【Review】トップリーグ カップ戦 第3節 vs Honda HEAT

2018.11.29

怒涛のトライラッシュで大量リード築く。隙のない前半に。

リーグ戦再開前の最後のゲームとなったトップリーグカッププール戦第3節は、Honda HEATとの対戦となった。

リコーは前節終了後に神鳥裕之GM兼監督が示唆した通り、トップリーグメンバーでプレー時間がやや少なくなっていた選手と若手選手をミックスした布陣で試合に臨んだ。ケガで戦列を離れていたPRアレックス ウォントンが復帰を果たす吉報も届いている。

 

好天に恵まれた愛知県・名古屋のパロマ瑞穂ラグビー場にて、SOブライス へガティのキックで試合が始まる。

キックオフボールをキープしたリコーがいきなりチャンスをつくる。中央のラックからSH山本昌太が左にパスアウト。SOへガティからCTB牧田旦へ。牧田はゴロキックで左中間の裏のスペースにボールが転がす。加速して飛び出したFB高平拓弥が足に掛けさらに前へ転がすと、インゴールで自ら拾って左サイドにトライ。

 

角度のあるCVもSOへガティが決めて7-0。ノーホイッスルトライでリコーが最初のスコアを奪う。(前半2分)

 

すぐ後、リコー陣内浅めでボールを展開したHondaは、左中間を11番が抜けてインゴール左隅にグラウンディング。しかし、映像判定の結果、展開した際にオブストラクションがあったとしてノートライに。(前半3分)

 

この反則で得たPKを蹴り出し、敵陣22mライン間近でラインアウトを得たリコーは、これをキープし右サイドをモールで押す。展開しSOへガティ、FB高平、WTB長谷川元氣とつないで左サイドのオープンスペースにボールを運ぶ。長谷川はタックルを受けたがボールは放さず、左中間インゴールに手を伸ばすと体を捻るようにしてグラウンディングしトライ。CVも決めて14-0。(前半6分)

 

連続トライでリードを広げたリコーだったが、ここからはHondaが攻勢に回る。リコー陣内でアタックを重ねチャンスをうかがっていくと前半12分、リコーのディフェンスが内に寄ったのを見て展開。やや手薄となった右中間を15番が抜けて独走。そのままインゴールに達しトライ。CVは外れて14-5。(前半13分)

 

リコーはハーフウェイ付近のスクラムから展開してアタック。インターセプトを狙ったHondaがボールをはたき落としてしまい、インテンショナルノックオン。PKを得たリコーは22mライン付近まで前進。ラインアウトから攻めていく。

 

Hondaにノットロールアウェイが出るとHO芳野寛がタップしてリスタート。中央22mラインの内側にラックをつくると右に展開。NO8コリン ボークがステップを切ってうまく前方へ抜けると、右中間のトライラインの際でボールをリリース。後方より近づいたSH山本が鋭くピックゴー。わずかなスペースに身体を捻じ込んでトライ。CVも決まり21-5。リコーが順調にスコアを重ねていく。(前半21分)

 

さらに、リコーの右サイドに蹴り込まれたリスタートキックを、WTB松本悠介が22mライン付近でキャッチ。チェイスしていた選手に絡まれ膝をつくが、ボールをリリース、拾い直して前方に抜ける。

 

敵陣10m付近でフォローしたFL武者大輔、さらにはNO8ボークへと繋いで右中間インゴールへ。ボークは中央に回り込んでトライ。CVも決めて28-5。このプレーでLO小山智聲が脳震とうの疑いがあるとして検査のため一時退出。替わって馬渕武史がピッチに入った。(前半23分/小山は30分に復帰)

 

この後Hondaが立て続けにオフサイド。リコーはこれによってゴール前ラインアウトを得る。モールから持ち出して右中間を攻めるとHondaに今度はノットロールアウェイ。チームとして反則を繰り返した形となり、反則を犯した4番にイエローカードが出て10分間の一時退出を科される。(前半28分)

数的有利となったリコーはスクラムを選択。ゴール前でプレッシャーをかけていく。コラプシングが続くと、レフェリーがペナルティトライを宣告。リコーが7点を追加し35-5。(前半30分)

 

大量リードを得たリコーは、前半ラスト10分も敵陣で攻めたもののトライを奪えずにいたが、終了直前に得た左中間のゴール前スクラムから左に出しWTB長谷川がトライ。CVも決まり42-5としたところで前半終了。

 

ディフェンス、アタックともにアグレッシブな姿勢を見せたリコーがほぼ完璧なラグビーで前半を圧倒した。

若手も多く加えた布陣ながら奮闘。カップ戦初勝利を挙げる

リコーはSH山本を米村龍二に、SOヘガティを木上鴻佑に、CTBティム ベイトマンを濱野大輔に入れ替えて後半に臨む。

 

後半最初のトライはHondaに入る。キックで自陣侵入を許したリコーは、マイボールラインアウトでミス。相手にボールを渡してしまう。22mライン付近からのHondaのアタックに対しリコーはノットロールアウェイ。PKでゴール前ラインアウトにされる。ラインアウトは乱れたがリコーにノックオンが出てHondaのゴール前スクラムに。ピンチが続く。

Hondaは左中間のスクラムからサイドアタックでトライを狙う。そこから展開し大外までつなぐと、14番がインゴール右隅に飛び込んでトライ。CVは外れたが42-10。(後半8分)

 

リコーはPRアレックス ウォントンを千葉太一に、PR辻井健太を西和磨に入替。(後半9分)

 

リコーのディシプリンの乱れが続く。ハーフウェイ付近のラックで手を使ってしまうペナルティ。PKで前進を許すと22mライン付近のラインアウトからHondaが勢いのあるアタック。ギャップをしっかり狙ってゲインしていくと、左サイドに振って23番がインゴールに達しトライ。CVも決めて42-17。(後半12分)

 

リコーはこのトライの直後、FL武者大輔を永井達啓に、HO芳野を小池一宏に入れ替える。

 

後半16分、リコーは敵陣浅めの位置のディフェンスでプレッシャーをかけ、ボールがこぼれるとSH米村がすかさず奪う。アタックに転じたリコーは、 SO木上がパスダミーでディフェンスのタイミングをずらしたあと、フラットな長いパスを、左サイドを走っていたCTB牧田に通す。

 

前に出た牧田は相手のタックルより一瞬早く、外をフォローしたWTB長谷川にパス。タッチライン際を走った長谷川はそのままインゴールへ到達し左隅にトライ。FB高平が蹴ったCVは外れたが、後半最初のトライを奪ったリコーが47-17とした。(後半17分)

 

リコーはLO小山に替えて馬渕。(後半21分)

 

試合はHondaがやや主導権を握りながらも一進一退の状況が続く。リコーもボールは持たせていたが、いいディフェンスでチャンスをつくらせない。

 

しかしオフサイドで与えたPKで前進を許し、ゴール前ラインアウトのピンチを迎える。ここはボールを奪いインゴールからキックアウト。しかしエリアはわずかにしか戻せず。再度のラインアウトはHondaがキープ。モールを組まれそのまま左中間インゴールまで押し込まれトライ。CVも決まって47-24。(後半28分)

後半劣勢に立っていたリコーは、FB高平のカウンターを起点にハーフウェイ付近でアタックを仕掛ける。だがHondaが前に出るディフェンスでプレッシャーをかけテンポアップを阻む。さらに16番がリコーのパスに仕掛けカット。裏に抜け出すと23番につないで中央へトライ。CVも決まって47-31。気づけば点差は16点まで縮まってしまった。(後半34分)

 

このまま終わりたくはないリコーはNO8ボークがリスタートキックを蹴って再開。守るリコーはハーフウェイ付近でCTB牧田が思いきりのよいタックル、さらに後続の選手がランナーを捕らえノットリリースザボール。FB高平がPKをタッチに蹴り出しゴール前まで前進する。

 

ラインアウトからモールを組むリコー。Hondaにコラプシング。もう一度蹴り出してラインアウトにする。

 

またもモールを組むリコー。右中間を少し前進したところで分断されたが、ラックにしてボールをキープ。ここでPR千葉がボールを取り出しNO8ボークへ。ボークが右サイドタッチライン際のHO小池へつなぐとタックルをはずして右隅に飛び込んだ。角度のあるCVは右にそれたが、52-31としたところでノーサイドの笛。(後半41分)リコーがトップリーグカップ初勝利を挙げた。

 

後半は、海外出身選手はNO8ボークのみというメンバーながら、レギュラーを狙う選手や若手選手たちが、持っているものを出しきろうとする姿勢と成長をうかがわせるゲームとなった。マンオブザマッチにはWTB長谷川元氣が選ばれている。

 

なお、プール戦3位が決まったリコーは、9位決定トーナメントに回る。年明けの初戦はヤマハ発動機、第2戦は豊田自動織機もしくはNECと戦うことになる。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

今日はどうもありがとうございました。素晴らしい天候のもと、たくさんのお客様の前でプレーできたことに、関係者の皆様に感謝申しげたいと思います。ありがとうございました。

今日のゲームでは、前半いいスタートを切ってくれて。完璧な前半だったと思います。後半はスコアが入れ替わるような状況になって、苦しい展開もあったんですけれども、若い選手たちがプレーできる時間がつくれましたし、経験を積ませるという本来の目的を果たしながら、何よりも最終的にスコアを上回れたということについては満足しています。

来週の神戸製鋼戦に向けて、いろいろな意味でいいチャレンジができたかなと。大きな試合が控えていますので、しっかりと準備していきたいと思います。

【以上共同記者会見にて】

 

(後半は若い選手たちを早めに入れた)試合前から、どんなゲーム展開になろうともBKの外国人選手には下がってもらおうと決めていたので。前半のメンバーたちがいい仕事をしてくれて。あの環境の中で思い切ってプレーしてほしいなと思いながら見ていました。

(点差がついたから判断を変えたわけではない)はい。10番、12番のところはプラン通り。昌太(SH山本)のところはもう少し伸ばしたかったのですが、ちょっとケガしたりしていたので一度に変えようと。

(リードした状態で試合に入れたことで力が出せた若い選手もいたのでは)そう思います。スタートのタイミングからだと相手のプレッシャーを感じたりすることもあったと思うので。

 

一般的に、「与えるチャンスの数がない」と言ってしまうものだと思うのですが、カップ戦ができた意義を考えると、こちらも諦めずに、選手を信じてチャンスを与えられる場面あれば使っていきたいですよね。HO小池(一宏)とか、PR西(和磨)とか、しっかり働いてくれましたし、今日も収穫はあったと思います。もう少しこういうチャンスがあれば、本当はトップリーグメンバーを6割7割入れて、そこに若いメンバーを入れるような、そうした形で戦えればいい経験になると思うんですけど、神戸製鋼戦が控えている状況ではそれが十分できなかった。1月のカップ戦はそういった形で戦うことも考えています。今日の後半40分は投資。来年以降、倍以上になって返って来てくれるといいですね。

 

(アタックのバリエーションが増えているように映る)新しいアタックをつくっていくにはそれなりの時間が必要だと思うんですよ。今回はクリス(ミルステッドコーチングコーディネーター/アタックコーチ)が取り組んでくれて、最低でも10ヶ月くらいはかかると思っていたんですが、シーズン後半に入ってチームとして同じページに乗りかけてきているというのは、このカップ戦の収穫でもありました。

クリスが我慢強く選手と関わってくれて、選手たちはそのアイデアをそのまま受け入れるのではなく、彼らは彼らでしっかり話し合って、お互いがアイデアを出し合ってつくっていくスタイルができてきています。選手たちが自分たちで考えるようになるための仕掛けをコーチたちがつくってくれているというのもあります。

(ついに神戸製鋼戦。メンバーなどで検討中の部分は)イメージはだいぶ固まってきました。今日出場したメンバーのコンディションを最終チェックして決める感じですかね。チームはひとつになりつつあります。ラグビーはチームスポーツですから。チームで戦いたいと思います。

CTB濱野大輔キャプテン

本日はありがとうございました。前半はリコーのラグビーができたんですけれども、後半はスタンダードを落としたラグビーをしてしまった。そこの部分は反省して、次の神戸製鋼戦に向けてレベルアップしていければと思っています。監督がいうように前半と後半は全く別のチームでした。ゲームメイクであったりは、僕自身にとってもいい勉強になりました。神戸製鋼戦はビッグチャレンジになると思うので、しっかりやっていきたいと思います。

(後半うまくいかなかったのは何が原因か)ファーストプレー、ディフェンスの部分であったり。Hondaさんの後半のアタックは最初から勢いがあり、ディフェンスで受けに回ってしまいトライを重ねられた。あとはディシプリンのところ。ペナルティが多く、そこからのセットプレーで崩された場面がありましたので。でも最後はスコアで終われたのはよかった。後半の後半は自分たちのラグビーができたと思います。【以上共同記者会見にて】

 

(後半の苦しい場面でチームによく声をかけていた。スクラムのそばまで駆け寄っていたが)顔を見ていたらすごい緊張していたので。自分たちの強い部分を出していこうと。FWにはスクラムは全員で我慢しようと。一言だけですけどね。あとはペナルティ。立て続けに取られていたので。それは自分たちが原因なので規律の部分はしっかり我慢しようと。

前半は圧倒して自分たちのラグビーができていたのですが、僕が入った後半はHondaさんのラグビーだったのかなと。そうなったとき、状況に応じてチームをいかにまとめていけるかが試された試合だったと思います。僕自身もすごく勉強になりました。スコアを重ねられたとき、チームにどういう影響を与えられるか。何をしないといけないのか。チームとしてもそれを考える機会になったと思います。

(次は神戸製鋼戦)この1ヶ月は“BEAT KOBE”を掲げて取り組んできたので、本当にいよいよという感じですね。選手もやっと待ちに待った瞬間が来たという感じだと思います。何も恐れずに、自分たちのラグビーをやれば必ず勝てるチャンスはあると思います。いい準備をしたいです。

 

PRアレックス ウォントン

(久しぶりのゲームだった)はい。3ヶ月ぶりです。楽しかったですよ。エキサイティングで。(試合に臨むにあたって何かテーマは)やっぱり“Action”だね。(ケガの治療の期間をどのように過ごすかの経験などは)あまりない。やっぱり辛いです。みんながハードワークしているのを見ているだけというのは。
でも今日を終えてコンディションが戻ってきているのは確認できました。いける!って思ったよ。

(スクラムはどうだった? 試合中、何か皆で修正したことなどは?)まあまあかなあ。もうちょっとできるかなと思います。話し合ったのはボディハイト(高さ)だとかセンターラインだとか。いつもと同じことだね。個人としては3ヶ月ぶりの実戦だったし、多少うまくいかないことは出てくるのはしょうがない。タイミングとかコネクションとかね。それは合わせる必要があります。

(ディフェンスは特に前半、チームとして安定していた。うまく入っていけたか)そうですね。でもまだまだ良くなると思います。(神戸製鋼戦に向けてリコーがすべきことは?)リコースタイル。あとは楽しむこと。

 

HO小池一宏

セットプレーを安定させることを意識してやっていたんですけど、思った以上に相手のスクラムに付き合ってしまったなという印象があります。自分たちのスクラムはあまり組めていなかったなと。レフェリーとのコールも合っていなかったので。そのあたりは組んで見てわかったことではあります。まだまだ力不足だと感じたところです。

(ラインアウトは?)マイボールは取れていたので良かったと思いますが、そのあとのモールで相手を圧倒できなかったので。やっぱりゴール前まで来たら、ラインアウトモールでしっかりトライを獲りたい。(最後のトライは?)バーキー(NO8コリン ボーク)に「外に残っていて」と言われて。後半は流れがよくなかったので、最後に獲って終われたのはチームとしてはよかった。

(若手選手はカップ戦でいい経験を積めているのでは?)僕はリーグ戦にはまだ出たことがないのですが、会場や試合に入っていくときのロッカールームの雰囲気も練習試合とは全く違う。刺激的でした。

 

WTB長谷川元氣

前半はいいコミュニケーションをとって、いい形でトライが獲れたと思います。(アタックのバリエーションが増えてきたのでは)選手それぞれが自分の役割というものが見えてきていて、状況判断が統一できてきたというのはあると思います。それによってすべきことが実行できるようになってきたのかなと。

BKからFWへのコミュニケーション、それに対するFWの動きとか。そのあたりはシーズンが深まってきたこともあって良くなってきていると感じています。

 

(今シーズンもWTBは激しい競争がある)春にケガで出遅れて、自分の思うように身体が動かず焦ったこともあったんですけど、自分を見つめ直して、自分ができることをもう一度考え直すうちに、自分が取り戻せてきたように思います。(いつチャンスが来ても大丈夫)でも、大学の後輩の渡邊(昌紀)が調子いいのでね。

(たくさんトライが生まれたが、今日一番いい形だと感じたのは)やっぱり最初のFB高平(拓弥)のトライですね。2つめのアタックで獲れた。最初のキックオフでボールを獲って、FWが前に出て、BKがいい判断をして獲れたトライ。僕がトライしたかったんですけど(笑)。

(ついに神戸製鋼戦)昨シーズンも順位決定戦の初戦で神戸製鋼と当たって負けてしまったのですが、それと同じ形なので今度は勝ちたい。スーパースターも入りましたけど、そこにしっかりチャレンジして、リコーらしさを出せればと。そこに向かって全員で戦いたいと思います。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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