠一期

タイトになったゲームを最後に落としてしまうということが多くて、そういう悔しい思いは本当にしたくなかった。最後の5分ぐらいシーンも逆転される未来がよぎったりしたけれど、本当にそれは嫌だったので。あそこで規律を保って守りきれたのは本当に大きい。

— 80分間を通し、ブレイクダウンやディフェンスで意識高く戦っていたようにも見えた

印象としてはサントリーの方が強いというのはあったかもしれないが、僕らは全然そうは思っていなくて、どのチームであっても倒せる力はあると思っていました。そのための準備を1週間、ノンメンバーも含めたみんなでしてきた。そうして準備したものを試合に出るメンバーがグラウンドで遂行することができた、ということだと思う。

— 10番として起用されていて、2戦目でこういう結果が出せた。自信になったのでは

そうですね。とチームしても自分たちには力があるんだと信じてやってきましたが、結果がついてこない以上は、本当の意味で信じきるのは難しいというのはあったと思う。でも、こうやって、シーズンの早い段階で力を示せたのは大きい。ここからさらに前向きに取り組めると思います。

— ハーフ団としてペアを組むSHペレナラとの関係は

アタックの中にもTJのアイデアはありますし、TJが来たことでできることは増えた。レジェンドだなとも感じますし、大きな力になっていると思います。TJの発想もまだあると思うのでそこにアジャストするのは、もう少しみんなできるかなと思います。さらに新しい脅威をつくれると思う。

 

CTB 池田悠希

勝てて嬉しいですね。初戦も落としていたし、サントリーに対しては過去20年勝っていないと聞いていたので、今日の勝利はチームにとって大きな勝利だったと思います。チームは“ビート・サントリー”というのを掲げて、1週間サントリーというチームを倒すためのいい準備ができていたと思います。それが結果として表れたかなと。新しく加わった選手たちとの連携もまだまだ深まっていくと思うので、さらに強くなっていけると感じています。

— 手応えを感じた部分は

最後のゴール前でのディフェンス。ペナルティをせず、しっかり規律を守ってプレッシャーをかけることをチームとして出せていたのはよかったのかなと。

— 後半の入り、流れを引き戻した

ハーフタイムには、僅差だったので “もう1回ファーストパンチにいこう(先手をとっていこう)”と話していました。

試合ハイライト

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=407

文:秋山 健一郎

写真:川本 聖哉

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