【Review】トップリーグカップ2019 第3節 vs 神戸製鋼コベルコスティーラーズ

2019.07.09

昨シーズンは翻弄された神戸製鋼のアタックに対応。トライを許さず折り返す。

前節に引き続き、金曜日のナイター開催となったトップリーグカップ第3節。昨シーズンのチャンピオン・神戸製鋼を秩父宮ラグビー場に迎えてのゲームには、ここまでで最多の8,000人を超える人々が来場。熱気を帯びた会場での戦いとなった。

 

SOロビー・ロビンソンのキックで試合が始まる。左サイドに蹴り込んだボールがリコーに入るとアタックを開始。モールで押すなどして攻めると神戸製鋼にノットロールアウェイ。左中間、22mライン手前からSOロビンソンがPGを狙うも右にそれた。(前半3分)

 

蹴らずに地面に置いたボールを拾った9番がリスタート。一瞬対応が遅れたリコーはギャップを突かれゲインされる。自陣10mライン付近まで運ばれるが、ラックでターンオーバー。キックを蹴ると相手に当たりタッチを割る。

 

リコーは自陣右サイドのラインアウトを左へ大きく展開。ルーキーのWTBアマト・ファカタヴァにパスが渡ると、タッチライン側を走りディフェンスと豪快にクラッシュ。優勢なラックからテンポよくアタックを重ねると神戸製鋼にオフサイド。ほぼ中央、22mラインの手前からPGに成功し3-0。(前半5分)

 

この後、リコーはこの試合のファーストスクラムからアタック。出足のいいディフェンスを見てSOロビンソンがキックを蹴る。だが、背走しボールを拾った15番がカウンターアタック。ステップを切ってリコー陣内10mライン付近までゲインする。さらに展開され、右サイドのタッチライン際を13番が破り22mラインに到達。

 

リコーはディフェンスラインを整えて守るがラックで手を使う反則を犯す。さらにクイックリスタートを仕掛けた相手に、正しく下がらず止めにいってしまいノット10mバック。正面、22mラインを越えたあたりから10番がPGに成功。3-3となる。(前半11分)

 

今度はリコーがアタック。左中間、ハーフウェイ付近で得たスクラムから攻めると神戸製鋼はボールを持たない選手が妨害。リコーはPKをタッチに出して前進。右サイド、22mライン付近のラインアウトを得る。モールを組むがすぐに出し、勢いよく走り込んだFL松橋周平がディフェンスラインに突入、22mラインを越えていく。さらにLO馬渕武史のキャリーからBK陣につなぐもノックオン。(前半16分)

 

前に出ようとする神戸製鋼のラックにリコーが仕掛けるが倒れ込みの反則。PKでハーフウェイ付近まで戻される。ここから神戸製鋼がアタック。ラックからボールを出すところにCTB牧田旦が鋭く飛び出し止めにいくがオフサイド。右中間、10mライン付近からPGを決められて3-6となる。(前半20分)

 

再開のキックの争奪で、リコーはFL松橋が果敢にジャッカルを狙うが反則と判定されPKで前進を許す。しかし自陣22mライン付近のラインアウトを奪ったリコーは攻めるチャンスをうかがう。しかし相手陣内に蹴り込んだキックからカウンターを浴びディフェンスに追われる。ここでオフサイドポジションにいた選手がプレーに参加してしまう反則。神戸製鋼が右中間、22mライン手前からPG成功。3-9と点差を広げられた。(前半23分)

 

すぐ後、リコーはSH高橋敏也のキックなどで前進しゴール前ラインアウトのチャンスをつかむ。その後ボールは互いを行き来しながらも、長く敵陣でプレーする時間を得たが、神戸製鋼の必死のディフェンスに遭い攻めきれなかった。

 

前半ラスト5分は神戸製鋼が押し返し、ハーフウェイ付近での攻防が続いた。ホーン直後にリコーはSOロビンソンのパスカットから突破しかけたがノックオン。3-9のままハーフタイムへ。

 

スコアこそ上回られたリコーだったが、昨シーズンの対戦時には手を焼いたディフェンスに的を絞らせない神戸製鋼のアタックに対応。よく動くボールを冷静に見極め、ディフェンスが崩される場面はほぼつくらせなかった。

ラインアウトから2トライ。トライ数では上回りながらも惜敗。

リコーはメンバー入替を行わずに後半へ。最初のアタックは神戸製鋼。パスを受けたFWの背後に立った10番が、オフロードパスを受け前方に生まれたギャップを突く。ここはSH高橋が対応しうまく止めたかに見えたが、首に手がかかっていたとしてハイタックルの判定。神戸製鋼は正面やや左、22mラインを5mほど越えたあたりからPGに成功。3-12。(後半4分)

 

再開後はリコーが集中力を見せる。キックの落下地点に猛然と押し寄せプレッシャーをかけると、相手を押しのけボールを確保。すぐさまボールを出し、左中間から右に展開。CTBロトアヘアアマナキ大洋がハンドオフしながらゲインし、外をフォローしたWTB渡邊昌紀にパス。渡邊はFLブロードハーストマイケルのサポートを受けながら倒れず粘りトライラインに迫る。CTBアマナキ大洋もラックに入っていくと、神戸製鋼がタックル後も相手から手を離せずホールディングの反則。

 

リコーはPKを右サイドのタッチに出し、ラインアウトモールからトライを狙う。競らずに構えた神戸製鋼が押し返すが、最後尾に加わったHO芳野寛がボールを持つと同時にリコーが押し返しトライラインに迫っていく。相手突き破る格好となり、最後はPR西和磨らと共に相手2番らとの力勝負に押し勝った芳野が右サイドのインゴールに達してトライ。この試合最初のトライで、リコーは8-12と点差を縮めた。角度のあるCVは惜しくもはずれた。(後半7分)

 

再開後、神戸製鋼は10番の的確なキックパスで右サイドを突く。しかしCTBアマナキ大洋が冷静なディフェンスで対応するとノックオン。神戸製鋼はスクラムでもアーリーエンゲージ。PKを得たリコーはタッチに出し前進。続くラインアウトモールでも神戸製鋼は反則を重ね、リコーは22mラインが迫る位置まで前進する。ここから展開しアタック。固いディフェンスに阻まれながらもギャップを探っていくがノックオン。リコーはPR柴田和宏に替えて大川創太郎。(後半11分)

 

神戸製鋼は自陣スクラムからアタック。中盤を激しく攻めると生まれた左サイドのスペースを突いてゲイン。一気にリコー陣内になだれ込む。このディフェンスでオフサイドを繰り返したとしてWTB渡邊が一時退出処分を科される。(後半14分)

 

左サイド、ゴール間近の神戸製鋼スクラムでの再開となり、リコーはディフェンスに集中。ゴール前での荒々しいファイトが続いたが、プレーが止まりアンプレアブル。リコーはSH高橋を中村正寿に入替。(後半15分)

 

5mスクラムをリコーが落とすと神戸製鋼は再度スクラムを選択。組み直しを経て、狭い左サイドに展開した神戸製鋼は11番が左隅にトライ。CVも決めて8-19とした。(後半19分)

 

トライの後、流れを変えたいリコーはPR西を辻井健太に、HO芳野を小池一宏に、LO馬渕を赤堀龍秀に入れ替える。再開のキックを神戸製鋼がノックオン。リコーは敵陣のスクラムを押してコラプシングを獲るとPKで前進。左サイド、ゴール前ラインアウトのチャンスを得る。

 

早速訪れた追撃のチャンスだったが、スローがうまくいかずノットストレート。神戸製鋼スクラムのこぼれ球を拾って再度攻めると、鋭くキャリーしたFL松橋への相手5番のタックルが高く、TMO判定が実施された。PKが与えられたリコーはタッチに出し、再びゴール前ラインアウトに。しかしここもノットストレート、神戸製鋼スクラムとなった。ここでWTB渡邊が戻る。(後半23分)

 

2度のチャンスを逃したリコーだったが、神戸製鋼の規律が整わず敵陣でのプレーが続く。だが堅いディフェンスを破れないまま時間が過ぎていく。残り10分となったところで、FBキーガン・ファリアを高平拓弥、CTBアマナキ大洋を濱野大輔、SOロビンソンを堀米航平に入替。しかしエリアを戻した神戸製鋼がリコー陣内浅めでアタックを繰り返す展開となり、残り時間はさらに減っていく。

 

しかしここにきて優勢となったスクラムで続けてペナルティを獲ったリコーが敵陣へ。右サイドのゴール前ラインアウトからラインアウトモールを組むと、ほぼ全員がこれに加わり猛然と押すと、NO8ボークコリン雷神がグラウンディングしてトライ。SO堀米が蹴ったCVは不成功も13-19として逆転に望みを繋げた。(後半38分)

 

勢いづくリコーは自陣から展開、躍動感のあるアタックを見せる。スペースに仕掛け突破を図ったCTB濱野に神戸製鋼が高いタックルをしたとして再びTMO判定。ペナルティと判定されリコーは敵陣で最後のアタックのチャンスを得た。(後半38分)

 

左中間、自陣10m付近からのPKをSO堀米が蹴る。しかしタッチを割らず、神戸製鋼がキャッチ。フェアキャッチを狙うがコールが遅れたためあわてて蹴り返す。これを受けたリコーはハーフウェイ付近からアタック。しかし、22mラインまであと少しのラックでターンオーバーを許し万事休す。

 

80分経過を伝えるホーンが鳴るとSOに入っていた神戸製鋼9番が蹴り出してノーサイド。6点差まで追いすがったリコーだったが惜敗。1勝2敗勝ち点7としてプールD4位へと順位を下げることとなった。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

神鳥裕之監督

今日もたくさんの方々に足を運んでいただき感謝しております。今日のゲームにおいては結果としては残念です。昨年のチャンピオンチームに対して、戦う気持ちという部分は観ている方に伝えることができたのではと思っていますが、実行力や細かな判断、スキル、厳しいところでのディシプリン、そういうところはもっともっとレベルを上げないと自分たちは上にはいけないと感じたゲームでした。セットプレーからのモールなど相手を苦しめる場面もありましたので、ポジティブなところにも目を向けながら、できなかったことは次の近鉄戦に向けてしっかり反省していきたいと思っています。

 

(昨年の負け方を考えると、いいラグビーができたと見ることもできるのでは)特にセットプレーはゲームを通じて上回れたのではないかと。相手はアンストラクチャーがよかったので、もう少しタッチに切って、ストラクチャープレーの状況をたくさんつくれれば、もっと自分たちの強みが使えたのではないかと思っています。

(WTBアマト・ファカタヴァにもう少しボールを持たせてもよかったようにも。いいコンタクトを見せていた)彼はBKの経験のある選手なので、これからポジショニングやチームの作戦を理解していければ。ボールを持ったときの能力はトップリーグでも十分通用する選手なので。【以上共同記者会見にて】

 

(カップ戦もこれで残り2試合。次節以降のプランなどは)近鉄もいいメンバーで戦っていますので、しっかりビデオを見てどう戦うかを考えようと思います。

(故障者は徐々に戻りつつある)そうですね。今節でかなり戻って来ました。あとはスキーノ(LOジェイコブ・スキーン)、HO森雄基などですね。純平(FL湯川純平)はもう大丈夫です。

FL松橋周平ゲームキャプテン

今日はありがとうございました。すごく勝ちたかった試合でした。勝ちにこだわって1位通過を狙っていたのですが、結果的に負けてしまったので神戸製鋼さんのほうが一枚上手だったなと。メンバーを見たときは自分たちに対してリスペクトしてくれているなと感じ、それに対して僕たちのマインドで、僕たちのラグビーで圧倒しようとして、最初の部分などところどころではそれを見せられたかなとは思います。でも、僕もペナルティをしてしまいましたが、大事なところの規律の部分、またオフサイドならオフサイドをしてしまう前の部分が問題だったりすると思うので、徹底して直してもっとタフなチームにならないといけないと思いました。後半の勝負どころのプレッシャーに負けないタフな強さを鍛えなければいけないかなと。今日の試合はいい経験になったかと思います。

 

(反則の多さ、反則が出る理由について)前に出たい、プレッシャーをかけ続けたいという気持ちが先にきてしまった。オフサイドについては、プレッシャーを受けているということ。いいボールキャリーをさせてしまっていることに問題がある。下がって、また上がらないといけなくなるので。(オフサイドの)前の部分でしっかりしなければいけなかったのかなと。【以上共同記者会見にて】

PR辻井健太

前半は外から見ていましたが、少し規律が悪くペナルティが多かったですね。あの時間帯にスコアを獲れれば勝てていたという時間帯もあったと思うのですが、セットプレーのミスがあったり、アタックのシェイプの部分で少し前に出られなかったりで獲りきれなかったのがもったいなかったです。チームとしてのテーマは“Keep Punching”で、80分間自分たちから仕掛け続けようといっていたのですが、それができない時間もありました。

(ただ昨年は翻弄されたアタックに対応していた)はい。今回は的を絞って外側よりもSO周辺のランナーを内に寄って詰めていくディフェンスをしたのですが、それが機能していました。ディフェンスは80分通してよかったと思います。

 

(終盤スクラムはよく押せていた)「ヒットしてワン、ツー、2ステップで」というテーマでした。それがうまくいきましたね。ヒットで前に出られていたので印象はよかったと思います。

HO芳野寛

(大事な試合での先発。気合いが入っていたのでは)はい。まずはセットプレーを安定させることが一番かなと考えていました。セットプレーが安定するとボールが動くので。でもそこがうまくいかなかったかなと。

(序盤はうまくいっていたところも)そうですね。でも…セットプレーからボールが出た後の攻め方がよくなかったのかな。ディシプリンもよくなくて、向こうのキッカーがうまかったのもあり確実に3点獲られていたので。あと反省点としてはスクラムでのペナルティが多かったこと。振り返ってみると反省することのほうが多い。結局トライ数では勝っていたのに、ペナルティキックで点数を与えて上回られてしまったので。

(トライのシーンではモールから出た後、相手選手を力強く押していた)あれはごっつぁんですね(笑)。HOの仕事。チームとしていいトライが獲れたとは思います。

 

(今季は同じポジションに新外国人選手のベン・ファネルが。ポジション争いも激しくなる)そうですね。一緒の齢なんですよ。刺激を受けられればと思います。

WTBアマト・ファカタヴァ

トップリーグの試合に出ることができてとてもうれしく思います。今日はあまりボールを持てませんでしたが。

(大学時代に務めたFWとは異なるWTBとしてプレーしているが)楽しいです。体重も少し減らしました。
日本に来る前はやっていたポジションですが、コミュニケーションが難しいですね。
今よくやっている練習はボールキャリーなどです。リコーのコーチたちはもちろんですが、ナキさん(CTBロトアヘア アマナキ大洋)たち先輩にもBKの決めごとについてアドバイスをもらいながら取り組んでいます。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

PAGE TOP