【Review】NTT JAPAN RUGBY LEAGUE ONE 2022-23 第1節 vs.三菱重工相模原ダイナボアーズ

2022.12.21

FL田中ら多くの新加入選手が開幕戦の先発の座をつかむ

2シーズン目を迎えたリーグワンが開幕。リコーブラックラムズ東京(BR東京)は、昨季昇格を果たしディビジョン1で戦う権利を得た三菱重工相模原ダイナボアーズ(相模原DB)を迎えてのホストゲームでスタートを切ることとなった。しかし、試合を通じてハイプレッシャーを保った相模原DBのディフェンスに苦しみ主導権を奪えず、8-34で敗れる厳しい船出となった。

開幕戦を託されたメンバーには新加入選手が多く名を連ねた。先発ではFL田中真一、NO8ネイサン ヒューズ、CTBハドレー パークスの3名、リザーブではLOジョシュ グッドヒュー、FLブロディ マクカランの2名の計5名。日本代表入りを果たしチームを離れていたメイン平はFBのポジションで先発の座をつかんだ。開幕前最後に予定されていた横浜キヤノンイーグルスとのプレシーズンマッチに出場しチームへのフィットを図る計画もあったようだが、中止となったことから公式戦が代表からBR東京への復帰戦となった。

リザーブには、11月半ばの合流ながら評価を得た実力者・グッドヒュー、プレシーズンマッチでインパクトを残したマクカラン、そして昨季半ばの3月、コベルコ神戸スティーラーズとのゲーム以来の公式戦となる松橋周平らが入り試合後半のプッシュを担った。FWが6名、BKが2名という構成は、FW戦への注力の意識もあったかもしれないが、CTBでのプレーも可能なFBメインら複数のポジションを守れるBKの存在を考慮した判断でもあるように映った。

敵陣に攻め込み圧倒的に攻める時間をつくるも、こじあけられず

12時、10℃を切る冷たい空気に満ちた秩父宮ラグビー場で試合が始まる。先手をとったのはBR東京。前半7分、ハーフウェイからややBR東京側に入った位置のスクラムから攻める相模原DBに対しPR西和磨とHO武井日向が低いタックル。後方にボールがこぼれると飛び出したNO8ヒューズが確保。さらにSH山本昌太が後方のスペースにキックし前進する。ラインアウトを挟んでCTBパークスもキックを蹴り込みさらに敵陣深くに入ると、BR東京がゴール前で攻めたてる。

NO8ヒューズのキックチャージ、CTBパークスからWTBネタニ ヴァカヤリア、またSOアイザック ルーカスからパークスへのキックパスなどが通りかけてトライまであと一歩というシーンが続いたが、我慢強く守り続ける相模原DBのディフェンスは堅くBR東京のミスを誘っていく。この局面ではゴールを割ることができず、PGで3点を確保するかたちとなり3-0となる。(前半17分)

直後、自陣でのラインアウトディフェンスで反則を犯し22mラインの内側への侵入を許すと、相模原DBは再度のラインアウトからモールを組み、近づいてきていたBKに出し短いパスをつなぐ。このサインプレーへのディフェンスが後手に回ったBR東京はポスト左のインゴールにトライを許してしまう。CVも成功し3-7となる。(前半20分)

再開後、BR東京はワイドにボールを動かし果敢なアタックを見せるが、ここもフィニッシュまで持っていくことができない。相模原DBはハイタックルやオフサイドを犯し苦しい様子も見せていたが、要所で好ディフェンスが飛び出しトライを阻む。前半28分には左中間ゴール前スクラムから右に出しFBメインが右隅へのトライを狙ったが、寸前のところで押し出された。前半31分にはLO柳川大樹のラインブレイク、FLアマト ファカタヴァの相手を引きつけハンドオフを繰り返すボールキャリーなどを起点にチャンスをつくったが、ここもトライはできず。フェイズを重ねディフェンスラインを揺さぶることはできていたが、崩しきるまで継続できなかった。

前半34分、ハーフウェイ付近でボールキャリーを図ったランナーを倒した相模原DBがボールを奪う。即座にキックを蹴り込むと鋭くチェイスして確保し、BR東京陣内でアタックを開始する。この場面のディフェンスで、BR東京はジャッカルを狙うも自立を保てず反則。相模原DBは左中間22mラインの手前付近からPGを狙い成功。3-10とリードを広げる。(前半37分)

なんとか前半にトライを返したいBR東京は、ハーフウェイ付近から攻めたがノックオン。相模原DBはスクラムを起点にアタック。BR東京陣内浅めの位置でダミーランナーを走らせてつくったギャップを10番が抜け、さらに2番につないでビッグゲイン。ゴール前でよく追ったFLアマト ファカタヴァが止めこぼれたボールをHO武井が確保したが、ラックから球出しできずパイルアップ。相模原DBボールのほぼ中央、ゴール前のスクラムでの再開となる。

相模原DBは9番が左に持ち出し、やや開いていたSH山本とCTBパークスの間のスペースに走り込んだ10番にパスするとそのままインゴールに達しトライ。CVも成功し3-17となったところで前半が終了する。(前半43分)

スコアを重ね勢いづく相模原DB。激しい守備に反撃の局面つくれず

前半最後に重いスコアを喫し14点を追いかけることになったBR東京は選手の入替は行わずに後半へ。早い時間にスコアすべく中盤のポジションからアグレッシブにボールを動かして攻めていく。後半6分、ハーフウェイ付近のラインアウトを最後方のFL田中がよく競って自陣側に落とすと、SOルーカスがパスダミーから身体を一回転させて眼前のギャップを抜け22mライン手前までゲイン。ここから攻めたかったが、左サイドでCTB池田悠希が放ったゴロキックが惜しくも相手に当たってしまい、直後の密集でターンオーバーを許す。

後半7分にFL田中を松橋に、同11分にLOマイケル ストーバーグをマクカランに、WTB西川大輔をマット マッガーンに入替。マッガーンはFBに入りメインがWTBに回る。

試合の流れに大きく影響する後半の入りを耐えた相模原DBは、自陣に釘付けにされた前半の修正を図り前に出るディフェンスをさらに徹底。BR東京の反則やミスにも乗じ、じわじわと押し込んでくる。そして顕著になってきていたモールでの優勢を生かすと、ゴール前ラインアウトから左中間にトライ。CVも成功し3-24。(後半14分)

BR東京はトライのすぐ後にPR西を谷口祐一郎に、後半17分にSH山本を南昂伸に入替。反撃の糸口を探ったが状況は好転せず、反則で自陣への侵入を許しゴール前でのアタックへの対応に追われる。相手のノックオンでゴール前スクラムを得るが、これを押されてコラプシング。相模原DBは難なくPGを決めて3-27。直後にNO8ヒューズをグッドヒューに入替。グッドヒューがLOに入りマクカランがFL、アマト ファカタヴァがNO8に。(後半20分)

苦しい時間は続く。圧倒的にアドバンテージを与える状態となってしまったモールでコラプシング。PKで自陣に後退させられると、ラインアウトからアタックを継続され最後は10番の長いパスを大外につながれトライを許す。CVも成功し3-34。(後半25分)

このままでは終われないBR東京が攻める。SH南がピッチを駆け巡りテンポを上げ空気を変えていく。相模原DBのディフェンスの集散のスピードは落ちず、隙はなかなか見いだせなかったが、わずかなギャップを狙いボールキャリーを図っていく。相手のオフサイドで得たPKを蹴り出し右サイドのゴール前ラインアウトにするとモールを組む。激しく押し返されたが、なんとかボールをキープし左に展開。大外のWTBヴァカヤリアにつなぐと、ヴァカヤリアは迫るディフェンスのタックルをはずし左サイドインゴールにトライし今季初トライが生まれた。マッガーンが蹴ったCVは惜しくもそれたが8-34となる。(後半34分)

ようやく生まれたファーストトライの直後にHO武井を大西将史に、PR笹川大五を柴田和宏に入替。(後半35分)最終盤は自陣から攻め2つめのトライを狙ったが前進できず。スコアは動かずノーサイドを迎えた。

迷いのないプレーが際立った相模原DB

BR東京のアタックを多くの場面で封じた相模原DBのディフェンスが光るゲームとなった。ハイプレッシャーがミスを誘っていたのは間違いなく、その修正は次節に向け欠かせない部分だろう。

ある世界的なコーチはミスを減らすためにすべきこととして、「頭の中をクリアにしてあげること」と話していた。この日のBR東京と相模原DBの間の差を生んだのはこの部分ではなかったか。ディビジョン1という舞台を目指し突き進むシーズンを経験してきたからか相模原DBのプレーには終始迷いがなかった。それはピーター ヒューワットヘッドコーチも称えたレジリエンス(弾性、回復力、危機への耐性)の源泉にもなっているようにも映った。苦しいときでも自分たちがしなければいけないことを整理し、その実行に全てを集中する。そんな姿勢が、この日のBR東京を覆った堅さやぎこちなさを吹き飛ばすことにつながるかもしれない。

苦しい結果にはなったが、アタックなどには昨季以上のキレが見られた場面もあった。NO8ヒューズのパワーやSOルーカスとCTBパークスのコンビネーションなどは、さらなるフィット、熟成が進めば必ず相手に脅威を与えるものになる。FLアマト ファカタヴァのハードワークや全方向的にプレーの安定感が増したFBメインといった新たな軸となるべき選手も印象的なプレーを見せた。途中出場のSH南もチームのエナジーを引き出す役割を果たした。反省と同時にポジティブな要素にも目を向けながら、次節に向けて準備を進めたい。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

すごく残念です。驚いています。相模原DBさんがやってきたことにではなく、自分たちのパフォーマンスに対してです。最初の15分、20分はドミネイト(圧倒)していたかと思いますが、そこからポンプアップできなくて。相模原DBさんはいいレジリエンスを見せ私たちは2、3回はインゴールに持ち込みながらグラウンディングを阻まれて、それで勢いづかせてしまった。そのまま流れを取り戻すことができず、追いかける展開になった。

(前半、攻め込みながらもうまくスコアできなかった理由は?)シンプルに自分たちの実行力の部分。それと相手がいいディフェンスを見せたことですね。(驚きというのは具体的に?)試合中の自分たちのリアクションなどで、プレシーズンのゲームで見せていたものが見られなかったこと。

HO 武井日向キャプテン

この日のために準備をしてきて、勝利を目標にやってきたのですごく残念な気持ちです。自分たちにフォーカスして臨んだのですが、自分たちがレジリエンスを見せなければいけないところで見せられなかった。自分たちでパニックを起こしてしまって、やられてしまったと思います。

(スクラムの圧力はどのように感じていたか?)自分たちのスクラムをするってところで、セットアップにこだわっていたのですが、そこができていないとプレッシャーを受けていた。誰が入っても同じセットアップができるように修正していきたい。

LO 柳川大樹

結果はよくなかったですけど、修正して次のゲームに向かっていきたいと思っています。

(チームのDNAをいかに体現しようとしたか?)ひたむきに、泥臭くやるのがうちのDNAなので、そこは見せようと思っていました。

(接点で苦しんでいたようにも?)寄りが遅かったですね。ボールの上にすぐに人が入れるような修正をしていくと思います。

(ハーフタイムはどんなことを?)その寄りのところと、前半はモールディフェンスができていたのでそれを80分間続けようと。

LO/FL 田中真一

(新たな環境でのシーズン。慣れないことも?)最初は少しありましたけど、沖縄でのキャンプなどを通じてチームに馴染めたと感じています。

(開幕戦に先発。達成感は?)プレシーズンは4番から8番までやらせてもらい開幕戦に先発できた。いいかたちで今日を迎えられました。

(意識していることは?)ワークレート。どのポジションに入っても落とさないように。

(試合が進むにつれ相手ペースに。プレーに変化が?)ディフェンスが上げてきてそれがはまった。ハイプレッシャーに対応できなかった。

SO アイザック ルーカス

相模原DBさんが80分完璧なかたちでプレーしたと思う。ポゼッションはあって、正しいエリアでプレーできていたが、ポイントがついてこなかった。今日は僕らの日ではなかった。しっかりレビューして来週に向かっていきたい。

(相手のディフェンスのどこによさを感じたか?)常に人数がそろっていた。

(22mラインを超えてからのアタックをどう修正するか?)規律と辛抱強さを意識して、コンバージョンレート(攻め込んだ回数に対するスコア)を上げたい。

(チームに堅さは?)開幕戦はエキサイトするもの。

■試合結果はこちら https://blackrams-tokyo.com/score/score.html?id=353

■開幕戦特設サイト『黒羊の祭典』https://blackramstokyo-games.com/opening-game/index.html

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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