【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022-23 第2節 vs.東芝ブレイブルーパス東京
2022.12.28
ハードワーカーをピックしたFW。強いリザーブで最終盤に勝負かける布陣
リコーブラックラムズ東京(BR東京)の第2節は、東芝ブレイブルーパス東京(BL東京)とのビジターゲーム。開幕戦に内容、結果ともに満足できない敗戦を喫したBR東京としては、昨季4位に入った強豪との力勝負に勝ち流れを変えたいところだったが、粘り強さを見せたものの勝利を導くことはできず、7-17で敗れた。
フィジカルを磨き上げて戦う伝統のあるBL東京が相手だけに、BR東京も強みとする接点でせめぎ合いでの勝敗が試合の行方を決めるのは間違いなかった今節。ピーター ヒューワットヘッドコーチ(HC)は開幕戦からFWを4人入れ替えた。LOジョシュ グッドヒュー、FLブロディ マクカランがリザーブから先発に回り、PR千葉太一とLOロトアヘア ポヒヴァ大和がメンバー外からピックされた。BKではプレシーズンからアピールを続けてきたCTB礒田凌平が先発の座をつかみ、リーグワン初出場を果たした。
ヒューワットHCは、開幕戦の戦いぶりを指して「あれはブラックラムズ東京ではなかった」とコメントした。そんな戦いを経てのこの日のゲームに、LOポヒヴァ大和やCTB磯田といった泥臭いプレーをいとわないハードワーカーたちを先発出場させたのは明確なメッセージであるようにも感じられた。
試合後、「激しいフィジカルバトルのあと、後半20分以降にチャンスが来る」と想定していたというヒューワットHCは、リザーブメンバーにはその時間帯に“仕留める”働きを期待していたようだ。FL松橋周平、SH南昂伸、FBマット マッガーン、出場機会はなかったがメンバーに名を連ねたSO堀米航平らには、最終盤のアタックを託したものとみられる。
試合展開のイメージ、そしてそれに沿った選手選考は奏功したといっていいだろう。リードを許し攻め込まれながらも、自陣のディフェンスではハードワーカーたちの働きで粘り続けた前半。後半は登場したリザーブメンバーたちがチームにエナジーを与え、なかなかつくりだせなかったチャンスをつくり短い時間ではあったが主導権を握った。最終盤、ゴール前で相手に反則の誘うアタックを見せつつも、PGで7点差以内に追いつきボーナスポイントを確保する方向に向かわなかったのは、トライを奪い逆転ができるという感触があったからに違いない
多くのことがうまくいかなかった開幕戦から1週間。チームは自分たちのラグビーを取り戻しつつある。
開始直後に失点。だが、フィジカルで張り合ううちにペースを取り戻す
寒波の中での開催されたクリスマスイブの一戦。しかし天候に恵まれ、会場となった味の素スタジアムの外周は温かな日も差し、極寒の環境は回避された。
14:30にBL東京のキックオフでゲームが始まる。BR東京は左中間にラックをつくるが、ボールを持ちだし前方へのキャリーを狙ったNO8ネイサン ヒューズのプレーにオフサイドの判定。BL東京は10番がPGを狙い成功。0-3と先制する。(前半1分)
次のスコアもBL東京に。再開後の蹴り合いを経て、SOアイザック ルーカスにチェイサーがプレッシャー、ラックに。ここでBR東京にノックオン。BR東京陣内10mを越えた付近のスクラムから攻めたBL東京は、8番が持ち出し22mライン突破。さらに右につないで外に運ぶと右隅のラックにつくり、取り出した9番が近場のギャップを抜けてBR東京側左中間インゴールにトライ。CVも決まり0-10となる。(前半5分)
開幕戦と同じ、規律とやや受けに回ったディフェンスに起因する失点。主導権を一気に奪われてもおかしくない展開となったが、ここからBR東京は持ち直す。再開後の蹴り合いはやや押され、じりじりとエリアを下げられたところでフィジカルなアタックを仕掛けられるタフなシチュエーションとなるが、接点で黒いジャージが激しく抵抗。FLアマト ファカタヴァが2度にわたってジャッカルに成功し、フィジカルでも張り合えることを示していく。こうしたプレーが空気を変えていく。
ボールを動かすBL東京に対し、ディフェンスが出足鋭く前に出ていく。WTB西川大輔やLOポヒヴァ大和らが激しくプレッシャーをかけると、後方から鋭く飛び出したWTBネタニ ヴァカヤリアがインターセプトを狙うが惜しくもこぼれノックオン。前節は見せられなかったアグレッシブなディフェンスでBL東京と渡り合っていく。
前半20分頃には自陣ゴール前で与えたラインアウトからの攻撃に激しいディフェンス。出足の鋭さとタックルの精度、選手同士の連携で相手の自由を奪い、密集ではボールを簡単に出させない。
しかし、この試合の根幹のテーマといっていいブレイクダウンで張り合いながら、自陣でのプレーが続いてしまったのはセットプレーでプレッシャーを受けたこと、そしてかさんでしまったペナルティが影響していた。前半のペナルティはBR東京の7つに対してBL東京は4と差があった。
それでも自陣での攻防で失点をせずに耐えると前半36分、スクラムでの相手の反則で得たPKで前進して敵陣に入ると、ラインアウトから左に展開。NO8ヒューズ、HO武井日向が力強い突進でディフェンスを引き寄せ、順目に左に出し、SOルーカスが内側にステップを切ってギャップを抜ける。3人のタレントによる攻撃で22mラインの内側に入るが、ここはBL東京がボールに仕掛けノットリリースザボール。SH山本、WTBヴァカヤリア、CTB磯田らがサポートに向かったが、わずかに間に合わなかった。
前半最終盤、BR東京はペナルティを続けて犯しゴール前ラインアウトのピンチを招いたが、ここもしっかりと守りきり、BL東京はボールを出せずパイルアップ。前半は0-10で終えた。
隙見え始めたディフェンスラインに仕掛けたSOルーカスに待望のトライ
前半だけで8つのターンオーバーを記録する我慢強さを見せたBR東京は、PR西和磨を谷口祐一郎に、千葉を笹川大五に入れ替えて後半へ。SOルーカスのキックオフでゲームが再開する。
後半も激しくBL東京が攻める入りとなる。しかし修正し安定感を増したスクラム、FBメインやFLアマト ファカタヴァのラックで激しくボールに絡むディフェンスやSH山本の献身的なボールチェイスなどで勢いを削いでいく。
そして反撃。ノットリリースザボールで得たPKで敵陣に入ると、守るBL東京に再びペナルティ。22mラインの少し手前、ほぼ正面の位置からSOルーカスがPGを狙うが左にそれてスコアならず。(後半9分)
ドロップアウトで再開。このボールを展開してWTB西川らが右サイドをゲイン。前方のスペースに転がしたが処理される。ハーフウェイ付近のラインアウトの後、BR東京は自陣に入ったあたりで倒れ込みの反則。BL東京はPKでゴール前にボールを運ぶと、ラインアウトモールで激しくプッシュ。このモールに対し2度続けてオフサイドを犯したBR東京にペナルティトライの宣告。7点が加えられ0-17に。NO8ヒューズにイエローカードが出て10分間の一時的退出を科される。(後半15分)
点差が広がり、残る25分のうち10分を14人で戦わなければならない厳しい状況に追い込まれたBR東京だったが、レジリエンスを見せ数的不利を感じさせない強気のプレーを続ける。SOルーカスを起点にBKが躍動し、CTBパークスのキックパスがゴール前に走り込んだWTB西川に通りかけ、あわやというシーンをつくる。密度を保っていたBL東京のディフェンスラインにわずかだがスペースが生まれはじめていた。(後半16分)
この状況を見て、ヒューワットHCがタクトを振る。後半21分にSH山本を南に、24分にWTB西川をマッガーンに、一時退出を終えたNO8ヒューズを松橋に入れ替える。マッガーンはFBに、メインがWTBに入る。
直後にスコアが生まれた。自陣22mラインの内側でのスクラムから、SH南が左に出すとエッジをWTBヴァカヤリアが突破。ハーフウェイ付近まで戻すと、ポイントをつくり中央に戻す。ここでSOルーカスがPR笹川の後方でボールを受けると、目前に立っていた相手PRを鮮やかにかわし裏に抜け出す。最終ラインのディフェンスもパスダミーとステップでかわし、ゴール中央に待望のトライ。CVも自ら決めて7-17とした。(後半25分)
反撃を受け、突き放そうと再びBR東京陣内で激しく攻めるBL東京だったが、BR東京にはこれを冷静に受け止めた。FBマッガーンの密集でのショートパスを奪ってのターンオーバーなどで危機を脱していく。
後半32分、好プレーを続けるFBマッガーンはハーフウェイの手前から22mラインの先にワンバウンドさせてタッチに出すプレー(50-22)でゴール前ラインアウトのチャンスをつくる。ここでLOポヒヴァ大和を柳川大樹に、HO武井を大西将史に入替。
しかし、BL東京のラインアウトでのハードなプレッシャーは試合を通じ保たれていた。激しく競られ、ボールを失いビッグチャンスを逃す。BR東京は直後にもFBマッガーンのカウンターからのNO8松橋の強いボールキャリー、そしてCTBパークスのラインブレイクなどで敵陣に攻め込む。さらに相手20番に危険なプレーが出て数的優位も得るなど状況は好転していく。しかし、この攻勢はギャップを狙ったSH南が捕まりノットリリースザボール。攻めきれないまま時間が経過していく。最後はスクラムをキープされキックアウト。7-17のままノーサイドを迎えた。
相手を上回るターンオーバーを記録。粘り強さ取り戻したディフェンス。
我慢して我慢して、最後に自分たちの時間をつくりだしたBR東京だったが、試合の流れを完全に変えるまでには至らなかった。だが、開幕戦で苦戦したブレイクダウンでは善戦し、相手を上回るターンオーバーを記録した。エリア獲得やセットプレーではやや劣勢に回ったが、スクラムについては試合が進むにつれて修正された様子もうかがえた。試合の入りで失点する展開にもバタつくことなく、フィジカルにこだわることでディフェンスに粘りを生み出せていけたことは前進といっていいだろう。
それでも開幕からの2戦続けてボーナスポイントを奪えずに敗れたことは、非常に重い事実でもある。次節のトヨタヴェルブリッツ戦もタフなフィジカルバトルとなること必至だが、そこで勝つことに加え、ディシプリンの引き締めや勝利を引き寄せるゲームマネジメントの徹底が不可欠となる。結果にこだわるべき“マストウィン”“の一戦。必ずや結果を残したい。
監督・選手コメント
ピーター・ヒューワットHC
皆さん、こんにちは(日本語で)。ゲームは予想通りの展開になりました。早い時間帯は辛抱強く戦うことを強いられ、最後の20分くらいにチャンスがくると思っていたのですが、その通りになりました。長くファイトし続ければ、いい結果がついてくると思っていました。勝つチャンスは十分にありました。ただ最後にやってきたチャンスを生かしきれなかった。
(終盤に優勢になると思われたポイントは?)80分間ずっとフィジカルに戦うのは難しい。しっかり対応していけば、自分たちは練習を積んできているので、最後にはいけると思っていました。
(SHの起用法についての考え方を)SH山本(昌太)はいいゲームマネージャー。SOアイザック(ルーカス)がまだ若いので、経験のある9番と12番(ハドレー パークス)で囲むというイメージ。南(昂伸)はフィニッシャーとして今の(チームの)強みになっている。非常にいいランナーでテンポをあげてくれる存在。まだ若く成長中の選手です。私たちは南のプレースタイルを変えたいとは思っていません。
(リザーブメンバーは終盤のチャンスでの仕事を期待しての選抜?)はい。SH南、そしてFBマット マッガーンですね。彼はカルチャー、パッション的な部分でリードしてくれる選手。FL/NO8松橋(周平)もケガから戻ってきたばかりですが、ボールに関わりスピードを加えてくれる。PRの谷口(祐一郎)や(笹川)大五もいいスクラムを組んだし、リザーブではないですが、LO(ロトアヘア)ポヒヴァ大和も、1年振りの試合ながら70分間しっかり戦ってくれた。チームを大切に思っていることが伝わってきました。先週のゲームよりも、ファイトバック(反撃、抵抗)というところはチームとして良くなったと思います。そこはハッピーでした。精度のところはもう少し磨いていかないといけませんが。
HO 武井日向キャプテン
フィジカルを強みとするBL東京さんに対して、そこで負けないことを意識して試合に入りました。それはゲームで出せて、自陣で守りきることができたり、圧力をかけることができたりしたことは、先週の試合から成長できた部分。ただ、チャンスをものにできなかったので、精度は突き詰めていきたい。正しい方向に進んでいるとは思うので、見直しをしてさらに成長していきたい。
(意識していた終盤についての感想を)後半、自分たちの時間が来たときに自分たちのラグビーをすることが大事だと思っていた。でも精度の部分、セットプレーもそうですし、1つのリアクションなど、そういうところでまだ隙があった。
LO ロトアヘア ポヒヴァ大和
結果は残念でしたが、今日は1年振りにBR東京のメンバーとして試合に出られたことが嬉しかったです。試合前から相手がフィジカルで来るのはわかっていて、入りは受けてしまい得点されたんですけど、そこから立ち直ってみんなやるべきことをやれた。
(嫌な流れを断ちきれたのは?)自分たちがやりたいラグビーは相手とコンピート(競い合う)するラグビー。それをやり続けられたからだと思う。
FL ブロディ マクカラン
タフなチームが相手だったので、こういう試合になるという想定で準備できていました。結果は残念でしたけど、先週よりは戦えていたと思います。
(抜かれても捕まえてブレイクダウンをつくり圧力かけていた)そういうシーンが多かったですね。ネバーギブアップのマインドセット。前の試合からの学びを生かせたと思う。ビハインドになっても「まだ70分あるぞ」という感じで、みんなカーム(落ち着いた状態)だった。大丈夫、大丈夫って。
FL/NO8 松橋周平
前回を反省していい試合にはなったんですけど、結果は結果。勝つために何をするか。勝つことで自信をつけていくのが一番いいので。
(途中出場ながらいいインパクトを与えていた)どういう出場でも変わらないんですけど、リザーブは流れを変えるのが仕事。そういう中でも勝手なプレーは許されないですし、自分の役割の中でどれだけインパクトを与えられるか。今日は僕もそうですが、SH南(昂伸)とFB(マット)マッガーンが入ったタイミングで流れは変わったのはよかった。ただトライまではいけていないのでそこは当然課題。
(自陣から積極的に攻めた)あの点差と時間帯を考えると攻めていくしかない。自分たちの強みが出るところ。前半はキックを使いエリアを獲ってスコアを重ねる。できたらリードをつくりだして、最後の20分は今日のようにギアを上げていくかたちが理想だと思っている。
CTB 礒田凌平
試合に出場したいメンバーがたくさんいる中で選んでもらえたことは光栄。絶対に勝とうという気持ちで試合に臨みました。
(出場を目指し心がけてきたことは?)チームは“DNA”である泥臭くハードワークすることを改めて意識していますが、それは自分にとっての強みでもあるので、そこを見せていこうとしてきました。
(プレーしてみての感想は)スキルの部分はまだまだやっていかないといけないけれど、通用する部分もあった。チームとしてはディシプリンを改善していきたい。
■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=354
文:秋山健一郎
写真:川本聖哉