【Review】トップリーグカップ2019 第1節 vs 豊田自動織機シャトルズ

2019.06.25

新シーズン最初の公式戦。前半はペナルティがかさみリードを許す展開に。

リコーブラックラムズの2019-20シーズン最初の公式戦となるトップリーグカップが開幕した。昨シーズンはトップリーグのリーグ戦とトーナメント戦の間に行われた同カップだが、今シーズンはトップリーグ開幕前、初夏の開催となった。トップリーグとトップチャレンジリーグから計23チームが出場し、4つのプールに分けてリーグ戦を戦いトップとなった4チームで優勝を争うトーナメントが行われる。

 

リコーが入るプールDはトップリーグから昨シーズンのチャンピオン・神戸製鋼とNEC、トップチャレンジからの豊田自動織機と近鉄、マツダの計6チームで編成されており、まずはこのライバルたちとの5試合に挑む。愛知県・パロマ瑞穂ラグビー場での開幕戦は梅雨の晴れ間の晴天に恵まれ、気温も上昇し厳しいコンディションの中でのゲームとなった。

 

昨シーズンのケガから復帰を果たしたSO堀米航平のキックで試合が始まる。開始直後、リコーは早速敵陣でのターンオーバーに成功。フェイズを重ねチャンスをうかがっていく。ここはディフェンスに阻まれ、パスが乱れボールを失った。

 

豊田自動織機は自陣ラインアウトからアタック。ギャップを突いて一気にリコー陣内に侵入。ホームのファンを沸かせるが、リコーもよく戻ってボールを奪う。そしてHO森雄基からボールを受けたPR大川創太郎がキレのあるランで抜け出しゲイン。敵陣10mラインを付近でFLブロードハーストマイケル、さらにCTB牧田旦とつないでポスト左にトライ。CVはSO堀米が蹴るも不成功。5-0とした。(前半6分)

 

この後は豊田自動織機が反則を突くなどしてリコー陣内深くに入り攻める。リコーにはアクシデントが続く。9分にLOジェイコブ・スキーンが、14分にPR辻井健太がいずれもHIAで退出。それぞれロトアヘアポヒヴァ大和と千葉太一が入り対応した。(スキーンはそのまま入替。辻井は24分に復帰)

 

千葉が入った直後のスクラムで押し勝ったリコーは、ペナルティを獲りPKで前進。ラインアウトから自陣脱出を狙ったがボールは相手に入る。左から右へ大きく振った豊田自動織機は12番がスペースを突いてゲイン。右中間トライライン目前にラックをつくる。激しいファイトとなったが1番がトライ。CVも成功し5-7。(前半17分)

 

やや浅めに蹴った再開のキックからの攻防を有利に進めたリコーは堀米のスペースへのキックが決まる。豊田自動織機がタッチに逃れ、右サイドの22mラインを少し越えたあたりでラインアウトを獲得。モールで前進し、さらにNO8ボークコリン雷神のキャリーでトライラインに迫る。FWが右中間でピックゴーを繰り返すと、豊田自動織機がオフサイドを犯しアドバンテージが出る。ボールを中央付近に展開させたリコーはCTBロトアヘアアマナキ大洋につなぐ。ステップと力で抜け出したアマナキ大洋はポストの右のインゴールに達しトライ。CVも成功し12-7とした。(前半23分)

 

豊田自動織機のキックで再開。リコーは敵陣深めに蹴り返すが、相手9番の蹴ったショートパントがリコーのラインの少し後方で不規則に跳ねる。処理に手間取ると、この日再三ゲインを見せていた11番がボールをさらい抜け出しビッグゲイン。リコーのゴール前でフォローしていた14番につなぎ中央にトライ。CVも成功し12-14。リコーは2度目の逆転を許すことに。(前半25分)

 

再びリードを奪いたいリコーだったが、反則が続き豊田自動織機のペースを崩せない。だがディフェンスではFLブロードハーストやルーキーのFL湯川純平、CTBアマナキ大洋、WTB松本悠介らが豊富な運動量で走り回り安定感をもたらした。後半30分を過ぎたあたりで敵陣に入る。ディフェンスでプレッシャーをかけチャンスをうかがうが、ノットロールアウェイで与えたPKで再び自陣に戻される。

 

前半終了間際、ハーフウェイを過ぎたあたりでラインアウトを得たリコーだったが、ターンオーバーを許しアタックに転じられる。この対応で反則を喫するとさらにノット10mバックを犯し、NO8ボークにイエローカード。10分間の一時退出が科せられた。(前半40分)豊田自動織機は中央約40mの位置からPGを狙ったが、これは短く不成功。(前半41分)12-14のまま前半は終了した。

1人少ない約10分間を耐えるとスイッチオン。精度の高さ見せ攻守で圧倒。

前半だけで7つを数えたペナルティを減らすことが求められる中、1人少ない14人で後半が始まる。豊田自動織機はリコー陣内に入り攻めたてる。ここもリコーはよく守りFL湯川のタックルなどが決まりノックオンを誘う。マイボールスクラムにはWTB渡邊昌紀が入り対応。だがここも11番の突破などに手を焼き、自陣脱出はなかなか叶わない。だが相手のミス、またSO堀米の冷静なキックなどでリスクをコントロールしながら戦っていく。

 

豊田自動織機陣内でリコーがスクラムを得たところでNO8ボークがピッチに戻る。右中間10mライン付近のスクラムを強く押すとNO8ボークがショートサイドを突く。フォローした WTB渡邊がディフェンスにつかまれながらも倒れず粘りゴール目前の位置までボールを運ぶと、つないだCTBアマナキ大洋が右中間を破りインゴールへ持ち込むと中央に回り込んでトライ。CVも決まり19-14。スクラムのプッシュ、NO8ボークの状況判断、そしてBKが決定力を発揮するお手本のようなセットプレーからの攻撃でリコーが再び逆転する。(後半12分)

 

リコーはSH中村正寿に替えて高橋敏也。(後半13分)高橋は早速スペースを狙ったキックを蹴ると相手に短いタッチキックを蹴らせゲインに成功。敵陣でのラインアウトを得る。ここはノックオンで相手にボールを渡したが、スクラムから攻める相手からボールを奪うと、ボールを受けたCTBアマナキ大洋が豪快なランでゲイン。トライライン間近の位置まで運ぶと、LO柳川大樹がポストの左に持ち込んでトライ。CVは不成功も24-14とリードを広げた。トライの後、この日はFBとして出場し好判断やキープ力などで貢献を見せていた小松大祐に替えて高平拓弥が入る。(後半18分)

 

これ以上点差を広げられたくない豊田自動織機はまたも11番のランでビッグゲイン。22mラインの内側に入られたリコーだったが、CTBアマナキ大洋がよく戻ってつかまえる。さらに、獲得したマイボールスクラムでコラプシングを獲るとPKで前進。ラインアウトモールなどでも前進しエリアを回復していく。

 

敵陣での相手ボールのラインアウトを奪ったリコーは、展開し右サイドをアタック。反則をもらうとPKでゴール前ラインアウトとする。ここでHO森を芳野寛に、PR大川を千葉に入替。(後半26分)ラインアウトから攻めると再び豊田自動織機にオフサイドの反則。ここでSO堀米に替え浜岸峻輝。(後半28分)

 

中央のスクラムから右へ。SO浜岸が外側にボールをうまく運ぶとCTBアマナキ大洋へパス。この日は決定力を存分に発揮していたアマナキ大洋は、ここでも右サイドインゴールに持ち込んで3つめのトライを決める。浜岸が左足で蹴った角度のあるCVははずれたものの、29-14と2トライ2ゴールでも届かない点差をつけることに成功した。(後半31分)

 

豊田自動織機は再開のキックからリコー陣内に攻め込む。リコーは後半最初にして唯一のペナルティ(オフサイド)を犯しピンチを迎えるが、直後のアタックにプレッシャーをかけると豊田自動織機に倒れ込みの反則。PKでピンチを逃れる。直後に左中間のスクラムから大きく展開してトライを狙われるが、ここもスローフォワード。要所を抑えたディフェンスで相手に余裕のあるアタックを許さない。LO柳川に替えて馬渕武史。(後半34分)

 

相手のミスで得た自陣スクラムを押してコラプシングを獲るとPKで敵陣へ。敵陣浅め、左サイドのラインアウトを起点にフェイズを重ねじりじりと前進していく。フィットネスで圧倒するリコーは、左サイドタッチライン際を走ったFL湯川がゲイン。ゴールまであとわずかの位置まで前進すると、スピードに乗ってパスを受けたHO芳野が左中間を破りトライ。角度のあるCVを浜岸が今度は決めて36-14。(後半39分)

 

豊田自動織機によって再開のキックが蹴られるが、間もなくホーンが鳴る。リコーがこれを蹴り出してノーサイド。今シーズン最初の公式戦に快勝したリコーは、次節6月28日(金)のNEC戦、その翌週の神戸製鋼戦と続くトップリーグ勢との対戦に向けチーム状態の良さをアピールした。マンオブザマッチにはスクラムはもちろん、肉体改造で動きにキレが増し、トライにつながるラインブレイクも見せたPR大川が選ばれている。

 

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日は暑い中ありがとうございました。今日は久しぶりの公式戦で前半は難しいところもあったのですが、後半は相手を上回ってくれた選手たちを誇りに思っています。まだカップ戦は始まったばかりですので、気を引き締めて次のNEC戦に向かっていきたいと思います。(カップ戦をどう戦っていくか。プランなどは?)国内においては、ラグビーワールドカップ前の最後の大きなコンペティションですので、我々としては勝利を求めていく。ただ当然このチャンスの中で新戦力や若手選手の台頭も期待したいと思っています。(今日出場した若手戦力などの評価は?)FL湯川などは大学から来て初めてのトップリーグでしたが、よくやったと思います。80分間彼の持ち味を発揮してくれましたし、こういうかたちで若い選手が経験を積む場もこのカップ戦を通じてつくりたいと思っています。【共同記者会見にて】

 

今日はハーフタイムでダミアン(・ヘッドコーチ)が「(自分たちの)ラグビーをやっているのはこっちだ」といういいメッセージを出してくれて。その言葉もあって冷静に修正していけましたね。積み重ねを感じてもらえるアタックやディフェンスをお見せできたとは思います。(時期を考えるとかなり仕上がっていた。チームとしての成熟を感じる)そう思います。それに加えて選手個々の成長ももちろんあります。自発的にディテールの部分をこだわった話し合いをしてくれているのは心強いです。しっかり走り込んだ成果も出ましたね。

ダミアン ヒル ヘッドコーチ

ラフな厳しいスタートでした。でもハーフタイムのときはすごく落ち着いていました。(後半は)何人かメンバーが変わっていきましたが、うまくいったんじゃないかなと思います。一番嬉しかったのは後半、(苦しい状況への)抵抗、我慢強さでしょうか。最初の10分は14人で戦わざるを得ませんでしたが、スコアをゼロに抑えて自分たちはしっかり獲りきった。ストリートファイト的なぐちゃぐちゃした感じはあったんですが、最後の40分については、これ以上ないくらい誇りに思っています。(FL湯川を指して)彼は最初の試合なんだよ? 試合中ずっと貢献してくれました。やっていかなければいけないことはいっぱいあります。今年はシーズンが2つに分かれているような感じなので、試合を追うごとにどんどんレベルを上げていくような戦いをしていきたいと思っています。来週NECと戦うのがとても楽しみです。

 

(後半は入りはもちろん、それ以外もうまく戦っていた)前半はキックゲームに負けていた感じもありました。後半はエリアの戦いに勝てた感じがします。(シーズンの目標達成に向けて、必要なことは?)精度、ディテールの部分ですね。それを高めて安定感をもってやり続ける。フィットネスはいい。チームの文化も強いものになってきている。フィールド上での実行力を高めていくことですね。(持っているものをすべて出せれば、勝てる)他のチームをリスペクトすることは大事です。でも、正しい準備ができればどのチームにも負けないという気持ちは持っているべきだと思います。

FL湯川純平

(緊張はあった?)緊張はしていなかったです。ただ、これまで15年くらいラグビーをやってきましたが、その中のどんな試合よりも特別な思いはあったように思います。(目指していた舞台でもあった)そうです。(コーチたちから具体的な言葉はあった?)ダミアン(・ヒル)ヘッドコーチからは、7番は運動量、タックルとジャッカルとずっと言われていて。サイズは小さい方なのでそれは意識してやっています。

 

(最後までよく動いていた。フィットネス的には余裕も?)いや、しんどかったですけど(笑)。(トップリーグのフィジカルを体験しての感想は?)大きな外国人選手に何回か弾かれたところはありました。自分は出足を速くして、相手のスペースを奪うことでカバーしていきたい。当然ウェイトトレーニングもしながらですが。いろいろ考えてやりたいですね。自分のポジションには松橋(周平)さんやエリオット ディクソンもいるので、出場した試合ではできる限りアピールしていければと思っています。

SO堀米航平

前半、苦しかった時間もあったんですけど、みんなでしっかり我慢できて。それが後半につながったのかなと思います。(特に後半の最初の10分間。1人少なく、自陣にも入られていた)ハーフタイムに1人いない分の仕事をカバーしようという話をしました。(そこでいい準備ができた)。そうですね。あと後半はセットプレーからのアタックがうまくいくようになって、そこから流れに乗れたというのもあると思います。相手の足が少し止まって来ていて、スペースが見えるようになっていた。難しい初戦で、しかもアウェイで、またこういう暑い天候の試合で勝てたというのは、チームとしての成長なのではないかと思います。(個人としては昨年はケガに泣いた。悔しさもあったはず)昨年の分を今年取り返しますよ。それしかないです。(ケガの箇所は)もう問題ないです。仕上げました。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

PAGE TOP