【Review】NTTジャパンラグビーリーグワン2022 第14節 vs 東京サントリーサンゴリアス

2022.04.28

マット・マッガーンがSOに。新布陣でリーグワン1位に挑む

リーグワンは第14節へ。リコーブラックラムズ東京(BR東京)は、現在首位に立つサントリーサンゴリアス東京(東京SG)との今季2度目の対戦を迎えた。この試合を入れて残り3試合。チームは厳しい状況にあるが、挑み続け、光を見いだして終えるシーズンとする必要がある。新体制でリーグワンという戦いの場に挑んだチームを、支えてきた人々の心に、何かを残さねばならない。

メンバーでは、SOにマット マッガーンが入りゲームキャプテンを務めた。ここまで獅子奮迅の活躍を見せてきたアイザック ルーカスは今季初のリザーブへ。これは、ピーター ヒューワットヘッドコーチから、さすがに伸びてきていたアイザックのゲームタイムのコントロールを目的とするものだと説明があった。それに加えて、ポジションを変えたマッガーンのリーダーシップと戦術眼を、前半からチームに実装したいという期待もあったのだろう。

今節はビジターとして迎える秩父宮ラグビー場でのゲーム。ホームチームがムードづくりを行う一方、黒いジャージを着用した数多くのファンもスタジアムのシートを埋めた。

14時半。曇天、小雨のフィールドに東京SGがキックオフ。深く蹴り込んだ落下地点に7番が鋭く迫りプレッシャーをかけターンオーバー。強者の集中力をのっけから見せつける。左サイドで強いボールキャリーを繰り返すと、後方から走り込んだ13番に持たせる。ディフェンスラインを破り左中間インゴールにトライ。CVも15番が成功させて0-7と先制する。(前半3分)

BR東京による再開のキックの蹴り返しがタッチを割る。FBメイン平はリスタートの構えを見せたが、そっとボールを置く。ハーフウェイ付近のラインアウトで東京SGが反則。BR東京はPKで敵陣に侵入する。

ラインアウトは乱れたが、ボールを確保し直しSH髙橋敏也が左足でキック。ボールはグラウンドで弾んでタッチを割り、22mライン付近のラインアウトに。エリア獲得への意識が伝わってくるプレーが続いた。

しかし、相手ボールのラインアウトにプレッシャーをかけたかったが、ジャンパーに手がかかりペナルティ。PKを与え、フィールドポジションを失った。(前半7分)

 

PKで前進した東京SGは9番がハイボールを蹴る。その落下点にプレッシャーをかけると、BR東京はやむなくキックアウト。自陣22m付近でラインアウトを与えてしまう。東京SGはこれを起点に激しく攻める。BR東京は危険なエリアで守勢に回り、ノットロールアウェイ。東京SGはPKをタッチに出し、左サイドのゴール前ラインアウトに。

 

競らずに備えたBR東京はモールを一度止める。その後崩れたところでコラプシングのアドバンテージが出てしまう。なお攻めた東京SGは、左中間を12番がキャリー。これはBR東京が止めたが、後方にボールを下げると、10番が中央から斜め右へ柔らかに転がす。

これに15番が反応して右中間にグラウンディング。トライかと思われたが、映像確認の後ノックオンがあったと認められノートライに。(前半11分)

 

しかし、モールコラプシングのペナルティがあった位置に戻され、東京SGはPKを蹴り出し再びラインアウトに。ラインアウトモールを押し込んだ東京SGは8番が左隅にトライ。CVは不成功ながら0-12に。(前半14分)

 

リスタートキックの蹴り返しで得た、ハーフウェイ付近のラインアウトから攻めるBR東京。左サイドから右サイドへボールを運ぶと、東京SG11番が、ボールキャリーを図ったSOマッガーンにタックルを仕掛け、持ち上げて背中から落とすディフェンス。映像確認を経てイエローカードが出される。10分間の退出を科された。(前半15分)

 

PKで前進したBR東京は、敵陣22mライン付近のラインアウトを得たが、ノットストレート。敵陣に入りアタックを仕掛けるチャンスを逃してしまう。(前半16分)

 

ファーストスクラムはイーブン。相手のキックにSOマッガーンがチャージし、少し勢いを弱めたボールがBR東京陣内へ。FBメインにつないで左中間をカウンターアタック。強いランで食い込んでいく。

これをきっかけにBR東京がアタック。オフロードパスを受けたLOジェイコブ スキーン、さらに展開して右サイドをCTB堀米航平が突く。鋭いキャリーだったが激しいディフェンスに遭い、ノットリリースザボール。(前半17分)

 

PKで前進し、再びBR東京陣内へ入る東京SG。ラインアウトから攻めるとBR東京にハイタックル。PKでゴール前まで前進する。

東京SGは左サイド、ゴール前のラインアウトからモールを組む。BR東京はここも競らず押し返したが、コントロールを失わせるには至らない。冷静にこらえた東京SGは4番が持ち出し、つないだ9番がブラインドサイドを突き左隅にトライ。CVは不成功となり0-17。(前半21分)

 

東京SGはさらにBR東京陣内に入り攻める。BR東京も粘り強く守り、モールディフェンスでFWが集中力を見せ奮闘した。時間を要したが、モールでアンプレアブルとして、スクラムでFKを得ると、速攻からSOマッガーンのキックで22mエリアから脱出。カウンターアタックで15番が再度ゲインを狙ったが、WTB栗原由太とFL柳川大樹がしっかり詰めてタッチの外に押し出した。(前半29分)

 

しかし直後のラインアウトでボールを失い、相手10番が裏に転がすと15番が反応。ボールに追いついた直後にはたき、外をフォローした11番につなぐ。11番は40m程度を走りきりインゴール左隅に飛び込んだ。しかし、映像確認の後ラストパスがスローフォワードだったと判定され、ここもノートライとなる。(前半29分)

 

しかし、10番のキックの前の攻防でBR東京にホールディングがあり、東京SGのPKで再開。タッチキックで攻め込まれ、BR東京は自陣でのタフな局面が続く。しかしコネクションを保ったディフェンスで粘り、決定機はつくらせない。

 

だがゴール前のディフェンスでの立ち位置に問題があったとしてFBメインにオフサイド。チームとして同一のプレーが出ていたとしてイエローカードが出され、10分間の一時的退出を科された。(前半32分)

 

PKをタッチに出し東京SGはラインアウトから再び攻める。しかしボールを失い、BR東京は敵陣に向けて大きなキック。東京SGは自陣からカウンターアタックを仕掛ける。これを止めにいったBR東京の選手の肘がランナーの首に触れてしまいハイタックルの判定。東京SGはショットを選択。22mライン手前、ほぼ中央の位置からPGを狙い成功。0-20となる。(前半34分)

前半最終盤はBR東京がチャンスをつくった。ハーフウェイ付近でアタックを止めてスクラムを得ると、SOマッガーンがキックを蹴り込む。この処理に手間取ったところにディフェンスがプレッシャーをかけると、東京SGに倒れ込みの反則。

 

PKで22mライン付近まで前進し、ラインアウトで競り合うと東京SGにペナルティ。さらに前進する。右サイド、ゴールまで10m程度の位置からラインアウトモールでトライを狙う。右サイドのモールの接点に互いの力が注ぎ込まれ、激しくせめぎあう。ここでSH髙橋はCTB堀米へパス。堀米は後方のSOマッガーンへ。マッガーンは左に長いパスを出し、一度弾んでWTB栗原の手に入る。相手15番のタックルをはずした栗原は前に出てゴールに迫る。ディフェンスが集まってくるが、倒されず粘る。

 

ラックから右へ。SOマッガーンが中央から右前へゴロキック。インゴールに向かうが、相手の手に入ってしまった。

モールで東京SGにペナルティが出ており、そこに戻り再開。ラインアウトをキープして再びBR東京が攻めていく。ボールをよくキープして攻めたが、孤立したところに東京SGが押し寄せターンオーバー。デッドボールラインの向こうに蹴り出され前半が終わる。

ディフェンスとセットプレーを改善。苦しくもあきらめず粘り強く戦った後半

BR東京のキックで後半がスタート。2度のマイボールラインアウトを確保できず、一気に自陣に入られる。しかし22mエリアのラインアウトをキープして、キックを蹴り込む。

だがこのキックを使ったカウンターアタックが決まり、15番、11番、1番とつながれてゴール前まで運ばれる。1番を止めたものの、BR東京にノットロールアウェイ。

BR東京のゴール前での東京SGのスクラム。BR東京がコラプシングを犯すと東京SGがスクラムを再選択し組み直す。

8番がタップスタート。スクラムの右を突く。BR東京はこれに対応し止める。ピックゴーでのキャリーでもゴールを割らせない。

 

すると9番がパスアウト。左で待っていた15番につなぐと、15番はスライドしてさらに左へ。バスケットボールのように両手で外の11番にパス。FBメインが強く当たり押し出すが、一瞬早く後ろ手でボールを放し、これを15番がキャッチして左隅に飛び込む。曲芸のようなパスをつながれてトライを許した。CVも成功し0-27となる。

 

BR東京はこのトライの後、LOマイケル ストーバーグを湯川純平に、PR大川創太郎を千葉太一に、CTB堀米をアイザック ルーカスに入替。湯川はFL、柳川がLOに、アイザックはFB、メインがCTBに入った。(後半8分)

 

FBアイザック ルーカスのハイボールキャッチを起点にハーフウェイ付近でアタック開始。左サイドからワイドにボールをつないで攻め、折り返されたボールを得たアイザックが左サイドのギャップに仕掛け、さらにはLO柳川につないで前へ。また折り返し右サイドに運ぶと。CTB池田悠希が裏に転がす。これがインゴールのタッチライン際に転がり、拾った15番がそのままラインの外に飛び出す。

BR東京ボールの右中間、敵陣ゴール前5mの位置でのスクラムとなる。ここでスクラムを回した東京SGにペナルティ。タッチに出しラインアウトから攻めるが、BR東京にノックオン。相手ボールのスクラムとなる。

しかし、この大事なスクラムでBR東京はコラプシングを奪う。歓喜の声が上がる中、SOマッガーンはショットを選択。少し後方に下がり角度のつかない位置から蹴って成功。3-27とした。(後半14分)

自分たちが蹴った再開のキックを直接キャッチした東京SGは、さらにタッチを狙ったゴロキックを蹴り、いきなりBR東京陣内深くに入り込む。だがラインアウトを確保したBR東京はキックを使ってすぐに陣地を戻した。

さらに相手の蹴ったハイパントをキャッチしたSH髙橋の好プレーを起点に攻める。ボールをつなぎ、愚直に相手ディフェンスに挑んでいく。SOマッガーンがハイボールを蹴り、FBアイザック ルーカスがこれをキャッチにいくが入らない。しかし、その前のプレーで東京SGに立ち位置でオフサイドがあったとしてBR東京にPKが与えられる。

 

このPKでゴール前への前進を狙ったが、伸びすぎてデッドボールラインを割る痛いミス。東京SG陣内10m付近での相手ボールのスクラムで再開となる。(後半18分)

 

東京SGは12番から右の外にいた14番へのキックパスを通し、さらにゴロキックを蹴りゲイン。BR東京はゴール前でなんとか止めてボールを得たが、東京SGの個人の高い技術の組み合わせで一瞬にしてチャンスをつくる凄みを見せる。

 

こぼれたボール使って東京SGは再び右サイドを突く。5番をSOマッガーンら黒いジャージが塊となってタッチの外に押し出すディフェンス。ノックオンがあり、東京SGボールのスクラムに。(後半19分)

 

BR東京のスクラムペナルティから再度選択されたスクラムで、東京SGにアーリープッシュ。FKを得たBR東京は、キックをタッチに出しエリアを押し戻す。(後半32分)

 

東京SG陣内中盤の位置のラインアウトから、東京SGが攻め直す。強く速いアタックに後退を余儀なくされ、再び自陣ゴール前へ。

ここでランナーを止めにいったFL湯川が頭を打ち、脳震とうがなかったかの確認のため、退出。替わって西和磨が入る。また、NO8アマト ファカタヴァをハリソン フォックスに、SH髙橋を中村正寿に入替。(後半23分)

 

右中間のスクラムから攻める東京SG。ポスト左のインゴールに20番が飛び込み、トライかと思われたが、グラウンディングが確認できずノートライに。しかし、守るBR東京にオフサイドがあったとして、東京SGにPKが与えられる。

ほぼ正面、ゴール間近の位置からPGを狙い成功。3-30となる。CTB池田を牧田旦に入替。(後半25分)

 

再開後、BR東京はFBとして縦横無尽に動き回るアイザック ルーカスが相手ディフェンスを動かし、生まれたスペースをキックで狙うなどして攻めていく。アイザックの突破についていったPR千葉を経てボールをもらった走り込んだSOマッガーンが前に抜けるなどいいかたちも生まれた。

しかしキックを確保したあとの東京SGの動きも鋭く、一進一退、ボールが互いを行き来する。FL湯川が復帰し、PR西が残り谷口祐一郎が退出。(後半28分)

 

ラスト10分。多彩で強いアタックをみせる東京SGに対し、BR東京も規律に意識を向け、またエリアを考えながら粘り強く守る。

残り3分を切ったところでゴール前に攻め込まれ、ラインアウトモールでインゴールにボールを運ばれたが、モールへの移行でオブストラクションがあったとして映像確認を経てここもノートライとなる。(後半40分)

 

PKで前に出てラインアウトを迎えたところでホーン。ラインアウトをキープしたところでBR東京はボールを蹴り出し、ノーサイドを迎えた。

3-30で今季初となるノートライでの敗戦。だが、モールの場面などを含むディフェンス全般で粘りをみせ、特に後半は1トライに抑えた。全ての局面で結果が出たわけではないが、アタック力の高い相手に対し、エリアを意識して失点のリスクやディフェンスでの負荷を下げようとする狙いはチームとして共有されていたのではないか。

次節第15節は、4月30日(土)、13時から秩父宮ラグビー場で行われるトヨタヴェルブリッツ戦となる。泣いても笑っても残り2戦。全てをぶつけ、前に進む。できることはそれだけだ。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

前半の自分たちは、規律のところをコントロールできなくて、東京SGがフィールドポジションをとりやすくなりました。後半はいいファイトを見せてくれたので、そこは誇りに思っています。早い時間帯にやられてしまいました。

(東京SGの手強さはどこに)いい選手がたくさんいますよね。オールブラックスの選手だったりワラビーズの選手だったり。日本代表の選手も多いです。すごい才能を持った選手の多いチーム。ビッグゲームの経験のある選手も多い。そういうところが強さなのかなと思います。

(選手入替もあった。どのようなプランを持って戦ったか)金曜日のトレーニングでケガをしてしまった選手がいて変更がありました。チームにとってそれはプラスには働かなかったです。FBアイザック(ルーカス)も、ここまで10試合、800分の全部に出場していて、違う角度から試合を見てもらいたいということでリザーブからのスタートになりました。(マット)マッガーンに10番の時間を与えたいというのもありました。修正点としては、前の週にモールディフェンスで苦労していたので、その部分ですね。

(序盤に失点し、勝ち星に恵まれない。その理由はどのあたりに?)ケガが多く、なかなかセレクションにおいて継続性が生み出せていない。取り組んではいるのですが。

SO マット・マッガーン

ヒューワットHCと同じ認識です。最初の20分で東京SGに自陣に入らせてしまって、いくつかペナルティを犯して、そこから立て直せなかった。後半はいいファイトを見せられたとは思います。

(前回対戦では健闘した。今回は戦い方が違っていたのか)同じようにプレビューして、プレビュー通りだったのですが、やはり、自陣に入れすぎてしまったこと。あれだけ長い時間ディフェンスをやっていると、なかなかアタックにエネルギーを使えなくなる。

FB アイザック・ルーカス

僕も同じです。前半は自陣にいる時間が長くなってしまいました。後半はよかった。タオルを投げず、ファイトし続けたと思います。

(ベンチから試合を見ていて、その後のゲームメイクで何を意識したか)前半は正しいエリアで勝負できていなかったので、後半はチームとして正しいエリアでプレーして、そこでプレッシャーをかけていくことを考えました。それができたときもあったと思います。敵陣でプレーして3点を獲って結果も出たのですが、そうした戦い方ができている時間が短かったと思います。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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