【Review】トップリーグ 総合順位決定トーナメント 2回戦 vs パナソニックワイルドナイツ

2018.12.12

ヘガティ、ロビンソンのキックから2トライ。安定したディフェンスも光る。

トップ4を懸けて挑んだ総合順位決定トーナメント1回戦・神戸製鋼戦に惜しくも敗れたリコーは、残り2試合で5位を目指す戦いに挑むこととなった。2回戦の相手はリーグ戦で勝利を挙げたパナソニック。

前回対戦時に躍動したリコーFWを意識したようにも映る陣容で臨む相手に対し、リコーはパナソニック戦で途中出場ながらブレイクダウンで繰り返し働きを見せたLOロトアヘアポヒヴァ大和やNO8コリン ボーク、またHO芳野寛が先発。リザーブにはPR千葉太一、HO小池一宏といった若手も名を連ねた。

 

ラグビーワールドカップに向けた改修後、リコーとしては初めての試合となる東大阪市花園ラグビー場は冬晴れ。冷たい空気の中、パナソニックのキックで試合が始まる。この日のリコーは白のセカンドジャージを着て試合に臨んだ。

 

試合の入りは、ハーフウェイラインを挟んで互いに仕掛け合い攻撃の糸口を見出そうとする展開が続く。最初にチャンスを掴んだのはリコー。

 

相手の低い弾道のキックをキャッチしたWTB渡邊昌紀のキャリーを起点に右サイドを攻めるリコー。出足のよいディフェンスで前に出させてはもらえないが、テンポのよい球出しで左へ運ぶと、FBブライス へガティが裏を狙いキック。これが相手選手に当たり高く跳ねる。

 

ここで外にいたWTBロトアヘアアマナキ大洋が飛び出す。手を高く伸ばしこれをさらうと、裏に抜け出しハンドオフで相手を突き放しながら左中間を走る。トライライン間際でタックルを受けるが、身体を回転させながらインゴールに手を伸ばしグラウンディング。リコーが先制のトライ。角度のあるCVもFBへガティが決めて7-0とする。(前半7分)

 

先制を許したパナソニックは、自陣でボールを回すリコーにプレッシャーをかけていくと、パスを奪ってアタックに転じる。一気に22mラインの内側に入りフェイズを重ねていく。ゴール正面のラックでリコーに倒れ込み。PKを得たパナソニックはスクラムを選ぶと左へ。左中間にラックをつくると1番がトライ。CVも決め7-7とした。(前半13分)

 

この後、一進一退の時間が続く。リコーは神戸製鋼戦で苦しんだディフェンスの修正を図り、パナソニックのアタックに対応。ゴール前までボールを運ばれる場面もあったが、あわてることなくプレッシャーをかけていく。前半19分には自陣深くからFBヘガティのビッグゲインで一気にエリアを奪い返し、アタックに転じた。

 

しかし、パナソニックも同様に堅いディフェンスとターンオーバーからのアタックなどでゲインを図り、決定機をつくらせない。

リコーはスクラムでややプレッシャーを受け、パナソニックはハンドリングエラーが目立つといった問題を抱えながらも、互いにディフェンスの精度を保った締まった展開が続く。

 

スコアを動かしたのはパナソニック。リコー陣内左サイドでのリコーのスクラムを強く押し崩す。直後の密集でボールキープを図ったリコーが相手選手の首に手をかけてしまう反則。ここでパナソニック7番が即座にタップしてリスタート。陣形を整わないリコーのディフェンスの間を抜け、左サイドインゴールに持ち込みトライ。CVも決まり7-14とする。(前半34分)

 

不意を突かれ勝ち越しを許したリコーだったが、食らいついていく。左中間に飛んだキックオフボールの落下地点にいち早く詰めたCTB牧田旦が後方にボールをはたくと、ダイレクトでFLエリオット ディクソンがキャッチ。一気に右サイドに展開するとCTB濱野大輔、PR眞壁貴男がディフェンスの間に身体をねじ込んでゲインしていく。折り返すと今度はCTB牧田、HO芳野らが思い切りのよいキャリーを見せる。22mラインが迫ると、パナソニックにオフサイド。アドバンテージが出た状況で攻め続けたリコーは、右中間からSOロビー ロビンソンが中央へキックを上げる。

 

これに反応したFBへガティが落下地点に走り込みキャッチ。ゴールまで5mの位置に駆けつけたパナソニックのディフェンスが襲いかかるが、リコーもSH髙橋敏也、CTB牧田がサポートに走りボールをキープすると、LOロトアヘアポヒヴァ大和が左に出し、ボールはFLディクソンへ。

 

ディクソンは外に向かって斜めに走り加速。ディフェンスをかわすとインゴールに達しグラウンディング。CVはポストに当たって惜しくも外れたが、トライを獲り返したリコーは12-14として点差を詰めてみせた。(前半37分)

 

このまま前半は終わる。

SOロビンソンの2トライで逆転に成功。しかし、終盤に失点し惜敗。

メンバーの入替は行われず後半が始まる。

 

後半最初のトライはパナソニックに生まれた。リコーはハーフウェイ付近のラックでターンオーバーに成功するが、展開しアタックに転じた際のパスに対しスローフォワードの判定。

 

パナソニックは左中間で得たスクラムからサイドを攻めて前進、そこから展開し右サイドに運ぶと、オフロードパスを続けて通すとと、スペースに走りこんだ15番が右サイドを突破。折り返しのパスを受けた14番が右中間にトライ。CVも決まって12-21。(後半8分)

 

パナソニック陣内浅めの位置にてディフェンスでプレッシャーをかけるリコーに対し、パナソニックは裏へキックを放ちリコーの選手たちを背走させる。ボールを拾ったFBヘガティがそれを追い抜く形で相手ディフェンスラインへ突っ込むと、SH髙橋が左サイドのスペースにキック。ボールが跳ねずタッチラインは割らなかったが、ボールを拾いにいく15番にリコーのBKがプレッシャーをかける。

15番が蹴り返しを狙うと、WTBアマナキ大洋が手を伸ばしチャージ成功。転がったボールをCTB牧田が拾い前へ。サポートしたFL松橋周平にボールをつなぐと、ゴール前に達した松橋は無理せず冷静に味方を待ってラックをつくる。

 

ラックからFWが激しく突進を繰り返し、ディフェンスを引きつけると右へ展開。中央でパスを受けたSOロビンソンが右中間に向けて走り、止めに来た9番と14番を吹き飛ばす強さを見せてインゴールへ持ち込みトライ。CVも決まり19-21。(後半12分)

 

さらにリコーが攻める。敵陣に入りFLディクソンらを中心に右サイドから攻め、中央に展開するがノックオン。ここでリコーは出血したPR眞壁を辻井健太に交替。(後半18分〜21分まで)

ほぼ同じタイミングでWTBアマナキ大洋も負傷。こちらは治療を受けピッチに残る。一方でパナソニックはベテランメンバーを続けざまに投入し、試合の流れを奪いにいく。

パナソニック陣内中央、22mライン手前のスクラム。パナソニックはこれをキープし、キックをリコー陣内深くへ蹴り込む。リコーが蹴り返すとパナソニックは右のタッチラインの外へ蹴り出す。

 

敵陣10mライン、左サイドのラインアウトを得たリコーは確実にキープ。NO8コリン ボークがキャリーすると見せかけて、その内側を突いたFL松橋へパスをつなぎクラッシュ。ディフェンスを引きつける。即座に展開するとFLディクソンからすぐ脇に走りこんだSOロビンソンにつなぎ右中間をブレイク。

 

ステップを切りつつ的確なランコースを選びディフェンスをかわしたロビンソンは、右中間から中央に回り込んでトライ。CVも決まり26-21とリコーが逆転に成功する。(後半21分)このトライの直後、WTBアマナキ大洋に替わり松本悠介がピッチへ。

 

しかし、残り20分弱はパナソニックの意地を見せつけられる展開となる。再開のキックの蹴り返しで得たラインアウトをキープしたパナソニックは、ハーフウェイ付近からモールで前進する。22mライン付近まで前進すると、左サイドから展開し右サイドを攻める。10番のゲインなどでゴールに迫る。

 

ここでパナソニックは左に展開しBKでトライを狙うが、WTB渡邊が猛烈なタックルで止めてみせる。しかし素早くサポートしたパナソニックはアタックを継続。中央にポイントをつくると、走りこんだ8番にボールを渡す。8番はギャップを抜けポスト右脇にトライ。テンポのよいアタックによく対応していたリコーだったがここはスコアを許す。CVも決まり26-28。再びリードを奪われた。

 

このスコアの後、リコーはHO芳野を小池に、LOジェイコブ スキーンを柳川大樹に、CTB牧田をティム ベイトマンに入替。(後半25分)

 

次のスコアが試合を決めるという状況で、決定力を見せたのはパナソニック。自陣スクラムでペナルティを得るとPKで前進。ハーフウェイを少し越えたあたりでラインアウトを得る。

 

ここから攻め、じりじりとゲインしていく。リコーは裏へのキックを拾ったWTB松本が相手の包囲をうまくかわしてゲインするが、直後のラックで相手21番(SH)激しいクリーンアウトが決まりターンオーバーを許す。すぐさま5番につなぐと近場のギャップを鋭く狙う。

 

 

HO小池が反応し止めにいくが惜しくも届かず、5番はインゴールへ。右中間から回り込んで中央にトライ。CVも決まり26-35。重いスコアが入る。リコーはPR眞壁を辻井に、PR大川創太郎を千葉太一に、SH髙橋を中村正寿に入替。(後半31分)

残り10分を切り1トライ1ゴールでは届かない9点差。早い時間にスコアをしたい局面を迎えたが、スクラムなどで時間が経過していく。FL松橋に替えて武者大輔。(後半33分)

 

パナソニック陣内浅めの位置でパナソニックにハイタックル。PKで前進したリコーは22mラインの手前のラインアウトを得る。しかし猛烈なプレッシャーでリコーのアタックを阻もうとするパナソニックはブレイクダウンに仕掛け、ノットリリースザボールを奪う。リコーは大きなチャンスを逃す。(後半37分)

 

リコーはその後もボールを奪いアタックの局面をつくりかけたものの、即座にパナソニックに奪い返される。スコアできないままホーンを迎えノーサイド——。

 

リーグ戦での勝利の再現を目指し挑んだリコーは、安定したディフェンスで自分たちのラグビーを披露するも、勝負所で決定力を見せたパナソニックにリベンジを許すこととなった。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はありがとうございました。新しくなった花園のグラウンドで試合ができたこと、関係者の皆さんに感謝申し上げたいと思います。今日のゲームは先週のゲームに負けて、モチベーションを保つのが難しかった部分もあったのですが、過去最高位の5位を目指そうとして臨みました。結果負けてしまったことは本当に残念です。

ただ、パナソニックさんを相手にリードを奪う場面もありましたし、チームは成長していると感じました。ですので、次は勝って来年につなげるようなゲームをしたいと思っています。成長している選手たちを次のステージに上げるためにも。

 

(ハーフタイムはどんな声をかけたか?)アタックの部分は非常によくできていたので、ディテールの部分ですよね。シェイプの部分を早くセットすることだとか、そういったことでスペースにボールをうまく運ぼうとか。ディフェンスに関して言えば、非常にプレッシャーをかけられていたので、前半通りにラインスピードを上げチョップタックルに入ることで、相手にプレッシャーをかけ続けようと。そのあたりは後半もよくできたと思います。

【以上共同記者会見にて】

 

アタックについては、ボールを継続しているときにはプレッシャーをかけられていました。ミスが起きターンオーバーされたときのパナソニックさんの力にはやはり脅威を感じましたが、80分間通して、やられるとか、怖いとか、そういう印象を持つことはなくなってきたんではないかと思います。自分たちの実力がそこまで伸びたんだと思いたいですよね。選手にもそう思ってほしい。もちろん油断したり満足したりするわけではないんですけど。もうそこまで来てる。そういう状況だと考えたい。

 

ディフェンスもよかったですね。神戸製鋼のアタックを経験した直後ということもあり、高いレベルのアタックによく対応できていたんではないかと。

(セットプレーはやや押される場面も)いつも以上にプレッシャー感じましたね。まだまだ成長しなければいけない領域。人に頼るのではなく、チームとしてレベルを上げていく必要がある。学ぶことがありました。でも今日初めて出たHO小池(一宏)だったり、PR千葉(太一)だったりは及第点。能力を見せてくれたので、これをスタートラインにしてもらって、層の厚いスクラムをつくってほしいですね。岡崎(匡秀)FWコーチと一緒に。

 

泣いても笑っても最後なので、自分たちの全てを出し切って、勝って終われるように。(負けが続いたが、改善しようという姿勢はうかがえる)立て直せないまま試合が続いている状況とは違うので、そこはポジティブに捉えています。悪い雰囲気を断ち切るべきときには、先回りするようにCTB濱野(大輔キャプテン)を中心にミーティングを行ってくれている。この流れを来シーズン以降にどうつなげて、次のステージに進んでいくかですね。

CTB濱野大輔キャプテン

本日はありがとうございました。前半はストラクチャーを守って、自分たちのラグビーができれば、つまりアタックであればボールをキープすれば、ディフェンスでもプレッシャーをかけて相手のミスを誘うことができれば、自分たちのスコアにつなげられると感じました。

 

ですが、細かいミスですね。ノックオンやスローフォワード、ペナルティ。そういうところで相手にチャンスを与えてしまった。一方でパナソニックさんはそういうチャンスを活かしきって、最後は守りきって、プレッシャーをかけ続けることで勝利を得たと思う。そこはチャンピオンチームを目指すにあたって、まだまだ足りない部分だと痛感しました。残り1試合なので、切り替えていい準備をして臨みたいと思います。

【以上共同記者会見にて】

HO芳野寛

ボールを動かしたときはトライが獲れていたので、(課題は)自分たちのミスかなという感じですね。(ディフェンスは改善した。粘りも見えた)そうですね。やっぱりミスから。(ハンドリングエラー?)も、そうだし、あとはスクラムでペナルティ与えてタップキックされてトライになったとか。一個のミスがペナルティになって、トライに繋がることがあったので、そういう部分を修正していかないと。(スクラム、モールは難しい面も)うまいこといかなかったですね。モールは悪くはなかったですけど、スクラムですね。うまいこといかなかったのは確かです。

 

 

FL松橋周平バイスキャプテン

「勝てる試合」というのは、こういう試合のことを言うんだと思いました。結果は負けてしまったのですが。大事な局面で、自陣からどう脱出するかというので、もっとシンプルな選択ができていれば、負けることはなかった。それを言ってもしょうがないのですが、そこができるできないかが勝敗を左右するのだなと。

(ディフェンスの修正などはうまくいっていたように感じた)コミュニケーションをとれて良いディフェンスができていたので。そこはよかったのかなとは。(もう少し敵陣にうまく入って、アタックの時間を伸ばせれば……)見てわかる通り、アタックは機能していたので、その時間を伸ばせれば試合を支配できていたと思います。

 

(相手のFWは海外出身選手が多かったこともあり、スクラムなどセットプレーは苦しんだ)そこは言い訳できないですね。レベルアップしていくしかないです。そういうときにどう対応するか。 個のレベルを上げる。FWのパックとしてのレベルを上げるのが大事なのかなと。(今シーズンは全体を通していいパフォーマンスを見せてきた。あと1試合)そうですね。もっと高いレベルを目指します。(代表も——)入ります。

SH髙橋敏也

前に出るディフェンスに対して、相手はプレッシャーを受けているように見えましたし相手にミスも出ていたので、ディフェンスはよかったと思います。自分自身も後ろでオーガナイズしていて、神戸製鋼戦ほどのプレッシャーはなかったように感じました。逆に、スコアされたところは簡単だったので、かなりもったいなかったですね。

アタックではトライを獲れそうな感覚がありました。でも、獲りきるべきところで何個かミスがあったので、そのあたりの精度を上げていかないと勝ちきれない。精度を上げていかなければいけないというのは神戸製鋼戦も、今日も、強く感じました。

(充実しているのでは?)かなり充実したシーズンになっています。試合に向けて1週間準備するというところから多くを学ばせてもらっています。でも、チャンピオン目指すためには自分のところ(SH)で判断力とか正確性というのをもっと出せないといけない。役割を果たせるように引き続き頑張ります。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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