【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022-23 第11節 vs.コベルコ神戸スティーラーズ

2023.03.16

WTB栗原由太が先発。WTBロトアヘアアマナキ大洋も初のメンバー入り

第11節を迎えたリーグワンは、いよいよ佳境へ入っていく。7位のリコーブラックラムズ東京は今季初のナイトゲームで8位のコベルコ神戸スティーラーズ(神戸S)と対戦。これに41-26で勝利し3連勝を果たした。通算成績を5勝6敗、勝ち点を23として6位に浮上。5位のBL東京との勝ち点差は8。残すは5試合だが、BL東京とは直接対決が残っておりさらなる上位も射程圏内に入れている。

今節は前節負傷したSH山本昌太とWTBメイン平が欠場。キーマンとして躍動してきた両者の離脱は痛いが、スタートからのゲームメイクでも力を示せるSH髙橋敏也、昨季大きな成長を遂げたCTB/WTB栗原由太らが先発しカバーした。リザーブにはWTBロトアヘアアマナキ大洋が今季初めてメンバーに名を連ね、後半のインパクトを担った。

LOファカタヴァタラウ侍、FL湯川純平、HO佐藤康、PRパディー ライアンといった中盤戦以降にチャンスをつかんだ選手たちの突き上げがチームに力を与えているが、今節のメンバー表を見ていると改めて選手層が厚くなってきたことを感じずにはいられない。スコッドで戦うというチームとしての方針がしっかりと貫かれている。

「自分たちの土俵」をつくり、相手を引き込んだ前半

ピーター ヒューワットヘッドコーチは試合後、「前半20分でプラットフォームをつくることができた」とチームを称えた。指揮官の目にゲームがどのように映っていたのかを考えるべく、まずはその部分を振り返ってみる。

先制はBR東京。キックオフのすぐ後、敵陣にキックを蹴り込むとFLブロディ マクカランらが激しくプレッシャーをかけ反則を奪って前進。ゴール前でもペナルティを頻発させる強いボールキャリーを繰り返すと、ゴール正面の位置でボールを奪おうとした相手が倒れ込み。FBマット マッガーンがPGに成功し3-0。(前半5分)。

再開後、ハーフウェイ付近の密集でボールを奪うと、CTB池田悠希がキックを蹴り敵陣22mラインの手前まで前進。ラインアウトから攻めようとする相手に対し敵陣でディフェンス。相手8番にPRライアンがタックルし、倒したところにLOタラウ侍、HO佐藤が鋭く迫りノットリリースザボールを奪う。

PKで前進したあとのラインアウトモールは押しきれなかったが、スクラムに移行するとNOネイサン ヒューズがスクラムサイドを突いてゴールに迫る。トライ寸前までいったが、ディフェンスに絡まれてノットリリースザボール。(前半11分)

ここから神戸Sが押し戻す。ハーフウェイ付近でボールが行き来する展開を経て、BR東京の左サイドのスペースを突いてゲイン。これをきっかけにBR東京陣内でプレーを続ける。BR東京は冷静に守っていたが、粘り強いアタックにゴールを割られ失点、3-5となる。(前半22分)。その直後、SH髙橋のキックチャージからの逆転トライが生まれた。(前半24分)

これが、20分過ぎまでの出来事だが、結果のみに目を向ければ、3-0から追加点のチャンスを逃しトライを奪われ失点。SH髙橋の個人技に救われた――そんな序盤だったということもできる。ただ、この時間帯に対しヒューワットHCは手応えを口にした。それはフィジカルを活かしうまく攻め込んだ試合の入りと、結果的にトライは奪われたものの、冷静で的確なディフェンスを見せていた部分を評価したからだろう。

完全に噛み合ったときの神戸Sのアタックの爆発力はすさまじい。そうした相手の強みを発揮させずに、キックを使ってポジションを獲りながら攻め手を探り、守備ではフィジカルを活かし、振り回されることなく冷静に対処する。「プラットフォーム」を「自分たちの土俵」と解釈するならば、それをつくり、相手を勢いづかせずロースコア勝負に持ちこめたことに指揮官は手応えを感じたのではなかろうか。

正確なラインアウトキープから生まれた2つのトライ

自分たちの土俵をつくったBR東京は、後半もそこで素晴らしいパフォーマンスを見せた。後半だけで5トライ。FL湯川(後半4分)、FLマクカラン(後半17分)、FBマッガーン(後半25分)、WTB栗原(後半28分)、WTBアマナキ大洋(後半41分)によるものだが、バリエーションに富み、どれも印象に残るチームトライだった。

FL湯川とFBマッガーンによる2つのトライが、敵陣ゴール前のラインアウトをキープしたことから生まれたのは鍵だったか。湯川のトライはSO堀米航平の自陣からの正確なキックが最終ラインを守る相手の手に当たりタッチを割ったことが起点となった。HO佐藤のスローによるラインアウトからサインプレー。CTBハドレー パークスを走らせて右中間のゴールに迫ると、外から角度をつけて走り込んだ栗原がボールをもらいディフェンスに挑む。FLマクカランがサポートに入り、リリースしたボールを低い姿勢で巧みに拾った湯川がグラウンディングした。

FBマッガーンのトライは、敵陣でWTB栗原が見せたジャッカルで得たPKで前進し、入替でピッチに入ったばかりのHO小池一宏が投げ入れたラインアウトが起点だ。モールを押しこんだあと大きく外に展開させ広がったディフェンスラインの隙間を突いた。大外に残っていた快足WTBネタニ ヴァカヤリアの存在もディフェンスを迷わせた。

短期間で安定感を取り戻したラインアウトが、ここ数試合の得点力の向上につながっているのは間違いないだろう。

ラスト10分の苦しい時間を耐え、WTBアマナキ大洋が復活のトライ

「最後は相手に乗っかられた」とCTB池田。3試合続けて後半にトライを奪わせない戦いを見せてきたBR東京だったが、この日はラスト10分で神戸Sに攻勢をかけられ苦しい時間となった。FWも高いスキルを見せてテンポよくボールを動かし相手を翻弄する神戸Sらしいアタックが機能し、受けに回った。この時間だけは相手の土俵に立たされていたというべきかもしれない。

ただ、それでもパニックに陥らずに戦えたことからはチームの成長がうかがえる。ここ2試合は点差を大きく広げて勝利することができていたが、選手が意識を向けていたのは常にディフェンスで、そのクオリティを維持したまま80分間を終えることに集中していた。点差がつこうとも粗さを出すことなく戦ってきた経験が、この日の神戸Sの追い上げへの対処に活きていた。

最後はBR東京の激しいディフェンスに遭い、神戸Sが後方に投げ出したボールを、80分間ハードワークを貫き、なお走り続けるFLマクカランが追いかけ確保。これに呼応してラインを整えたBK陣がスペースを突きハーフウェイまでボールを戻すと、SH南昂伸がタッチライン際のWTBアマナキ大洋にパス。真っ直ぐ抜けたアマナキ大洋と2人でパスをかわし、アマナキ大洋がインゴールまで走りきった。我慢比べに勝ち、そこからとどめのトライを奪う容赦のないラグビーで、相手にボーナスポイントを与えず勝利できたことは今後の順位争いに影響してくる。

充実の内容の勝利で順位を1つ上げたBR東京。勝利を重ねるごとに高まる自信が、選手の表情からも見て取れる。自分たちの強さを確信しつつあるメンバーたちは、また一段階段を上った。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

本当にすごくハッピー。最初の20分でしっかりプラットフォームがつくれた。フィジカルなディフェンスを見せて、キャリーやブレイクダウンでもフィジカルさを見せられた。そこがいいベースとなった。神戸Sは本当に危険なチーム。アタックが得意なすごくいいチーム。(そういう相手に勝つために)選手たちはずっとハードワークを続けてきた。自分たちがいいチームだと気づけたのでは。(ピンチの続いた)最後の15分は僕の髪の毛にとってもいい影響はなかったが、そこはしっかりレビューしていきたい。本当にハッピー。

(シーズン序盤よりも、敵陣深くに入った際の実行力が増してきている)練習でも時間をかけていて、フォーカスもしている。ラグビーはシンプル。自陣の22mの中で相手をしっかり止めて、自分たちが22mに入ったときに得点すればいいというゲーム。パワフルなキャリアがいて助けになっているが、自信がついたことによる変化もすごい。もともとあったパワーがさらにアップしたりしている。選手に言っているのは、1試合でどちらに転がっても(変化しても)おかしくないということ。シーズン序盤で続けて負けてしまったときも、1試合いい内容でやれれば状況は変えられると話していた。今はいい内容で来ているので、逆に転がっていかないようにハードワークを続けていこうと話している。

(プレイヤーオブザマッチはFLマクカラン)ブロディ(マクカラン)にとってもすごく重要なウイークだった。(SH山本)昌太が出られなくなったことから、リーダーシップグループの1人として役割を果たす必要があったこと。かつて所属していたチームと対戦するということ。そういう意味でプレッシャーを感じていたと思うが、そんな中で素晴らしいパフォーマンスを見せてくれたことを嬉しく思う。

(ロックスターはいないチームが安定的に勝つためにどんなことが必要か)全員が自分の役割をきちんと果たすこと。ベーシックなことを高いレベルでやっていくこと。それができればタフなチームになれると考えている。ラグビーは勝敗がつくものなので、それでも負けてしまうことはあるかもしれない。だが、勝ちに近づくことはできていると思う。

FBマット マッガーン

この2試合は試合の最後、少しオープンな展開になっていたが、今日は最後まで歯を食いしばってやらなければいけない展開になった。(第8節から連続で続く)6週間のブロックを求める結果で終えるために必要なゲーム。静岡BR、BL東京と戦う次の2週間に向けてこういったハードな試合が必要だったのかなと思う。80分間ずっと戦い続けなければ勝つことはできないと改めてわかった。いいパフォーマンスを見せられた。

(序盤、ゴール前でPKを得たがショットを狙わず攻めた場面も)ここ最近、僕も調子がよかったのでショットも考えた。だが少し向かい風の状況だったので、このあと何度あのエリアに入れるだろうかと考え、ショットせずに攻めることにした。ショットするべきだったかどうかは今もわからない。感覚の部分もある。

(チームとしてアタックに自信が持てているのでは?)自信は持てている。ただそれは1週間積み上げてきているものがあるからこそ。何もせずにゲームの日を迎えたのであれば今日のようなパフォーマンスはできない。ハードワークしているからこそ。FWはラインアウトを決めなければいけないし、モールもタイトに組んで前に出なければいけない。BKもボールを受けたら確実にプレーしなければいけない。1番から15番まで、それぞれが自分の仕事をやるというところにフォーカスできていた。素晴らしいチームトライが生まれている。

HO佐藤康

練習から常に試合をイメージしてやろうと思ってやっている。そうした姿勢が少しずついい方向に向かっていて、それが自分のスローに出てきていると思う。チームにいい影響を与えることができているのであればそれは嬉しい。

(緊張はするとのことだったが、大事な場面でも安定したスローを見せていた)緊張はする。でも、練習からずっと緊張感を持ってやるようにしているのでそれが活きていると思う。

(フィールドプレーの感触は?)タックルも決まってきていて、少しずつ自信は出てきている。ただ課題はあるので1つずつクリアにしていきたい。

LO柳川大樹

(ラインアウトの安定感がよいアタックにつながった)FWはセットピースをとずっと言われ続けてきたので。自分の役割はラインアウト。今日はそう考えていた。コールもシンプルにして、相手ではなく自分たちにフォーカスして、うまくいき始めている。

(HO佐藤康もいい仕事をしている)エネルギーをもたらしてくれている。真面目なので。真面目だけど、ふてぶてしいところもある(笑)。

FLブロディ マクカラン

(所属していた神戸Sとやることで気持ちに違いは?)そんなにないですけど、相手がやってくることがわかっている部分もあったので。強かった。いい試合だった。プレイヤーオブザマッチは嬉しいが、取れたのはチームのパフォーマンスがよかったから。

(いいディフェンスができていた)そこにフォーカスしていた。自分たちのチームにはいいアタッキングバックスがいるので、我慢していればチャンスがあると思っていた。

(自分のプレーに点数をつけるなら?)少しタックルミスもあったので。80点くらい。

(NO8ネイサン ヒューズとバックローを組んでいて感じることは?)FLアマト(ファカタヴァ)と3人で組んでいるが、よくコミュニケーションを取っている。2人がたくさんキャリーして、自分はたくさんタックルする。いいバランスだと思う。

CTB池田悠希

神戸Sはすごくいいアタックをするチームなので、ディフェンスにフォーカスしていた。コネクションを持って、ラインスピードを上げて、しっかりディフェンスで勝とうと。最後は乗っかられてしまいしんどい時間もあったが、ディフェンスブレイクダウンでプレッシャーをかけることはできていたと思う。

(最後の苦しい時間帯はどんなコミュニケーションを?)スコアボードは気にせずに、目の前のやるべきことをしっかりやろうと。あとはペナルティをしてしまうと自陣にボールを運ばれてしまうので、ブレイクダウンをクリアにして、ディフェンスラインに人数をそろえることを意識していた。

(2試合続いた点差のついた勝利でチームのリズムやテンションに影響は?)全くなかった。スコアできたというのはあるが、2試合で2トライに抑えられたことに手応えを感じていた。自分たちはディフェンスが強みなので自信がつけられたと思う。

HENNGE MATCH DAYとして開催。試合終了後には特別表彰も

この試合はHENNGE株式会社の協賛による「HENNGE MATCH DAY」として開催した。試合終了後には、HENNGE社より、社名の由来でもある「挑戦する、Challengeする」にまつわり、最も相手に立ち向かい挑戦したハドレー パークス選手に『Most Challenge Player賞』が贈呈された。

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=363

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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