【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2023-24 第4節 vs.花園近鉄ライナーズ

2024.01.10

「我慢」からの「スイッチオン」で3トライを奪取

2024年の初戦となったリーグワン第4節は、花園近鉄ライナーズ(花園L)を江東区・夢の島競技場に迎えてのホストゲーム。ブラックラムズ東京(BR東京)は、試合開始直後よりFWのフィジカルを前面に出して攻め込み、守る花園Lの規律の乱れを誘い数的有利をつくると、スクラムトライで先制(13分)。さらにBKがエッジのスペースをうまく攻め、西川大輔(16分)とネタニ ヴァカヤリア(22分)の両WTBがトライを奪い21-0とスコアを重ねる。キック処理のミスから1トライ(25分)を許したが、リードを守ったまま前半を終えた。

後半もフィジカルでの優位を保ち、隙を見せずに戦う。SO中楠一期のPG(6分)、モールを粘り強く押しきってのFLアマト ファカタヴァのトライ(22分)で29-7。さらに敵陣でのラインアウトからFBアイザック ルーカスにつなぎ、ギャップを鋭く抜けてのトライ(25分)。長身の相手8番にエッジを破られトライ(34分)を奪われたが、敵陣ゴール前スクラムからの左展開でWTBヴァカヤリアがトライ(40分)して41-14でノーサイド。今季初勝利を挙げたBR東京は、勝ち点5(3トライ差をつけての勝利によるボーナスポイント1含む)を加え、9位(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)との差を1とした。

待望の今季初勝利を目指し、チームがやろうとしていたことは明確だった。SH髙橋敏也、SO中楠一期というキック力に長けたハーフ団がエリアの獲得に重きをおいたゲームコントロールを遂行、その上でフィジカルバトルに確実に勝ち、セットプレーでも圧力をかけていく。その全てに成功した。

「アタックをすれば相手にとって危険なプレーができる選手はたくさんいる。だからアタックしたくなるけれども、勝利のためには正しいエリアでプレーすることも必要。(中略)我慢して、隙が見えてきたときにスイッチオンしようと」(SO中楠一期)

「(敵陣でのアタックは)もう少しダイレクトにいってスペースを空けたかったが、パスが多くなってしまった場面も。そこはまた修正できるかなと思います」(SH髙橋敏也)

これらの言葉からは、ハーフ団はFWを前に出すこと、敵陣に入ってからはFWのフィジカルを生かした我慢強いアタックを念頭に置いていたことがわかる。最初のトライはまさにモールとスクラムをひたすら押し込み続けた、我慢の末のものだった。

だが、この攻防で相手に出たイエローカードで数的有利を得ると、チームはスイッチを入れる。敵陣浅め中央のスクラムから、左サイドに多くがポジショニングしていたBKが、右に大きく空いたスペースになだれ込む。NO8ネイサン ヒューズからパスを受けたSH髙橋が自ら走ることで、人数の差はさらに大きなものになった。デコイランナーのCTBロトアヘアアマナキ大洋の背後を走るSO中楠一期へパス。さらにFBアイザック ルーカスからWTB西川大輔へ。美しいシェイプでボールをつなぎトライに至った。

3つめのトライも数的有利を得ている状況で生まれた。これは自陣からのアタックからのものだ。右サイドでのSO中楠のハイパントキャッチから繋ぎ、中央へのFBアイザック ルーカスのキャリーでディフェンスを引き寄せると展開、外に立っていたFLアマト ファカタヴァとヴァカヤリアがWTBが2人いるかのようなスピードで走りエッジを突破した。自陣からでも攻めていくべき局面であること、またディフェンスを翻弄しながら外のスペースにボールを運べばトライが獲れるというイメージの共有がうかがえるトライだった。

試合を通じ見せた一貫性。意思統一を感じた80分

リードを拡げてからも、一貫性のあるプレーが続いた。エリアへの意識を保ち、前半を反則0で終えた規律意識もキープして80分でわずかに3にとどめた。接点やセットプレーでプレッシャーを受けず、逆に与え続けることができていたからこその数字といえるが、不用意な反則も出さなかったことはチームの成熟がうかがえた。

後半最初のトライはラインアウトモールでのものだった。押し込みながらも一度分断され最後尾のHO佐藤康が右前方に飛び出せばそのままトライが狙えそうにも見えたが、そのまま押し続ける。ここに再びFWが加わってインゴールまでプッシュした。この日、ポイントとなっていたであろうモールでのトライへの執念のようなものを感じた場面だ。決めごとを守り続けること。状況に合わせ機転を効かせること。ラグビーではどちらも重要だが、ここは決めごとに執着し、結果に繋げた。

チームが1つの生き物のように意思を揃え、決めごとにこだわりつつも適切な範囲でチューニングしながら80分間を戦い抜く。「若い選手だが、成熟している」とピーター ヒューワットHCが評価するSO中楠一期とそれをサポートする面々によるゲームコントロール。それを理解した上で自分たちの仕事を果たした全メンバーの頑張りによってもたらされた快勝だった。

プレイヤー・オブ・ザマッチにはNO8のヒューズが選出。試合の入りから攻守に強度をもたらす激しいプレーは、この試合をどのように戦うべきかを示す“旗”を掲げているかのようにも見えた。強さと鋭さ、また巧さでブレイクダウンを制圧するヒューズは昨季以上にリーグワンへのフィットを感じさせている。激しさと献身においては、LOマイケル ストーバーグバーグも試合を重ねるにつれて強い印象を残す。ラインアウトのリードはもちろんだが、巧みなキックを蹴る相手ハーフ団に対する執拗なチャージも、その効力を下げていたのではないか。

次節は1月13日(土・祝)、ニッパツ三ツ沢球技場にて14:10キックオフの横浜キヤノンイーグルス(横浜E)戦となる。昨季3位に入った実力者に対しては、今節以上に徹底したゲームプランの遂行が求められる。連勝で上位浮上への足がかりをつくりたい。

「線虫エヌノーズマッチデー」として開催。試合終了後には特別表彰も

この試合は株式会社HIROTSUバイオサイエンスの協賛による「線虫エヌノーズマッチデー」として開催した。試合終了後には、HIROTSUバイオサイエンス社より、この試合でチームに貢献したネタニ・ヴァカヤリア選手に「N-NOSE賞」を贈呈した。

監督・選手コメント

ピーター ヒューワットヘッドコーチ

皆さんこんにちわ。パフォーマンスには本当に満足しています。今週やろうと言ってきたことをしっかりやり続けてくれました。開幕からの数週間、目指してきたパフォーマンスができたのでは。最初の3試合は自分たちの思うような結果がついてこなかったが、でもその中でもスタッフや選手が信じることをやめずにやり続けてくれたことを誇りに思います。もちろん、ここで止まらず、これからもしっかりと成長しながらビルドしていけたらなと思いますが。

ー2週間のブレイクを経て、思うようなかたちになった。どんな過ごし方を?

特別なことはやっていない。自分たちがどういうプレーをしたいのかという部分はクリアだったので、信じることをやめず準備を進めたということ。リーダーたちがポジティブに声をかけ続けて、アクションでしっかりとみんなを引っ張ってくれた。誇らしいです。

ーSO中楠一期の先発に至った経緯を。

ちょっと変化も必要かなというところ。SO中楠はプレシーズンゲームにも多く出ていて、いいトレーニングを重ねてきていた。リーグが開幕してから3週間はちょっと一歩引いてというか、どういうリーグなのかを学びながら裏でやってもらっていたのですが、ついに彼をプレーさせる時がきた。いいパフォーマンスを見せてくれたと思います。若い10番ですが、すごく成熟している。いいところはミスがあっても気にせずにしっかり切り替えてやれるところ。世界のトップの10番でもミスはするものなので。

FL松橋周平ゲームキャプテン

出ている15人が同じページを見てゲームプランを遂行できた。「小さなことをしっかりちゃんとやろう」ということをずっと言ってきたが、誰もがそれをしっかり意識していた。コミュニケーションだったり、しっかり集中することだったりがすごくできたことがいい結果につながったと思います。

それでも隙が生まれるシーンもあった。次のキヤノンさん(横浜E)のような強い相手と戦うときにはやってはいけないことだと思うので、 80 分通して一貫性を保って、やるべきことをやる。精度を高くやることが大事になってくる。もっと磨けると思うので、そこに対してはもっと来週プッシュしてやっていきたいと思います。

ー「小さなことをしっかりちゃんとやろう」と伝えた理由は?

試合ごとにフォーカスポイントがある。現状は言葉こそ少し違うけれどだいたい同じで、自分たちらしいラグビーをやろうということ。そのためには、全員がいいプロセスを踏んで、小さなことをしっかりやることに尽きるので。

PRパディ ライアン

ースクラムが非常に安定していた。

ハードバトルではありました。花園Lもいいチームで、いい対戦相手でした。そういうチームに対していいスクラムが組めて、勝利に貢献できてハッピーです。FWパック全員が頑張ってやってきたことが報われたという思いです。

ースクラムに成熟を感じる。

谷口祐一郎や大山祥平のような若いPRが試合でいいパフォーマンスを見せる一方で、シニアメンバーも負けずに頑張っている。その結果が出ているのでは。来週はいいチャレンジになる。

ーモールも精度が高まった。

そう思います。そこも時間をかけてやってきたところなので。オーストラリアでは「FWは勝利を決める。BKはどれだけ点差をつけられるかを決める」と言ったりするのですが、今日はまさにそういうゲームになったのかな。FWが自分たちの仕事をしっかりして、そのFWのパフォーマンスの上に、BKのWTB西川、FBルーカスやWTBヴァカヤリアが大きなプラスを乗せてくれたと思います。

SH髙橋敏也

一番心がけていたのは、いかにFWを前に出すか。エリアのところ。敵陣で戦うために自分のキックがうまく使えたらと。それと敵陣には入ってからのアタックですね。

ー敵陣に入ってからは、シンプルに我慢強く攻めていたように映った。

もうちょっとダイレクトにいってスペースを空けたかったんですけど、ちょっとパスも多くなってしまった場面も。そこはまた修正できるかなと思います。

ーSO中楠(一期)のデビュー戦を支えた。

國學院久我山中高ラグビー部の後輩なんで、そのデビュー戦、一緒にハーフ団を組めて嬉しいなと思いながら。試合に向けて2人でどうやってアタックしていくかを話し合ってきたし、試合中も2人で話し合いながらできた。

ー元ワラビーズ(豪代表)のハーフ団とのマッチアップ。

試合中に意識したりとかはなかったですけど、メンバー発表されたときには、2人に久我山中高コンビでどう立ち向かうと、個人的には燃えていました。

SO中楠一期

細かいところでミスもありましたけど、結構思いきってやることやれたかなっていう印象ですね。デビュー戦だという考えは自分の中になくて、自分が何をすべきかとか、チームをどうやって戦わせるかみたいなところ。やらなきゃいけないことで、頭の中はそれだけでした。

ー手応えを感じたのは?

結構スペースが見えた。キックのミスもあったんですけど、スペースにうまく蹴ってチームを前に出して、勝つために必要な判断をし続けられたかなと。

ー入団からの1年で成長できた部分は?

大学のときは、勝つためには自分のゲームメイクが欠かせないチームでプレーしていたので、その経験を自分の強みだと考え、そこを磨いてきた。前のシーズンは試合に出ることはなかったんですけど、出てもやれる自信はありました。自分のスキルアップだったりナレッジ(知識)を増やすことに取り組み続けてきました。

ー戦い方はこの3試合と少し違った。エリアへのこだわりがやや強かったようにも。

勝つために必要な選択だと思うんで、それをしたっていう感じ。ミーティングの中でもこの3試合ゲームメイクのところが課題に上がっていたので、その中でやるべきことをやりました。アタックをすれば相手にとって危険なプレーができる選手はたくさんいて、アタックをしたくなるんですけど、正しいエリアでプレーするのは必要なことだし、課題だったんでそういうところは意識してプレーしました。ミーティングでもしっかり我慢して、隙が見えてきたときにスイッチオンしようとずっと話してきていて。自分たちが先に何かを生み出そうとするのではなく、とにかくまずは我慢しようという話をしていました。

CTB栗原由太

最初の3戦は僕たちの思うようなラグビーができなくて、年も変わったので、僕が今日からリセットしようなんて話をしていて、強度の高いラグビーができたんじゃないかなと。

ーその強度の高さを支える、一貫性の高いプレーが続いている。

まだまだです。もっと質のいいタックルをしたい。今シーズンはワークレートと質にこだわっていて、ただ走るだけじゃなくて、ブレイクダウンの攻防だったら、相手をしっかりはがしきる。タックルだったら仕留めきる。受けになるんじゃなくて、いいタックルを決める。そこにこだわっている。

ー結果が出ない中での年越しだったが。

ネガティブな感じじゃなかったし、今日またリスタートということでチームの雰囲気はよかったと思う。結果がやっと出たので、これをどうやって次につなげていくかが大事かなと思います。

WTB西川大輔

ー前半、リードを拡げるトライを挙げた。

(相手のBKが)1枚少ない状況で、うまくうちの選手たちが繋いでくれたチームのトライ。切り替えて、今年最初のゲームをラウンドワンのつもりで戦おうって話をしていて、みんなうまく切り替えていい入りができたんじゃないかなと思います。

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=382

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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