【Review】NTTジャパンラグビーリーグワン2022 第10節 vs 埼玉パナソニックワイルドナイツ

2022.03.25

折れない、強い気持ちを備えた若い力を加え挑んだ、チャンピオンチームとの戦い

プレシーズン、ピーター ヒューワットヘッドコーチ(HC)に、リコーブラックラムズ東京(BR東京)でコーチを務める決意を固めた理由を聞いたことがある。

「サントリー(現・東京サントリーサンゴリアス)でコーチをしていた頃、ブラックラムズと試合をするのは嫌なものでした。才能やポテンシャルの高さを感じていたからです。日本を離れていた間もトップリーグの試合は見ていたのですが、ブラックラムズへの印象は変わらなかった。それで、『もし日本に戻ったとき、一番わくわくするのは、このチームをさらによりよいチームに進化させていくことに関わることじゃないか』と思うようになっていったのです」

BR東京に感じたポテンシャルを徹底的に引き出し、トップを目指す。そのミッションに関わるようになって2年目。この第10節は、ヒューワットHCがブレることなく、それにこだわり続けてきたことが伝わってくるゲームだった。

相手は昨シーズンのトップリーグのチャンピオンの埼玉パナソニックワイルドナイツ(埼玉WK)。この難敵に挑む前に、チームは多くの負傷者が出る苦境に陥った。そうした中で組まれた布陣は、これまで以上にフレッシュなものとなった。

リーグワン初先発となったFL湯川純平。前節に引き続いてのSH南昂伸とSOアイザック ルーカスの23歳のハーフ団。復帰を果たした2年目のHO武井日向とWTB西川大輔。リザーブには21歳のLOハリソン フォックスなどが名を連ね23人中、「U-25」は8人を占めた。

特に指揮官の意思を感じたのはSH南の起用か。前節のコベルコ神戸スティーラーズ戦から、2試合続けて強豪とのゲームで経験を積むチャンスをつかんだ新鋭への信頼、そして伸びしろへの期待がうかがえた。

12:00。青空の下、強風が吹く埼玉・熊谷スポーツ文化公園ラグビー場。BR東京が風上、埼玉WKが風下の陣地で試合が始まる。埼玉WK10番のキックオフボールが、BR東京陣内中盤、左サイドに飛ぶ。

ボールを確保したBR東京はFWが身体を当てて少し前に出ると、後方からFBマット マッガーンがキック。敵陣10mライン付近へ。ボールを回す相手のBKに網をかけていくBR東京だったが、動き出しがやや早くオフサイド。レフェリーからアドバンテージが宣告された瞬間、埼玉WK15番がステップを切ってブレイク。一気にBR東京陣内中央、22mエリアに達する。このゲインに対し反応よくフォローした埼玉WKは、右サイドを攻めたあと左サイドまでボールを運ぶ。BR東京はこのアタックへの対応で後手に回り差し込まれる。左中間につくったゴール目前のラックから、ピックゴーで3番がトライ。CVは不成功ながら、0-5と先制を許した。(前半3分)

 

FBマッガーンのリスタートキックで試合再開。BR東京は埼玉WK陣内浅めでディフェンスからチャンスをうかがっていく。さらにキックキャッチから果敢に攻めると、テンポよくボールを動かしHO武井、FL湯川、SOアイザック ルーカスらがゲインラインを切っていく。さらにフェイズを重ねていこうとしたが、外のFL福本翔平へのパスが惜しくもつながらずタッチを割る。

 

ラインアウトから埼玉WKのアタックとなったが、FL湯川が倒しHO武井がボールに仕掛ける連係でノットリリースザボール。若い力が埼玉WKのアタックを止めていく。PKを右サイドのタッチに出して前進。敵陣中盤でのラインアウトを得る。(前半6分)

 

HO武井は最前列のPR大川創太郎に渡し、大川は後方へ。パスをつなぐとCTB池田悠希がキャリー。池田はフィジカルの強さを見せて粘り、右中間のゴールまで5mの位置までボールを運ぶ。テンポよくアタックを仕掛けたかったが、パスが少し乱れると、埼玉WKは素早くディフェンスラインを整える。

 

こうなるとブレイクは難しい。ボールをキープして慎重にフェイズを重ねていくが、低くキャリーしたLOアマト ファカタヴァがダウンボールを図ったところで、倒れたあとボールを放さず前方に動いたとしてダブルムーブメントの反則。PKで後退。さらに直後のディフェンスでバックスラインオフサイドを犯し自陣22mエリアに追い込まれる。(前半10分)

 

埼玉WKはラインアウトモールで右サイドの前進を狙うが、ここはBR東京がうまくディフェンス。埼玉WKはラックにして左に出すと力で勝負を挑む。BR東京はこれを前に出て止めようとしたが、左サイドで10番に裏のスペースにキックを蹴られる。広いインゴールに転がったボールをSH南とFBマッガーンが追ったが、デッドボールラインまでわずか1m足らずのところで追いついた相手11番が押さえてトライ。CVも成功し0-12となる。(前半12分)

試合の入りは、2度のチャンスで2度スコアした埼玉WKに対し、1度は攻め込みながら得点につなげられなかったBR東京で明暗が分かれた。

再開後、ラインアウトを得たBR東京は、再び最前のPR大川を使ってボールを確保、パスをつないでアタック。NO8ブレア カーワンのキャリーなどで前に出ると、SOアイザック ルーカスがライン裏にキック。弾んだボールを走り込んだWTB栗原由太がジャンプしてキャッチ。そのまま抜け出せばトライも狙えたが、その足に相手14番がしがみつき止められた。さらに素早くボールを出そうとしたSH南のパスに相手5番が足をかけターンオーバーを許す。

 

自陣に蹴り込まれたボールをFL福本が冷静に処理。SOアイザック ルーカスとCTB池田とパスをつなぎながら左サイドを前進しハーフウェイ付近まで戻す。ボールキープし、左中間で後方のSOアイザック ルーカスにつなぐと高くキックを上げる。弾んだボールを再びWTB栗原が競ったが、直後に笛。埼玉WKにチェイスを阻むプレーがあったとしてオブストラクション。(前半14分)

ハーフウェイ付近からのPKを右サイドのタッチラインに出し前進を狙ったBR東京だったが、FBマッガーンが蹴ったロングキックはわずかにラインを割らず、キャッチされる。蹴り返しを受け、自陣からもう一度前進を狙うBR東京。FBマッガーンが裏に転がしFL湯川が走ったがこれは相手に入る。

即座にアタックに遷移した埼玉WKだったが、BR東京は対応。左サイドから展開して右サイドのスペースを突いた埼玉WK6番に対し、WTB栗原とCTB池田がつかみかかりタッチラインの外に押し出した。

 

ラインアウトからアタックを仕掛けるBR東京。出足よく詰めてくる埼玉WKのプレッシャーの中でSH南がLO柳川大樹にパスを出しそれをもらうプレーを狙うが、これを読んでいた相手9番に捕まりターンオーバー。アタックに転じた埼玉WKは中央、22mライン目前の位置でラックをつくる。BR東京はここにプレッシャーをかけていったがハンドの反則。PGを狙い、成功させた埼玉WKは3点を追加。0-15となった。(前半18分)

 

なんとかトライを獲り返しついていきたいBR東京は、敵陣深めに蹴り込んだリスタートキック直後の争奪で、相手8番にFL福本が低く的確なタックル。さらにLO柳川がボールに仕掛けノットリリースザボール。PKを左サイドのタッチに出し、ゴール前ラインアウトのチャンスを迎える。

 

BR東京は、この試合で初めてラインアウトモールでトライを狙う。しかし競らずに待ち構えた埼玉WKは斜めにプッシュし押し出しにかかる。なんとかこらえるBR東京だったが、ボールが動かなくなりアンプレアブル。埼玉WKボールのスクラムとなる。

 

スクラムでBR東京にアーリーエンゲージ。埼玉WKが蹴ったタッチを狙ったFKを受けて、クイックスローインでキレのあるアタックを仕掛けたBR東京だったが、ボールは競技区域外に飛んでいたとしてタッチが認められた。

 

ラインアウトで埼玉WKにノックオン。スクラムを得たBR東京は、押されながらもなんとか粘りボールを出すとアタック。ハーフウェイから少し相手側に入ったポジションで身体をぶつけていく。その様子を見極めたSH南はキックを選択。その蹴り返しを受けて、BKが自陣から攻め手を探る。出足よく押し上げてくる埼玉WKディフェンスをしっかり見ながら左に展開。エッジでボールを得たWTB栗原は、前方に小さくキック。この処理に相手14番が手間取ると黒いジャージが押し寄せてターンオーバー。中央でCTB池田が右サイドにキックを蹴り、WTB西川がこれを追ったがオフサイド。しかし直前のラックで埼玉WKにノックオンがあったとしてBR東京のチャンスは続く。(前半24分)

 

左サイド、22mラインを越えたあたりのスクラムから中央に出し、これをWTB栗原がキャッチ。さらに角度をつけて走り込んできたCTB池田に渡しギャップを突く。池田は前に出てゴールに迫ったが、激しいディフェンスを受けボールがこぼれる。さらに直後のスクラムで押されペナルティを奪われた。敵陣深くに入るものの、スコアにつなげられない展開が続く。(前半27分)

 

エリアを戻され、相手のキックをきっかけに、ハーフウェイ挟んでボールが行き交う展開に。ワイドにボールを動かす埼玉WKのアタックにBR東京はよくついていく。左サイドのエッジにボールを運んだ埼玉WKは11番に持たせたがCTB池田とWTB西川がプレッシャーをかける。内側に切れ込むとFL湯川がタックル。そこに西川が詰めてボールに仕掛けるとノットリリースザボール。

 

ここでSH南がボールを持っていた相手を追いかけ、受け取るとすかさずタップしてリスタート。少し丁寧にいっている印象もあった南がここで強気の判断を見せる。SOアイザック ルーカスから後方から走り込んだFBマッガーンへ。マッガーンはわずかに対応が遅れた相手ディフェンスのギャップを突き前に出ると外のNO8カーワンへ。さらに回り込んでいたルーカスを経てCTB濱野大輔へボールがつながる。

 

敵陣10mライン付近から22mライン付近まで走ると大外のWTB栗原へ。濱野との距離がやや詰まっておりスピードで貫くのが難しいとみるや栗原は内へ。ディフェンスが迫るが簡単には倒れずゴールまで5mまでボールを運ぶ。

駆けつけたSH南が迷いなく左中間から中央へパスアウト。パスを受けたSOアイザック ルーカスはゴール正面のギャップ目がけて走り込んできたHO武井につなぐ。武井は中央を抜けかけるが、埼玉WKが意地のタックルで止める。武井がインゴール目前でダウンボール。ここにBR東京の選手が詰め寄ってラックをつくると、PR千葉太一がピック。さらに潜り込むようにしてグラウンディング。BR東京がこの試合最初のトライを奪った。声を挙げることのできないスタンドのファンの代理かのような、千葉の雄叫びがスタジアムに響いた。CVも成功し7-15。(前半31分)

再開後、再びBR東京にチャンスが訪れる。キックキャッチしてパスを出したWTB西川にレイトチャージ。アドバンテージが出るとSOアイザック ルーカスが前に出てくるディフェンスの裏にキック。弾んだボールを自らキャッチするとそのまま前に抜けビッグゲイン。

 

敵陣22mライン付近までくると前方へキック。FBマッガーンがこれを拾いにいくが、一瞬先に相手15番の足が伸びキック。埼玉WKインゴールに転がるボールをWTB栗原が追ったが、15番がデッドボールラインの外に蹴り出した。キャリーバックとの判定でBR東京の5mスクラムに。(前半33分)

 

絶好の位置のスクラムを押されず保つとNO8カーワンが出してアタック開始。しかし素早くラインを整えた埼玉WKのディフェンスは堅固だった。なんとかテンポを上げようとフェイズを重ねたが守りきられる。BR東京にノックオン。さらにスクラムでペナルティを犯し後退。(前半35分)

 

だが簡単にはあきらめないBR東京はLO柳川がラインアウトをスチール。敵陣浅めの位置で再度アタックを仕掛ける。強いキャリーでじりじりと前に出るとCTB濱野、SH南とFBマッガーンの連係などでゲイン。テンポを上げて埼玉WKのディフェンスを揺さぶると、中央付近からCTB濱野がキックパスで外のスペースを狙う。

 

しかしこれをチャージされる。3番、12番とつながれビッグゲインを許す。SOアイザック ルーカスがなんとか追いつきゴール目前で止めると、リリースしたボールがWTB栗原に入る。FBマッガーンがなんとかキックアウトしてスコアを逃れた。(後半37分)

しかし、埼玉WKはゴール前ラインアウトからモールでプッシュ。BR東京はこれに押され、ペナルティを重ねてしまう。アドバンテージが出た状況で攻める埼玉WKはFWで挑み、4番がポストの右にトライ。CVも成功し7-22。リスタートキックをキャッチし、ホーンと同時に埼玉WKが蹴り出して前半が終了する。

後半の入りにCTB濱野がトライ。その後もトライの予感漂うアタックを繰り返す

BR東京はメンバー入替を行わず後半へ。FBマッガーンのキックオフでゲームが再開される。そのキックリターンを使ってBR東京がアタック。しっかりと身体を当てて前に出ながらフェイズを重ねていく。SH南のテンポのよい球さばきと各選手のフィジカルが噛み合い、青いジャージに対し差し込んでいく。SOアイザック ルーカスが背後にキック。これは相手に入ったが、詰めていたFBマッガーンがプレッシャーをかけていくとキックアウト。埼玉WK陣内浅めの位置でのBR東京のラインアウトに。(後半3分)

 

ラインアウトの争奪で埼玉WKがジャンパーのLO柳川を押してしまいペナルティ。アドバンテージが出た状態攻めた後、PKで前進。左サイド、22mライン付近のラインアウトからBR東京が攻める。(後半4分)

 

モールを組むがすかさずFL湯川が持ち出すオプション。さらにCTB池田を使い前方へボールを運び、22mラインの内側へ。FWがボールを持ち激しく当たっていきながらポイントを中央へ。ゴール正面付近にラックをつくると、SH南の後方から走り込んだFL福本が鋭いキャリーで前へ。止められるが、サポートがすかさずクリーンアウト。素早くボールに迫りボールをテンポよくさばいた南は斜め後ろのSOアイザック ルーカスへ。ルーカスは仕掛けず、走り込んだCTB濱野にパス。濱野はディフェンスに迫られたが跳ね返しながら冷静にランコースをずらし右中間にトライ。CVは不成功だったが12-22とした。(前半6分)

 

後半の入りを制圧したBR東京は、自陣からのハイパントを相手がこぼすとHO武井がセービングしマイボールに。これを起点としてさらに攻める。隙あらばターンオーバーを狙おうとしている埼玉WKのディフェンスに対し、勢いとテンポ、そして何よりも自信を感じさせるアタックで渡り合う。刀と刀のつばぜり合いのような時間が続く。ここはSOアイザック ルーカスからラインブレイクを狙ったHO武井へのパスがわずかに乱れノックオン。埼玉WKボールに。(後半8分)

 

スクラムペナルティを奪った埼玉WKはPKで前進。BR東京陣内の22mライン付近のラインアウトからアタック。後半最初のチャンスを迎える。右サイドを8番が抜けてゲインするとゴールに迫るが、BR東京も粘り強く守り落球を誘う。

 

これを確保したBR東京は自陣ゴール前からアタック。逆サイドのSOアイザック ルーカスにつなぐと抜け出し、外をフォローしたWTB西川につなぎさらに前へ。西川はハーフウェイ付近で中央に走り込んできたFBマッガーンに長いパスを通す。マッガーンは敵陣10mライン付近でゴール前左隅にキック。WTB栗原がこれを追い、拾えばトライという状況が生まれたが、一瞬早く相手11番がボールに迫り、拾って大きなキック。ビッグチャンスだったが、惜しくもスコアできず。(後半11分)

 

その後もプレーを切らず、意地のぶつかり合いのような攻防が続いたが、BR東京陣内のラックに仕掛けた埼玉WKの選手がオーバーザトップ。BR東京がPKを得る。(後半13分)

 

前進し、22mライン付近のラインアウトをキープして攻めるBR東京。しかしこぼれ球が埼玉WKに入ると、得意のアンストラクチャーからのアタック。しかしここで集中力を見せたBR東京はFL福本がランナーに低く強いタックル。大きなゲインを許さず、敵陣浅めの位置でラインを整えると、ラックにプレッシャーをかけ反則を奪う。PKで前進し、右サイドゴール前のラインアウトに。

 

奥でLO柳川に合わせモールを組むBR東京。押しきれなかったが埼玉WKに反則。もう一度ラインアウトにしたが、ここでノットストレート。埼玉WKスクラムで押し込まれ、さらにペナルティ。PKで前進を許し押し戻されてしまった。ここでPR大川を笹川大吾に入替。(後半18分)

 

しかし、直後のアタックで埼玉WKがラインオフサイド。ディシプリンの乱れに救われ、BR東京は再びゴール間近の位置でラインアウトを得る。ここでCTB濱野をロトアヘアアマナキ大洋に入替。(後半19分)

このチャンスでラインアウトのスローが後方にオーバー。ボールは埼玉WKに入り、キックアウト。再び後退させられる。敵陣に入り込む機会が重なりながらもミスが出る歯がゆい時間が続く。

その後、ペナルティが重なり、BR東京は自陣深くに押し込まれる。しかしラインアウトでプレッシャーをかけると埼玉WKにノックオン。さらにスクラムでアーリーエンゲージが出て、FKを得る。このFKはタッチを狙おうとしたが、キックの始動と同時にプレッシャーをかけてきた相手選手を避けてキックしたFBマッガーンに対してポイントオーバーの反則。同じ地点での埼玉WKスクラムとなり、自陣脱出のチャンスを逃してしまった。(後半24分)

 

この流れが変わりそうな状況でもBR東京はレジリエンスを見せる。組み直しが続いたスクラムで粘ると、その後のアタックにも対応。前進を阻むと、右サイドを突いた埼玉WKのアタックに対し、SOアイザック ルーカスとWTB栗原がタックル。そこにFL湯川がボールに仕掛けノットリリースザボールを奪う。PKで自陣22mライン付近まで押し戻した。ここでPR千葉を西和磨に、FBマッガーンを堀米航平に、SH南をマット ルーカスに入替。(後半27分)

今度こそ自陣脱出のチャンスと思われたが、強い風の影響も受けたのかラインアウトが真っ直ぐ入らずノットストレート。さらに直後のスクラムでコラプシング。またも自陣に押し込まれ、ゴール前ラインアウトを与えてしまう。(後半29分)

ラインアウトから埼玉WKがフェイズを重ねていく。BR東京はゴールを背負いながら粘り強く守る。しかし、反則が出て再びラインアウトを与えるとモールを組まれる。ここまでは適切に対処できていたモールディフェンスだったが、ここは割られてしまい左中間インゴールに16番がトライ。自陣に攻め込まれてから約10分にわたりスコアを許さず守ってきたが、ここでついに失点。CVも成功し12-29となった。HO武井を森雄基に、FL福本を大西将史に入替。(後半33分)

 

残り7分弱で17点差と厳しい状況に追い込まれたBR東京。対する埼玉WKはあと1トライで届くボーナスポイント(3トライ差での勝利)がターゲットとなった。相手に畳みかけられそうな状況となるも、BR東京は気持ちを切らずにぶつかっていく。自陣から仕掛けたアタックでボールを奪われ、22mエリアでのディフェンスという状況になったが、FL大西がジャッカルを仕掛けノットリリースザボールを奪う。(後半39分)

80分経過の直前にやり返され、ノットリリースザボールを与えてゴール前に攻め込まれるが、ここも守りきりペナルティを奪い返した。さらには、ホーンは鳴っていたが、PR笹川がリスタートしてアタック。右サイドのスペースをWTB西川がゲインしてキック。敵陣でのディフェンスからトライを狙う局面をつくった。最後は埼玉WKにノックオンが出てノーサイド。

敗れはした。だがこの日、自分たちのすべきことをやりきれたのはBR東京だったようにも映った。裏のスペースへのキックやパスの使い方など随所に見られた埼玉WK対策も機能していた。何よりも強い気持ちを最後まで保ち挑み続ける姿勢は、今シーズンのゲームで最も強く感じられた。

 

抜擢されたFL湯川、福本が高いワークレートで繰り返したタックルとボールへの仕掛け。プレッシャーのかかるゲームで、大胆かつ冷静にボールをさばき続けたSH南の奮闘。欠場を余儀なくされていた期間のフラストレーションを解放したかのようなHO武井の攻守でのキレのあるプレー。印象的なプレーを挙げれば数えきれない。

 

多くの負傷者を抱えてはいる。だが、スコッド全体でのレベルアップを図り、全選手がBR東京が目指すラグビーのテーマを理解し、求められるクオリティを保とうと努力し続けてきたことが伝わってくるゲームだった。

次節は3月27日(日)14:30より、東京・江東区夢の島競技場で行われるNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安との交流戦最終戦となる。残すところ6戦となった今シーズンのリーグワンのリーグ戦。つくりあげてきたものを、“完成形”を、見せる段階が近づいてきている。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

現在、チームは13人のFWがプレーできない状態で、フッカーがバックローで出場したり、本来のポジションではなく、違うポジションでプレーしている選手がいます。厳しい状況ですが、今日見せてくれたパフォーマンスはすごく誇りに思います。ファイトし続けるようにという指示に対して、本当に80分間ファイトしてくれたと思います。もちろんやらなければいけないことはありますが、いい方向に向かって成長しているチームだと思いますし、本当に誇りに思っています。

(13人のFWがプレーできない状況について)ほとんどはケガです。LOデーモン レエスアスについては奥さんの出産が理由です。ただそういうことを言い訳にしたくはないです。今日はよく戦ったと思います。どこが相手でも、誰が出場しようと、いいプレーを見せることを期待しているので。

(SOアイザック ルーカスの好プレーが続いている。評価を)23歳の若い選手で、うちのチームと同じようにエネルギッシュでいい成長を遂げています。ゲームマネジメントに関しては毎週話をしていますが、本当にハードワーカーで、いつもフィードバックを求めていて、自分のラグビーを磨こうとしています。一番大きいのはビッグハートの持ち主だということ。絶対にあきらめない選手ですね。

HO 武井日向キャプテン

1対1のバトルに毎回勝ち続けるというところにフォーカスして戦いました。自分たちがうまくいかないとき、相手にチャレンジされたときに、今まではバラバラになってしまった部分があったんですけど、そこで絶対にコネクトし続けて、あきらめずにチャレンジし続ける。そういう姿勢が今日の試合は見えた。負けてしまったんですけど、チームとしての成長は感じられたと思っています。

(前半からゴールに迫りながらトライをものにできなかった。要因は)敵陣に入ったときにトライを獲って帰ってくることは僕たちの課題なんですけど、今日もそこはまだまだでした。自分たちのミスで獲りきれなかったことが多かったと思うので。ミスだったりディシプリンを守れなかったり。自分たち側に問題がありました。

(LO柳川が大きな役割を果たしている)ラインアウトをリードしていて、そこでもしっかり分析してくれています。高いスタンダードを求めてやってくれている選手。チームのムードメーカーとしても盛り上げてくれているので、ヤナさんがいるとチームが活気づく。キャプテンとしてそういう部分でも助けてもらっています。

PR 千葉太一

今日の試合はチームとしてもチャレンジする機会だったので、チームが誇りに思える試合をしようという話をしていたのですが、そこは体現できたかなと思っています。個人としてはスクラムの部分で負けてしまったので、課題の残る試合だったかなとは思いました。

(スクラムを組んでの感想と課題を)最初のバインドでのプレッシャーがすごくて、受けてしまったところがありました。そこをどう修正していくかというところでは、1番(千葉)と2番(武井)が密着して、相手が真っ直ぐくるのに対して僕たちも真っ直ぐ勝負できるようにしていければと思っています。来週も試合があるので、改善していきます。

SH 南昂伸

今回の試合はペイシェント、我慢というところをテーマにして、強い相手に対しブラックラムズのラグビーをしようということで試合に臨みました。前半の最初の方はトライを獲られてしまったのですが、その後はしっかりと我慢してトライまでもっていくこともできました。課題はありますが、自分たちとしてはできた形もあったかなと思っています。

(アイザック ルーカス選手とどんなコミュニケーションを取っているか)ランニングに自信があるので、セットプレーからは僕自身から仕掛けていくというのと、フェイズ中のプレーはミルキー(アイザック)が素晴らしいので、彼にボールを渡してスペースをうまく使ってもらって、自分はサポートにいくという感じです。

(試合重ねるなかでうまくいきだしたことはあるか)9番、10番が仕掛けられるのは、相手チームにとってもやりにくいのではないかと思っています。最近はコミュニケーションがとれてきているので、場面ごとに細かく自分がいったり、ミルキーがいったりと使い分けてやれるようになってきているとは思います。

SO アイザック ルーカス

最初から最後までハードなゲームでした。相手がどういうことをしてくるかはわかっていました。何年も上位にいるチームなので。そんな相手に対し、ゲームが始まってから80分間しっかりとみんなが戦い続けてくれたことに感謝しています。

(フェイズアタックしているときに、持つときと、持たないときがある。使い分けは)強いディフェンスが相手なので、バリエーションですかね。FWでしっかりプレーしたりBKが仕掛けたり、そういったところをどちらもしっかりやることが大事なので。

(バリエーションの中で、自分でいくという判断するのはどういうものが見えたときか)僕のディシジョンはFWでいいキャリーができたかどうか。そういう勢いをうまく使って。SH南とのコンビネーションも磨かれてきていて、いいキャリーができたら少しフラットになるというような感じですね。できるだけ早くボールが欲しいので。9番、10番のコンビネーションはさらに磨いていきたいです。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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