【Review】トップリーグ2020 第6節 vs NECグリーンロケッツ

2020.02.26

春一番が吹いた秩父宮。堅実に守り、攻め、リードをつくる。

トップリーグは中盤戦へ。リコーは今季初となる秩父宮ラグビー場でのゲームを、NECを相手に戦うこととなった。いずれも負けが先行する苦しい状況を脱するべく高いモチベーションで臨む一戦は、気温15度を超え、強い南風が吹き込む春の嵐を思わせる環境で行われた。

リコーは前節の神戸製鋼戦の先発メンバーを大きく動かさず、HOベン ファネルと森雄基を入れ替える変更のみに留めた。試合の細かなレビューを経てもなお、6−16と食らいついて見せた前節前半の内容を評価したことがうかがわれた。

 

風下のNECのキックで試合開始。ボールは落下地点に迫ったリコーの選手がキャッチできないほど強く押し戻されNECへ。キックを挟みながら攻めるが、自陣浅めでリコーがプレッシャーをかけノットリリースザボールを奪う。(前半2分)

 

左サイドへ蹴ったPKでリコーは敵陣10m付近まで前進。ラインアウトをキープして攻め、CTB濱野大輔、FLブロードハーストマイケルらがゲインラインを切っていく。右の大外のWTBロトアヘアアマナキ大洋で突破を図るが、NECディフェンスがプレッシャーをかけ止める。しかし、NECにノックオンが出てリコーのスクラムとなる。

 

敵陣右サイド、10m付近のスクラムでリコーが圧倒。アドバンテージを得た状態でスクラムサイドをWTBアマナキ大洋のキャリーでゲイン。SOマット マッガーンがキックパスを左サイドに蹴るがこれはタッチを割る。スクラムで得たPKを右サイドに蹴り、ゴール前ラインアウトにする。(前半6分)

 

この試合最初のチャンスとなるが、強風の影響でスローインが乱れノットストレート。こぼれたボールをNECがつなぎ、ハーフウェイ付近での激しい攻防となる。リコーはボールを奪うには至らないが、粘り強く守りそれ以上の前進を阻む。しかし相手のパスカットを狙ったWTBキーガン ファリアにインテンショナルノックオン。

 

PKを経て、リコー陣内右サイド、10m付近のラインアウトから攻めるNEC。ラインアウトに入っていなかった5番につなぐと中央をキャリー、リコーは突破を許す。だが孤立したところにFLブロードハーストが迫り、リリースしたボールをWTBファリアが拾いターンオーバー。SHマット ルーカスがNEC陣内左サイドにキック。折り返しは逆風で伸びず、リコーは敵陣でのラインアウトを得る。(前半11分)

 

左サイドのラインアウトを展開し右サイドを攻めるリコー。外に立ったFLブロードハースト、WTBアマナキ大洋でエッジを突破しインゴールに達するが、アシスタントレフェリーの旗が上がり、タッチラインを踏んでいたと判定される。

 

NECは自陣のラインアウトからボールを回す。逆風を考慮しキックを避けゲインを狙うが22mラインの外に脱しようかというところでスローフォワード。リコースクラムとなる。

 

リコーは右中間、22mライン付近のスクラムを押し切って左へ。SOマッガーンは2人のタックラーに包まれるが一瞬早く外のWTBファリアに上からパス。これが通りファリアが右隅にトライ。CVは外れたが5−0とリコーが先制する。(前半15分)

 

再開後はNECの時間帯となる。強風は止まず、キックを蹴りにくい状況が続く中、NECはボールを回しフェイズを重ねていく。リコーは前に出るディフェンスでスペースを消し、エッジでの突破を図る相手をよく止めていく。タックル後のプレーへの関与などでは規律を意識したアピールなども見せ、不必要な反則を出さずに守った。

 

前半27分、敵陣に入ったリコーはNECのオフサイドで左中間、22mライン付近でPKを得る。ここでスクラムを選択し、狭いサイドを再びBKで攻めるがノックオン。

 

22mラインの内側でのNECのスクラム。キープするが展開を狙ったパスが乱れる。それをよく詰めていたCTB濱野がキャッチ、同じスピードで右に走りこんでいたCTB礒田凌平にパス。礒田はそのままポストの左にトライ。ルーキーのトップリーグ初トライでリコーが加点。CVも決めて12−0とした。(前半30分)

 

リコーはリスタートキックを確保、敵陣に蹴り込むと22mラインをうかがう位置でディフェンス。プレッシャーをかけ押し込んでいく局面をつくる。ノックオンを誘いスクラムを得るが、直後のキックを使ったアタックでボールを相手に渡しトライは奪えず。さらにハイタックルの反則が出て陣地を挽回される。(前半35分)

 

前半最終盤は、LOデーモン レエスアスのキャリーで攻め込んだところでターンオーバーを喫し、再び22mラインの内側でボールを回すNECに対し、リコーがプレッシャーをかける展開となる。ボールを守り通したNECがホーンと同時に後方に蹴り出し前半は終わった。

要所でのスコアで感じさせた勝負強さ。最後まで試合をコントロール。

後半はリコーのアタックで始まる。FBロビー ロビンソンが右中間に蹴ったボールを確保し、WTBアマナキ大洋がギャップを抜け前に出ると外をフォローしたCTB礒田がさらに前に運び22mラインに到達、フェイズを重ねていく。左サイドまでボールを運び、LOレエスアスのキャリーで前へ。さらに中央ゴール前を攻めると激しいプレッシャーを受ける。だがここはNECにアーリータックルの反則。リコーは優位を保っていたスクラムを選択する。


 

ゴールまで10m付近のスクラムをリコーが豪快に押す。そのまま押し切ってトライかと思われたがレフェリーが止めてコラプシングの反則を宣告。再びスクラムとなる。

 

NO8松橋周平が取り出し、SHルーカスへ。SOマッガーンへの短いパスを狙いNECの選手が飛び出してきたが、ボールはリコーのラインの後方へ転がる。これを追いかけ拾ったLOレエスアスが180度方向を変え、ゴールに向かって突き進み、あと5mのところにラックをつくる。

 

SHルーカスからFBロビンソン、NO8松橋とつなぎ、ディフェンスが寄せると駆け寄ったSOマッガーンにボールを渡す。スピンしてギャップを抜けたマッガーンは右中間から回り込んで中央にトライ。試合の流れを決めるトライが生まれリコーが点差を広げる。CVも決めて19−0とした。(後半7分)

 

再開後、リコーはキックを折り返しタッチに出すが距離が出ず22mライン付近でのラインアウトとなる。NECが苦しんだ強風下での自陣からの脱出に、リコーはスクラムでの優位を生かしながら挑んでいく。だが、キックの選択肢を消し思い切って前に出てくるNECのディフェンスのプレッシャーは激しく、なかなか前に出られない。

 

SHルーカスが倒れたランナーに絡み、ノットリリースザボールを奪うとFBロビンソンらのクイックリスタートが決まりゲイン。さらにつないでWTBファリアがエッジを抜け敵陣の22mラインまで前進する。リリースしたボールをNECがはたいてタッチに出す。

 

敵陣左サイド、22mライン付近でラインアウトを得たリコーだったが、これが合わずNECが確保。押し戻され、ハーフウェイ付近の攻防となったが、ジャッカルを狙ったリコーに倒れ込みの反則。PKを得たNECは、追い風を使って22mラインの内側までボールを運びチャンスとする。リコーはFLエリオット ディクソンをタラウ ファカタヴァに入替。(後半20分)

 

ラインアウトから攻めるNEC。順目に突進を繰り返すシンプルなアタックをリコーは受けてしまい前進を許す。攻め切ったNECは、9番が中央のポスト間に手を伸ばしグラウンディング。CVも10番が決めて7−19とした。(後半22分)

 

NECの時間が続く。再開のキックをキャッチしたランナーを止めにいったFLブロードハーストマイケルがハイタックル。NECはPK を遠い方のタッチラインに向けて蹴り、これが風に乗り伸びる。自陣からのキックがバウンドしてリコー陣内22mラインの先でタッチを割った。
 

NECはラインアウトをキープ。再びリコーのゴール前でテンポを上げて攻め、リコーは下げられる。密集にディフェンスを引き寄せられたところで展開され、右サイドにNEC15番がトライ。CVは外れたが12−19と点差はさらに縮まった。(後半27分)

リコーはHO森をファネルに、PR眞壁貴男を辻井健太に(後半26分)、SHルーカスを山本昌太に(後半27分)入れ替え、流れを変えにいく。

 

この勝負どころで、リコーはらしさを感じさせるアタックを見せる。NEC陣内10m付近のラインアウトからモールで左中間を押す。狭いサイドをHOファネルが突くとNECにハイタックルの反則。リコーはPKをタッチに出し22mライン内のラインアウトにする。

 

モールを粘り強く押しゴールに迫るとHOファネルが持ち出しゲイン。さらにWTBファリアにつなぎ、回転しながら中央でゲインを図る。すかさずサポートが入りリリースしたボールを守ると、SH山本が拾いその脇にタイミングよく走りこんだFLタラウにパス。この動きにディフェンスはついていけず、タラウはそのまま中央にトライ。CVも決まり12−26。(後半31分)

 

リコーはCTB濱野を浜岸峻輝に、LOロトアヘアポヒヴァ大和を柳川大樹に(後半31分)、さらにFBロビンソンを小松大祐に(後半32分)に入替。

 

最終盤、NECはリコーのミスキックを突いて攻め込み、勝利への飢えを感じさせる気持ちの入ったアタックで前に出ると、フラットなパスで左サイドを13番が突く。しかしWTBファリアが追いつきトライライン寸前で止めると、リリースしたボールをSOマッガーンがキャッチ。(後半34分)

 

このビッグプレーで得たボールを、リコーFWを使ってキープし時間を使っていく。するとNECにノットロールアウェイの反則。22mエリアからの脱出に成功する。(後半36分)

 

規律を保ちながら時間を減らしていくリコー。残り2分を切ったところで反則を獲られ、ゴール前ラインアウトを与える。PR千葉太一を吉村公太朗に入れ替え、ラストと思われたプレーに臨むが、相手がこぼした球を奪いホーンと同時に蹴り出しノーサイド。リコーは連敗を3でストップ。マンオブザマッチにはスクラムなどで存在感を示したPR千葉が初選出された。

 

次節は2月29日(土)、大阪・ヤンマーフィールド長居でのNTTドコモとのゲームとなる。精度を取り戻したディフェンスやセットプレー、躍動するルーキーたちの力を活かして今季初の連勝を狙う。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はありがとうございました。もうひとつも落とせないというところで臨んだ試合でしたので、まず結果が出たことにホッとしています。前半と後半で絵が変わる難しいコンディションの中、選手たちは頑張ってくれました。リーダー陣のゲームコントロールが機能していたと思います。ただ細かいところでの課題はあります。次に向けてしっかりレビューをして準備していきたいと思います。【以上共同記者会見にて】

 

前に出てプレッシャーをかけるシーンは、神戸製鋼戦から継続して持ってこれたと感じています。ただ、外側のスペース、ディフェンスの幅などには課題が残っていて、まだ本来の姿とはいえない。それでも、今の自分たちの力を出してプレッシャーをつくれたのはよかったですね。そして今日はセットプレー。特にスクラムはよくやってくれました。チャンスをつくり、ピンチを救ってくれた。ディフェンスでプレッシャーがかかりセットプレーが安定してくると、自分たちのスタイルに近づいてくる。

(反則も5つと少なく抑えた)ディフェンスがアグレッシブに出ていればポジティブに映るというのもある。タックラーも優位を持った形ですぐに立ち上がれる。自分たちからアクションをし続けるディフェンスができると規律面もよくなるように感じています。

(アタックについてもシンプルな形を継続した)もう少し形で崩せるような部分を見せていけたらいいなと思いますが、着実に戻ってきている部分はあります。WTB(ロトアヘア)アマナキ(大洋)のような強いランナーにボールを渡して起点をつくったり、マッティ(SHマット ルーカス)が9番のところで動いて相手のディフェンスを動かしたり、ボールキープをしたまま連続性を持った攻撃ができてきているので。少しずつですね。7点差になったあと、アタックでいいテンポをつくってくれた(SH山本)昌太、ラウ(FLタラウ ファカタヴァ)、そして(PR辻井)健太、ベン(HOファネル)といったスパークさせるつもりで入れた後ろの選手がいい仕事をしてくれたことも大きかったです。

NO8松橋周平共同主将

今日はありがとうございました。まずは勝ってホッとしています。ここで勢いに乗ろうと話していたので、大きな勝ちになると思います。風が強くNECさんも自分たちもやりたいことは一緒だったのかなと。その精度で上回ることができたことが勝ちにつながったと思います。セットプレーの部分、スクラムなどで優勢に立てたことも大きかったです。

(結果が出ない中で、どのようにチームをマネジメントさせてきたか?)なかなか勝ちが獲れなくて、「今年のリコーはうまくいっていないな」と思われているかもしれないですが、ネガティブになっているわけでも、チームが乱れているわけでもない。皆が今よりもよくするための努力をしている。「チームファースト」という言葉を大事にして、「どんなときでもチームのために改善を考えていく」ということを続けてきたので、それがよかった。やってきたことが、プレーに結びつかなかったのは苦しかったですけど、今日を機にさらにレベルアップしていきたいと思っています。

(前半の最後、NECが自陣の深い位置でボールキープしていた)風が強くキックを使ってもほぼ意味がない状況だったので、あの手しかなかったのかなと。僕らとしてはもっとプレッシャーをかけるべきだった。反則を奪えればトライに結びつけることもできた。ああいった状況でどうするかは話し合えていなかったので反省したい。

(あと1トライでボーナスポイントが獲れる状況だった)ボーナスポイントは意識していました。ただ、風が強くエリアを獲って攻めていくことが難しく、セーフティな方にいってしまった。ただ意思統一はできていて、誰かが違うことをしたりというのはなかったので、それはよかったと思います。【以上共同記者会見にて】

 

(ここからさらに上げていくために必要なことは?)まだまだ精度の部分。もっとプレッシャーをかけてくるチームに対しても同じことができるように。高いレベルで一貫性のあるラグビーができるようにならないといけない。

(今日もNECが勢い乗った時間帯、ディフェンスがやや後手に回った)ラグビーには自分たちの時間、相手の時間というものがあります。相手の時間でどれだけ我慢して、やるべきことをやれるかが大事。今の自分たちは相手の時間になったとき簡単に獲られてしまうことがあるので、そこは直さないといけない。

PR千葉太一(マンオブザマッチ初受賞)

自分が獲れたことにびっくりしています。スタメンとして初めて出ることができた神戸製鋼戦はあまりよくなくて、今週は頑張ろうと思って試合に臨みました。(意識していたことは?)スクラムの対面が先輩(早稲田大学の先輩・瀧澤直選手)だったので、そこはかなり意識していました。

(前節は77分、今日は80分とほぼフルに近い出場。タフなプレーを見せた)まだまだ上げないと。上の2人はもっといいので。帰ってきたら外されるのではなく、残って競っていけるように。3年目なので、試合にどんどん出て活躍したいなと思っています。今日はスクラムでのゲームメイクには貢献できましたが、タックルミスがあったので。次の機会ではそのあたりを改善したいです。

HO森雄基

(スクラムでかなり優位に立てていた)ファーストスクラムから今日は調子がいいなと感じていました。後ろの5人のパワーを感じたし、PR千葉(太一)、PR眞壁(貴男)も頑張っていました。押すところ、押さないところ、どちらでもペナルティがなかったので。全てのスクラムを押すのは難しいですが、ここぞというところでよく押せていたと思います。後半、風下になってゲームコントロールが難しくなったとき、スクラムでペナルティを獲ってキックで前に出ていくリズムをつくれたのもよかったですね。

いい流れができてきていると思います。ハードワーク、横とのコミュニケーションなどいい戦いができた神戸製鋼の前半での経験を経て、自信が生まれてきているように感じています。

WTBロトアヘアアマナキ大洋

(復帰を果たして調子は?)まあまあですね。まだ2試合目なので、身体が試合に慣れていないところもあります。(試合で意識しているところは?)アタックではゲインラインをターゲットにすること。ディフェンスではアウトサイドのラインスピードのコントロール。これはできていないところもあるので修正していきたい。今日もコミュニケーションが途切れることもあったので。(トライを待ちわびるファンも多いはず)そうですね。次の試合ではトライを獲りたいですね!

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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