【Review】NTTジャパンラグビーリーグワン2022 第11節 vs NTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安
2022.04.03
前半の序盤で痛恨のレッドカード。それでもSOアイザック ルーカスのランなどで反撃
今季の交流戦の最後のゲームとなったNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安(SA浦安)とのゲームを終えたピーター ヒューワットヘッドコーチは、「パフォーマンスの一貫性が必要なレベルに達していない」と指摘しつつも「若い選手たちは教訓を得た」と述べ、求めるプレーの再現性は成長の先にあると前を向いた。
埼玉パナソニックワイルドナイツを相手に奮闘を見せたチームは、浮上のきっかけをつかむべくもがいていた。試合前のウォーミングアップでは、FWはラインアウトモールを、BKはゴールラインを意識したアタックの動きを繰り返し確認。ゴール近くまで攻め込んだとき、スコアまで持っていくための準備を続けていた
東京・江東区夢の島競技場はくもり。南からの温かな風がある程度の強さで吹き込む中、風上の陣地をとったBR東京は、SA浦安のキックオフボールを受け動き始める。FBマット マッガーンがキック。敵陣浅めでタッチを割る。
ラインアウトモールからハイパントを上げるSA浦安。落下地点の密集で、BR東京にホールディングの反則。速攻を仕掛けたSA浦安はBR東京陣内中盤に攻め込む。このディフェンスでBR東京にラインオフサイド。ほぼ正面、約25mのPGを成功させてSA浦安が先制、0-3。(前半3分)
続くスコアもSA浦安に入る。敵陣に入ったBR東京がブレイクダウンでボールに絡まれノットリリースザボール。PKで前進を許すとラインアウトから展開。右中間を12番が力で突破。このディフェンスでBR東京が反則。アドバンテージが出る中、右に振ったSA浦安は13番が抜ける。ゴール目前で止めたものの14番にオフロードパスをつながれ、ポスト右にグラウンディング。フォワードパスではなかったかの映像確認を経てトライが認められた。CVも成功し0-10。(前半6分)
反撃を試みるBR東京だったが、敵陣で得たスクラムでプレッシャーを受け、ボールを取り出そうとしたNO8ブレア カーワンに相手9番が仕掛けブレイクダウンに。ボールが動かなくなり、SA浦安ボールのスクラムとなる。この試合2度目のスクラムでBR東京にコラプシングが出てしまいチャンスを逃す。(前半10分)
しかし、自陣に蹴り込まれたキックを受け、ボールを回し攻めていく。WTBネタニ ヴァカヤリアが回り込むようにしてランを仕掛け相手を引きつけると、右サイドのタッチライン際に立っていたFL福本翔平にパスし前方へゲイン。さらに右サイドから左サイドまでパスをつなぐと、今度はFBマッガーンが長いキックを放つ。これが敵陣インゴールまで転がり、デッドボールラインの寸前で止まる。相手がグラウンディングしてゴールラインドロップアウトになる。(前半11分)
再びチャンスを得たBR東京。このドロップアウトをきっかけに攻めたいところだったが、22mライン付近に飛んだボールに対し、鋭く飛び出してきたSA浦安14番がキャッチを試みる。これがこぼれてノックオン。BR東京のスクラムとなる。
右中間のスクラムの広い方のサイドに出しCTB池田悠希がキャリー。ボールをキープして中央へ。今度はNO8カーワンがキャリー。フィジカルを活かしディフェンスをこじあけにいく。
左に振り、CTB濱野大輔がキャリーしてポイントをつくるが、折り返して左中間をFWで攻めたところでノックオン。SA浦安はこぼれ球を回し逆サイドに運ぼうとするが、ここで相手の8番に対し、NO8カーワンがタックルを仕掛ける。その際、カーワンの頭が相手の頭に当たってしまいプレーが止められる。映像確認の後、カーワンにレッドカードが出され、退出処分を科された。BR東京はフィジカルバトルにおける柱の一人を欠くことになる。(前半13分)
ここからは互いの陣地に深く攻め入る時間帯に。SA浦安は接点での優位を、BR東京は追い風とキックを、それぞれうまく使ってみせた。
自陣に押し込まれたBR東京は、ラインアウトでのノットストレートでスクラムを得る。自陣右サイドのスクラムには、WTBネタニ ヴァカヤリアが加わり、最後尾にFL福本翔平が入った。これをキープすると、後方からFBマッガーンがキック。ボールは敵陣深くに転がり、ゴールライン手前で左サイドのタッチを割る。新ルール(50-22)でBR東京ボールのラインアウトに。起死回生のキックとなる。(前半20分)
LO柳川大樹に合わせモールを組む。猛烈に押し返すSA浦安。しかし最後尾でHO武井がキープし、モールが割れたところでLOタラウ ファカタヴァ、FL大西将史、PR千葉太一らと前に出る。だが、前の3人がちぎれたところにSA浦安が猛烈なプレッシャー。アンプレアブルとなり、SA浦安のスクラムとなった。このスクラムで反則を犯し、BR東京はチャンスを逃す。(前半23分)
その後に得たマイボールスクラムでもコラプシングを犯したBR東京。PKで前進を許し、ハーフウェイ付近からアタックを受ける。自陣深くに蹴られたグラバーキックを処理し、SOアイザック ルーカスが前方へキック。このとき、カウンターアタックに備えたディフェンスラインの飛び出しが早くオフサイド。SA浦安はほぼ中央、15mほどの位置からPGを狙い成功。0-13となる。(前半28分)
前半残り10分をきってからもBR東京は苦しい時間が続いた。接点で差し込まれる場面が相次ぎ、苦しいディフェンスが繰り返された。自陣の22mラインの内側でアタックを継続され、10番に中央から右サイドへのキックパスを蹴られる。これをキャッチした21番(WTB)が右隅にトライ。CVは外れが0-18と点差が広がる。(前半36分)
前半の終わり、なんとかして点差を詰めたいBR東京は、ハーフウェイ付近のラインアウトから前に出ていく。CTB池田、LOタラウ ファカタヴァらが強いキャリー。さらにエッジをWTBヴァカヤリアが突くとSA浦安にハイタックル。アドバンテージが出た状態で、アタックを継続すると今度は逆の右サイドの密集でオーバーザトップの反則。中央で継続したアタックが停滞したのを見てプレーが止められ、BR東京は右サイドでのPKを選択。タッチに出しゴール前ラインアウトにする。(前半38分)
このラインアウトでBR東京は策を講じる。中央でLOタラウ ファカタヴァに合わせると、その外に走り込んだFL福本にパス。福本は持たずはたくようにしてHO武井に戻す。しかしこれがわずかに合わず、タッチラインを割る。SA浦安のラインアウトとなってしまった。
だが、このラインアウトでノットストレート。BR東京はもう一度チャンスを迎える。今度は奥でLOタラウ ファカタヴァに合わせモールを組む。HO武井の背後にSH髙橋敏也が近寄りボールをもらうと、中央へ展開。CTB濱野大輔がキャリー。さらにポイントを動かしながら、PR千葉、笹川大吾、HO武井が身体をぶつけていく。前半終了を知らせるホーンが響く。
左中間のポイントから外のCTB濱野へ。濱野は右斜め後方から走り込んだSOアイザック ルーカスにパスし自らは右斜め前に抜けるシザース。アイザックは弧を描くように走り左サイドを狙う。相手のWTBとFBの決して広くはないギャップを鋭く突き両者を置き去りにすると、そのまま左隅にトライ。BKが走る局面をなかなかつくれなかったBR東京だったが、前半の最後に訪れたチャンスをSOアイザック ルーカスがものにした。CVは外れたが5-18。(前半43分)
ここで前半が終了する。
ブレイクダウンとスクラムで苦戦。流れ引き戻せず
前半の反則が10を数えたBR東京。対するSA浦安は3。数的不利と接点での相手の強いプレッシャーが規律の乱れをもたらしていた。後半はこの部分の改善と早い段階でのスコアが求められた。BR東京はメンバーを入れ替えず後半へ。FBマッガーンのキックで試合が再開される。
相手ラインアウトの乱れを突き、BR東京がCTB濱野の中央、敵陣浅めでの強烈なキャリーでアタックの口火をきる。さらに後方へのパスを使いながら右サイドへ運び、FL福本がエッジを走る。しかし、サポートが入りボールをリリースした瞬間に相手に手を差し込まれノットリリースザボール。最初のアタックは封じられた。
しかしPKからラインアウトを経て仕掛けたSA浦安のアタックに対し、FL大西がジャッカルを仕掛けノットリリースザボールを奪い返す。大西を称えるBR東京の面々の様子からは明るさがうかがえた。(後半3分)
BR東京が敵陣でアタック。CTB濱野がまたも強く前に出て中盤へ。さらにLOタラウ ファカタヴァが強烈なキャリー。テンポを上げたいところだったが、SH髙橋がパスアウトしたボールがわずかに合わず、ラインの後方に転がる。ここに詰めたSA浦安がボールを確保しターンオーバー。アタックを継続することができない。アンストラクチャーからうまくゲインしたSA浦安が、BR東京陣内中盤まで前進しフェイズを重ねる。守るBR東京にノックオン。(後半5分)
相手ボールのスクラムは7人で組んでいたBR東京は、劣勢を跳ね返すことができず押し込まれ、BKラインが下がりきれずオフサイド。PKでゴール前ラインアウトにされたが、ここはSA浦安にオブストラクションが出てピンチを脱する。FL大西をアマト ファカタヴァに入替。(後半6分)
自陣から脱し、アタックに転じたいBR東京だったが、自陣浅めのブレイクダウンで後手に回りまたもノットリリースザボール。PKでゴール前ラインアウトにされてしまう。これを起点にSA浦安が左中間で連続攻撃。ポスト左に4番がトライを決める。CVも成功し5-25となる。スコアの直後にCTB池田をメイン平に、SH髙橋を南昂伸に入替。(後半11分)
再開のキックの競り合いでBR東京にノックオン。ファカタヴァ兄弟が第2列に並び、両脇を柳川と福本が固める形でスクラムを組む。ここで相手に反則が出てFKを得る。すかさずSH南がタップスタート。22mラインの目前まで運ぶ。さらにLO柳川がキャリー。ポイントをつくりパスを出すが高くそれてSA浦安に入る。どうしてもアタックの形をつくれない。(後半13分)
互いに深く攻め込めないまま時間が過ぎていく。BR東京はPR千葉を谷口祐一郎に入替。(後半15分)直後のSA浦安のラインアウトからのアタックでBR東京にノットロールアウェイ。左中間、22mライン付近からSA浦安がPGに成功。5-28とする。(後半17分)
攻めるしかないBR東京だったが、またも密集で激しいプレッシャーを受けボールを奪われる。アンストラクチャーからのSA浦安のアタック。BR東京は対応が遅れ、10番にラインブレイクを許す。パスをつながれるが、22mエリアに入ったところで追いついたSOアイザック ルーカスがタックルし相手を止める。
この好守の間にディフェンスラインをそろえたかったが、ラックから出たボールを12番がピックゴー。そこからFWにつながれポスト右に6番がトライ。WTB栗原が食らいついたが届かなかった。CVも決まり5-35。直後、BR東京はPR笹川を大川創太郎に、CTB濱野を西川大輔に入替。西川はWTBに、WTB栗原がCTBに入った。(後半20分)
苦しい状況となったが、SH南やCTBメイン平らピッチに入った若い選手たちが、強い気持ちを前に出し挑みアタックを仕掛けると、SA浦安にノットロールアウェイ。PKで敵陣22mエリアでのラインアウトにする。(後半21分)
モールは選ばず、左サイドから展開。これをきっかけにBR東京はテンポを上げ、しつこく攻めていく。守るSA浦安にノックオンが出てスクラムに。なんとかこらえてボールを出し再び攻めるBR東京だった。密集でこぼしたボールを奪われキックを蹴られ後退。ポジションを下げられたが、あきらめずキックキャッチからもう一度攻めていく。だがまたもボールをこぼしてしまいノックオン。さらにこのスクラムでアーリーエンゲージを犯し、FKを与える。(後半25分)
すぐ再開して攻め込むSA浦安。ハーフウェイを越えてBR東京陣内へ。しかし。展開を試みたところでパスがこぼれノックオン。BR東京ボールのスクラムに。(後半27分)
WTB西川を加え、LO柳川を第二列に、FLアマト ファカタヴァをNO8のポジションに入れて組んだスクラムはキープ。アマトが持ち出して攻める。さらにSH南がラックサイドに鋭く仕掛け、これに反応したFL福本もつないで前へ。展開し、タッチライン際のWTBヴァカヤリアにつなごうとしたが、その手に収まらずタッチを割る。(後半28分)
SA浦安はハーフウェイ付近のラインアウトから攻める。左サイドから展開し右サイドまで運ぶと、大外のWTBがゲインし22mラインのそばまで前進。その内側をフォローした15番につなごうとしたが、これがこぼれる。
このボールをWTBヴァカヤリアが拾い左サイドを前へ。スピードをあげ、ディフェンスへの切り替えが遅れたSA浦安の選手を抜き去り、敵陣10mライン付近まで40m近く走る。内側をフォローしたFBマッガーンにパス。マッガーンは中央インゴールまで走りトライ。CVも決めて12-35となる。(後半30分)
BR東京は右サイドの蹴り込まれたリスタートキックを逆サイドに展開し自陣からアタック。WTB西川が鋭いランでゲインする。さらにPR大川、CTBメインが鋭く強い動きで前に出る。ハーフウェイを越えていくと、SOアイザック ルーカスがまたもギャップを狙う。しかしここは相手12番に止められタッチラインの外へ。(後半32分)
SA浦安は右サイドのラインアウトから逆サイドに運びブレイク。BR東京ディフェンスは必死に戻り、また待ち構えていたバックスリーも止めにかかる。しかし巧みなパスワークでかわされ、最終ラインも突破。14番が左中間インゴールから回り込んで中央にトライ。CVも成功し12-42となった。(後半34分)
さらにSA浦安が攻める。続けざまにブレイクを許し後退させられたBR東京はゴールに迫られ、6番から15番につなぎインゴール左隅を狙われる。しかし、SH南がこのパスを見極めて15番にタックル。タッチラインの外に押し出す素晴らしいディフェンスを見せた。ここでFL福本を湯川純平に入替。(後半35分)さらにHO武井を森雄基に入替。(後半38分)
最終盤、BR東京は自陣から攻め、テンポとフィジカルで先手を取っていく。ペナルティも奪い前進していったが、ホーン後にFBマッガーンが激しいプレッシャーを受けながら後方にリリースしたパスに相手が詰めて確保。キックアウトされノーサイド。70分弱を14人で戦うタフなゲームとなった今節、BR東京は奮闘したが12-42で敗れた。
ここまでブレイクダウンで受けに回ったゲームは、今季初めてではなかったか。勝利を渇望し、下位からの脱出を図ろうとするSA浦安の気迫が、わずかにBR東京を上回ったようにも映った。BR東京はこれで通算成績を3勝8敗(不戦勝1、不戦敗2を含む)とした。勝ち点は16、順位は8位だが、12位のNECグリーンロケッツ東葛も勝ち点は13。8位から12位までの5チームが、勝ち点3差の中にひしめく混戦となっている。
次節(第12節)は、4月9日(土)14時30分より、静岡・ヤマハスタジアムで9位(勝ち点15)の静岡ブルーレヴズとのビジターゲームを戦う。我慢のしどころがやってきている。
監督・選手コメント
ピーター・ヒューワットHC
残念な結果です。この1週間、いいトレーニングはできていたと思います。ただ、パフォーマンスの一貫性というところが、必要なレベルでは保てていませんでした。そして、残念ながらフィジカルバトルのところで負けてしまいました。ボールキャリー、ブレイクダウン、そういったところでやられていたなと感じています。それによって自分たちのラグビーができませんでした。
(試合やトレーニングを一定間隔でできるようになり、やろうとしていることが形になってきているように映る。そうした課程にありながら苦しいゲームになった理由は)今日はレッドカードもありましたし、そしてなにより、私たちはまだ若いチームだということ。ですから、安定したパフォーマンスが保つことが難しい。今日は成長中のチームにとって教訓を得る試合となりましたが、ハードワークを続けていくことで、このチームが明るい未来を導いてくれると信じています。
試合をフィニッシュさせたメンバー……、1年目の9番の南(昂伸)、SOアイザック ルーカス、WTB栗原(由太)は2年目、WTB(西川)大輔も同期。若いです。それは言い訳にはならないのですが、彼らはたくさんのことを学習しているところです。
HO 武井日向キャプテン
ブレイクダウンのフィジカルの部分にフォーカスして臨んだ試合だったのですが、全くパフォーマンスできませんでした。それが結果にそのままつながったと思います。スクラムでもプレッシャーかけられてしまって、うまく流れを持ってくることができず、逆に相手に流れを渡してしまったかなと思います。
(次節まで2週間空く。キャプテンとしてチームに伝えたいと思っていることは)僕自身も含めて、今の状況をしっかり受け入れ、変わっていかなければいけないと思います。言い訳をつくることもできるのですが、そこに逃げていては全く成長しない。まずは僕自身がしっかりすること。行動を通してチームに示していきたいと思います。
CTB 池田悠希
本当にすごく残念に思っています。フィジカルのバトルのところは本当に1週間かけて準備してきました。チームとしてやろうとしてきたことができず、そこが勝敗につながったと思います。非常に残念に思っています。
(存在感を増してきている。手応えは)自分自身のパフォーマンスについては手応えを感じる部分もあります。でもまだ十分ではないので、特に今日の試合は自分の強みであるフィジカルの部分でチームを引っ張っていきたいと思っていたのですが全然できていなかった。いつでも一貫性を持ってチームを引っ張れる選手にならないといけないと思っています。
(以前の所属チームとの対戦だったが)本当に楽しみにしていました。でも、気負わないようにして、とにかくチームが準備してきたことをやりきることにフォーカスしてプレーしました。
文:秋山健一郎
写真:川本聖哉