【Review】トップリーグ カップ戦 第2節 vs サントリーサンゴリアス

2018.11.21

サントリーのアタック阻む堅いディフェンス。PR眞壁のトライで追いつき、PGで逆転

トップリーグカップのプール戦第2節、リコーはサントリーサンゴリアスとの対戦を迎えた。前節のNTTコム戦はルーキーも交えたフレッシュな陣容で臨んだリコーだったが、今節はリーグ戦で出場を重ねてきたメンバーを中心とし、さらにFL柳川大樹、WTB松本悠介といったレギュラーの座を狙い準備を続けてきたメンバーもリザーブに名を連ねた。

対するサントリーも日本代表に複数の選手を出しているものの、比較的近い方向でのメンバー編成となり、リーグ総合順位決定トーナメントに向け諸々の確認の場となりうる一戦となった。

 

前節の岩手・盛岡でのゲームに続いて好天に恵まれた神奈川・ニッパツ三ツ沢球技場に試合開始のホイッスルが響く。風上のリコー・SOロビー ロビンソンのキックで試合が始まる。

リコーがハイボールキャッチ、サントリーはジャッカルと互いに好プレーを見せ合い、中盤の攻防で試合が始まる。そんな中、左サイドタッチライン際をキャリーしたFLエリオット ディクソンが力で突破。これを起点としたアタックにディフェンスが惹きつけられるのを見て、SOロビンソンが右サイドへキックパス。

 

WTB渡邊昌紀が目の前で大きく弾んだボールをうまくキャッチしてインゴール右隅に飛び込み、ノーホイッスルトライかと思われたが、惜しくも右足がラインを踏んでおりノートライ。(前半2分)

リコーは敵陣でのラインアウトのスチール、自陣のディフェンスでのオフサイドとミスと反則で前進を許し守勢に回る。22mライン付近でサントリーのアタックを受けるが、NO8松橋周平がラックでボールに手を伸ばしノットリリースザボール。ここはPKでエリアを奪い返した。(前半7分)

 

最初のスコアはサントリーに生まれる。ハーフウェイ付近のスクラムを右に展開。右サイドを10番が抜けて前進。22mライン手前の位置でテンポよくフェイズを重ねると、右中間の10番が右サイドを走る14番に長いパスを通す。その内側にいた15番に返し、前に出ていたリコーのディフェンスをかわす。そのまま15番が右中間にトライ。10番の蹴ったCVも決まり0-7。(前半13分)

 

再開後はリコーが攻める。敵陣10m付近のラインアウトからモール、さらにFWとBKが一体となったアタックで前進。ワイドにボールを動かし、右サイドをWTB渡邊が突いて22mラインを越える。しかし直後のラックでサントリーがジャッカルしターンオーバー。

すかさずボールを展開し反撃に移るサントリーだったが、右サイドで突破を図った14番にFBブライス ヘガティが渾身のタックル。さらにNO8松橋も寄せて迷いなくボールに手をかけると再びノットリリースザボール。局面を変えさせない。(前半17分)

リコーはPKで再び敵陣に入ると、ラインアウトを手前で合わせタッチライン際を攻める。すると再びサントリーに反則(ハイタックル)。PKで22mラインの内側のラインアウトにしてモールを狙う。

これはうまく組めなかったが、すぐに展開。CTB濱野大輔のボールキャリーを挟んで右サイドにボールを運ぶと、SOロビンソンからCTBティム ベイトマン、さらにSH髙橋敏也、SOロビンソン、NO8松橋へとパスが素早くつながりディフェンスを翻弄する。松橋はタックルを受けるが身体を回転させてうまくいなすと、内側に走りこんだPR眞壁貴男にオフロードパスを通す。眞壁が右中間にグラウンディングしてトライ。CVもFBヘガティが決めて7-7。リコーが同点に追いついた。(前半20分)

サントリーの深めのキックで再開するが、この処理でリコーにノックオン。サントリーは22mラインの内側のスクラムから展開して攻める。リコーにオフサイド、アドバンテージが出た状況でサントリー10番が裏にゴロキック。13番がインゴールで押さえにいくが、ここはWTB小松大祐が先に追いつきグラウンディング。映像での判定が行われたがノートライに。(前半21分)

互いに1トライを獲りあったのち、試合は一進一退の均衡状態に。互いに22mライン手前までは攻め込むが、激しいディフェンスで跳ね返し、チャンスをつくらせない締まった試合が続く。リコーはSOロビンソンからWTB渡邊へのキックパスを使ってもう一度トライを狙うなどするがつながらず。

 

この状況を動かしたのはリコー。SH髙橋が敵陣浅めの位置からエリアを狙い蹴り込んだキックが、相手の手に触れてタッチを割る。これで左サイド22mラインの内側でラインアウトを得る。これをキープしFWで攻めていく。しかしトライラインを背負ったサントリーディフェンスは堅く、残り5mの位置でフェイズを重ねていくことになる。

サントリーにラックで反則。リコーはスクラムから展開してトライを狙う。CTBベイトマン、NO8松橋らのキャリーでトライラインに迫るが、激しいディフェンスに遭いノットリリースザボール。リコーは大きなチャンスを逃す。(前半38分)

 

しかし、PKで前進しラインアウトから攻めたサントリーが蹴ったハイパントをFBヘガティが見事にキャッチ。リコーは10mライン付近から前半最後のアタックをかける。するとサントリーにオフサイド。正面、約30mのPGに成功したリコーが10-7としたところで前半が終わった。(前半42分)

ディフェンスのクオリティを保ちサントリーの猛攻に耐える。そして迎えたラストチャンス

リコーはメンバーを入れ替えずに後半へ。サントリーのキックオフで試合が再開される。

しかしこのキックの処理がうまくいかず、リコーにノックオン。ほぼ正面、22mライン間近の位置でのサントリースクラムに。サントリーは左に出し14番が思いきりよく縦に突く。素早くボールをさばくとさらに左へ。ボールを受けた10番がギャップを狙うかに見せかけて左の13番へパス。リコーはきれいにブレイクされる。

WTB小松、FBへガティが食らいついたが13番が左中間インゴールにグラウンディングしトライ。CVも決まり10-14。サントリーの迷いのないアタックでリコーは逆転を許した。(後半3分)

 

しかし試合の流れはリコーに。敵陣10m付近でラインアウトを得ると、これを遠目で合わせてアタック。 SOロビンソンが中央を縦に抜けて22mライン付近まで前進する。さらにもう一度ロビンソンが抜けてゴールが近づく。

左に展開し  NO8松橋、WTB小松とつないで左サイドを突くがサントリーディフェンスは堅い。ラックからリコーは右サイドに運び、鋭く走りこんだCTB濱野大輔へのパスでトライを狙うが惜しくもノックオン。勢いのあるアタックとなったが攻めきれず。リコーはPR大川創太郎に替えて千葉太一。(後半7分)

しかし、スクラムからのサントリーのキックを受けてFBへガティがカウンターアタック。リコーが再び攻める。グラウンドの端までを使ったワイドなアタックで前進。22mラインを越え、さらにはトライラインも臨む位置まで運ぶ。CTBベイトマンがゴロキックを裏に蹴るが相手に入る。しかし直後のラックにFL武者大輔、NO8松橋がプレッシャーをかけるとサントリーに反則。リコーはスクラムを選択する。

左中間ゴールまで5m位置でスクラム。組み直しを経てリコーはオープンサイドに展開するが、サントリーが出足のよいディフェンス。ボールがこぼれサントリーに入るとキックアウトされる。またしても攻めきれず歯がゆい展開。リコーはCTB濱野を牧田旦に、FL武者をコリン ボークに入替。(後半15分)

 

2度のピンチを守りきったサントリーが攻勢に出る。22mラインの内側まで攻め込みアタックを繰り返す。しかしリコーも組織として、個人として、共に安定したディフェンスを見せ、LOブロードハーストマイケルらがラックでボールに絡み反則を獲るなどしてトライを阻んだ。SH髙橋に替わり山本昌太。(後半24分)

自陣脱出を目指すリコーだったが、フレッシュな選手を加えテンポを上げてくるサントリーはわずかな隙をついてゲインを見せる。WTB渡邊を松本悠介に入替。しかし、直後にSOロビンソンが出血で一時退出。渡邊はピッチに残る。(後半28分。ロビンソンは30分に復帰)

守るリコーにオブストラクションの反則。サントリーはPKでゴール前ラインアウトにすると、モールで左サイドを前進する。インゴールまで持ち込みグラウンディングを図るが、映像判定の後にノートライの判定。(後半29分)

5mスクラムから再び攻めるサントリー。リコーもCTB牧田らが懸命のディフェンスを見せよく守る。ボールを奪いキックでエリアを戻す場面もあったが、サントリーはすぐさま22mライン付近までゲインしリコーのピンチが続く。

 

PR眞壁を辻井健太に、HO森雄基を芳野寛に、LOブロードハーストを柳川大樹に入替。(後半35分)

リコーは中央でスクラムを得るが組み直しが続き、残り時間が減っていく。結果的にリコーがペナルティを獲ったときには38分を過ぎていた。PKで前進、自陣10m付近のラインアウトからリコーがアタック。全員でボールをつなぎじりじりと前進していくと40分経過のホーンが響く。

右サイドをFLディクソンが破りゲイン。22mラインを越え残り5m。さらにつないでゴールに迫る。ゴール前でHO芳野、SOロビンソン、SH山本らが鋭くギャップを狙うもサントリーが阻む。ボールがこぼれたが、その前にオフサイド。

 

リコーは右中間で組んだ円陣が解けると、スクラムではなく、PR辻井がボールを持ちモールを狙い敵陣に突っ込む姿勢をつくる。ラックとなりFWのピックゴーで勝負をかけるリコー。

 

しかし、サントリーのFLがラックの上からボールに手をかけると、まもなくホイッスルが響きレフリーの手が上がる——。ノットリリースザボールでボールはサントリーへ。これを蹴り出されノーサイド。最後に逆転のチャンスを迎えたリコーだったが、10-14で敗れた。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

素晴らしいグラウンドで、サントリーさんを相手に試合ができ本当によかったと思います。関係者の方々に感謝を申し上げます。

今日のゲームはディフェンスに関して言えば我々のラグビーができたのではないかと。そこは選手たちを称えたいと思いますが、アタックのところで少しミスが多かったです。トライに繋げることができたシーンがたくさんあったのですが、そこで獲りきれなかったことが、最終的なスコアの差につながったのかなと。課題も見えましたので、このあたりの細かなところを(リーグ戦が再開する)2週間でどれだけ詰めていけるかが僕たちのフォーカスになると思います。今日で言えばアタックのところ、コンビのところであったり、ハンドリングであったり、ブレイクダウンのところの精度であったり、そのあたりをしっかり詰めて行きたいと思っています。今日はありがとうございました。

【以上共同記者会見にて】

 

手応えは感じました。今までのサントリーに対するものとは違う感覚。感覚論になってしまって申し訳ないのですが、選手もそういうものを感じたんじゃないかと思います。今日はアタックの精度。獲れそうなところで獲らせないのがサントリーの強さでもあるんでしょうけど。十分スコアできそうなシチュエーションはたくさんありましたので。スコアしていればゲーム展開が大きく変わっていた可能性はある。

(だがトーナメントに向けて、この時点でサントリーのようなチームとこういう試合ができたことは大きい)すごくよかったです。トップリーグメンバーを使い試合をすることにはケガの恐れなど、考える部分もあったんですが、結果としていいプロセスが踏めたと思っています。悪いところも良いところもわかったので。

(メンバー選考からはセレクション、ポジションなどのテストなども行ったように見えた)そうですね。前節の試合で頑張った悠介(WTB松本)、FL柳川のような選手に対するさらなるセレクション。あとはPR千葉に関してのテスト。周りが全員トップリーグスコッドの中で、スクラムを組ませたかった。そこに関してはよくやったと褒めてあげたいですね。まだ満足はしてほしくはないですけれど。

それから10番(SOロビンソン)と15番(FBへガティ)のところ。シーズンの一番最初に考えていたプランでしたが、試す機会が少なかったので。ロビーは10番でもよかったと思います。

(インターバルのスケジュールは順調にこなしてこれたか)この1ヶ月のプランニングはコーチたちとしっかりしてきて、それに基づいて準備できてきたと思います。願わくばカップ戦でも結果がついてくるのが望ましいんですけどね。それでもやっぱり大きなケガ人を出さずにここまでこれたというのはよかったです。次節は今日プレータイムの少なかった選手。PR辻井やHO芳野、コリン(NO8ボーク)、それからアレックス(PRウォントン)が戻ってこれそうなのでそのチェックもできれば。悠介、それから今日良かったCTB牧田などにもプレータイムを用意することになるのかな。

CTB濱野大輔キャプテン

今日のマインドセットとして、やられる前にやる、ぼくらから仕掛けようということを掲げてやりました。アタックに関してはゲインライン、クイックボール、ここの精度をしっかりやれば、いいアタックができると。ディフェンスに関してはチョップタックル、しっかり低く入ること、そしてラインスピードを上げることを徹底的にやろうということを話していました。

プレッシャーをかけられた部分はあったんですけど、アタック、ディフェンス共に細かいミスが出たり、精度に欠けていた部分があったので、しっかり改善してレベルアップしていけたらと思います。

【以上共同記者会見にて】

FLエリオット ディクソン

この2週間でやってきたことを見せるいいチャンスだと思っていました。ディフェンスはよかったと思います。特に後半の22mラインの内側に入ってからのディフェンスですね。ただキックオフへの対応のような、小さなところのミスが大きく響いた試合でした。ボールを何回か落としてしまった場面があった。ただ、大きなミスではないです。修正できるもの。

アタックは強いフェイズを重ねることができていました。それでも獲りきれなかったのは、小さなミスが原因。これも修正できるものです。アタックの幅という観点ではとてもハッピーだったと思います。オフロードパスがつながったり、ラインブレイクができたり、前に進むようなラグビーができていた。それは僕たちに必要なことだと思っています。

(このチームにおいて考えている自分の役割は?)求められているのはフィジカルだと思っています。それから楽しむことだね。ゲインラインを越えたり、ビッグタックルを決めたり。そういうことによって、試合の流れを変えるような役割だと思っています。(今日も苦しい場面でのキャリーやタックルでチームを勇気づけていた。そうした役割は誰かに言葉で求められた?)いえ、自分で考えたことです。スーパーラグビーからやってきた自分ですが、心からリコーのために尽くしたいと思っています。神戸製鋼戦でもいいパフォーマンスを見せられるように頑張ります。

WTB小松大祐

今日は神戸製鋼戦に向けて戦術面でチャレンジした部分もありました。全部がうまくいくとは思っていなくて、ミスも出ると思っていました。ただ想像していたよりも手応えはつかめたように思います。ただ、やはりミスをしてしまうとこういう試合には勝てない。ここからは小さなミスでもトライに繋げる相手との試合になっていくので直していきたいですね。

(若手も成長を見せる中、出場機会をつかんでいる)いえいえ、僕はチームのやっていることをとりあえずしっかりやろうとしているだけ。あとはできるだけミスをしないように。僕から発信したこともあったんですけど、今のメンバーは言わなくてもわかっているので。(成長を感じる?)そうですね。リーダー陣も素晴らしいのですが、それ以外にもそういう役割を果たせる選手が増えましたね。ミーティングもいろんな意見を出し合っているし、選手でいろいろなことを決めていけるようになってきています。

結局ゲームに出るのは選手。試合の中でもシチュエーションは変わっていく。それに対応するには、何をやりたいかが選手同士で共有できていることが大事。そうなっていくために、CTBティム(ベイトマン)SO/FBロビー(ロビンソン)なんかがすごくいい影響をチームに与えてくれている。若い選手とキャリアを重ねた選手で伝え方を変えたりもしていて、ただ上から言ったりするようなこともないんですよね。若手選手はすごく勉強になってるんじゃないですかね。というか、僕も勉強させてもらっています。

今は「選手でやっている」という感覚がすごく強い。積極的にその中に入っていくことが求められるんです。入っていかないとおいていかれてしまうという感覚がある。(強いチームのカルチャーがつくられつつある)そう思います。だからあとは結果。結果を出したいですね。

WTB松本悠介

(2試合続けてチャンスを得ている)今シーズンはリーグ戦では出場できなかったので、チャンスはカップ戦だと考え準備はしっかりしてきました。(準備の成果は出せているのでは?)出せているところもありますが、まだ改善が必要なところもありますので、試合で出た課題をしっかり消化して、次の試合に繋げていけるようにやっています。

(NTTコム、サントリーとアタックのよいチームとの対戦が続いた。やはりまずはディフェンスという意識?)そうですね。やっぱり自分の中でもディフェンスは大切だと思っているので、そこは集中してパフォーマンス出していかないとトップリーグのレベルでは出場できないと思っているので、意識している部分です。ディフェンスはできている部分はあると思いますが、さらに改善して。Honda、神戸製鋼ともいい試合ができるようにします。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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