【Review】NTTジャパンラグビーリーグワン2022 第7節 vs 横浜キヤノンイーグルス

2022.03.03

試合の入りを制したのは横浜E。BR東京は攻め込みながらも獲りきれず

リーグワンは、第6節より6試合の交流戦期間に入っている。BR東京はその初戦が新型コロナウイルス感染の影響で中止に。ホームタウンである世田谷区の駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場でのホストゲームは、この横浜キヤノンイーグルス(横浜E)戦でついに実現した。春を感じさせる陽気のもとで、これまで2試合実現しなかったチームからファミリーへの“おもてなし”はようやく日の目を浴びた。

 

グラウンドの選手たちはタフな状況が続く。実戦から3週間を空けてのゲーム。その間にはチームとしての活動休止期間もあった。一定の間隔で実戦を重ねながらラグビーを熟成させていくことが叶わず、開幕戦以来、ゲームを行った上での勝利を手にできていない状況は、かなりのフラストレーションを生み出しているはずだった。世田谷での初めてのゲームは、流れを変えねばならない一戦となった。

 

試合は風上にBR東京、風下に横浜Eという配置で始まる。横浜E10番のキックオフがグラウンドで弾み、それをHO武井日向が確保。WTB栗原由太との連携で左サイドを鋭く突くがタッチラインをかすめ横浜Eのラインアウトに。直後の横浜Eのテンポのよいアタックに、BR東京はラックで反則。PKで自陣深くに押し込まれる。

 

だがラインアウトを奪い、自陣からのアタックに移行。追い風を使ったSOアイザック ルーカスのキックからカウンターアタックを狙ったランナーを捕まえてターンオーバー。ハーフウェイ付近のポジションからエッジを突くがタッチに押し出される。(前半3分)

 

横浜Eはラインアウトから攻めるがボールが手につかずノックオン。だが、ハーフウェイ付近のスクラムでペナルティを奪うと、10番がクイックリスタート。これがわずかな混乱となったか、直後のディフェンスラインにギャップが生じ突破を許す。横浜Eは15番から13番につなぎ左中間インゴールに運んだ。だが、映像確認の結果、13番の選手がゴール目前で迫ったSH髙橋敏也の顔面をハンドオフしていたとしてノートライに。(前半7分)


 

自陣からPKで前進し、22mラインを超えた場所のラインアウトから攻めるBR東京。だが、後方に下げた後にタッチを狙ったキックがダイレクトと判定され自陣に戻されてしまう。横浜Eは22mラインの内側のラインアウトから攻めると、10番のゴロキックに15番が反応。右隅で押さえてトライ。CVは外れたが0-5となる。この攻防で傷んだPR谷口祐一郎が脳震とうの確認のため一時退出。替わって西和磨がピッチへ。(前半10分/谷口は同21分に正式に交替)

 

リスタートキックから優勢を得たいBR東京だったが、自陣で素早くパスを展開する横浜Eにディフェンスラインを引き伸ばされ、またもギャップを突かれる。後手に回ったディフェンスを突かれさらに前進を許すと、後方のスペースへ10番がキック。ハーフウェイ付近から一気に走り込んだ15番がバウンドを合わせてこれを確保すると、右中間インゴールに運ぶ。横浜Eがキックを活かした連続トライで加点。CVも決まり0-12となる。(前半12分)

 

アタックの局面をほぼつくれないまま、2トライを失う苦しい試合の入りとなったBR東京。SHアイザック ルーカスによる、ハーフウェイの手前から敵陣22mラインを超えてタッチを割るキックでマイボールラインアウトを得るが、これもスチールを許し悪い流れが続く。

 

自陣から攻める横浜Eは、またも10番のキックパスで好機をつくると、再び22mエリアに迫る。ここでも10番が裏に転がしトライを狙うが、ここはWTBネタニ ヴァカヤリアが追いつきギリギリのところでトライを阻む。だが、このゴール前の攻防でBR東京にオフサイドがあったとして横浜Eにほぼ正面の位置でPKが与えられる。22mラインの内側からPGを成功し0-15。点差はさらに広がった。(前半17分)

 

反撃の糸口を探るBR東京は、自陣の浅い位置のラインアウトでの相手の反則で得たPKで前進。22mエリア、右サイドのラインアウトとする。これを今度はキープして、この試合最初のモールでのアタックを仕掛ける。ディフェンスがこれを阻もうとしたが、縦に長い形を組み上げると一気に推進力を得てゲインしていく。ゴールに迫ると、最後方のHO武井が持ち出しグラウンディングを狙う。だが、これに反応したディフェンスが身体を張り、あとわずかというところで止められアンプレアブル。モールトライは阻まれた。(前半22分)

 

BR東京の5mスクラムで再開されたが、スクラムが落ちBR東京にペナルティ。PKで前進を許し、この試合2度目のトライチャンスも活かすことができなかった。(前半24分)

 

ブレイクダウン、セットプレー、ディシプリンのわずかな差。そこで生まれた隙を個人技で突いてくる横浜Eが、向かい風の不利をもろともしないラグビーで押す展開。それでも、活路を見いだそうとするBR東京は、キックキャッチからFBマット マッガーンがランで前に出ると、CTBメイン平とWTBヴァカヤリアでエッジを突きゲイン。そこからフェイズを重ねていく。ボールをキープしてアタックを仕掛ければ前に出ることはできており、脅威を与えられているのは間違いなかった。しかし、一瞬サポートが遅れたところにディフェンスの手が伸びノットリリースザボール。本当にわずかな狂いが、試合の流れを変えさせてくれない。(前半25分)

 

だが、ラインアウトの乱れを突いて再びボールを確保すると、SOアイザック ルーカスが自陣から長いタッチキックを狙い、ゴール前ラインアウトにしようとする。これは惜しくもゴール前で止まったが、ボールを確保した11番に黒いジャージが押し寄せる。ボールをオーバーし奪ったかに見えたが、シーリングオフの判定。大きなチャンスとなりうる場面だったが、規律が乱れた。(前半27分)


 

直後、エリアを取り戻した横浜Eが自陣浅めでアタックを仕掛けるが、パスがこぼれたところにCTB牧田旦が鋭く詰め、WTB栗原につないでゲイン、ゴールに迫る。ラックからピックゴーを繰り返し、右中間をしつこく攻めていく。ブラインドサイドに振り、FBマッガーンが大きく身体を伸ばしてグラウンディングを狙うが惜しくも届かず。ここで前のプレーで出ていたアドバンテージ(横浜Eのオフサイド)が採用される。

 

この攻防で傷んだHO武井が脳震とうの確認のため一時退出。替わって大西将史が入る。(前半31分/武井は戻らず正式に交替)

 

PKからゴール前ラインアウトへ。奥で合わせにいったBR東京だったが、ボールは横浜Eへ。自陣脱出を図ったキックを確保したFBマッガーンが、カウンターアタックでタッチライン際を一気に駆け抜け、ディフェンスに遭いながらも手を伸ばしてインゴール左隅にボールを持ち込む。トライかと思われたが、アタック開始直後にボールを持たない選手がディフェンスと接触していると映像確認で判明しオブストラクション。トライの確認も行われなかった。(前半31分)

 

前半の最終盤は横浜Eがアタックを行う時間帯に。PGを狙えるほぼ正面の位置でPKを得ながら、ラインアウトからトライを狙っていく姿勢を見せたが、ここはBR東京が守る。残り2分でアタックを見せたが、トライは奪えないまま前半が終わる。

ディフェンスブレイクダウンやアタックで粘り強さ。“らしさ“取り戻した後半

前半で負傷交替したPR谷口、HO武井以外、選手の入替は行わずに後半へ。前半は入りに主導権を奪われ、その後はチャンスを迎えるながらスコアできない歯がゆい展開が続いたが、中盤以降はスコアを許さずに戦ったのも事実だった。後半の早い段階でスコアできれば、まだまだわからない状況ではあった。

 

FBマッガーンのキックオフで後半が始まる。落下地点からボールキャリーで前に出ようとする横浜Eだったが、BR東京がプレッシャーをかけていく。その中枢にいたNO8ボークコリン雷神がボールに覆い被さる選手につかみかかり、ノットリリースザボールを奪う。

 

PKをタッチラインの外に出し、ゴール前ラインアウトからのモールでトライを狙う。しかし硬い壁のようなディフェンスが前進を阻む。左へ展開。出足のよいディフェンスに真っ向勝負を挑んでいく。CTBメイン、LOデーモン レエスアス、PR西がボールキャリー。ゴール正面でボールを守ろうとしたが、ボールに覆い被さる格好になってしまいシーリングオフのペナルティ。願ってもない後半開始直後のチャンスだったがボールを失う。(後半2分)

 

自陣から攻める横浜Eはキックを挟みながらポジションを上げていく。BR東京陣内浅めの位置のラインアウトからアタック。BR東京はディフェンスでプレッシャーをかけ、ターンオーバーかと思われる形を繰り返しつくる。横浜Eは必死にディフェンスを剥がしボールを守る。

 

この我慢比べにBR東京が勝つ。狙いすまして前に出たFL松橋周平のタックルが突き刺さると、後続が続きオーバー。ボールを奪い取る。BR東京が磨いてきたアグレッシブなディフェンスが光った。しかし、SOアイザック ルーカスのランをきっかけにアタックに転じようとしたところで、パスがつながらずノックオン。(後半6分)

 

自陣浅めのスクラムでやり返したいBR東京だったが、アーリーエンゲージでFKを与えてしまう。横浜Eが再度選択したスクラムではコラプシング。スクラムでの主導権をなかなか奪い返せない。正面からやや右、40m弱の距離のPGを決められ、0-18となる。(後半10分)

 

スコア的にも、時間的にも、もう猶予がなくなったBR東京。敵陣浅めのスクラムでFKを得ると、SH髙橋がリスタート。しかしセットの早い横浜Eは、ディフェンスでプレッシャーをかけてゲインを許さず、BR東京のオフサイドを誘った。

 

再び自陣への侵入を許し、ディフェンスに回るBR東京だったが、NO8ボークがボールに仕掛けノットリリースザボールを奪う。劣勢に回る要素が少なくない状況ではあったが、ディフェンスでの接点へのプレッシャーは明らかに効いていた。ここでBR東京は3人を入替。LOレエスアスをタラウ ファカタヴァに、SH髙橋を南昂伸に、FBマッガーンをジョー トマネへ。トマネはCTBに入り、替わってメインがFBに入った。(後半14分)

 

相手のペナルティを突いて敵陣に入ったBR東京だったが、相手10番の22mライン付近からの長いキックが自陣の22mラインを超えてタッチを割る。またも新ルールを活かされ自陣の深い位置でラインアウトを与えてしまう。これをきっかけにラインアウトモールを2度にわたり仕掛けた横浜Eが右中間にトライ。CVも決まり0-25となる。(後半19分)

 

再開後、BR東京はSH南がBKを使い、鋭いキャリーでゲインを狙っていく。深い位置からCTB牧田が走りディフェンスを動かすと、リリースしたボールをピックした南が自らギャップを突き、ハーフウェイから22mライン付近までゲインする。これをきっかけにBR東京が効果的なアタックに転じる。FW、BKが一体となりテンポよくボールを動かして左右に相手を振り回していく。このゲームで見せることができていなかった自分たちのアタックが機能し始める。

 

そしてついに中央を貫く。走り込んだFLブレア カーワンにSH南がボールを託すと、鋭くキャリー。倒されるが、リリースしたボールを拾い直してさらに突き抜ける。ディフェンスにしがみつかれたが、左にフォローしたFL松橋にオフロードパスを通し、松橋は中央に飛び込みトライ。SOアイザック ルーカスが蹴ったCVも成功し7-25とした。また、ここでPR笹川大吾を千葉太一に入替。(後半24分)

 

再開後もBR東京の粘り強いアタックが続く。風下の自陣からじりじりと攻め上がり、ハーフウェイ付近まで前進する。ここからフィジカルバトルが激しさを増す。互いにボールを奪いあい、ターンオーバーが連発する。横浜Eはキックを交えたが、BR東京は下げられても再びボールをつないでゲインしていく。点差は開いていたが、互いの意地と意地がぶつかりあう激しい攻防となる。

 

FL松橋のジャッカルでペナルティを奪うと、NO8ボークがリスタート。ディフェンスラインに挑んでいく。ボーク、WTBヴァカヤリア、FLカーワンらが身体を張りディフェンスを寄せると、CTB牧田からWTB栗原へのロングパスを通しスペースを突く。試合開始から安定感を誇った横浜Eディフェンスが揺れ始めると、SOアイザック ルーカスがギャップを見つけ裏へ抜ける。スタンドがどよめく。

 

アイザック ルーカスをPR千葉がフォロー。中央、22mラインまでもう少しという位置でまでキャリーし、ポイントをつくる。ここからさらに継続するBR東京。右に振り、エッジをWTBヴァカヤリアが突いてゲイン。22mラインを越え、諦めない姿勢が呼び起こした手拍子に後押しされながら攻めていく。

 

しかし、突破を狙って繰り出したCTB牧田のハンズパスが、わずかにNO8ボークに合わずノックオン。横浜Eスクラムとなる。

 

ここで脳震とうの疑いの出たPR西に替わりPR笹川が復帰、またFLカーワンを福本翔平に、CTB牧田を今季初めてメンバーに入った前主将・濱野大輔に入替。(後半31分)

 

再開のスクラムは横浜Eにアーリーエンゲージ。FKを得たBR東京は、FL松橋がリスタートしてアタックに取りかかる。がむしゃらという言葉がここまで似合うアタックもないだろう。縦に、横に、ボールを大切に守りながら、泥臭くつなぎ、激しく身体をぶつけていく。

 

PR千葉のキャリーなどでゲインしゴールまで5m。ほぼ正面の位置のラックでの攻防が続いたが、SH南が意を決したかのように周囲を見渡す。

 

左に展開。アイザック、トマネ、そして栗原。左隅のインゴールに赤いジャージはいなかった。全員の執念を実らせたトライで12-25とした。(後半35分)

 

再開後、自陣でパスをつないだBR東京にノックオン。横浜Eはスクラムから8番が持ち出し、ブラインドサイドを鋭く突きインゴールへ持ち込みトライ。5点を失い12-30となり、ゲームはそのままノーサイドを迎えた。

 

セットプレーやディシプリンで劣勢に回る今シーズン最も苦しい試合であったのは間違いない。だが、ディフェンスで繰り返しみせたプレッシャーや、後半見せた粘り強いアタックは、シーズン当初より磨いてきたフィジカルアタッキングラグビーの一端であり、BR東京のアイデンティティといっていいものだった。

 

2勝5敗(不戦勝1、不戦敗2を含む)とし勝ち点は12。順位は7位のまま動いていない。次節は折り返しとなる第8節。3月6日(日)、14時30分から東京・秩父宮ラグビー場で行われるNECグリーンロケッツ東葛とのゲームは、全てを出し切って迷いを吹き飛ばし、後半節に向けて勢いをつける一戦としなければならない。

監督・選手コメント

ピーター・ヒューワットHC

すごく残念な結果になりました。コロナ禍の影響もあり数週間試合ができていなかったので、すごくエキサイトしていました。最初の10分、15分というのは、強度というものがなかったんじゃないかなと思います。横浜Eは前半、よいディフェンスを見せていました。ただ後半は僕たちのチームができることを見せられたと思っています。4試合目でしたが、ここからはもっといい試合が見せられればと。連続で試合ができればいいなと思っています。

(SH南昂伸がいいインパクトになった)素晴らしかったと思います。開幕戦のRH大阪とのゲームでインパクトをもたらしてくれたと思っています。南は才能のある選手です。ポテンシャルもあります。今、成長している最中でもありますね。正しい方向に成長していて、彼が入ったときにチームのテンポが変わりました。やるべきことをやりきっていたと思います。

FL松橋周平

今日はありがとうございました。ホームの駒沢で試合ができるのは今シーズンこれが最初で最後になってしまったので、この横浜Eさんとの試合には、チームために、ブラックラムズファミリーのために、必ず勝ちたいと思って臨んだ試合だったのですが、最初の20分でやりたいようにやられてしまって、僕自身もフィジカルにいけなくて、悔しい思いがあります。後半に入ってからは自分たちがやりたいプレーができていたと思います。まだ試合は続くので、反省をして、改善して、チームとして成長していきたいと思います。

(流れつかめなかった前半、相手のキックの選択など、対策がハマってしまったように見えた)最初の20分、田村優さんが起点になってのってくるというのはわかっていたので、対策をとっていたのですが、自分たちがそれを受けてしまって、そのままのせてしまった。

(後半の途中からは自分たちのゲームに持っていけた。修正できたのでは)修正といいますか、あれが僕たちのラグビー。今日はそれが最初から出せなかったという思いです。

(試合間隔が空いた難しさは?)フラストレーションはかなりありました。どこかで試合の感覚が薄れていたのかもしれないです。でもそれは言い訳にできないです。やるべきことをやらないといけなかった。

(セットプレーについて。ラインアウトがうまくいってなかったようにも)シンプルに相手のディフェンスがよくて、それに対して僕らが惑わされた部分があった。でも修正してボールが獲れていた場面もあった。改善しないといけない部分もありますが、できた部分もありました。

FLブレア カーワン

結果には少しがっかりしています。試合がキャンセルになってしまったりして、なかなか集中してラグビーをすることができなかったことが、最初の20分、25分に出てしまったと思っています。後半は僕たちのラグビーができるようになったとは思いますが、ダメージが与えられたあとで、追いかける感じになってしまいました。でも、いくつか修正できる場所はあると思っています。

(ハードワークしていた。どんな思いで試合に臨んでいたか)最初の20分は錆びついている感じがあり、そこは残念でした。ただ、ラグビーができる喜びも感じていましたね。そしてハーフタイムにいいメッセージがあって、自分も効果的なプレーに関われたんじゃないかなと思っています。

(若い選手も多いチームだが、意識していることがあれば)私たちのチームには若くて才能のある選手がたくさんいます。彼らとプレーできるのはわくわくします。(メイン)平だったり南(昂伸)だったりね。日本人の選手はアタックに対する直感みたいなものがあります。リーグワンだけではなく、世界でもやれる選手もいると思います。順調に成長していくことが重要ですが、アタックだけではなくディフェンスでもいいパフォーマンスができるようになってほしいですね。見本となるプレーを見せて、伝えられることがあれば伝えていきたいと思っていますが、オーバーコーチングになってしまってはいけないので、そこは気をつけて、背中で見せるということも心がけています。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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