【Review】トップリーグ 第2節 vs 東芝ブレイブルーパス戦

2018.09.11

試合の入りは東芝ペース。徐々に流れを引き寄せFWが仕留め同点に

接戦となった開幕戦を勝ちきり、目標に掲げた日本一への道を歩き出したリコー。第2節は東芝ブレイブルーパスとの対戦となった。一昨年(2016-17シーズン)10月のコカ・コーラウエスト広島スタジアムでの前回対戦ではリコーが33-28で勝利。今節は対東芝戦における連勝を目指すゲームとなった。

 

メンバーでは、初戦ではリザーブに回ったFL武者大輔、FB高平拓弥がスターティングメンバーに入るなどの変化があり、ディフェンスやキック処理での貢献が期待された。

 

まだ暑い駒沢オリンピック公園陸上競技場にホイッスルが響き、東芝10番のキックで試合が始まる。先に攻勢を見せたのは東芝。リコーが自陣から上げたハイパントのキャッチに失敗。東芝はリコーが弾いたボールを確保し一気に攻め込む。ここはリコーがすぐにディフェンスの陣形をつくり阻むが、その後も東芝の巧みなキックとキック処理に押され自陣を脱せない。

 

8分、再びアタックを仕掛ける東芝。リコーは22mの内側でディフェンスするが、タックラーがタックル後相手を離せずペナルティ。ほぼ正面の位置から10番にPGを決められ東芝が先制0-3。(前半9分)

 

リコーはリスタートキックをよくチェイスし、プレッシャーをかけ敵陣深めのラインアウトを得る。これをキープしてアタック。NO8松橋周平らがゲインを見せ前に出ていく。しかしボールをこぼすと、これを拾った東芝は13番が右サイドへキックパスを蹴りサイドチェンジを図る。

 

このパスを14番がしっかりキャッチし、前方のスペースに走る。10番、13番とつないでディフェンスラインの裏に出ると、そのまま13番が走りきってトライ。10番がCVを決めて0-10とさらに点差が開いた。(前半14分)

 

このプレーの後、脳震とうの疑いでPR柴田和宏がHIA(Head Injury Assessment)で一時退出。替わって大川創太郎が入った。(柴田は前半24分に復帰)

東芝の勢いはなおも続く。リスタートキックを確保するとFWがいきなりビッグゲイン。リコー陣内深くに攻め込む。しかしここはノックオンでリコースクラムに。リコーは前節からのスクラムの安定感を維持し、キックでのエリア奪取を狙っていく。すると東芝に反則が2つ続き、リコーはゴール前でのラインアウトのチャンスを迎える。(前半20分)

 

モールで押すリコー。右サイドでじりじりとゴールに迫り、中央でピックゴーを繰り返そうとするが、ボールがこぼれターンオーバー。このボールを使って風下の東芝が自陣から攻める。鋭いキャリーでゲインラインを突破していくが、ハーフウェイを越えたあたりでLOジェイコブ スキーンとFL武者がランナーを捕まえノットリリースザボール。PKを蹴り、ゴールまで10mほどの位置で再びラインアウトを得る。(前半25分)

ここもラインアウトモールを粘り強く押す。中央で突破を狙うと東芝にオフサイド。またもラインアウトからのモール。崩れてラックに移行したが左中間でピックゴーを繰り返す。低い姿勢で確実に押し込んでいくとインゴールに到達し、NO8松橋がグラウンディング。力でトライを奪って見せた。CVも決まり7-10。(前半28分)

前半の終盤はめまぐるしい展開に。リスタートキックからまたも攻め込んだ東芝に対し、リコーはディフェンスで反則を奪い押し返す。自陣から攻め直す東芝にプレッシャーをかけこぼれたボールを奪うが、直後のパスをインターセプトされ東芝12番が独走。しかし22mラインの内側でのパスが乱れトライにはならず。(前半34分)

 

前半37分、リコーはSOロビー ロビンソンの長いタッチキックで敵陣22mライン付近まで前進。さらに東芝にノックオンが出て、左中間でマイボールスクラムを得る。ここからキャリーを繰り返すリコー。東芝も強いフィジカルで止めてみせるが粘り強く継続。

 

我慢比べに勝ったのはリコー。東芝のラインオフサイドで得た22mライン手前、正面やや左の位置のPKでショットを選択、成功し10-10。前半終了直前にリコーが追いつきハーフタイムへ。(前半42分)

FWとBKが一体となったアタックで3点差に詰め寄るも、集中力見せた東芝

リコーはメンバー入替を行わず後半へ。入りはリコーが主導権を握る。WTBロトアヘアアマナキ大洋のタッチライン際のランやCTBティム ベイトマンのパススキルなどで場内を沸かせながら攻めていく。PR柴田に替えて大川。(後半7分)

しかしハーフライン付近でボールを回して攻めたリコーにノックオン。東芝はほぼ左中間のスクラムから右に展開。ラックをつくると、21番がハイパントを上げる。飛び出した11番がキャッチ、倒れながらスピードに乗って走り込んだ13番につなぐと、そのまま抜け出して右中間インゴールへ。CVも決まり10-17。(後半9分)

 

後半12分、NO8松橋に替わりコリン ボークがピッチへ。再びリードを許したリコーは、攻守で猛然と立ち向かっていく。呼応するかのように東芝も荒々しく挑んでくる。勝負どころが近づき、試合は熱を帯びてくる。

 

リコーは自陣浅めの位置でオフサイド。40m弱、正面やや左の位置から東芝はPGを狙い成功。点差は広がり10-20。(後半15分)直後にFL武者に替わりロトアヘアポヒヴァ大和が入る。(後半16分)

リコーはリスタートキックの処理がまたも乱れ、自陣深めのラインアウトに。しかしここでLOブロードハーストマイケルが直接ボールを奪い取るビッグプレー。これを起点にリコーがアタックを仕掛け攻め上がっていく。

 

左中間のギャップをCTB濱野大輔が抜けゲインし敵陣に侵入。22mラインが見えてくるとSOロビンソンからCTBベイトマンへのオフロードパスが通りさらに前へ。ゴール前にラックをつくるとFWがピックゴーで勝負に出る。

 

FLポヒヴァ大和、LOブロードハースト、HO森雄基、NO8ボークらが勇敢に突っ込むと、最後は中央にWTBアマナキ大洋が、LOスキーンのサポートを受けながら頭をねじ込みグラウンディング。リコーが2つ目のトライを挙げ、15-20。CVも決まり17-20とした。(後半22分)

 

開幕節に続いて僅差のまま迎える終盤。リコーは円陣を組み、逆転に向けて意思統一を図る。だが、自陣から上げたハイパントからカウンターアタックを受けて自陣深くに入られる。しかしすぐ後のラインアウトでボールを奪い危機を脱した。(後半25分)

 

リコーはピッチの中盤からアタックを仕掛けると、右中間のギャップをPR眞壁貴男が抜けゲイン。ハーフウェイを越えるとSOロビンソンが左サイドにキックパス。FB高平を狙ったが、惜しくも手につかずノックオン。(後半27分)

 

自陣から攻める東芝にディフェンスでプレッシャーをかけるリコー。FLエリオット ディクソンらが荒々しく挑んでいく。SH山本昌太に替わり中村正寿。(後半29分)

 

互いに譲らず残り10分を切る。リコーはPKで敵陣15m付近へ。モールを押し前進。SH中村が小さく浮かせたキックをブラインドサイドに蹴ると東芝にノックオン。

 

左サイド、22mラインを越えたあたりのスクラムからリコーが攻める。SH中村がテンポよくボールをさばいていくが、東芝ディフェンスも高い集中力を見せ、FWの突破を許さない。ついにリコーがボールをこぼし、前方の選手がそのボールに触れてしまいノックオンオフサイド。逆転への大きなチャンスだったが、惜しくもトライならず。FB高平を木上鴻佑に(後半35分)、HO森を芳野寛に(後半36分)入替。

 

残り5分を切り、自陣で相手ボールのラインアウトという苦しい状況を迎えたリコー。ここは競らずモールの準備をして止める。展開する東芝。ディフェンスでプレッシャーをかけボールを奪いにいく。東芝も着実にボールをつないでいくが、残り1分という場面でノックオン。リコーは自陣15m付近でのスクラムに全てを懸ける。PR眞壁に替えて辻井健太。(後半39分)

 

この場面で見事なコラプシングを獲ったリコー。PKを蹴り出し、右サイド敵陣10mライン付近でのラインアウトを得る。ホーンが鳴る最中、リコーがワイドに攻める。左サイドのラックから展開し、右サイドへパスをつなぐが、鋭く前に出てきていた東芝11番のタックルを受ける。リコーが出しかけたパスが前方に転がりノックオン。

 

17-20のまま、薄暮の駒沢に笛が響きノーサイド。リコーはマイボールラインアウトを完璧にキープするなどセットプレーの精度の高さを見せるとともに、前節課題を残したディフェンス面も改善。しかし自分たちのキックの後に生まれたスペースを突かれたゲインなどが相次ぎ、苦しい戦いとなった。

しかしながら、7点差以内の敗戦で勝ち点1を積み上げ、ホワイトカンファレンスでの順位は4位としている。

監督・選手コメント

神鳥裕之監督

(セットプレーはかなり安定していた。時間が経つうちに流れがくるように思えたが?)セットプレーに加えて、ラックの近場を攻めてのトライを2つ獲るなど、ポジティブな面はたくさんあったのですが。強いて言うならエリアの獲り方。キックのあとのディフェンスの不安定さなどで相手を上回れなかった。9番からのコンテスタブルなハイパントで逆にピンチをつくってしまうシチュエーションが多かったので、そこを見直したいですね。コンテスタブルなキックを蹴って、相手のミスを誘って、ボールが獲れなかったとしても相手陣内からアタックを始めさせることを狙っているのですが、今日はそこでことごとく大きなチャンスにつながれた。そうなるとチームとしては苦しい状況でディフェンスが始まってしまうので。

(ディフェンスはFL武者の先発復帰などもあってよい方向に向かっていたのでは?)はい。ただチーム全体のディフェンスというところでは、簡単にコネクションのところを破られたりする場面があったので、もう少しですが改善が必要だと思っています。チームとしての理解、同じページに乗せるという部分ですね。

でも、ボールを持ってアタックすれば非常にいいシチュエーションが多かったですし、シンプルに攻撃する機会を増やせれば勝てていたと思います。それができなかったことを反省しなければ。とても悔しいですが、最後に笑えればいい。次のコカ・コーラ戦が大事なので、切り替えて立て直したい。

CTB濱野大輔キャプテン

今週、練習ではいい準備をして挑めたのですが、東芝さんのフィジカルとか、個の強さだとか、そこがひとつ上だったのかなと。僕らもフィジカルで勝負したんですけど、トライが獲れる場面で細かいミスが出て終わってしまったり、そういった細かいミスで負けた試合だったのかなと思っています。

(ディフェンスは改善も?)フェイズディフェンスはよかったのですが、ブレイクダウンの近場のピックゴーであったりとか、ラインアウトからのディフェンスであったりとかはまだ課題があると感じました。

(自分自身として何か意識したことは?)ディフェンスが悪かったので、しっかりディフェンスで役割を果たすこと。相手の12番はキーマンだったのでしっかり止めようと意識していました。あとはゲームコントロールについてロビー(ロビンソン)などに頼っているので助けられるように。まだまだ足りない部分があるので、(ティム)ベイトマンなどとコミュニケーションをとって、しっかりやっていければと思っています。

FL武者大輔

チームとして、ラインスピードを上げて、もっと前で止めて。ディフェンスからリズムをつくりたかったんですけど、相手のハードキャリー、またラック周辺でのピックゴーも多く、(ラインスピードを)上げたいけど上げらないという感じでした。もう少し自分たちから仕掛けてラインスピード上げられたら、違った展開になったかもしれないと思っています。

アタックも少しあわてている面があり、継続できず蹴ることになってしまったような場面もあった。継続していれば東芝さんは嫌がってミスやペナルティを出してくれていたのですが。いいところもあったのですが、それをしつこく続けることができなかった。そこが敗因じゃないかと思っています。まだ1敗なので。しっかり足元見て一戦一戦戦っていきます。

FB高平拓弥

(相手のディフェンスが)すごく前に出てきて、アタックの余裕がなかった。スピードに乗るアタックができなかったりして、リズムに乗らせてもらえなかった。そこでミスしたボールをそのまま蹴り込まれたりして、そういう展開でした。

(キックチェイスの改善はひとつテーマだったと思うが)僕たちがまだ選手がそろっていない段階で、あわててキックをしたりしていたので、考え方をスマートにやっていこうという話をしていました。チェイスラインができるまで蹴らないとか。前半はいくつかよくないプレーがありましたが、そのあとは落ち着いてできたんじゃないかと思います。(どっちに転がってもおかしくない試合だった)もったいない試合でした。

 

文:秋山健一郎

写真:川本聖哉

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