【Review】トップリーグカップ2019 第2節 vs NECグリーンロケッツ
2019.07.03
互いにディフェンスでハードなプレッシャー。スコアレスで折り返す。
トップリーグカップ第2節は、秩父宮ラグビー場でのNECとのナイターに。今節は2年目のPR西和磨やキャプテンのCTB濱野大輔、そしてインド国籍を持つFBキーガン・ファリアなどが出場機会を得た。リザーブにはサンウルブズのツアーを終えたFL/NO8松橋周平の名も。
雨の気配が漂う蒸し暑いコンディションとなった秩父宮ラグビー場。NECのキックで試合が始まる。これをNECがキャッチしてアタック。リコーは22mラインの内側に入られたがWTB小松大祐のタックルなどでこれを止め、ファーストアタックを阻む。
リコーはキックを使い前進。敵陣中盤のラインアウトからモールで攻めるとNECがコラプシング。PKでゴール前まで前進すると、HO森雄基のキャリー、さらにWTB小松がゲインを狙うが密集でターンオーバーを許す。リコーはボールを獲り返しにいくもホールディング。リコーも最初のチャンスを逃した。(前半5分)
その後は互いにミスが出て効果的な前進ができず中盤でボールが行き来する。前半11分、リコーは自陣でNECのラインアウトモールを押し前進を阻む。ラインアウトモール及びモールディフェンスの完成度での有利を印象づけた。
しかし自陣左サイド22mライン付近のスクラムからアタックを試みたリコーは、キックをうまく処理され、カウンターアタックで右サイドを破られる。ここは相手のランナーがタッチラインを踏み難を逃れた。
再開後、リコーの蹴ったハイパントを捕ったNECがアタック。リコーはディフェンスでリズムをつくっていく。FLブロードハーストマイケルとNO8ボークコリン雷神らがプレッシャーをかけ、ここはノックオンを誘ってボールを奪う。だが直後のスクラムからのアタックでターンオーバーを喫すると自陣深くにキックを蹴られた。ピンチになりかけたが、ここはSO堀米がうまく処理し、中央から右サイドのWTB渡邊昌紀にキックパス。これが通り渡邊はタッチライン際を走るとハイタックルを受けてPKを得た。(前半18分)
リコーはハーフウェイ付近のラインアウトから再びモールで前進するがノックオン。ボールを得たNECは逆サイドに展開しゲインを狙う。しかし雨の降ってきたピッチに足が滑ったようなかたちでタッチラインを踏む。互いにアタックがうまくいかない時間が続く。(前半19分)
新戦力FBファリアがジャッカルを見せるなどいいプレーも出ていたリコーは、ハーフウェイ付近のスクラムから左中間の裏のスペースにCTB濱野がキック。これをWTB小松が拾いにいくが足に当たりタッチを割る。しかしラインアウトでNECがノックオン。敵陣でスクラムを得たリコーはSH中村がサイドを突く。走り込んだCTB濱野がブレイクし22mラインを越えるが、直後のラックでボールが出すのが遅れ反則。アタックチャンスを迎えながらかたちをつくれない歯がゆい展開。(前半29分)
FBファリアのキックで相手ボールながら敵陣でのラインアウトを迎えたリコーは、キックアウトを狙ったボールにLOロトアヘアポヒヴァ大和がチャージ。ボールを跳ね返したが相手が処理してつながれる。
NECはリコーの左サイドのスペースを突いて抜けた12番から14番につなぎゲイン。しかし守っていた右サイドから走り込んできたFBファリアが低く強いタックルを決めて倒すビッグタックルが飛び出した。この直後再びアンストラクチャーからのアタックを見せたNECはトライライン手前にボールを転がすがここもファリアが追いつき、味方が駆けつけるまでボールを守った。(前半36分)
リコーは攻めるNECにプレッシャーをかけ敵陣10mライン付近でノットリリースザボールを奪う。右中間約40mの位置からのPGをSO堀米が狙うが左にそれる。(前半38分)前半はスコアが記録されないまま終了した。
ついに先制するも、直後に逆転許す。最後のアタックに再逆転を懸けるも――。
後半、先にチャンスが得たのはリコー。キックをNECが落球し敵陣でのスクラム。オープンサイドにNO8ボークが持ち出し、CTB濱野に繋いだがこれがスローフォワード。(後半4分)
NECは自陣スクラムから8番が抜けリコー陣内までゲイン。だがリコーはパスが乱れたところで奪い、FBファリアが自陣からアタックを仕掛けハーフウェイ付近でキック。自陣で処理したNECがタッチキックを蹴るが、クイックスローインして右から左へ展開しリコーが大胆に攻める。ラックでジャッカルを狙われボールがこぼれると、これに反応したNO8ボークが前方へキック。裏に転がれば面白い場面だったが相手の正面へ。拾われてタッチに出される。リコーはPR柴田和宏を大川創太郎に、FL湯川純平を松橋周平へ入替。(後半6分)
リコーは敵陣22mライン付近でスクラムを得ると、ラックからピックゴーを繰り返しディフェンスをこじあけにいく。しかしなかなか貫けずノットリリースザボール。ここでSH中村に替えて高橋敏也。(後半9分)
ハーフウェイ付近でNECがオブストラクション。PKで前進したリコーは22mライン付近でラインアウトを得る。キープして中央をFL松橋が突くが、待っていたかのような鋭いタックルが襲う。松橋は冷静にこれを受け止めると、うまく力をそらし前へ。さらにつないで外に出すと、WTB松本悠介がタッチライン際を前へ。捕まるがボールを股の間からうまくリリース。相手に当たってタッチを割る。
右サイド、22mラインの内側で得たラインアウトからリコーがモールでプッシュ。トライライン間際まで運ぶと左に展開、CTB濱野が力強いキャリーを見せる。さらにFL松橋、NO8ボーク、FBファリアとつなぐとボールがこぼれるが、SH高橋がさばき外のWTB松本までつなぐと、松本が右サイドインゴールにグラウンディング。トライかと思われたが、TMOでボークからファリアへのふわりと浮かせたパスがフォワードパスだったと判定がなされノートライに。(後半52分)
この後、互いにダイナミックに敵陣深くまで攻め込むもののトライには至らないもどかしい展開が続く。そんな中、ラックでジャッカルを仕掛けたFL松橋のプレーに倒れ込みの判定。NECは左中間約30mの距離からPGを狙うがポストに当たりはずれる。(後半20分)
ここでようやく試合が動く。リコーは自陣10mライン付近のスクラムから、SH高橋が右サイドのスペースを見出しキック。22mラインを越えてタッチを割る。NECはこのラインアウトでノットストレート。リコースクラムになるとさらにコラプシングと反則を重ねる。リコーはPKを蹴り出し右サイドゴール前ラインアウトに。(後半23分)
ラインアウトをキープ。モールからラックへ。そのサイドをHO森が突くが激しいディフェンスに遭い、ハイタックルで再びリコーにPKが与えられる。負傷したHO森に替わり芳野寛。(後半24分)
再びラインアウトにしたリコーはここもモール。競らずに対応したNECだったがしっかり押しきるとHO芳野が右中間にグラウンディング。リコーが先制。CVははずれたが5-0とした。(後半25分)
再開のキックを受けモールを組んだリコーはボールを出せない。NECはスクラムから攻め、オフロードパスなどを通し前進。さらに右サイドのスペースを攻めると、やや後手に回ったリコーのタックルがうまく決まらず、最後は22番がタックラーを押し込み右中間インゴールに達しトライ。リコーはPR西を辻井健太に、WTB松本を高平拓弥に入替。CVも決まり5-7と逆転を許す。(後半30分)
ラスト10分、リコーは敵陣に入りチャンスを得るが詰めきれず時間が過ぎていく。SH高橋がギャップに仕掛けゲインするがラックのボールを守ろうとしたNO8ボークが倒れ込みを犯す。PKを与えたところで時計は後半38分とかなり厳しい展開となったが、リコーが愚直に守り続けるとNECがスローフォワード。最後のアタックのチャンスが舞い込んだ。
ほぼ中央、敵陣10m付近でスクラムを組むと同時にホーン。リコーがフェイズを重ねていくとNECにホールディング。PGを狙うには距離がありタッチに出しラインアウトとする。BKも加わったモールで前進を図るが止まる。ラックに移行するとNECにオフサイド。アドバンテージが出たのを見てSH高橋がショートパントを蹴るがこれは相手に入る。
PKをタッチに出し、再びゴール前ラインアウトに。ここはNECが猛然と押し前進を阻む。リコーはボールを取り出しピックゴーで突破を狙いながらラックを中央に向けずらしていく。リコーのチョイスはDGだった。ほぼゴール正面のラックから後方のSO堀米に向けてパスが出ると、パスを受けた堀米はディフェンスの到達よりも早く足元にボールを落とす。しかし、わずかに早過ぎたかボールを蹴れずノックオンに――。
ここでノーサイド。リコーは5-7でNECに敗れ連勝を逃した。ただし7点差以内の敗戦のため勝ち点1を獲得している。次節は7月5日(金)19時30分より同じ秩父宮ラグビー場で神戸製鋼と対戦する。
監督・選手コメント
神鳥裕之監督
今日は天候が悪い中、たくさんの方に来ていただいたことに感謝しています。
ゲームにおいては残念の一言に尽きます。なかなかリズムをつかめず、NECさんの気迫あるディフェンスに攻めあぐねたというのが今日の印象ですが、アタックの精度、判断、ブレイクダウンでの攻防などは求めているレベルに達していなかったと感じていますので、まだまだレベルアップできると思っています。
よかったところもありました。ディフェンスでしっかり守りきれたところなどですね。しっかりとレビューして次の試合に向けて準備していきます。
(ハーフタイムにどんな指示を?)中盤からのラインアウトモールの部分は非常に効果的だったので、そこは継続してやろうと。トライをとったシーンもそうでしたが、その強みを生かそうという話しですね。あとは自分たちのやりたいディフェンスなどの約束ごとの確認をしました。【以上共同記者会見にて】
(FBキーガン・ファリア選手がインパクトを残した)勇気あるプレーを見せてくれたのは収穫でしたね。1対1のディフェンスもそうですし、危険を察知して必死に戻る姿だったり、キックでエリアを獲る判断だったり、よかったと思います。
(FWで前に出られない苦しい試合だった)前に出られなかったですね。それによってブレイクダウンでもドミネイトできないから、テンポよく球出しができなかった。そういった部分はレベルを上げていかないといけないところですね。残念でしたが、まだ可能性は残されています。
次節はケガから戻ってくる選手もいるので、彼らのプレーも楽しみにしています。
CTB濱野大輔キャプテン
本日はありがとうございました。
今日はNECさんのプレッシャーに対し受け身になってしまい、自分たちのアタックプランが全く実行できず、そこでの細かいミスをNECさんはチャンスとして生かしてスコアにつなげた。そこが今日の敗因だったと思います。でもこれを成長の機会ととらえて勝つための準備をしようとさきほどロッカールームで話しました。
(スリッピーだったとは思うがミスが多かった。その要因はどこにあったか?)FWとBKのコネクションの部分でうまくコミュニケーションがとれていなかったりだとか、アタックプランの実行においてミスコミュニケーションで合わなかったりはありました。その上でハンドリングタッチ、ランニングコース、サポートプレーヤーの不足といったミスに対してNECさんがしっかりプレッシャーをかけてきていたというのはありました。
(ショットを狙える場面でもトライを狙いにいっていたが)ラインアウトモールに自信をもっていたので。FWと話し合った上で決めました。(ドロップゴールについて)あそこに関してはSO堀米選手のディシジョン。彼の判断を尊重してポジティブにとらえたいです。プレッシャーをかけてくるNECさんに対してブロックが足りなかったなどの部分は反省しています。BKがFWをもっとオーガナイゼーションする必要があると感じました。【以上共同記者会見にて】
(BK同士で話していたことは?)テリトリーですね。もうちょっとキックを有効に使って攻めるべきだったのかなとは感じています。次の神戸製鋼は昨シーズン皆悔しい思いをしている相手なので、全員で勝つための準備をして臨みます。
FL/NO8松橋周平バイスキャプテン
今日は観ている人もそう感じたかもしれないですが、少し情けない試合をしてしまったなと思っています。
僕らがしようとしている試合が100%だとしたら30%くらいの精度になってしまった。
次の試合ではそれを100%にできる限り近づけていけるように。それだけです。
準備に何か問題があったわけではなく、実行力の問題だと思っています。ミスには原因がある。今日なら早いセットが出来ていなかったことであったり。それをつぶしていきます。
次は良くなりますよ!
CTB松本悠介
自分たちのミスが多く、それによって苦しんだゲームでした。結果は負けてしまったわけですが、よかった部分もありました。カップ戦はまだ3試合あるので、今日出た部分を修正して次の神戸製鋼戦には勝ちたいです。
(ディフェンスなどはよかった部分もあった)そうですね。ラインスピードを出して相手を止めてミスさせるというのはできていたと思います。それも80分通して。それでも順目にホールドすることやノミネートのところでミスがあり、そこは修正していかなければと。アタックも分析結果などを基にどこにチャレンジしていくかを話しあっていますが、できたところはあったと思っています。カップ戦は全勝を目標としていたので負けてしまったのは残念ですが、気持ちを切り替えて次の試合に臨みます。
(BKは日本人選手の底力が試されるシーズンになりそうだが)そうですね。外国人選手には助けてもらってきましたが、自分たちが出ていても強いチームであるように。自分がやるべきことを明確にして1試合1試合にチャレンジしていきます。
文:秋山健一郎
写真:川本聖哉