【Review】トップリーグ カップ戦 第1節 vs NTTコミュニケーションズシャイニングアークス

2018.11.14

試合の入りで失点を重ねる苦しい状況から、立て直して2トライ

今シーズンより行われることになったジャパンラグビートップリーグカップ。リコーはサントリーサンゴリアス、NTTコミュニケーションズシャイニングアークス、Honda HEATと対戦するプールAに入り、リーグ総合順位決定トーナメントまでの3週間を使って3試合を戦う。

 

初戦となったNTTコム戦には、PR西和磨、SO堀米航平、CTBキムソング、WTBネタニ ヴァカヤリアといった新人、新加入選手が先発メンバーに入るなどフレッシュな布陣となった。ゲームキャプテンはリーグ戦でも存在感を示しつつあるSH髙橋敏也が務めた。

 

気持ちの良い晴天に恵まれた岩手・盛岡市のいわぎんスタジアムで、NTTコムのキックオフで試合が始まる。リコーはハーフウェイ付近のディフェンスで相手のノックオンを誘うと、スクラムをキープしアタック。激しいディフェンスに遭うが後方のスペースを見たSH髙橋が冷静にキックを蹴りタッチに出す。敵陣22mライン付近のラインアウトにする。

NTTコムはこれをキープしすかさず展開。リコーはディフェンスの対応が遅れ13番の突破を許す。自陣から80m近く独走を許し左中間インゴールへ持ち込まれトライ。WTBヴァカヤリアがインゴール寸前で追いつきノックオンさせかけたが届かず。CVも決まり0-7。(前半5分)

 

次のスコアもNTTコムに入る。NTTコムはリコー陣内の22mライン手前のラインアウトからアタックしワイドにボールを動かして攻める。リコーはディフェンスで後手に回り後退すると、右中間に2番がトライ。CVも成功し0-14。(前半12分)

リコーは再開のキックを右中間深めに蹴り込む。これをキャッチした11番が自ら前方へ走る。チェイスしたリコーディフェンスタックルが甘く、突破を許すとリコー陣内10m付近までゲインする。左中間から右に展開。折り返したボールが再び11番に入ると、左中間を抜けてトライ。CVも決まり0-21。(前半15分)

NTTコムの攻勢は続く。前半20分にも左中間ゴール前のスクラムを押し込むと右へ展開。10番がギャップを突きゴールに迫るとラックサイドを9番が抜けて右中間にトライ。CVも決まり0-28。(前半22分)

 

この後、ボールを保持することもままならない時間が続いたリコーだったが、ようやくアタックの形をつくる。リスタートキックの蹴り返しをキャッチ、キャリーしてハーフウェイ付近からフェイズを重ねていく。

 

手堅くつなぎ、NTTコムディフェンスのギャップを狙っていくと、鋭く走り込みパスを受けたHO大西将史が中央を抜けて22mライン付近へ。フォローしたSH髙橋がオフロードパスをうまくさばいてさらに攻める。22mラインを望む位置でフェイズを重ねるが、ブレイクダウンでボールに仕掛けられ、こぼれたボールがNTTコムに入る。

すかさずNTTコム12番がリコー陣内深くにキック。これをチェイスした選手と自陣に戻るWTBヴァカヤリアとの競り合いになる。際どいプレーとなったがボールはNTTコムに入り15番が押さえてトライ。CVは外れたが0-33と点差はさらに広がった。(前半26分)

 

再開後、リコーがもう一度アタックの形をつくる。LOロトアヘアポヒヴァ大和、NO8柳川大樹らが軸となりディフェンスに挑んでいく。22mライン付近のラックでNTTコムがハンドの反則。PKを蹴り出してリコーはゴール前ラインアウトを得る。ようやくトライのチャンスを迎える。(前半32分)

 

NTTコムに反則が続き3度目となるラインアウトからリコーがゴールに迫る。映像によるグラウンディングの確認が行われたが認められず、リコーの5mスクラムでの再開となる。(前半34分)

やや押し込まれていたスクラムだが、ここは押しをみせる。NO8柳川が左へ出しWTBヴァカヤリアへ。左中間にラックをつくりFWが攻め立てると最後はルーキーのPR西がグラウンディング。リコーらしいセットプレーからのアタックでトライを獲りきった。CVもSO堀米が決めて7-33。リコーが反撃を開始する。(前半36分)

 

再開後、リコーが自陣でボールを回すとNTTコムにホールディング。PK、ラインアウトを経てさらに攻めると今度はオフサイド。前半の最終盤、リコーは相手の規律を突いて22mラインを越えて攻め込む。

 

ラインアウトを奥で合わせ中央でアタック。LO小山智聲がサポートを受けながらキャリーして前へ。SH髙橋がギャップに走り込んだCTBキムにフラットなパスを通すと、見事にギャップを抜けて右中間インゴールに達しトライ。CVも決まり14-33とした。新加入選手の連続トライでリコーが点差を縮めたところで前半が終わる。

 

ディフェンスで後手に回り、NTTコムのアタック力を発揮させてしまう試合の入りとなったが、アタックに回った際にはリコーも光るものを見せた。

アタックでは見せ場つくるも、試合の流れを変えるチャンスでスコアを許す

リコーはWTBヴァカヤリアを松本悠介に、PR吉村公太朗を千葉太一に入れ替えて後半へ。

SH髙橋の冷静なゴロキックで敵陣侵入を果たすと、ラインアウト直後のプレーで空中にいたFL福本翔平にNTTコムがタックルしてしまうペナルティ。PKでゴール前に進出したリコーはラインアウトモールでトライを狙う。

 

ゴール間近でラックに移行。そこからFW、BKが一体となった連続攻撃を見せる。FWの力強さ、SH髙橋、SO堀米、CTB木上鴻佑らのコンビネーションでNTTコムディフェンスを破りにいく。しかし、CTBキムが孤立したのを見逃さずNTTコムがジャッカル。キックアウトされる。このプレーでCTBキムが負傷。替わって浜岸峻輝が入る。(後半4分)

 

押し戻され、10m付近のラインアウトから攻めるリコーだったが、NTTコムの前にでるディフェンスでプレッシャーを受ける。さらにCTB木上のサポートにいったSO堀米が相手選手にクリーンアウトされた際に負傷し、替わって 米村龍二がピッチへ。リコーはSOに木上、CTBに浜岸、松本、 WTBに深津健吾、米村が入る布陣で対応する。(後半5分)

 

立て続けにアクシデントに見舞われたリコーだったが勢いは保つ。自陣浅めのディフェンスでNTTコムのパスをSO木上がインターセプト。WTB深津につなぐと敵陣22mライン付近までゲインを果たす。

このプレーを起点にアタックを継続。LOポヒヴァ大和、NO8柳川が周囲を鼓舞するようなキャリーを見せると、若い選手も勇気を見せディフェンスに挑んでいく。スタンドのファンが大きな声で後押しする。

 

LO小山へのハイタックルで得たPKをタッチに出し、リコーは右サイドのゴール前ラインアウトからトライを狙う。モールは組めなかったが、左中間にラックをつくるとトライを狙って猛然とキャリーしていく。NTTコムにオフサイド。リコーはタップしてクイックリスタートを狙うがこれが大きく跳ねてしまいボールは密集の中に。動かなくなり左中間ゴール前、リコーの5mスクラムでの再開となる。

 

NTTコムが集中力を見せて押し込むがなんとか耐えるリコー。ここで冷静なプレーを続けるSH髙橋がスクラム斜め後ろに蹴り出されたボールを拾うと、スクラムの左サイドを突き、ギャップに滑り込んで左サイドのインゴールへ持ち込みトライ。

CTB浜岸の蹴ったCVは外れたが、攻め続けたリコーが前半からの3連続トライで19-33と詰め、2トライ2ゴールで追いつく点差とした。(後半12分)リコーはPR西に替えて藤原丈宏。(後半14分)

 

しかし、試合を大きく左右すると思われた次のスコアはNTTコムへ。敵陣浅めの位置のスクラムでリコーに痛いペナルティ。PKでリコー陣内侵入を果たしたNTTコムは、10mライン付近のラインアウトから攻める。ワイドにボールを動かすとリコーディフェンスにギャップが生まれ出し、左中間を抜けた10番がトライ。CVも決まり19-40。(後半18分)

さらに、直後のリスタートキックをキープしたNTTコムは、リコーディフェンスのポジショニングを見て外に展開。15番が左サイドのスペースを突いて自陣から一気にゲインする。外の8番に出したパスを戻させてディフェンスをかわすと自ら左中間にトライ。CVは外れたが19-45。

 

トライの後、リコーはHO大西を小池一宏に、FL赤堀龍秀を永井達啓に入れ替える。(後半20分)

 

NTTコムが主導権を握る展開が続き、リコーは自陣でディフェンスに追われる。CTB浜岸が出血しヴァカヤリアがピッチに戻り対応する。ヴァカヤリアがWTB、木上がCTB、米村がSOの位置に入る。

 

しかし、左サイドのゴール前ラインアウトからモールでトライを奪われ19-50。CVも決まって19-52。(後半27分)

 

リコーはLO小山に替えてジェイコブ スキーンを入れ最終盤へ。(後半30分)リコーは自陣でのプレーが続いたが、相手のラインアウトが乱れるとFL福本がボールを確保し前へ。これと直後のスクラムで奪った反則を足がかりに自陣脱出を果たす。

 

HO小池がスローするラインアウトからリコーが攻める。反則を得て22mライン付近のラインアウトにすると、一度相手に弾かれたが、こぼれ球を奪い返しリコーがアタック。22mライン付近でがむしゃらに攻める。CTB松本、FB高平拓弥がゲインラインを切っていく。

 

再びの反則で得た左サイドのゴール前ラインアウトでNTTコムが反則。FKを得るとNO8柳川が即座に仕掛け、右中間インゴールにトライ。FB高平が蹴ったCVは外れたが、最後に意地を見せ24-52。(後半38分)

 

まもなくホーンが響く。NTTコムはトライを狙い攻め続け、リコーも集中力を見せてボールを奪いにいく。NTTコムのパスが乱れノックオンが出たところでノーサイド。若手選手を多く起用し挑んだリコーは、アタックで見どころをつくったが、序盤の失点が響き24-52でトップリーグカップ初戦を落とした。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

若い選手たちが、どこまでトップリーグのレベルで通用するか、またプレーオフに向けたセレクションという意味をもってこのゲームに臨みましたが、NTTコムさんの素晴らしいアタック力で立て続けにトライを奪われてしまって苦しい試合展開になってしまいました。

 

ですが、試合の途中に選手たちが集中してトライを獲って返す場面もありましたので悪い部分だけではなかったと思っています。この経験を活かして次への準備をしていきたいと思っています。【以上共同記者会見にて】

 

アタックは良かったですね。(試合の入りはディフェンスでパニックというか……)バタつきましたね。やりたいディフェンスができなかったなと。もともとアタックは強いチームですが、気持ちよくラグビーをさせてしまいました。ラインディフェンスを上げて、相手が考える時間を奪って。そういうディフェンスからアタックしていく戦いがしたかったのですが、待ってしまいました。そうすると勢いが出てしまうので。あの時間はしんどかったですね。

 

(前半の終わりから後半の頭は、SH髙橋、SO堀米などを中心に試合を立て直しにいった。収穫だったのでは)トップリーグを経験している選手はああいう状況の中でも、次に何をすればいいかっていうことに目を向けて、しっかりとチームをコントロールしていたと思います。あの時間は評価できる。トップリーグでしか得られない経験、練習試合ではないテンション、こういう状況の中でプレーをすると、そこで通用する選手、まだまだ頑張らなければいけない選手が見えてくる。そういう意味の収穫はあったかもしれません。

 

セットプレー、ディフェンス、ここで誰が出ても同じようなパフォーマンスを出そうというようなメッセージで臨んだんですけど、まだまだチャレンジすべき領域だなと。(若手フロントローなどは学ぶものも多かったのでは)いい経験してくれたと思いますよ。自分たちに足りないものがなんなのか肌で感じたでしょうし。彼らも悪いところばかりではなくて、フィールドプレーなどについてはボールキャリーなど含めてかなり良かったと思います。ただ、それだけではトップリーグのフィールドに立ち続けることはできない。それを感じたと思う。この経験を活かして成長してほしい。次にチャンスを掴んだときのパフォーマンスに期待したいですね。

ただ、本来はこういうゲームに勝てるチームを目指しています。僕らスタッフにとっても今日の敗戦はいいモチベーションになる。相手はトップリーグを経験しているメンバーが多かったので、こういう試合に勝てるチームにしたい。誰が出ても変わらないラグビーのできるチームに。

 

SH髙橋敏也ゲームキャプテン

リコーとしては、NTTコムさんのアタックに対し、しっかり前に出てディフェンスをして、アタックではボールキープをしていくことで勝利を目指したのですが、ひとつのタックルミス、キャリーでのミスをスコアに繋がれてしまいました。精度高くやっていかないとこういうステージではスコアされてしまう。もっと厳しくやらないといけないなと感じました。ただ、ボールキープすればスペースも見えてきたので。練習でもっと精度を上げて、まだカップ戦は続くので、いいプレーをしてプレーオフに繋げていけるようなゲームをしていきたいと思います。

 

(33点を獲られた後、流れを奪い返しかけた。ゲームメイクに関しどんなことを考え話していたか)まずは敵陣で戦おうと。この試合ボールをキープしてアタックし続ければスペースが見えてくるということがわかっていたので、ボールをキープしてアタックを継続しようというコミュニケーションをチーム全体でとっていました。(それができた時間もあった)そういう時間帯もありました。スコアもできましたし。でもその前の段階、敵陣に入る前にプレッシャーを受けてしまったので。そういうところが反省です。【以上共同記者会見にて】

PR西和磨

セットプレーでプレッシャーを受けました。80分間の試合の中で、修正があまりできなかったというのは反省すべき点なのかなと。コミュニケーションはとっていたのですが、大きな改善策というのが見えてこなくて。曖昧なまま時間が過ぎていってしまった。

 

トップリーグとの差を感じることができたし、リコーのスクラムというものを自分たちに落とし込んで、相手に合わせるではなく、いつも自分たちのスクラムを出していけたらいいなと感じました。

自分としてはセットプレーは大きな課題ですね。(フィールドではいいプレーもあった)そこは手応えはある部分で、特にディフェンスは自分の強み、タックルはいけるほうだと思っていたのですが、今日はセットプレーのほうに頭がいってしまって、そこまで積極的にいけなかった。強みを発揮するためにも、セットプレーを安定させていきたいです。

HO大西将史

(アタックは良かった)そうですね。フェイズを重ねていければ、自分たちのアタックができると感じたので、キープザボールというところを意識して前に出ようと。ディフェンスは課題かなと感じました。まず1対1のタックルを外され、それからディテールの部分、システムやチームとしてやることができなくて後手に回ってしまったかなと。BKとFWのコネクションのところもコミュニケーションが取れていなくて、ディフェンスシステムが回っていない状況があったので。リコーの強みであるディフェンスを崩されてしまうとゲームにならないですね。

(スクラムは)僕もコントロールしきれなかった部分があり課題ですね。強かったです。まずセンターラインの部分で獲られていることがあったのでそこは改善しようと。ギャップの部分をヒットで獲られていたので。

(いいキャリーなどもあった。セールスポイントでもある)そうですね。NTTコムさんに対してあのアタックができたのは自分の中で自信になりました。プレーオフでもチャンスを得られるように。そこはターゲットにしていきたい。カップ戦でどれだけアピールできるかだと思っています。

 

NO8柳川大樹

(結果は残念だがいいトライが獲れていた)リコーというチームのカラーがトライには出ていたと思います。
(気持ちも前面に出していたのでは)そうですね。アピールの場なので。

(チャンスを待つという経験は少ないほうでは。気持ちのつくり方、保ち方などがうまくいっている?)今年はそういうところではすごい勉強なっているというか。ノンメンバーの選手たちの気持ちもわかるようになってきています。そんな中でも、準備してきたことは出せたと思っています。これから大事なゲーム控えていますので、これまで通りいい準備をし続けたいと思います。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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