【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022-23 第10節 vs.グリーンロケッツ東葛

2023.03.08

昨季は大激戦。「タフな戦いになる」と準備を進めたBR東京

上位勢とタフに戦うも断ち切れなかった連敗を快勝で止め9位に浮上したリコーブラックラムズ東京(BR東京)。リーグワン第10節は11位のNECグリーンロケッツ東葛(GR東葛)とのビジターゲームに挑んだ。

昨季の対戦では、勝利したものの最終盤までもつれる激戦(21-18)となり、前節もノーサイド直前の勝ち越しトライで勝利を手にしているGR東葛という相手を前に、ピーターヒューワットヘッドコーチは「タフな戦いになる」というメッセージを選手たちに伝え準備を求めた。それに応えた選手たちは前半からよく攻め、54-7で今季4勝目を手にした。

メンバーは前節をほぼ踏襲。23歳のHO佐藤康、そのサポートも担う34歳のPRパディー ライアンが今節も先発した。もう一人のPRには24歳の谷口祐一郎が入り、ベテランとのプレーを経験する機会を得た。前節今季初先発を果たしたLOファカタヴァタラウ侍も2試合連続でチャンスを得た。SOアイザック ルーカス、FL湯川純平といったスピードとキレで勝負できる選手たちがリザーブに控えるかたちも前節から引き継がれた。

攻守に充実をみせた前半。4トライを奪い折り返す

「最初の10分、15分をめっちゃ意識して」

試合後のFLブロディ マクカランの言葉にもあったように、BR東京は隙を見せることなく序盤を戦った。前半6分の敵陣でのアタックでSH山本昌太が危険なプレーに遭い、脳震とうの疑いがあるとして一時退出。代わって髙橋敏也がピッチに入るアクシデントは起きたが(前半18分に交替)、相手5番へのイエローカードによって得た数的優位を活かしていく。

前半10分、ゴール前スクラムで反則を奪うとFLアマト ファカタヴァがリスタート。NO8ヒューズを経て後方から走り込んだWTBネタニ ヴァカヤリアに持たせるサインプレーでトライを奪い先制。さらに再開直後、自陣スクラムを完全に押しきってFWを排除するとNO8ヒューズが前方に持ち出す。WTBメイン平がエッジを走って抜けると、内側をフォローしたSH髙橋へ渡しそのままトライ。FLアマト ファカタヴァとFBマット マッガーンもさらに内側を手厚くサポートしており、獲りきるための努力を惜しまない姿勢を強く感じさせるトライでスコアを重ね、BR東京は14-0とリードを拡げた。(前半17分)

直後にラインアウトモールでトライを奪われ点差を縮められたがすぐに反撃。ハーフウェイ付近からNO8ヒューズがキャリー。PR谷口、LOタラウ侍とつないで中央をゲインすると、わずかにできたエッジのスペースを狙いSH髙橋が展開。WTBヴァカヤリアがこれを鋭く貫き左隅にトライを決める。角度のあるCVもFBマッガーンが決めて21-7。(前半26分)

BR東京はさらに攻める。ハーフウェイ付近のラインアウトから崩してSH髙橋がこの日2つめのトライ。(前半29分)前半終了間際にも自陣でNO8ヒューズとLO柳川大樹の連係で成功させたジャッカルをきっかけに攻め上がり、ラインアウトモールでペナルティトライを奪った。(前半37分)

「前半は自分たちが見せたパフォーマンスの中では一番よかった」。FBマッガーンがそう振り返るほどに、充実した前半となった。

「勝って反省」の機会となった後半

35-7とリードをつくって迎えた後半。序盤はBR東京に反則が続き我慢の時間に。後半9分に敵ゴール前でキックチャージに成功したFLアマトがグラウンディングしたかに見えたが、映像判定でディフェンスの手が差し込まれておりノートライに。その後もハンドリングエラーやペナルティが続きリズムが出せない。

後半18分、FBマッガーンが個人技を見せる。攻め込んだGR東葛が裏のスペースを狙って蹴ったボールがSH髙橋に入ると、これを使ってカウンターアタック。マッガーンは巧みなランで前がかりになっていた相手ディフェンスをかわし、ハーフウェイ付近まで戻しキックを放つ。直前にピッチに入っていたSOルーカスが中央から抜け出して確保。そのまま中央にトライを決めた。

ただ、トライは生まれたものの選手たちが満足いくほどには状況は改善していなかったようだ。

「後半は自分たちを見失いかけたところもあった」(FBマッガーン)

「自分たちのスタンダードが落ちて、ミスや反則が続いてしまい、うまくいっていない時間帯もあった」(SH髙橋)

それでも35分、39分に2トライを加え、相手にはスコアを許さずにノーサイドまで戦い抜いた。相手にカードが相次ぎ、結果的には前後半80分のうち30分が人数で上回るという珍しいゲームにはなったが、そうした状況を活かしてスコアを重ねる一方、ルーズなところを見せることはなかった。

2試合連続で見せた容赦のないラグビー

「トライを獲っても『0-0』だと考えるマインドセットでやっていた。点数を獲ったら相手はリスキーなプレーをしてくるので、それに対し準備していた」(FLマクカラン)

相手が問題を抱えバランスを崩したときに、それに付き合ったりせず粛々と自分たちのラグビーを遂行し、確実にボーナスポイントを奪う。強者がやってのける容赦のないラグビーを2試合続けて見せることができたのは成長の証だ。

「自信が出てきている」(SO堀米)

「いいバランスにある」(SOルーカス)

中央でプレーする2人の指令塔の言葉は、何よりもチームの実像を伝えるものだろう。FWとBK。先発とリザーブ。ベテランと若手。結果と育成――。対になる要素を噛み合わせながら、チームがうまくワークし始めている。

勝ち点5を上積みしたBR東京は順位を7位に上げた。とはいえ、今季のリーグワンは6位から10位までが勝ち点3差以内にひしめく混戦にある。トップリーグ時代からの過去最高順位も、入替戦出場も、いずれの可能性も残るスリリングなシーズン後半戦。さらにタフになる戦いの中でBR東京の真価が試される。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

今日も自分たちのパフォーマンスに対してハッピー。ハードなゲームの準備をしてきた。先週はGR東葛も勝っていたので、本当にハードなゲームになると思っていた。それに対しての準備を含めいいリアクションを見せてくれた。トライも1本しか与えず、ディフェンスはフォーカスではあったがよくできたのではないか。先週も言ったように、タフな1ヵ月を過ごして、その中でもハードなトレーニングを続けてくれて、ここ2週間はそのご褒美ではないが、しっかり結果が出せていて嬉しく思う。

(ディフェンスにフォーカスしたとのことだが、どういった修正を?)自分たちはディフェンスからエナジーを得るチーム。ディフェンディング トゥ スコアをモットーにやっている。しっかりディフェンスで奪い返せれば、スコアできる選手は十分にいる。あとはメンタリティのところでもディフェンスというのは伝わりやすい。早い段階からしっかり集中してフォーカスできていた。メンバー同士がお互いのためにやるべきことはすべてやるという意識が感じられた。先週は64点獲ったが、そういうゲームのあとは危険で、試合の最初からああいう展開にできると思ってスタートしてしまったりする。そういう罠に引っかからず、よくやれたと思う。

(昨季は苦しんだが、今季はいいゲームができている。その理由は?)昨季はタフなシーズンだった。ケガ人も多かった。習慣やプロセスなどいろいろなことを変え、ハードワークをしてきた成果が、12ヵ月経ってかたちになってきたのかなと。ただ先走らずに。やらなければいけないことはまだあるので。

(順位が上がり神戸Sの上に)みんな順位表は見るもの。見ないといっても見ている。でも毎週勝つだけ。それがターゲット。来週からも近い順位にいる神戸S、静岡BR、BL東京とのタフなゲームが続くが、勝てば自動的に順位は上がる。ただ(順位表は)いい方向に進めている確認にはなる。

FBマット マッガーン

前半は今季の自分たちのパフォーマンスの中では一番よかったかなと。いつもアタックはいいがディフェンスはまだ少し、またその逆であったりしていたが、今回はそういうこともなくよかった。ヒューイ(ヒューワットHC)も言ったように準備をしっかりやって、自分たちが何者であるかとか、そういったところを理解した上でやれた。後半は自分たちを見失いかけたところもあったので引き続き修正はしていくが、努力を毎週見せられていることはハッピー。ただ、これで満足というわけではない

SH髙橋敏也

負傷があっていきなりだったが、自分がやるべきことはクリアになっていたので、それをやろうという気持ちで入った。

(試合の締めという役割から、試合をつくる役割も担った)スタートから出場するやりやすさもあるので。

(ピッチに立ったときに感じたことがあれば)FWが自信を持って戦えていた。キャリーで前に出て流れをつくってくれていたので自分はやりやすかった。FWが頑張ってくれればスペースが空いてくるので、そこでボールを動かしていった。

(自身のトライもあった)最初のトライはギリギリだったので焦った(笑)。いけるかなと思っていったが予想以上に相手がきていて。この試合の自分のターゲットにサポートでボールタッチを増やすというものがあったのだが、今日はよくタッチできたように思う。

(突破のあと、サポートがよく付いていると感じる場面は多かった)チームとしても、ラインブレイクしたあとに足を止めるのではなく、スプリントしてフォローにいこうというのを昨季から意識している。(最終ラインを前にして)相手よりもBR東京のほうが多いという状況をよくつくれていたと思う。

(点差が開いても集中力を保てている)そう思う。80分間、どんなときでも自分たちのスタンダードを落とさずにやるべきことをやる。それを週初めからずっと言い続けてきた。ただ、後半は終わりのほうは自分たちのスタンダードが落ちて、ミスや反則が続いてしまい、うまくいっていない時間帯もあった。自分も反則をしてしまった。接戦になったときにそういう時間をつくってしまうとよくないのでそこは課題。守りでペナルティをせず、ボールを持ったら我慢強くキープする。そういうことをさらにしっかりやれたらもっとよかった。それでもボーナスポイントも獲れたので。次のバイウイークまで3試合続くので、ここをしっかり戦い少しでも上の順位を目指したい。

SO堀米航平

ゲームコントロールを意識してプレーした。僕が10番で出ているときは、どんな相手でもフィールドポジションを獲って正しいエリアでやるのを意識していて、それがいい方向に向かっている。

(点差を開いてもブレることがない)そこはみんなで常に言って、意識していること。

(チームに対し具体的な手応えを感じる部分があれば?)この2試合は特にFWがファイトしてくれている。だからこそ、とにかく敵陣にいるということを意識した。前半は堅いゲーム運びをして、リザーブのインパクトを与えられる選手が出てくる後半まで我慢するということを意識しているが、我慢もできている。

(FWが身体を張って相手にダメージを与えられれば、BKがトライを奪うチャンスも出てくる)そのためにもBKはキックを蹴って、エリアを獲ってFWが前に出ていけるようにしている。互いが支え合ういい状態。

(神戸S、静岡BR、BL東京といったチームと順位を決する戦いに入る。楽しみに迎えられる)そう思う。チームに自信が出てきているので。自分も体調はバッチリ。また来週も応援をお願いします。

SOアイザック ルーカス

チームはいいバランスにある。NO8ヒューズのような前でインパクトを与えられる選手もいるし、SO堀米もいいラグビーを見せて、いいベースをつくってくれている。そのおかげでベンチにいるメンバーはいいフィニッシュができる。

(先発とフィニッシャー、プレーで変えていることは?)特には変わらない。ベンチスタートのときは、そのゲームで必要になっているものを持ち込もうとは考える。タイトな状況での出場なら、今日とはまた違ったかたちになる。

(今日は回りを活かすプレーも多く見せていた)この2試合はチーム全員の力で戦えている。こういう流れをつくっていきたいと思っている。

FLブロディ マクカラン

FWで勝てれば試合に勝てるという思いでやっている。今日は特に必死さを感じた。トライを獲っても「0-0」だと考えるマインドセットでやっていた。シンプルにやること。自分の役割をしっかり意識して。点差が開いてルーズな状態になったら絶対トライを獲られるので。スコアボードプレッシャー。点数を獲ったら、相手はリスキーなプレーをしてくるので、自分たちはそれに対し準備していた。

(試合の入りなど相手もタフに挑んできた印象を受けた)先週の花園L戦は試合の入りにトライを獲ったが、そのすぐあとに獲られた。だから今週は最初の10分、15分をめっちゃ意識して、簡単にトライを与えないことを意識していた。

 

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=362

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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