【Review】トップリーグ2020 第2節 vs 宗像サニックスブルース

2020.01.23

SOにマット マッガーン。布陣を変え挑む今季第2戦

厳しい戦いとなった開幕戦を終え、早急なチームの立て直しが必要となったリコー。第2節は2010年より6連勝と好相性の宗像サニックスとの対戦となった。しかし、NECとの開幕戦にも勝利して勢いに乗る相手とのアウェイでの一戦ということもあり、リコーにとってはプレッシャーのかかるタフな展開が予想された。

 

リコーはSOに新加入のマット マッガーン、12番にベリック バーンズを配置するなど、開幕戦から6名のメンバーを入れ替えて臨んだ。

 

先週に引き続き、雨を回避した冬の曇り空の下の福岡・レベルファイブスタジアム。メインスタンドからバックスタンド方向に風が吹いていたが、観客席の屋根の大きいスタジアムの構造上、大きな影響はないよう見えた。CTBバーンズのキックで試合が始まる。宗像サニックスがキープし、10番のキックでリコー陣内浅めの位置でのラインアウトとなる。

 

先発の座を掴んだHO小池一弘がFLブロードハーストマイケルに合わせモールに。ボールを出すと宗像サニックスが出足よく迫るが、ボールをキープ。FBロビー ロビンソンがタッチに蹴り出し敵陣に侵入する

自陣15付近のラインアウトから展開した宗像サニックスは4番がキャリー。これにNO8松橋周平が対応し、引き倒すと即座にボールに手を伸ばしノットリリースザボールを奪う。リコーは左中間、30mほどの距離の位置からCTBバーンズがPGに成功。3−0と先制する。(前半4分)

 

再開後、宗像サニックスはリコー陣内浅めでアタック。リコーが冷静にディフェンスすると、タッチライン際の裏へ転がす。処理にいったリコーにノックオンが出て、22mライン付近のスクラムとなる。

 

広い側のスクラムサイドを突こうとした宗像サニックスだったが、キャリーを狙ったランナーがパスを弾きリコーに入る。ボールを奪い返しにいった宗像サニックスにオフサイド。リコーはPKでハーフウェイ手前まで前進する。宗像サニックスはリコーがラインアウトから展開したボールを弾きインテンショナルノックオン。もう一度PKで前進。これで敵陣に侵入する。

 

右サイド、10mラインを越えたあたりのラインアウトはボールがオーバーし宗像サニックスに入る。攻めに転じようとするがSOマッガーンがボールに絡むとノックオン。中央、10mライン付近のスクラムからリコーがアタック。CTB濱野大輔のタッチライン際のキャリーを起点に、開幕戦では見せられなかった荒々しいアタックを披露する。LOジェイコブ スキーンやHO小池が鋭く突っ込んでゲインしていく。FBロビンソンが右中間を突いたとき、タックルを仕掛けた相手ディフェンスが立ち退かずノットロールアウェイ。リコーは22m付近でPKを得る。ここもショットを選択しCTBバーンズが成功。6−0とする。(前半12分)

 

反撃を狙い、ハーフウェイ付近からボールを回して攻めてくる宗像サニックスに対し、リコーは前に出て止めていき、ラインを下げていく。宗像サニックスは裏へのキックで活路を開こうとするが、これにもしっかりと対応しリコーが主導権を握る時間が続く。

 

敵陣浅めで圧力のあるディフェンスを見せてチャンスを待つリコーに対し、宗像サニックスは深くキックを蹴り込んで局面を変えようとする。これをキャッチしたリコーは、FBロビンソンがハイボールを蹴り上げる。

 

これはワンバウンドして宗像サニックスに入ったが、BKがボールをつなごうとしたところを、チェイスしていたWTBキーガン ファリアが手を伸ばしボールをさらう。10mラインを越えたあたりからインゴールまで独走し、左中間にトライ。CVも決まって13−0とリードを広げた。(前半18分)

再開後、さらなるスコアを狙うリコーが攻めるが、ノットリリースザボールでPKを与えて後退。直後の宗像サニックスのアタックは阻んだが、22mラインをまたいだクイックスローインを経て蹴ったタッチキックがダイレクトタッチとなり、22mラインの内側でラインアウトを与えてしまう。宗像サニックスはこれを起点に、ゴール前でアタックを仕掛ける。リコーは反則を犯しスクラムとなるが、レフリングへの適応に苦しみ、スクラムでペナルティを重ねてしまう。これに乗じて宗像サニックスが激しく攻める。しかしなんとかこらえたリコーは相手のノックオンでボールを奪い返し、CTBバーンズのキックでハーフウェイ付近までボールを戻した。(前半26分)

 

さらに再びラックで相手のボールに仕掛けたNO8松橋の好プレーで反則を奪いPKで前進。リコーはもう一度アタックに移ろうとしたが、HO小池のキャリーをサポートしクリーンアウトを狙ったCTBバーンズに対しオフサイド。

 

宗像サニックスはPKをタッチに出さず、リコー陣内奥深くに蹴り込むとその蹴り返しをキャッチして、13番がカウンターアタック。リコーはこれを止め、リリースしたボールを奪いにいくが、一瞬速く相手の2人目が駆けつけラックが成立。これに横から入ったとしてオフサイド。リコー陣内右中間、22mライン手前でPKを得た宗像サニックスはPGに成功。13−3とする。(前半30分)

 

リコーはFLブロードハーストがラックでボールに仕掛けて反則を奪うと、PKで前進しラインアウトからアタック。ブロードハースト、LOロトアヘアポヒヴァ大和、スキーンがオフロードパスをつないで前に出ていく。ラックからテンポよくボールを出し、SH山本昌太、NO8松橋、SOマッガーンとつなぎ、FBロビンソンへのパスを狙うが、ディフェンスの詰めが速くノックオン。

 

互いに蹴り合い攻撃の糸口を探るなか、リコーは相手がリコー陣内でこぼしたボールをWTBファリアが直接前方に蹴り、さらにこれをカバーにいった相手BKが弾いたボールを、ファリアが拾い再度前へ蹴る。22mラインの内側に転がったボールの争奪となるが、宗像サニックスが確保。プレッシャーをかけたリコーだったがハイタックルの反則が出て後退。(後半35分)

 

このまま前半を終えるかと思われたが、リコーは蹴り合いの中での自陣からのキックがダイレクトタッチとなり、自陣侵入を許す。キックカウンターの対応でホールディングを犯す。さらにノックオン、スクラムでのコラプシングと反則が重なり、宗像サニックスに右中間、22mラインの手前の位置でPKを与えPGを許す。(前半42分)開幕戦に続く前半終了直前の失点で点差を縮められ、13−6で前半が終わる。

尻上がりに動きの良くなる宗像サニックスに粘り強いディフェンスで対抗

リコーはメンバーの入替を行わず後半へ。自陣に蹴り込まれたボールをラックにしてキープ。SH山本がハイパントを蹴る。これをチェイスしたWTB渡邊昌紀がキャッチした相手15番にタックル。しかし宗像サニックスがボールをキープし自陣からワイドにアタック。リコーは必死に守るが、左サイドのギャップ目前でパスを受けた8番が抜けてゲイン。トライライン間際で15番につなぐと、回り込んで左中間にトライ。CVも決まり13−13。WTB渡邊が脳震とうの確認のため退出。替わって松本悠介がピッチへ。(後半3分)

 

チームとしての連動性が高まり、ボールがよくつながるようになってきていた宗像サニックスは、なおもアタックを仕掛ける。リコーは自陣深くまで攻め込まれるが、ノックオンでスクラムを得る。NO8松橋のサイドアタックを起点にキックを挟みながら前進。ハーフウェイを越えたあたりでSOマッガーンがギャップを抜けてゲインしていく。

 

大歓声の中、22mライン付近でFLエリオット ディクソン、WTBファリアとつなぎ左中間にポイントをつくると中央に展開。FWが中心となって攻め立てる。もう一度左サイドに運ぶと、ラックで宗像サニックスにハイタックル。リコーはアドバンテージが出た状況で右へ。PR大川創太郎、FBロビンソン、CTBバーンズ、HO小池とつないでクラッシュ。

 

ラックからバーンズが出し、ロビンソンへ。ロビンソンはパスの瞬間にタックルを受けるが柔らかくリリース。これをワンバウンドさせてNO8松橋がキャッチ、そのまま右中間インゴールに飛び込みグラウンディング。ラストパスに関するチェックがアシスタントレフェリーに行われたが、問題なくトライ。CVは右にそれてはずれたが、18-13とリコーが勝ち越した。(後半9分)この後、リコーはPR眞壁貴男を西和磨に、HO小池を森雄基に入替。(後半10分)脳震とうの確認で退出していたWTB渡邊も後半14分に松本と交替となった。

後半に入りよい動きを見せていた宗像サニックスは、追いかける展開にはなったが、勢いのあるアタックを続けリコーのゴール近くまで前進し攻める。リコーはノットロールアウェイ。宗像サニックスはほぼ正面、30m弱のPGを成功させて18-16。(後半17分)

 

リコーは直後にLOポヒヴァ大和をデーモン レエスアスに、SH山本をマット ルーカスに、CTBバーンズを堀米航平に入替。さらに後半19分にPR大川を千葉太一に入替。フレッシュなメンバーを入れて勢いに乗る宗像サニックスを止めにかかった。

 

しかしリコーはノットロールアウェイなどの反則が重なり、宗像サニックスペースを崩せない。後半20分には、自陣10m付近から素早くリスタートされ危機に陥る。しかし鋭いアタックに対し前で止める形にはならなかったが、ギャップをつくらず粘り強く食らいつき決定的なゲインを許さないディフェンスを見せる。宗像サニックスはついに落球。リコーはこれを蹴り出して攻撃を断ち切る。(後半26分)

 

しかし、直後のラックでタックラーが相手選手を離すのが遅れペナルティ。右中間、40m弱の位置から宗像サニックスがPGを狙うが、これははずれた。(後半28分)

 

リコーはPG1本で逆転される状況を逃れようと、敵陣に入り攻めていく宗像サニックスのディフェンスも猛然と守る。ノットリリースザボールを獲られ後退。リコーはFLディクソンに替えて柳川大樹。(後半34分)

 

それでもなんとかしのぎ、敵陣に入りボールをキープして残り2分まで漕ぎ着ける。しかし、ラックからピックゴーを狙ったPR西に相手ディフェンスが襲いかかりノットリリースザボール。

 

宗像サニックスは即座にタップしてリスタート。右中間から左サイドにボールを運びゲイン。ハーフウェイを越える。ここでリコーにノーバインドタックル。危険ではなかったかと映像での確認が行われたが、カードは出ず。しかし宗像サニックスはPKで前進し、リコーのゴール前でラインアウトを得る。ここでホーンが鳴る。

 

ラストワンプレー。宗像サニックスは左サイドのラインアウトをキープし展開、中央を攻める。リコーは相手をよく見てタックルを仕掛けていく。しかし前に出る力のあるアタックですこしずつ下げられ、22mラインの内側、DGも狙える角度となり緊張感が高まる。

 

しかし、このアタック5度目のブレイクダウンで、SHルーカスがボールキャリアに襲いかかる。さらに2人目のFL柳川がボールに手をかけようとする。リリースされ、ルーズになったボールにNO8松橋が気づくと、ラックの後方に回り手を伸ばしボールを奪取。右足を振り抜き、デッドボールラインに向かってボールが飛んでいく。ボールが芝生に落ちたところでノーサイドのホイッスル。

 

終盤にピンチが続いたリコーだったが、18−16で接戦を勝ちきって今季初勝利を挙げた。マンオブザマッチには高い精度の自らのプレーでチームを鼓舞した共同主将・NO8松橋が選ばれた。次節は京都・たけびしスタジアム京都(西京極総合運動公園陸上競技場)でヤマハ発動機との対戦となる。強いFWとの戦いとなるが、リコーはこの勝利で得た自信を携え勝利を目指す。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はありがとうございました。我々としては、開幕戦でやりたいことができずに敗れてしまったので、なんとしても勝利したかった。まずは勝てたことにホッとしています。内容に関してはまだまだレベルアップしなければいけない部分がたくさんありましたし、勝負どころで点差をつけることができず、終始厳しい点差で戦わねばならなかったことなどです。でも、まずはこの勝利を喜び、次の試合に向けて準備していきます。【以上共同記者会見にて】

 

入りはよかったです。13−0まではプラン通りの戦い方ができていました。エリアを獲って、反則を誘って。でも、そのあとこちらの反則の数が増えていきました。自滅ですよね。切るべきところで切れなかったり、勝負どころで反則が出てしまったり、そういった部分でリズムがつかめなかった。(10番にマッガーン、12番にバーンズという配置で臨んだ)そこはコーチ陣からの提案があり、それを採用した形。プレシーズンからしっくりきているとも思っていましたしね。(試合をつくる仕事もできる選手を求めた)はい。テリトリーを取って、敵陣を入って勝負するというのが我々のラグビーの形ですので、冷静な判断ができてキックが蹴れる選手を、というのも狙いでした。もう少し時間が経てば、もっとよくなると思う。

(NO8松橋が背中でチームを引っ張ったのでは)開幕戦のような試合の後はリーダーと呼ばれる選手たちのパフォーマンスがチームを引き上げるもの。リーダーの仕事は色々とありますが、今日は自分のパフォーマンスにフォーカスしてチームを鼓舞してほしいと話をしていました。よく頑張ってくれました。

(次はヤマハ発動機とのゲーム)まだまだやらなければいけないことはたくさんあります。楽観視できる試合ではありません。でも、ポジティブにこんな状況の中でも勝利できたことで得られる自信、メンタリティもあると思いますし、危機感を持ってヤマハとのゲームを迎えられることは前向きにとらえてもいいと思っています。

ダミアンヒル ヘッドコーチ

(タフな試合だったがよく勝ちきった)スクラッピー(バタバタした)な試合でした。試合において選手たちの努力は見えたと思います。ただ、実行力においては残念なところもありました。次の試合はさらに高いレベルでやらなければなりません。(実行力で課題があったというのはディフェンスか、アタックか)ディフェンスは素晴らしい部分もあったと思いますが、ところどころで簡単に距離を稼がせてしまった。アタックは、今日はタイミングがうまく合っておらず、リズムがつくれなかったような感覚はありました。

(試合の入りのディフェンスはかなり安定しているように見えたが、徐々にプレッシャーを受けるようになっていった)簡単なアタックミスを通じて相手にチャンスをつくってしまい、それがディフェンス時のプレッシャーにつながっていたというのもあると思います。サニックスさんのパフォーマンスも、時間が経つにつれて上がっていたというのもあるでしょう。

NO8松橋周平共同主将

勝ててよかったです。今日の試合は、今シーズンを左右する大きな試合になると思っていたので、1週間緊張感の中で練習してきました。そこが最後に勝利を導いてくれたのかなと。ただ内容はよくはありませんでした。最初の10分にリコーのラグビーをして、80分間切らさず、容赦なくサニックスさんを叩きのめすというイメージで臨んだのですが、サニックスさんはいいメンバーがそろっていて、何もない状況からトライを狙ってきました。そこでスイッチオフしてしまって、トライに持ってかれるシーンもありました。さらに強い相手に対してこういうプレーをしていては、より多くの得点につなげられてしまうと思う。もう一度自分たちのラグビーがどういうものかを再確認して、いい準備をしたいと思います。今日はありがとうございました。

(次はヤマハ戦だが、どんな修正を)セットプレーは負けずに勝負していきます。神戸製鋼はしっかり対応していた。しっかりプレッシャーをかけていけば相手のスタイルは削れていくと思うので。ただ、今年のヤマハはボールを動かすチームにもなっている。今日のようにスイッチオフしてしまう時間はつくってはならないので、80分間集中して、同じページを見て、ディフェンス、アタックすることが大事になってくると思います。【以上共同記者会見にて】

HO小池一宏

チームは開幕戦の結果もあって少し落ち込んでいるところもありました。でも切り替えて、次のサニックス戦に気持ちを向けて臨めたかと思います。自分としてはやらなければいけないことが明確ではっきりしていたので、いい緊張感で試合に臨めたと思います。(すべきだったのは)セットプレーですね。ラインアウト、スクラムを安定させるという部分ですね。

(今日の試合に関しては)アンストラクチャーで相手にチャンスを与えてしまっていたかなと。走らせてしまったので、もっと相手にプレッシャーのかかるディフェンスをしないといけない。一人ひとりのタックルのところになると思うので、突き詰めていきたい。セットプレーはスクラムでのレフェリーとのコミュニケーションで、うまくいかないところがありました。ヒットでは勝っていたのですが、その後故意に落としているという指摘を受けていたのですが、試合中にもっと話し合って対応していければよかった。次のヤマハさんはスクラムがものすごく強いと思うので、リコーのスクラムを組みたい。

 

FL柳川大樹

(最後のラックでボールを奪うプレーに加わった)そうですね。1人目がいって、相手の選手が寝ているのが見えたのでボールを狙いました。そうしたらすっぽ抜けたような感じになってボールが消えた。そのあとNO8松橋が拾ってくれました。今日はリザーブだったので、チームにインパクトを、エナジーを、と思ってピッチに入りました。際どい展開ではありましたが特に緊張はなかったですね。ヤマハ戦はセットプレーがカギになると思うので。どれだけプレッシャーを与えられるか。ラインアウト、モールのようなFW戦が大事になる。しっかり準備して挑んでいきたいです。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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