【Review】トップリーグ 総合順位決定トーナメント 3回戦 vs クボタスピアーズ

2018.12.21

CTB濱野らの判断冴え2トライ。しかしうまくスコアされ、追いかける展開に。

クボタスピアーズとの再戦となったリーグ総合順位決定トーナメント3回戦。リコーは奈良・天理で戦い敗れたリーグ戦での雪辱と7位の座を懸け、この試合に挑むこととなった。PRにはアレックス ウォントン、HOには初先発となる小池一宏と第一列を入れ替えたほか、LOに柳川大樹、WTBに長谷川元氣と確かな実力を備える中堅世代もスターティングメンバーに名を連ねた。

 

今シーズン2度目の試合となる神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場。メインスタンドからは横浜のビル群がくっきりと見える澄んだ冬の空気の中で試合が始まる。SOロビー ロビンソンのキックオフが左サイド深めに飛んだ。

 

開始から激しいボールの奪いあいが起こるが、リコー陣内にキックを放ち、処理に手間取るところを捕まえてノットリリースザボールを奪ったクボタが最初のチャンスをつかむ。PKで前進し、22mラインの内側でラインアウトを得るとモールを組んで前進。ゴール前でラックにするとフェイズを重ねていく。

 

激しく攻めたててプレッシャーをかけると左に展開。10番が長くフラットなパスを外につなぐと、11番が左中間を破りトライ。CVも成功させたクボタが先制し0-7。(前半5分)

 

リコーも即座に反撃を見せた。キックオフと同様に左サイドへ再開のキックを蹴り入れると、リフトした選手の背後にボールが落ち、これをHO小池がセーブ。マイボールにする。

 

FL松橋周平らが強いキャリーを見せて食い込んでいくと、ポイントに駆けつけたSH髙橋敏也がCTB濱野大輔へパス。濱野はすかさず左足で裏に転がし、これにWTBロトアヘアアマナキ大洋が反応。相手ディフェンスより先にボールを確保すると、そのままインゴールに運び左中間にトライ。CVは外れたが、5-7とリコーが点差を詰めた。(前半8分)

 

スコアの奪い合いとなった序盤。クボタは再開のキックをキャッチし、ボールを回すリコーに対しプレッシャーをかける。オフロードパスのわずかな乱れをついてボールを奪うと中央を攻める。ここで守るリコーにノットロールアウェイ。クボタは22mライン付近、ほぼ正面のPGを決めて5-10となる。(前半10分)

 

再開後、リコーはFLエリオット ディクソンのキックチャージ、WTBアマナキ大洋のタッチラインのナイスランなど好プレーが続いて出たが、同時にミスも出てうまくチャンスにつなげられない。

勢いに乗れないリコーに対し、リコー陣内中盤、右サイドでラインアウトを得たクボタは、手前で合わせラックをつくるとFWでハードに攻めたてる。頃合いを見て左に展開。角度に変化をつけて走りこんだ13番が、リコーディフェンスを切り裂き15番にパス。15番は中央を抜けてトライ。CVも決まり5-17とした。(前半14分)

 

リコーはここもトライ直後に反撃。クボタ陣内中盤、左サイドからボールを動かして攻めると、右中間のギャップをSOロビンソンが抜けて大きくゲイン、ゴール前まで運ぶ。スクラムからのアタックでトライを狙っていくが、ペナルティを得て選んだスクラムで、クボタFWが右側を狙って強く押し、リコーのスクラムを崩しペナルティを獲る。ゴールに迫ったリコーだったが、ここはスコアできず。(前半20分)

 

序盤は互いに攻め合ったが、ここからは深くまでは攻め込めない時間が続いた。拮抗した状態を破ったのはリコー。自陣からギャップを抜けたNO8コリン ボークのゲインでハーフウェイラインを越えると、相手のディフェンスの状況をしっかり見て弱いところを突いていく。

 

中央のラックから、外側に立ったFL松橋につなぎ力強いキャリー。ここに走り寄ったCTB濱野にオフロードパスをつなぐと、前方に抜けて22mライン間際までゲインする。ここでパスをつなぎもう一度FL松橋にボールを託すと、左サイドを突破。ディフェンスが寄せて来るのを見て、背後に駆け寄ったSH髙橋にほぼノールックでパス。キャッチした髙橋はそのまま左中間インゴールに達しトライ。角度のあるCVもFBへガティが成功し12-17。リコーが若い力でトライを獲りきり食らいついていく。(前半28分)

 

前半の終盤、クボタがリコー陣内深くでボールを動かし攻めたが、リコーのディフェンスも動きよく対応し隙をつくらずカバーしていく。しかし中央付近でオフサイドを犯してしまいPGを決められ12-20。(前半34分)

 

ラスト5分、リコーは22mラインの内側に2度攻め込んだが、いずれもオフロードパスがうまくつながらずボールを失った。このまま前半が終わる。

最終盤の意地のトライで4点差に詰め寄ったが届かず。リーグ戦に続いての惜敗。

PR柴田和宏を大川創太郎に、FBへガティを高平拓弥に入れ替えて後半へ。早い時間帯に点差を詰めプレッシャーをかけたいリコーだったが、願ってもない展開となる。

 

自陣でキックをキャッチしたNO8ボークが、SOロビンソンにボールを預ける。ロビンソンが前方にキャリーすると、ディフェンスと接したところでボークに戻す。ボークはタックルをはずして裏に抜け出し、またもビッグゲイン。中央、22mラインを越えたところにラックをつくると右に展開。

 

またもSOロビンソンのキャリーで食い込むと、PR大川につなぎラックにする。ここにLOロトアヘアポヒヴァ大和とSH髙橋が駆けつけ、ほぼ同時にボールの取り出しにかかる。ボールを持ったのはポヒヴァ大和。ラックサイドを抜け、右中間インゴールに持ち込むと回り込んで中央にトライ。SOロビンソンが蹴ったCVも決まり、19-20と1点差に詰め寄った。(後半3分)

 

この後しばらくリコー陣内でのプレーが続いたが、スクラムでペナルティを獲り、PKで前進しエリアを戻す。クボタ陣内中盤、右サイドのラインアウトからグラウンドをワイドに使ったアタックで前に出ていくが、PRウォントンからSOロビンソンにつなぎかけたオフロードパスに対しスローフォワードの判定。続くスクラムはクボタが押しペナルティ。リコーは逆転のチャンスを逃す。(後半9分)

 

リコーはFL松橋を武者大輔に、CTB牧田旦をティム ベイトマンに入替。(後半11分)

 

向かい風が強まる中リコーは自陣に押し込まれ、ゴール前でのマイボールラインアウトとなる。しかしこれが乱れ相手に入ると猛烈なアタックを浴びる。ディフェンスでホールディングの反則。PKを蹴り出し、ゴール前のラインアウトで勝負をかけるクボタ。リコーは競らずにモールに備え対応する。

 

モールでの前進を阻んだが、クボタが粘り強く攻める。トライラインを背負った状態でリコーは懸命にディフェンスを見せる。フェイズを重ねたクボタは7番が強いキャリーで押し込み中央にトライ。CVも決まり19-27。再び8点差に。(後半17分)

 

リコーは前半と同じように、失点後にうまく反撃を見せる。中央を破ったCTBベイトマンがゲイン。さらにNO8ボークにつないで22mラインの内側へ入っていく。しかしクラッシュした際にボールがこぼれ、このブレイクダウンにいち早く詰めたクボタがボールを確保。リコーはビックゲインをチャンスにつなげられなかった。(後半19分)

 

追い風を使いエリアを獲っていくクボタが勢いづく。テンポよくボールをつないでリコー陣内でフェイズを重ねる。

 

ここで守るリコーにホールディングの反則。アドバンテージが出た状態でプレーが続いたが、プレーが切れるとクボタはPGを選択。中央22mライン付近から決めて19-30。点差は11点に。リコーはHO 小池を芳野寛に入替。(後半23分)

 

風を意識し自陣からボールをつないで攻めていくリコー。一人ひとりのランナーは強いキャリーでゲインを見せていくが、敵陣深くに入りかけたところでハンドリングエラーが発生する歯がゆい展開。対照的にクボタはエラーで得たボールを一気にリコー陣内に持ち込み効率的に攻めていく。まずは1トライ1ゴールで届く点差に戻したいリコーだったが、ディフェンスに追われる場面が続く。そんな中、CTBベイトマンが脳しんとうの疑いの確認のため一時退出し、牧田がピッチに戻る。またPRウォントンに替えて辻井健太がピッチへ。(後半30分)

 

ゴール前でのクボタの猛攻が長く続いたがリコーは耐える。ラックでターンオーバーに成功しタッチキックを蹴ったが、その際に首に手をかけるプレーがあったとしてクボタにペナルティ。リコーは、距離は出せなかったもののPKでエリアを戻す。(後半32分)

 

自陣22mライン付近のラインアウトを展開。ここでギャップを見出したSOロビンソンが突破。敵陣22mライン手前に達するとグラバーキックを見せる。これは相手に入ったものの自陣脱出に成功する。

 

しかし、ここからインターセプトやハンドリングエラー、ペナルティなどで、互いに目まぐるしくボールが行き来する展開となる。リコーは激しく攻め相手のオフサイドを誘うと、PKを蹴り出して敵陣22mライン付近のラインアウトを得る。ここでSH髙橋に替わり中村正寿がピッチへ。CTB ベイトマンもここで復帰する。(後半38分)

 

左サイドからのラインアウトをキープすると守るクボタにペナルティ。WTBアマナキ大洋がタップしてリスタート。左中間に突っ込むと、PR辻井、LOポヒヴァ大和がサポート。ポヒヴァ大和がピックすると、ディフェンスを引きずりながらインゴールに達し、力強いグラウンディングを見せる。すかさず後方に投げると、SOロビンソンがすぐにCVを蹴り成功。26-30として、ラストワンプレーでの逆転に懸ける。(後半39分)

 

再開のキックを自陣で回し前進を図るリコー。パスをつなぎギャップを探るが、クボタも冷静にラインをつくり続ける。80分経過を告げるホーンが響き、そのすぐあと、リコーがつなごうとしたパスがこぼれノックオン。ここでホイッスルが吹かれノーサイド。

 

相手を上回る4トライを挙げたリコーだったが、ハンドリングエラーがかさむなどして要所で攻め切れず惜敗。これで今季のトップリーグの8位という最終順位が決定した。

 

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はどうもありがとうございました。トップリーグとしては最後の試合でしたので、勝って終わりたいという気持ちで臨んだんですが、結果は残念なかたちになってしまいました。自分たちとしては受け入れるしかない。クボタさんがいいラグビーをしたのだと思います。

今日は少しルーズなゲームで、ディシプリンのところでも相手に上回られましたし、アタックではたくさんチャンスメイクできていたんですが、結果的に自分たちのミスで終わる場面が多かった。相手も本当にいいラグビーをしたんですけれども、我々の自滅で終わってしまったようにも思います。カップ戦が残っていますが、来シーズン以降もっといい戦いができるように努めていきたいと思います。

(今日の試合を受けて、来年度に向けた課題が見えたか?)自分たちが掲げていた原点というんでしょうか。ディフェンス、ディシプリン、ストラクチャーを信じると言って1年間トレーニングをしてきたのですが、最後のゲームで言い続けてきた言葉と実行が伴わないところが出てしまった。新しく何かを掲げるというよりかは、そういった言葉の重みをだしていくことが大事かなというのが学んだことです。真逆のことをしてしまった場面もありましたので、そこをコントロールできなかった責任を感じています。【以上共同記者会見にて】

 

考えるべきことを感じた試合でした。選手たちではなく僕らがですね。選手は主体性を持って、目標に向かって準備をしっかりしてくれていたので。神戸製鋼との試合が終わってからの2試合は絶対に勝てるゲームでしたが、それを勝ちに結びつけられなかった。そこからコーチ陣は何を学ぶべきなのかなと。

今日のゲームはミスが多かった。オフロードパスがつながらないシチュエーションが多く、一方でそれがトライにつながったというところもあったんですね。逆から見ると。それを良しとするのか、ダメとするのか、その決断。方向性を導き出すのは選手ではなくコントロールする側のメッセージの強さではないかと。そういう意味では(組織として)うまく機能しなかったのかなと。

 

いいプレーだと思います。ああいったディフェンスを破るにはチャレンジしなきゃいけないし。それでたくさんのチャンスメイクもできた。ただ、それに必要なスキルが伴わないときもあって、正しい判断だったときとそうではなかったときがありました。そこで選手にGOをかけるのか。

でも、メッセージでは「ストラクチャーを信じよう」と言ってきている。「一度強いキャリーをしてブレイクダウンをつくって」と言ってきている。ストラクチャーを信じずに一発で何かしてやろうという攻撃に対して、コーチ含めて僕らはどう評価すべきなのか。結果論だけ見て良かった、悪かったという話をしていると僕たちの成長はないとも思いました。深いところですけどね。

(選手たちが判断するための指針をどう提供するか)選手たちはチャンスがあると思ってプレーしていると思います。用意しているアタックがあって、それが駄目なら次の選択をしてプレーしていくというトレーニングをしているので、一発で取り切ろうという良し悪しの判断基準は我々(コーチングスタッフ)にある。単純に言えば「オフロードパスをしてはいけない」「50-50パスをしてはいけない」「ボールキャリーをしよう」というメッセージでもいいのかもしれない。主体性を持って動いてくれている選手たちに対して、どうコントロールするか。それがうまくできないとルーズになることも出てくる。

これはディシプリンの一部なんだと思います。ポジティブにとらえればチームが成長しようとしている途中。レベルの高いチームはオフロードパスでチャンスメイクするラグビーをしていますので、選手たちはそれに向かってチャレンジしているということでもある。すごく難しいところなんですけど。これまでとは違う悩みですね。

 

濱野が何度も言っていますが、最終的にやるのは選手。そこに向かうためにいい判断をさせる、そのプレーがいいか悪いかのフィードバックをできるだけインスタントにやってあげる。それによって、効率的に良い判断ができるチームに成長していく道筋ができるのだと思います。そこについてはコーチングスタッフが成長しなければいけない点。それは今日の80分間で気づかされたことですね。

ここ数試合で見たときにも、らしくない試合になってしまったことについては考えなければいけない。これだけターンオーバーが多くなると、ディフェンスの回数も増えるので、単純にディフェンスのシステムや能力の問題ではないとは思うんですけど、30点オーバーの試合が続いていますので。

 

チームが成長しているのは間違いないです。今までかなわなかった相手に対して勝負ができるようになってきていますし。この1年通して完敗といえるゲームは神戸製鋼戦以外はなかったですし。でも、何かを変えるために刺激が必要なのかなとも思います。メッセージであったり、コーチの仕方であったり。

選手たち自身は、どうやれば実行できるか考える力というのは確実についてきたと思います。選手たち同士で考えを共有したり、ぶつけあったり、確認する場も増えましたし、そこはチームが目指すところに向かって進んでいるとは思います。

でも、やはりそれだけでチームはできない。枠組みをつくる、コーディネートしたりする、仕掛けだったり、ときには強くこれまで以上に厳しいメッセージを発信したり。緊張感や責任を求めたり、素早いフィードバックであったり。そういったところは僕がコーチングスタッフに求めていかなければいけないのかなと思っています。

CTB濱野大輔キャプテン

本日はありがとうございました。トップリーグとしては、今シーズン最後の試合だったんですけれども、“Action”というリコーのスローガンを掲げて、全部出し切ろうと話して試合に臨みました。結果的には自分たちのミスでクボタさんにチャンスを与えてしまい、またスコアできるところでも自分たちのミスで自滅してしまい勝利を逃してしまったという試合です。

 

トップリーグチャンピオンという目標に向かっていく上でのプロセスでもありますし、大きな壁があったということ。これを乗り越えていかないと、自分たちは成長できないと実感しました。まだまだ伸びしろのあるチームだと思います。まだシーズンは終わっていなくて、カップ戦2試合や練習試合があります。そこに向けて立て直してやっていきたいと思います。

(キャプテン1年目を終えての感想は)僕自身としては、より多く成長させてもらえたシーズンだったと思います。まだ未熟ですし、ブラックラムズに多くいるリーダーシップを持った人たちやスタッフに支えてもらえなければ、僕一人ではチームとして目標に向かっていくことはできなかったと思います。順位は1つ下がってしまいましたが、内容的には濃いシーズンで、成長はしていると思います。

もちろん改善すべき点はあります。ラグビーのスキルもちろん、自分たち自身のマインドの部分などですね。主体的にやってきたチームなので、選手同士でしつこく言いあって、お互いフィードバックしながらやっていきたいと思います。

トップリーグチャンピオンという目標は変えないでやっていきたい。それをひたすら目指し続ける責任が自分にはあると思っています。

(今日の試合を受けて、来年度に向けた課題が見えたところは?)リコーブラックラムズは正直まだ波のあるチームです。パナソニックさんには勝ちましたが、勝ちきれる試合で勝ちきれない、そういった未熟さもあります。トップリーグチャンピオンになるためには、勝ちきれないといけない。そこに対しては組織としてもっと成長していかなければいけないと感じています。

やるのは選手なので。スキルにしても、マインドにしても、ひたすら選手たち自身がディテールにこだわって。まずは僕自身がキャプテンとして、責任を持って、姿勢を見せて、言動として、行動として、発信していき、またスタッフとも連携していきたいと思っています。【以上共同記者会見にて】

 

HO小池一宏

(初先発、気合いが入っていたのでは?)選ばれたときから、今週は全力でやっていこうと思っていました。全力でいくのは当たり前のことだと思うんですが、いつも以上に気持ちを入れてプレーするように心がけていました。

(目指していた先発にたどりついた)ケガ人が出た影響で巡ってきたチャンスなので。でも出るからには結果を出したいなというのはありました。

(課題を感じた部分、やれたぞという部分があれば)前半のゴール前でのスクラムで相手にペナルティを獲られた場面ですね。自分たちがフォーカスしてきた相手をドミネイト(支配)するということができなかったので、あそこのスクラムで押せなかったことが一番悔しいです。

 

(アタックではキックオフボールをうまくセーブしたりも)そうですね。試合のことはあまり覚えていないんですけど、ハードワークしてアクションし続けることは意識してプレーできたかなとは思います。でも、HOに求められているものはまずセットプレーなので、そこの精度は高めていかなければとも感じました。(緊張はあった?)最初はしたのですが、途中からそれどころじゃなくなって、ただ無我夢中って感じで。あっという間に時間が過ぎていった気がします。これからももっとアピールをし続けます。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

PAGE TOP