【Review】トップリーグ 第5節 vs クボタスピアーズ戦

2018.10.10

CTBベイトマンの華麗なトライで先制。しかしハイボールを巧く処理され逆転許す

連勝で勝ち星が2つ先行する状況をつくりリーグ戦は後半へ。第5節の相手はクボタスピアーズ。昨シーズンは対戦がなく、一昨年12月の秩父宮ラグビー場(18-21)以来の対戦となった。

 

夏のような日が差し、また湿度も高い奈良県・天理親里ラグビー場。午後1時、クボタのキックオフで試合が始まる。互いにキックを敵陣に蹴り込み、チャンスを狙っていく。

 

前半4分、自陣10m付近で守るリコーにノットロールアウェイ。ほぼ正面の位置からクボタ15番がPGを狙うが、これは左に外れた。

 

互いに攻撃の端緒を探る中、リコーは自陣10m付近でSOブライス ヘガティがキャッチしたボールをFWがキャリー。ハーフウェイ付近で、この日インサイドのCTBに入ったティム ベイトマンにつなぐと、鮮やかなステップでディフェンスをかわし敵陣深くに入っていく。一度つかまれかけたものの、うまく外し右中間インゴールへ到達。華麗なランニングでリコーが先制に成功する。CVはSOヘガティが決めて7-0。(前半9分)

 

リスタートキック直後のラックからこぼれたボールをクボタが確保。リコー陣内深くでアタックを仕掛ける。ここはクボタにノックオンが出てボールを奪い返す。この日最初のスクラムはほぼイーブン。確実にボールを出したリコーはキックでエリアを取り戻す。

 

クボタがハーフウェイ付近のマイボールラインアウトをオーバー。転がったボールがリコーに入ると、パスをつなぎLOジェイコブ スキーンへ。スキーンが抜けて敵陣22mライン手前までゲインする。駆け付けたSH山本昌太がピックしてディフェンスの背後を狙ってキックを蹴るが、22mラインの内側で直接BKにキャッチされる。クボタはドロップアウトを蹴り出し、リコー陣内10m付近まで押し戻す。(前半13分)

 

リコー陣内浅めの位置での攻防で、タックルにいったPR柴田和宏が脳震とうの確認で一時退出。替わって大川創太郎が入る。(前半16分/柴田は26分に復帰)

 

リコーは自陣ゴール前のラインアウトを確実にキープすると、プレッシャーをかけてきたクボタにオフサイド。このPKをタッチに出し前進を狙ったがタッチを割らない。キャッチしたクボタがリコー陣内深くにキックを上げる。この争奪で跳ね上がったボールがクボタに入り、22mライン付近から再度アタック。リコーのピンチになりかけたが、ラックのボールを取り上げたところにプレッシャーをかけクボタにノックオン。

 

リコーは自陣でのスクラムを押す。ボールを出すとCTBベイトマン、SOヘガティ、WTB渡邊昌紀とつないでラインブレイク。ハーフウェイまで戻す。一進一退の展開が続く。(前半19分)

 

ハーフウェイ付近のラインアウトからクボタがモールを組む。リコーはしっかり押し返しこれを止める。するとクボタがボールを大きく蹴り上げ、リコー陣内22mラインの内側へ。これがリコーに収まらず、チェイスしたクボタ10番に入る。

 

右中間から即座に展開。12番、2番、13番とつなぎ、ラストパスを受けた11番が左隅に飛び込んでトライ。CVは外れたが7-5とクボタが点差を詰めた。(前半24分)

 

リコーは再開後も自陣に侵入されるが、アタックを仕掛けるクボタにプレッシャーをかけノットリリースザボールを奪う。PKで前進、敵陣10m付近のラインアウトでクボタがバックスラインオフサイド。右中間から40m強のPGを狙い成功。リコーがすかさず獲り返し10-5とした。(前半29分)

 

さらに前半33分、リコーは自陣でボールを回すと、パスカットを狙った相手ディフェンスに故意のノックオンの判定。PKを蹴り出し敵陣22mライン付近まで前進する。

 

大きなチャンスとなったが、ラインアウトをキャッチした後のラックでボールがクボタへ。これを大きく蹴り出され、再びハーフウェイ付近に戻された。さらにリコーにディフェンスでのラインオフサイド、ハイパントの落下点付近から下がらずプレーに参加してしまうオフサイドと反則が続き、自陣侵入を許す。

 

左中間、22mライン内側でのクボタスクラム。8番が右に持ち出しサイドを突く。テンポよくボールをつなぐと、そのまま中央に10番がトライ。FLブロードハーストマイケルが阻みにいくも惜しくも届かなかった。CVも決まりクボタが10-12と逆転する。(前半40分)

 

終了間際の痛い失点を喫したリコー。再開のキックを蹴るが、クボタが確保。キックアウトして前半が終わる。

点差詰め逆転狙った最終盤。ハンドリングエラーでアタックの機会つくれず

リコーはメンバーの入替は行わず後半へ。後半2分、ラックでFLブロードハーストが奪い取ったボールを素早くさばいたSH山本が、直後にタックルを受け倒れる。一度プレーに戻るが、ターンオーバーしたボールを蹴り出した後に入替となる。SH山本に替わり髙橋敏也。またPR柴田も大川に入替。(後半5分)

 

暑さによる発汗からか、互いにボールが手につかず、深く攻め込む場面は生まれず一進一退の展開が続く。しかし、冷静なタッチキックでリコー陣内に侵入し、ラインアウトを奪ったクボタが22mラインを突破。リコーのゴール前でチャンスをつかむ。

 

裏のスペースを狙ったキックをうまく処理し決定機にはさせないリコーだったが、自陣から攻め上がろうとしたFBロビー ロビンソンが、タックルを受け倒れた際、リリースしたボールを再度ピックした直後にボールにかぶさってしまいノットリリースザボールの判定。クボタはショットを選択。正面やや左、30m強のPGを決め10-15と点差を広げた。(後半16分)

 

リコーは3人を入替。LOロトアヘアポヒヴァ大和をエリオット ディクソン、NO8コリン ボークを武者大輔、CTB牧田旦を小松大祐へ。

 

この後、自陣ラインアウトをキープしたリコーは、CTB小松がアタックを仕掛ける。しかしブレイクダウンで激しく絡まれノットリリースザボール。クボタは正面やや右、約40mのPGを狙うがこれは外れた。リコーはPR眞壁貴男に替えて辻井健太。(後半20分)

 

リコーはラックでの相手の反則で得た自陣からのPKで前進。敵陣22mライン手前からラインアウトモールで前進を狙うが、激しいディフェンスで阻まれる。ボールを出しフェイズを重ねていくと、クボタがまたもラックで反則。左中間、約25mのPGをSOヘガティが決めて13-15。リコーが詰め寄る。(後半24分)

 

リスタートキックをNO8松橋周平が力強く前に運ぶ。横にずらし、もう一度ラックにすると、キックを狙い後方にパス。しかしここでノックオン。クボタのスクラムとなる。

 

クボタは右中間、ゴール間近のスクラムから左へ展開。リコーのディフェンスが揃う前にクボタがギャップを鋭く突き、19番が左中間にトライ。CVも決まり13-22と再び点差が広がった。リコーはHO森雄基に替わり芳野寛。(後半27分)

 

リコーもリスタートキックからチャンスをつくる。右中間浅めに蹴ったボールをFLブロードハーストがうまく後方にはたいて確保すると左へ。中央でLOディクソンが激しい突進を見せる。さらに左へつなぎHO芳野がキャリー。

 

これに対しクボタがオフサイド。左中間、約40mのPGを SOヘガティが成功。16-22と1トライ1ゴールで逆転できる差に詰め、ラスト10分に臨む。(後半29分)

 

しかし、その後は敵陣に入っていく糸口をなかなかつかめないまま時間が過ぎていく。後半33分、WTBロトアヘアアマナキ大洋に替わり堀米航平。

 

この入替の後、ようやく敵陣10mでのスクラムを得るが、直後のラックで激しいプレッシャーをかけたクボタがターンオーバー。だがキックアウトを狙ったところにFLブロードハーストがチャージに成功。めまぐるしい展開。

 

このボールを確保できればリコーにとって大きなチャンスになると思われたが、両チームが猛然と詰め、確保したのはクボタ。これをキープしリコー陣内に向けて大きく蹴り込む。

 

再び自陣に戻されたリコーは、後半降り始めたにわか雨の影響か、ハンドリングエラーが相次ぐ。後半38分に相手にスクラムを与えると、このボールを約2分にわたり丁寧に守られる。ホーンが鳴った瞬間にパスアウト。タッチに蹴り出されノーサイド。

 

3連勝を狙ったリコーだったが、16-22で痛い敗戦となった。しかし7点差以内の敗戦であったため勝ち点1を獲得。ホワイトカンファレンス3位をキープしている。

 

同カンファレンスは3位から6位までが勝ち点で4ポイント差にひしめく大混戦となっており、優勝を決するトーナメントに進める4位に入るには、残り2戦の結果はもちろん、内容も重要となってくる。今シーズンのリコーの真価が試される2試合となる。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

大事な試合を落としてしまったことが非常に残念です。今日はクボタさんのプレッシャーが厳しかった。非常にいいラグビーをされたと思います。我々としては簡単なハンドリングエラーやミスで自滅という形が多かった。後がない状況ですので、残り2戦、すべて勝ちにいくという気持ちで準備していきたいと思います。

(試合を通して、戦っていて何か違うなと思ったことはあったか)いや、相手がやってきたことは想定していたこと。試合中に特段感じたことはない。やりたいことができなかったというのが大きいと思います。ハンドリングエラーであったり、ボールを持ち込んだ際のミスであったり、ターンオーバーが前半だけで10を超える状況でしたので。【以上共同記者会見にて】

 

今日は相手がやりたいことを全部やらせてしまったということ。今シーズンの中では一番うまくいかなかったゲームでした。でもチャンスはあったと思います。前半は相手のラインアウトも安定していない中で、先制のトライが獲れて。でもミスに尽きますよね、今日は。

(ラインブレイクの直後などにミスが出てしまった)相手もジャッカルが上手な、ブレイクダウンでしつこく絡んでくる選手が多くいて、ラインブレイクしてもサポートが少しでも遅れると、球が出せず反則につながるということもありました。イーブンボールの獲り合いのところでも、試合が進むにつれ相手のほうに奪われるケースが増えていったように思います。アンラッキーな面もありましたが、我々の執着が薄くなったところもあったのかなと。いずれにしても自分たちで首を絞めたということ。

(SH髙橋敏也が長い時間プレーをした。安定感を見せたのでは)これも一つの経験ですね。昌太(SH山本)のアクシデントもあったんですが、よくやったんじゃないですかね。こういう経験を増やし、レベルアップしてSH中村(正寿)も含めて競争していってほしい。(次節以降CTB濱野大輔は?)戻ってくると思います。

もう後がない。やるしかないですよね。このままドロップしていくか、もう一度気持ちを奮い立たせてやるか、自分たち次第。振り返ったとき、この負けを通じて成長できたと思えるようにしたいですね。自分たちを信じて戦います。

FL/NO8松橋周平ゲームキャプテン

今日はありがとうございました。今日はただ単に、うちよりもクボタさんがいいラグビーをしたのだと思います。やりたいラグビーをさせてしまった。1週間いい準備はできていました。ただ、それを試合でやらなければいけなかった。それができなかったのが今回の敗因だと思います。

こういう場面は、チームが崩れてしまうピンチでもありますが、逆に這い上がってさらに成長するチャンスでもあると思います。後者であるために、もう一度一丸となっていくつもりです。【以上共同記者会見にて】

 

明らかにクボタさんのほうがいい動きをしていて、いいラグビーをしていました。それでも最後は6点差まで詰めたわけですが、そうなったときにどういうアタックをすればいいのか、どういうエリアを獲らなければいけないのか、チームで同じページを見れていなかった。あの場面でボールを運ぼうとしたところに、クボタさんがプレッシャーをかけられた。あそこは相手を背走させないといけない。そういったところの意思決定をもっと落ち着いてできるようにしたいですね。それができていれば、勝てていたようにも思います。

SH髙橋敏也

個人的に意識したのはテンポアップとディフェンス。アタック、ディフェンス共にオーガナイズして、チームをしっかり動かせるようにというイメージでした。メインはテンポアップですね。でも、なかなかいいポジショニングがとれなくて、中盤で回しすぎたり、ミスが出たりして厳しい展開になりました。

(前半を見ていて感じたことは?)自陣でプレーすることが多かったので、もう少し敵陣に入れればと。でも後半もリードを許した状況でハーフウェイ付近でアタックを仕掛けてしまった。あそこでもう一回敵陣に入ることを意識したほうがよかったというのが反省です。相手のFWをもっと背走させて、自分たちのエリアでプレーできていたら。今日の自分の役割は、最後点数を上回って試合を終えるということだったので。もう少しリスクのないところで戦うべきでした。

 

FBロビー ロビンソン

今日は試合をマネジメントできなかったように思います。ラインブレイクもできていたし、チャンスは多くあったと思いますが、すべてのチャンスからトライを獲りにいこうとしすぎたのかなと。プレッシャーをビルドするというよりも、トライを獲りにいってしまった感じ。

 

(そうなった理由は?)それはラインブレイクがあったから、というのもあると思います。これまでの試合でクリーンブレイクはそこまでなかった。それもあってエキサイトしてしまったのか、コンタクトに入ってからの50-50のパスが増えてしまった。

汗もかいていてボールはとても滑りやすい中で、コンタクトの前にパスをする、もしくはボールをキープする、というメッセージが伝わるまでに前半を費やしてしまった。(次節までに何か伝えていきたいことは?)やはりゲームマネジメントですね。ゲームをコントロールする選手たちで意識を高めていきたいです。

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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