【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022-23 第8節 vs.東京サンゴリアス

2023.02.22

FLマクカランが先発復帰。FL湯川純平、HO佐藤康もメンバー入り

2週間のインターバルを挟んでのリーグワン第8節。10位のリコーブラックラムズ東京(BR東京)は3位の東京サントリーサンゴリアス(東京SG)と対戦。昨季はノーサイド直前に逆転トライを許して惜敗(33-36)、秋のプレシーズンマッチでは逆転勝利(31-21)とクロスゲームが続いている強豪からのリーグワンでの初勝利を狙ったが、7-18で敗れた。ディフェンスで持ち味を発揮しリーグでも屈指のアタック力を誇る相手を2トライに封じたが、スクラムやラインアウトといったセットプレーで苦しめられスコアを重ねることができなかった。

この日はHO武井日向の欠場を受けてゲームキャプテンを務めてきたFL/NO8松橋周平、ラインアウトもリードしてきたハードワーカー・LOジョシュ グッドヒューを欠いたが、インパクトプレーヤーとしてチームを支えてきたFLブロディ マクカランや今季初のメンバー入りとなったFL湯川純平ら準備を重ねてきたFW陣がカバー。適切な編成と選手の成長による選手層の充実を改めて印象づけた。HOのリザーブには、2022年に入団し2シーズン目で初のメンバー入りとなった佐藤康も名を連ねた。

BKはハーフバックスをリレーするプランを選択。先発はSH山本昌太とSO堀米航平。リザーブはSH髙橋敏也とSOアイザック ルーカス。キック、ラン、ディフェンス、ゲームマネジメントといったそれぞれが備える武器を掛け合わせながら、試合を動かしていく役目を任された。

粘り強いディフェンスでアタッキングラグビーを封じるも、セットプレーで圧力受ける

試合は領域ごとの優劣がわかりやすく出た。セットピースでは東京SGがリード。ブレイクダウンでは攻守でBR東京が力を見せ、東京SGらしいアタックを封じた。ボールをキープして攻める場面では相手に脅威を与えた。この互いの“足場”を崩したほうが主導権を握りそうな気配の中でのゲームとなったが、結果的にノーサイドまでバランスは保たれた。

特にBR東京のディフェンスは一貫性のあるものだった。「最初の3フェイズを抑える」(SH山本)という意識の徹底と、抜かれたとしても、誰かがバックアップに走り食らいつくタフなディフェンスが黄色のジャージの躍動を阻んだ。FWの接点でのフィジカルな守備はもちろんだが、BK陣の集中力とパッションも目を引いた。WTBメイン平は、前半11分にトライ目前のランナーに低く的確なタックルを決めインゴールノックオンを誘うなど、ゲームを通じタッチライン際などでのディフェンスで存在感を見せた。試合を終えた相手ゲームキャプテンの「最後まで何もかもうまくいかなかった」という言葉は本音だったはずだ。

ただ、BR東京のディフェンス力を見越して、セットピースでの凌駕を狙い準備をしてきたと思われる東京SGの姿勢にはやはり常勝チームの凄みを感じさせられた。自分たちのスタイルを確立した上でそれを可変させて戦える柔軟性も磨き、それぞれの相手が持っている強みを削って最終的に上回る。そんなラグビーには学ぶべきところが多くあった。

もう一度前を向き、ひとつになるための準備

この2週間のインターバルについて、ヒューワットHCはメンタルの部分の“リセット”を図ったという。S東京ベイ戦などで接戦を勝ちきれなかったことで受けたダメージを考慮したとのことだった。

この説明で思い出したのが、昨季を振り返った際のヒューワットHCの言葉だ。開幕戦に勝利し東京SG、トヨタVと接戦を演じたが、中盤戦以降は徐々に失点が増えBR東京らしい戦いができなくなっていった。下降線をたどることになったきっかけとして、ヒューワットHCは試合のキャンセルが相次いだことが選手の意識に与えた影響を挙げていた。

選手たちは日々節制を求められ、ハードなトレーニングに身を投じる。それを課す側の立場だからこそ、勝利という見返りが得られない状況のつらさに配慮するのだろう。努力を続けているのに試合ができない――。結果が出ない――。そのやりきれなさは計り知れないもので、全員が同じ方向を向きなすべきことをなす集中力を削ぐ要因にもなる。選手たちはいつでも「切り替える」と口にしポジティブな姿勢を見せてくれるが、「結果の出ない日々」はボディブローのようにメンタルにダメージを与える。その部分のケアを図った。

「このブロック(試合の続く6週間)に向かっていくためのメンタリティは仕上がった」

この日のゲームを見ても、その感触は変わらなかったと指揮官は手応えを口にした。折り返しを迎えたリーグワン。BR東京が反転攻勢に移る。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

こんにちは、みなさん。フラストレーションの溜まるゲームだったなと。チームには自分たちの努力、ファイトし続けるところ、トライラインを守るディフェンスのところは素晴らしいと伝えた。ディフェンスでお互いのために動き続ける姿勢は誇りに思う。今日はセットピースが結果に影響した。スクラムペナルティは8〜9個あったはず。重要な局面でラインアウトターンオーバーとか、そういったことが影響した。ディフェンスでモメンタム(流れ)を取り戻そうとしたができなかった。そこは修正が必要。

(スクラムは選手を入れ替えて対処した。どう見ていたか)PR柴田(和宏)が入ってスクラムをよくしてくれた。しっかりとしたプラットホームをつくってくれたと思う。ただ、スクラムがうまくいくかには相手との相性の部分もある。

(ペナルティが多い試合が続いていた。今日はセットプレーに偏っていたが、それを除いた場面での規律意識については?)セットピース以外の部分では、そこまで大きな問題はなかったのではないか。オフサイドやブレイクダウンペナルティというのはどうしても起きてしまうもの。何度も重ねなければ。そこはリーダーたちがみんなに伝えながらやってきたので、改善傾向にあるのかなと。

(試合のなかった前週を使い意識的に取り組んだことがあるとすれば、その規律にまつわる領域か?)横浜E戦のあとに言ったように、S東京ベイ戦に競り負けたダメージがあると感じていた。この期間は少しラグビーから離れるというか、リセットする機会にしながら、これからの重要な6週間に備える準備をした。このブロックに向かっていくためのメンタリティは仕上がったと感じている。今日の試合のパフォーマンスを見ても、そこは変わっていない。

(勝つチャンスのあるゲームだったが、相手に勝ちきられた。東京SGとの差はどこにあると感じたか? )今日で言えばセットピース。(日本人選手の質の部分、ラック周りのプレーとか……)ノー。もちろん東京SGにはいい選手がたくさんいて、優れた外国人選手に頼らずとも戦えるのは強み。ただ、今日の2チームを比較したら力は接近していた。大きな差はなかった。あったとすればセットピース。ポゼッションがない中で7-18という競ったゲームができたのだから、セットピースを修正して自分たちにもっと多くのチャンスを与えることができれば。僕は自分のチームの選手の味方をしたい。

SH 山本昌太ゲームキャプテン

タフなゲーム。トップ 4 のチーム相手に、自分たちができたこと、できなかったことがすごく明確で、あのヒューイ(ヒューワットHC)がいったように、あのファイトし続けたところというのはチームとしてよかった部分。一方でセットプレーから自分たちのチャンスをつくれなかったことが難しい試合になった要因だったと思っている。 まだ6 試合続くので、また自分たちにフォーカスして次節に臨みたい。

(チーム全体でいいディフェンスをした。守りきれた理由は)東京SGがアタックのチームだというのはわかっていて、最初の3フェイズを抑えればディフェンスにチャンスがあると考え準備してきた。タックルのスキルに加えて、マインドセットとしても、「自分たちの強みはディフェンス」「ディフェンスで勝つんだ」と自分たちに言い聞かせて準備してきたので、波はあったものの、80分間いい部分が出せた。

(ラインアウトで苦しんだ。ナーバスになっていた?)パニックになったりすることはなかったが、勝負どころで反則を犯してしまったことで、フラストレーションがたまる展開に自分たちでしてしまった。

(フェイズを重ねた場面があったが、東京SGにテンポを落とされていたようにも見えた。SHとしてどう感じたか?)まずボールキャリアはしっかり勝負する。2人目、3人目がしっかり仕事をする。それが約束事だが、相手のプレッシャーもあってうまくテンポが出せない場面はあった。でもSHの自分がもう少しうまくやれていれば、という思いもある。【共同記者会見にて】

我慢強さっていうところ徐々によくなってきている。アタックは決めきれなかったというのは課題だが、チャンスで継続する。ボールキャリーからブレイクダウンにかけてのところはよくなっている。あとは細かいところ。正しいラインを走るなどして、より効果的なアタックにできるか。精度の部分はまだ足りていないが、よくなっている。

(トライを奪ったシーンは、FWのキャリーが効いた。頼もしいのでは?)ネイサン(NO8ヒューズ)は精神的にもFWの柱となってくれて、リーダーシップを発揮してくれている。アマト(ファカタヴァ)は今シーズンすごいパフォーマンス。FWで一番のプレータイムを記録しながら、毎試合仕事をしてくれている。それだけに今日のセットピースは本当に残念。彼らの努力がかたちになってほしかったので。

FL ブロディ マクカラン

みんなの努力が素晴らしかった。80分間、ネバーギブアップの気持ちがあった。セットピースがよくなかったけれど、そこを直せればビッグチャンスが来ると思う。ただ、次の花園L、その次のGR東葛はどちらも自分たちとのゲームに懸けてくると思うので、必ず激しいゲームになる。がんばりたい。

(個人としては、第2節の東京BL以来の先発出場)チームがやろうとしていることはいつも一緒。ディフェンスからインパクトを与えようというのを特に意識した。

(ディフェンスは一定の成果が出た。アタックでもかたちはつくれている場面も)ボールキープできているときは自信がある。ただ、セットピースでもう少しきれいにボールを獲れないとアタックも難しくなる。ボーナスポイントが獲れればよかったんだけど……。

(この2週間はどんなことに時間を使っていたのか?)トライアルマッチが予定されていたけど、中止になったのでトレーニングをしながらリフレッシュした。ここまで決していい結果は出ていないが、チームはタイト。気持ちが離れていないと感じる。

(リーダーにアクシデントが続いている。そうした役割も求められていたのでは?)マツ(FL/NO8松橋)は話すのがうまいけど自分は苦手。だから背中で引っ張る。みんなこの状況を理解しているので、誰もがリーダーという意識を持ちながら、帰ってくるのを待っている。

CTB ハドレー パークス

いいアタックチームだというのはわかっていたので、チームとしてはディフェンスにフォーカスしていた。シャットダウンしなければいけない危険な選手がたくさんいたが、チームとしてディフェンスはよくできて、それによってタイトなゲームになった。

(相手のアタックをスローにさせる仕事も)クイックボールが好きなチームなので、プレッシャーは受けると思っていた。タックルをして、さらにファイトする選手を残して、その間にディフェンスをリセットするという動きを意識していた。

WTB メイン平

今回のようなセットピースではどこが相手でも勝つのは難しい。もう一度自分たちにフォーカスして、いい準備をしていきたい。

(ディフェンスではいいプレーもあった)自分たちのやりたいディフェンスができた。でも、ターンオーバーのあとに相手ボールにしてしまうことが多くペースをつかめなくて、思うような試合運びができなかった。前回の横浜E戦でディフェンスの部分に課題があったので、最初のホイッスルからディフェンスで流れをつかんでいこうと言っていた。それができたのはポジティブな部分かなと。

(個人としても14番としてのディフェンスで奮闘していた)何度か抜かれる場面もあったので、そこは修正していきたいが、いいディフェンスができたときもあったので、次につなげていきたい。

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=360

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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