【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2023-24 第3節 vs.埼玉パナソニックワイルドナイツ

2023.12.27

「自分たちは何者なのか」を再確認し、取り戻したBR東京のディフェンス

昨季は準優勝、今季も開幕2連勝でトップを走る埼玉ワイルドナイツ(埼玉WK)の本拠地・熊谷に乗り込んでのビジターゲーム。ブラックラムズ東京(BR東京)は、この実力者との戦いをHO武井日向とFLアマト ファカタヴァというキープレーヤーをケガで欠いた陣容で戦わねばならない状況に見舞われた。風下の陣地から攻めた前半は、自陣で与えたラインアウトからモールでトライを奪われ先制を許す(10分)。そこから粘り強く攻めて敵陣ゴール前まで前進するとPGで3点を返し3-5(24分)。直後にトライ(26分)を奪われ点差を拡げられると、前半終盤に1DG(34分)、2トライ(38分、41分)を許し3-25でハーフタイムへ。

リザーブに回ったNO8ネイサン ヒューズと公式戦100キャップ達成のメモリアルゲームを迎えたLO柳川大樹を入れて臨んだ後半は、キッキングゲームから好機をつくられトライ(10分)を許すが、直後にキックを捕球したWTBネタニ ヴァカヤリアが裏に抜け出すと、サポートしたFBアイザック ルーカスにつなぎ中央にトライ(13分)を奪い8-32とする。

しかし、ラインアウトモールでのトライ(29分)と、敵陣でのラインアウトのミスで失ったボールをつながれてのトライ(34分)で点差を拡げられる。最終盤に自陣スクラムから展開し右サイドを破って敵陣に入り、FBルーカスのブレイクからWTBヴァカヤリアにつないでトライ(37分)。17-44として一矢報いたものの、勝ち点を伸ばすことはできず順位は9位から10位に落としている。

ブラックラムズ東京らしいフィジカルで泥臭いディフェンスを見せられなかった前節から、どれだけ改善を図れたか。それが何よりもポイントとなったゲーム。結果からいえば埼玉WKに対し「らしさ」を示せた場面は少なからずあった。前半からトライを重ねられたことでクロスゲームにはならなかったが、プロセスに目を向けると決してネガティブな部分ばかりではなかった。

BR東京のラグビーの根幹を支えるディフェンスは一定のクオリティを保ち、ピーター ヒューワットヘッドコーチが「部分的に自分たちらしさを見せられた」と称えた。埼玉WKは力勝負だけではなく、巧みにスペースへとボールを運ぶアタックを見せてくることから、ブレイクダウンで体をぶつけ合い、そこで圧倒していくようなシーンはそこまで多くはなかったが、スキルをまじえ、ディフェンスをずらしながら攻めてくる相手を、諦めずに追いかけて止めるようなプレーが多く見せた。

手元の集計だが、この試合の埼玉WKのノックオンは8回あり、その半数以上が守るBR東京のプレッシャーが影響したものだった。ハードなディフェンスから3つのノットリリースザボール(NO8木原音弥、FBアイザック ルーカス、NO8ヒューズ)も奪っており、相手のアタックに対しプレーの高い強度を保って粘り強く挑んでいく姿勢は、明確に示した。

実際に奪われた7つのトライを整理すると、4つがゴール前のラインアウトからモールを使われたもの。ラインアウトのミスを突かれたものが1つ。相手BK陣のキックスキルを生かして崩されたものが2つ。埼玉WKの持ち味ともいえるアンストラクチャー(入り乱れた)な状況をつくりだしてトライに持っていくケースは限られていた。そこにはBR東京のディフェンスの一定の成果をうかがえる。

アタックでも感じられた「らしさ」の回復。連携の熟成も進む

アタックでも、強度やエナジー、エフォート(努力・労苦・尽力)という部分で改善があった。前節との違いは、シンプルなボールキャリーでフェイズを重ねていくシーンが多かったこと。また、その際にサポートする選手のスピードも前回よりも速く、ゲインやテンポアップに繋がっていたことだ。特に風下から攻めていた前半は、キックを抑え攻める方向性が明確だったこともあってか、迷いなく我慢強く、一体感を持ってフェイズを重ねていくシーンが見られた。

また、前節はSOマット マッガーン、FBルーカスというゲームコントローラーが繰り出すキックとチェイスする選手がうまく連動せず、プレッシャーをかけることがあまりできなかったが、その部分も改善された。

「ランとキックのバランスであったり、キックの種類。コンテストキックを増やそうとか、そういったことを話しあってきた」(CTB礒田凌平)。そうした部分のビジョンの共有が進んだとみられる。フェイズアタックと合わせて、チャンスを大きく拡げるための仕掛けについてもブラッシュアップは進んだ。

前半20分、SOマッガーンが裏に蹴ったキックをWTBヴァカヤリアとCTB礒田が追い、ゴールライン付近で捕まえインゴールに押し込んだシーンや、同34分にFBルーカスのキックがWTBヴァカヤリアに入り、相手のオフサイドを誘ったシーンなどは、前節は見られなかった連動だったように映った。

生み出された2つのトライは、いずれもFBルーカスとWTBヴァカヤリアのコンビネーションからのものではあったが、両者の個の力のみで奪ったものではなかった。後半13分のトライはヴァカヤリアがキックキャッチから、相手8番(ジャック ・コーネルセン)と14番(長田智希)という日本代表2人の間を破る豪快なカウンターアタックから生まれたが、その前段ではキックを放つ10番に対し、FLジェイコブ スキーンがしっかりプレッシャーをかけていた。

同37分のトライも、自陣での安定したスクラム。ルーカスをポジションチェンジさせてのサインプレーからの右サイドの突破。敵陣でのHO小池一宏のハードなキャリー。サポートの接点への素早い寄せを通じたクイックボールの供給。ルーカスの突破の前にこれだけの好プレーがあった。チームとしてのアタックの精度は確実に高まってきている。

次節は2024年1月6日(土)14時30分キックオフの近鉄花園ライナーズとのホストゲーム。江東区夢の島競技場での開催となる。強度のあるプレーを取り戻しつつあることを考えれば、2週間のインターバルのテーマは、ラインアウトやモールディフェンスの精度の回復というところになりそうだ。互いに今季初勝利を目指すチームによるマストウィンの一戦。激闘必至の戦いに、泥臭く挑みたい。

監督・選手コメント

ピーター ヒューワットヘッドコーチ

最初に100キャップの2人におめでとうね。内田(啓介・埼玉WK)選手とLO柳川(大樹)。100キャップは本当に特別。(以上日本語で)埼玉WKさんはすごくいいチームで、セットピースで苦労して、最初はディシプリンもよくなくて、(自陣に)侵入させてしまって簡単に(トライを)獲られるようなシーンがあった。いいチームにたくさんチャンスを与えれば、やはり仕留めてくる。

ーディフェンスで体を張る場面も。前節から、どんなことに取り組んで今日に臨んだのか?

メンタリティの部分で、いつもと違ったねという話をして。今日はディフェンスなどで、部分的に自分たちらしさを見せられたのかなと。リーダーを中心に選手たちは頑張ってくれたと思います。ここから精度の部分についても、もう少しバランスよくやっていきたい。

ー次節は2週間後。どんなところを変えていくか?

正直いうと傷だらけの状態。少し選手がいないシチュエーション。ロトアヘア兄弟、FLアマト(ファカタヴァ)、HO武井(日向)……まずは数日間リセットしたい。シーズンでは少なくとも16試合を戦えるが、まだ3試合終えたところ。自分たちがいいプレーしているときはどういうときなのか、そういう絵は見えてはいる。選手たちは戻ってくるので、自分たちがたどっているプロセスを信じ準備して、週末にベストを尽くす。力を見せられれば、相手にとって本当に倒しづらいチームになれると思っている。

SH山本昌太ゲームキャプテン

100キャップを達成する選手が両チームにいるという、お互いにとって特別な試合。両選手におめでとうございますと伝えたいです。試合に関しては、結果はかなり残念。ゲーム前に「自分たちはどういうチームなのか」をしっかり示そうと話して試合に臨みましたが、ヒューイ(ヒューワットHC)がいったように、埼玉WKさんのようなチームに対し、チャンスを何回もあげるとこういう結果になる。

ー「自分たち」らしさとは?

誰が見ても「ブラックラムズはディフェンスをしっかりやっているね」と思われるようなディフェンス。泥臭さであったり、ラフ(荒々しさ)でタフなところで、それは部分的に見せられた。ただ、80分間を通してそれを続けることはできていない。開幕節はよかったが、第2節はだめで、今日はまた少し戻して。こういう風に毎週波があるところもまだ未熟。成長していきたい。

ー相手の攻撃の読みづらさなどあったと思うが。敗因はどこにあったか?

自分たちのゴールラインに迫られたとき、ディフェンスで我慢しきれなかったこともあるが、何よりもその(ゴール前の)エリアに何回も入られてしまったこと。そこに相手をいれないことが重要だった。

SOマット マッガーン

いいアティチュード(姿勢)は持っていたし、エナジーやエフォートは全体的によかった。精度は少し欠けていた。特にディシプリン、セットピースのところ。

ーアタックで前に出ていけていた場面も。

特に前半、我慢強く、しっかりフェイズを重ねることはできていた。これも自分たちのゲーム、自分たちらしさなのかなと。フェイズアタックをして、プレッシャービルドをして、ミルキー(FBアイザック ルーカス)やWTBネタニ(ヴァカヤリア)を解放する。そういうかたちをベースとするプレーは、今週よくできたところかなと。

ー後半のトライも、そうしたかたちだった。

アタックのシェイプがあって、その中でスキルを使う。それをもっともっと見せていくことは大事かなと。そこはもうビルドし続けるしかない。それができれば本当に危険なチームになれる。ディフェンスがうまくできている場面もあったし、何回かは対抗できていたのでは。

敵陣でのラインアウトでミスが出てしまったので、そういうチャンスをしっかりつかんでいきたい。頻度も増やしたい。22mの外ではできていたのだから、できると思う。

ーFBルーカスとのポジションチェンジも見せていた。

それぞれ得意分野を活かせるように。「ルックス」というコードネームでトークしているんだけど、それを変えながら。僕が自分を生かせるエリアにいけるのなら僕はそこにいこうとするし、ミルキーも絶対にボールが欲しいシチュエーションが来たときにはそこに入ってくる。今季から自分がカテゴリーAになり、プレシーズンの準備段階から、2人で一緒にプレーする時間が増えると想定していろいろと話してきました。そこはさらにアピールしていきたい。

CTB礒田凌平

今季初スタメンだったので、しっかりスタートからフィジカルに入っていくことを意識していました。自分に期待されているのはハードワーク、タックル、ディフェンスだと思うので、そこにフォーカスして。入りはよかったと思うので、継続していきたい。

ーディフェンスに加え、アタックでかたちをつくれていた場面も。

素早くセットして、我慢してアタックし続けるというのをターゲットにしていて、特に前半は長くフェイズが重ねられた場面があった。前節はゲームコントロールのところに少し課題があったので、9、10、15番の選手が中心となり、ランとキックのバランスであったり、キックの種類。コンテストキックを増やそうとか、そういったことを話しあってきた。

ー次節に向けて。

前節から改善されてきたとは思うので、ここでもう1回自分たちにフォーカスをあてたい。相手がどこだからとか、僕らはそういうことを考えて何かを変えるチームではないので、自分たちがやるべきことを何なのか、自分たちは何者なのかというところを意識して、花園Lに対し本来の力をしっかり出せるように。ネガティブになることなくやっていきたい。

LO柳川大樹

いいようにやられてしまったって感じですかね。前半はベンチから見ていて、いいところもたくさんあった。でも、風もあったりしてそこでの対応力はやっぱりまだまだかなとも。そういうところで埼玉WKが一枚上手。後半は、プレッシャーがかかったときにポン、ポンとゲインラインを取られてペナルティを犯すというのがパターンみたいになってしまって。

ーアタックは。これまでに比べれば、フェイズは重なったようにも。

うーん。フェイズを重ねていたものの、という感じ。まだまだ。

ー2週間空けての次節に向けて。

みんな、一度リフレッシュして帰ってきてほしいです。それが必要なタイミングだと思うので。

ーそして公式戦100キャップを達成。記念Tシャツには座右の銘の「無事是名馬」(ケガをあまりせず走り続ける馬も名馬である)との言葉も。

あっという間でしたね。離脱それなりにはありましたが、1年間ずっとプレーできなかったシーズンはなかったと思います。ラグビーなのでケガはしてしまいますけど、できるだけ少なくという思いでやってきました。まだまだ元気なので、もっと。次は150試合ですね。

ーキャリアを重ねて見えてきたことは?

練習をしているときに、コーチが求めてることが以前よりも深くわかるようになった、感じとれるようになったのはあります。自分に対しても、チームに対しても。

ー入団から13シーズン。楽しくやってこれた?

楽しくないですよ(笑)。冗談です。でも、なんていえばいいんだろう、楽しいですよ。楽しいけど、痛いのは嫌いですよ。練習、好きではないし(笑)。でもやってしまうのがラグビー。16歳からはじめて、仕事の一部。生活の一部になっちゃったんですよね。

ーリコーブラックラムズ、ブラックラムズ東京は、自分に合っていた?

あっていたと思います。勢いがあるチーム。試合でもそう。最初の2011-12シーズンが7位。入替戦に回ったこともあったけど、力を取り戻して上位に挑戦してきました。チャンスを引き寄せて、今度こそはブレイクスルーを果たして上位に入りたい。

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=381

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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