【Review】トップリーグ 第2節 vs NTTコミュニケーションズシャイニングアークス戦
2016.09.06
スクラムで優勢保ち2PG成功。しかし前半終盤に一瞬の隙を突かれる
リコーは開幕戦勝利という最初の目標をクリアし、今シーズンを自分たちの全てを出し切るシーズンとするための第一歩を踏み出した。第2節の相手のNTTコムは、昨シーズンの開幕戦で敗れ、長い連敗のトンネルに突入するきっかけとなった、リベンジを果たさなければならない相手。またトップリーグでも屈指のレベルにあるアタックに対し、リコーのディフェンスがどこまでやれるのかが試される試合でもあった。
霧雨の中、SOコリン ボークのキックで試合が始まる。NTTコムがタッチキックを蹴ると、リコーは敵陣浅めのラインアウトを危なげなくキープし最初のアタック。左中間で突破を図ったCTBアマナキロトアヘアに対し、相手8番の手が首にかかりハイタックル。
10mライン手前の位置からFBピータースダニエルがPGを狙う。ゴールのど真ん中を通しリコーが先制。3-0とした(3分)
NTTコム10番のリスタートキックで再開。リコーはボールを確保すると、NO.8松橋周平がボールを前に運び、SOボークが高くキックを上げる。敵陣10m付近でキャッチした11番がボールを運ぶと、ディフェンスにいったCTBアマナキの腕が首に絡んでしまいハイタックル。イエローカードが出され、リコーに14人で戦わねばならないピンチが訪れる。(4分)
この場面でリコーは踏ん張りを見せた。PKでNTTコムが22mライン付近まで攻め込んだが、スクラムを得ると押し勝ってペナルティを獲る。さらにキックでエリアを戻した。その後も、雨の中でもボールを動かし攻めるNTTコムに、2度自陣深くまで攻め込まれたが、リコーはしのぎきってCTBアマナキが復帰する。(16分)
互いにボールが手につかず、試合が途切れがちになった。リコーはスクラムで主導権を握る。敵陣10mライン付近、正面やや右のスクラムでコラプシングを獲ると、FBピータースがPG狙い成功、6-0。雨天の中リードを広げていく。(24分)
リコーは再び敵陣浅めでアタック。パスを奪おうとした8番の手にボールが当たって落ち再びリコーのスクラムに。これをまたNTTコムが落としペナルティ。ほぼ10mライン上、正面やや左の位置からPGを狙うが、これは外れた。(31分)
33分、外を攻めるNTTコムのランナーを止めに行ったWTB長谷川元氣がハイタックル。PKでリコー陣内10m付近に前進したNTTコムは、右サイドのラインアウトから展開し、13番、15番が左サイドタッチライン際を攻める。
このアタックで、ディフェンスの間隔が広がったのを見て、エッジから戻したボールを持った10番が中央のギャップを破る。FL武者大輔が足をつかみにいくがわずかに届かず。突破に反応し右をフォローした5番、背後から走り込んだ13番とつなぎ中央にトライ。鮮やかにトライを奪われリコーは失点。CVも決まり6-7と逆転を許す。(36分)
リコーは直後自陣に蹴り込まれたキックをFBピータースからSOボークにつなぎカウンターアタック。ボークはうまく抜けて敵陣22mライン手前までゲインするが、パスが乱れる。こぼれ球をHO森雄基がセーブ、FBピータースにつなごうとするがラックでボールを奪われる。タッチキックでエリアを戻された。(36分)
自分たちの形でトライを奪ったからか、NTTコムの動きが軽くなる。12番の左サイドの突破からリコー陣内に侵入。しかしここはリコーが守りきり前半が終了。
後半開始直後にノーホイッスルトライ。主導権奪われる
後半はPR藤原丈宏に代わり眞壁貴男が入りスタート。眞壁はトップリーグ初出場となった。リードを許したとはいえ、シンビンを出しながらもうまく試合をコントロールしたリコー。まずは早い時間にスコアしてリードを奪い返したかった。
しかし、流れをつかんだのはNTTコム。キックオフを浅めに蹴ってキープすると、右中間から展開し左を攻める。5番、11番、13番と外に繋ぎブレイク、一気にゲインする。内に返して7番につなぐと左中間インゴールにグラウンディング。
最後のパスがスローフォワードであるかどうかがテレビマッチオフィシャル(TMO)で確認されたが、トライが認められた。ノーホイッスルトライでNTTコムが追加点。角度のあるCVも決まって6-14。リコーは出鼻をくじかれる。(1分)
さらに勢いに乗るNTTコム。リコー陣内浅めでボールを大きく動かし、リコーのディフェンスに穴をあけにかかる。この日好調の13番のゲインで攻め込む。
リコーも粘り強く対応。互いに準備してきたことを出し合う場面が続く。しかしNTTコムはミスをせずフェイズを重ねると、左中間のラックから出したボールを10番がキックパスを右サイドへ放つ。相手8番とCTBアマナキが捕りにいくが、これはタッチラインを割った。(9分)
リコーは自陣でプレーする時間が長くなってきたが、スクラムでの優勢は維持し、反則を獲って押し戻す。タッチキック、ラインアウトをキープして敵陣10m付近でアタック。中央を攻めた後、CTB小松大祐が左サイドを突く。押し出されそうになるが粘ると、相手がリリースしたボールに触れた状態でタッチラインを踏み、リコーのラインアウトで再開。(13分)
これをキープ、展開し中央を突くとNTTコムにオフサイド。トライのほしいリコーはタッチキックでゴール前に前進しようとするが、これがノータッチ。蹴り返しをタッチに出され15m付近まで押し返される。ラインアウトはキープしたがノックオン。リコーにとって厳しい時間が続く。
NTTコム陣内10mライン付近のスクラムから相手8番、9番がつなぎ、右サイドを突くと即座に戻して中央を12番がブレイク。サポートが付き前へ進むが、リコーはこれを止められず自陣侵入を許す。混乱するディフェンスに生まれたギャップに10番が仕掛け突破。フォローした13番が中央でボールを受けると、そのまま真っ直ぐ走りトライ。CVも決まり6−21。(20分)
残り時間は20分となりながら2トライ2ゴール以上の差を追いかける展開となる。リコーはここでPR大川創太郎に替えてアレックス ウォントン。LOマイケルブロードハーストに替えて馬渕武史を送る。
SOエリソンの突破からチャンスつくり、CTBアマナキが意地のトライ
FBピータースのキックをキャッチした相手8番が、ピータースのタックルをかわし自陣からカウンター。大きな身体がスピードに乗るとなかなか止まらず、リコー陣内22mライン間際まで前進を許す。右中間にポイントをつくると展開。左中間でタックルにいったPRウォントンに対しハイタックルの判定。イエローカードも出て、リコーは再び14人で戦わねばならなくなった。(21分)
PKを蹴り出し、ラインアウトからモールを狙うNTTコム。リコーはLO馬渕が大きな声でチームを鼓舞し、ディフェンスに備える。ここはなんとか止めNTTコムはモールを組んだところでオブストラクション。リコーはPKでエリアを奪い返す。SOボークに替えてタマティ エリソン。(23分)
ラインアウトからSH中村正寿がハイパント。NTTコムはこれをマイボールにすると、左中間から素早くつないで右中間に展開。23番がタッチライン際を突くと、内側をサポートした9番が、リコーディフェンスのギャップを見つけ抜ける。22mラインを超え、大外の7番につないだところでCTB小松が対応。的確なタックルで止める。リリースしたボールはWTB長谷川に入り、リコーはこれを自陣で回し、タッチラインの外に蹴り出した。リコーはWTB長谷川に替えて松本悠介。(26分)
再び侵入し、中央のスクラムから攻めるNTTコム。リコーはPR大川を一時的に戻し対応する。左サイドのタッチライン際を執拗に突くと、21番がラックサイドを突破しゴールに迫る。右中間のラックから展開すると、10番がギャップを抜けポスト左にトライ。CVも決めて6−28。(30分)リコーはPRウォントンが戻り、HO森をマウジョシュアに、NO.8松橋を赤堀龍秀に入替。(32分)さらにSH中村に替えて高橋敏也。(34分)
なんとか一矢報いたいリコーは36分、SOエリソンがギャップを抜け敵陣に入る。外に展開し、タッチライン際のWTB星野将利につなぐと裏にグラバーキックを蹴ってチェイス。22mライン付近でNTTコムは拾い辛うじてタッチラインの外に持ち出す。馬渕が飛んでラインアウトを確実にキープしたリコーは、右中間ゴール前のラックからオープンサイドに出しCTBアマナキが突進。アドバンテージが出される中、タックルを浴びながらインゴールに達するがダブルモーション。
再び右中間ゴール前のスクラムで再開すると、NO.8赤堀が出したボールを拾い、タッチライン側のスクラムサイドを抜けたCTBアマナキが今度は確実に仕留めトライ。CVもFBピータースが決めて13−28とした。(39分)
キックで再開すると間もなくホーンが鳴る。キープしたリコーは、自陣から最後のアタックを仕掛ける。SOエリソンが切れ味を見せたが、最後は外へのパスがタッチを割りノーサイド。
昨シーズンの開幕戦のリベンジを狙ったリコーだったが、前半の終わりと後半の入りに効果的なトライを奪われ、主導権を握る時間をつくれなかった。
第2節を終えて1勝1敗で勝ち点は4。順位を10位としている。次節は9月10日(土)19時より秩父宮ラグビー場で、開幕2連勝で勢いに乗るサントリーと対戦する。NTTコム同様アタックに強みを持つ相手との対戦だけに、ディフェンスの修正が急務だ。
「負けをひきずって、起き上がれなくなるようなことはもうしたくないので」(神鳥裕之監督)
神鳥裕之監督
今日もありがとうございました。雨の中、たくさん集まっていただいたことに感謝申し上げたいと思います。開幕戦、なんとか白星というかたちでスタートできたので、今日も勝ちたいという思いで臨んだのですが、完敗ですね。NTTコムさんの素晴らしいアタック。素晴らしいチームでした。我々のディフェンスも最終的に崩れてしまった。素直に負けを認めないといけないと思っています。
ただ前半、セットプレー、特にスクラムの部分。ここではかなりプレッシャーを与えることができましたので、もう少しエリアが上手に獲れれば、展開も変わったかなという反省もあります。そういったところのエリアの使い方であったり、細かいところのミスは勝敗を分けます。次のサントリー戦に向けて、気持ちを切り替えて準備していきたいと思います。
(馬渕キャプテンがベンチスタートだったが)プレーヤーのコンディションであったり、相手の強みに対応できる選手について考えての選考です。マイケル(ブロードハースト)のコンディションも考慮しましたし、あとはベンチワークですね。戦い方を考えて。先週のようにタイトなゲームになった場面で、馬渕のようなハードワークできる選手を出せると非常に助かるので、様々な観点から考え決めました。背番号が何番でも彼がチームのキャプテンなのは違いありませんので。
(今日のゲーム、どんなイメージで勝とうとしていたか)もう少しうまくエリアを獲って敵陣でしっかり戦いたかったですね。先週の試合では自陣でミスを犯してしまったり、中盤のところでボールをうまく回せなかったという反省がありましたので、敵陣に入る、自陣ではプレーしない、させないというのをゲームプランに掲げたのですが、結果的にスタッツを見るとプラン通りにはできていなかった。
(なぜエリアを獲れなかったと考えているか)相手のアタックの素晴らしさ。ボールを簡単に獲り返せなかったというところと、我々のアタックに適応されてしまって、ゲインラインを切る前に、ディフェンスのところでしっかり返された。前にいけなかったと反省しています。【以上共同記者会見にて】
NTTコムさんのアタックはトップリーグの中でもトップレベルだと思っています。オプションが多い。キックを使ったり、ディフェンスを寄せたり、インサイドを使ったり。プレビューでもそれをよく確認したんですが。今日は称えるしかないですね。
でも、前半はよくやったと思います。我慢強くディフェンスしていたので。ワイド側にボールを持っていかれても慌てずに、タッチラインを使いながらミスで終わらせる場面もありました。
でも、後半そこを立て直してきたので。インサイド側を使ったり、10番が仕掛けてきたり、フォワードがディフェンスを寄せたり。それに対し後手に回ってしまった。後半の入りですね。あそこで簡単にトライを与えてしまった。入りの部分の勝負でやられてしまって、セーフティリードへと持っていかれてしまった。勢いづかせてしまいましたね。もうすこしスコアボードでプレッシャーをかけられる展開にできたら、相手にも焦りがでたかもしれない。ボールを動かすチームは焦ってくるとやっぱりね。でもダイナミックに、思い切りよくボールを動かせる流れができてしまった。後半の入りにそういう場面をつくってしまったのが残念。タイトに持っていきたかったんですけど。
(ハーフタイムにはどんな話を)ディフェンスはやれているというメッセージと、もっとワークレートを高くしてブラインドサイド側も立ち上がって、スペーシングを広げるっていう。これは練習からやっていたことを徹底しようということなのですが。人間を立たせるというのは言い続けていることなんですけど、立つだけではなく、スペーシングをしていかないと、インサイドのスペースを突くのが上手なチームなので、そちらに人が集められてしまう。そういう光景をなくしたかったんです。そうさせるようなアタックオプションを持ってきていました。今日は我々にとって学びの試合にしたいです。次もどちらかというとアタックのチームですし、今日学んだことを生かして、いいチャレンジにしたい。
(シンビンが2回出てしまった)良くないことではあります。でも出てしまっても、ポジティブにやろうと話しています。14人で守れたら、15人になったときもっといいディフェンスができるじゃないかと。その時間をチャレンジのような時間として。そういうのも去年の経験から学んだところです。負けをひきずって、起き上がれなくなるようなことはもうしたくないので。
(CTB小松大祐、WTB星野将利が先発)小松は前節もメンバーに入っているし、体調も戻ってきているしね。星野は彼の強みを生かせる試合だと考えました。ディフェンスの安定感。CTBと一緒に組織的に守ることもできるし、彼自身のディフェンス力も高い。
(ハイタックルが目立った)PRウォントンはいいプレーをしている。でもディフェンスは高いですね。思ったよりも日本人が小さいと感じているのか。セットプレーで貢献してくれているので、急いで適応してもらわないといけない。もっとコミュニケーションとらないと。
(PR眞壁貴男が初出場)よかったですね。チームとしての収穫。彼が今までやってきたことを考え、迷いなく送り出せました。期待にしっかり応えてくれた。嬉しいニュース。(セットプレーは昨シーズンからの上積みを感じる)まだトップになるためにはチャレンジし続けなければいけない位置ではあります。でも確実にレベルアップはできていると思います。
LO馬渕武史キャプテン
リコーとしましては昨年の開幕戦でNTTコムさんに負けたのは一番悔しかったことで、必ず勝とうということで試合に臨みました。結果のほうは残念な形に終わってしまったのですが、トップリーグはまだ長いので次の試合に向けて切り替えて準備していきたいと思います。本日はありがとうございました。(最初のPGは狙っていた部分だと思うが、途中からうまくいかなくなった?)用意していたアタックが思ったようにいかず、ミスだったり反則だったりをしてしまった結果、自陣に釘付けになってしまったのかなと。【以上共同記者会見にて】
シンビンが痛かったというのはありますが、相手もうまかった。外に回すのが上手でしたね。空いてるところを攻めて、そこでのフォローもできている。つなぎもうまかった。10番が仕掛けて寄せられたところを外に回されたり。空いてれば自分でもいっていた。相手にボールを与えすぎたというのもあったかもしれない。うちがボールを持ってアタックしている時間をもっとつくれれば、相手に攻められる時間は減らせたので。次の試合までに、まずはディシプリンの部分、反則のところは徹底したいと思います。ハイタックルなどは、技術ではなく意識で変えられるところなので。
FL武者大輔ゲームキャプテン
獲られているのがちょっとのミス、1on1のタックルだったり。そこにつけこまれて一気に持っていかれている感じだったので、アタックでもディフェンスでもまずしっかり当たって、前に出ようという話はしていました。(ワイドに展開するラグビーは想定していた)想定はしていましたが、相手のアタックがうまくて、僕らも外に開きたいけど、相手のFWの細かいパスで、寄らざるを得ない状況をつくられたり。それでラック周辺で何回かアタックされた後に、外にっていう形だったので。14人で守っている時間もあったし、だいぶつらかった。(次節に向けて)横とのコネクションだったり、コミュニケーションの部分。しっかりしゃべって、相手に対応できるようにしていかなければと思っています。
HO森雄基
悔しいですね。後半の最初にいかれたところで流れが変わってしまった。ラッキーパンチをもらった感じで、少し元気がなくなっていたので、とにかく声を掛け合って、盛り上げていこうとはしたんですが、なかなか。向こうのアタックは素晴らしかったと思います。ラック周りは警戒していたんですけど、ちょっとコミュニケーションができていなくて、後半にはそこを抜かれてトライを獲られてしまった。
スクラム、ラインアウトはよかった。練習してきたところなので自信をもってやれていました。(PGを3本狙ったが、ゴール前ラインアウトにしても)そうですね。9点目を狙った3本目はどうしようかという話は出ました。ただキックも良かったし、あそこで9点差にできていればそれは大きかった。まだ13試合もあるので切り替えていきます
NO.8松橋周平
プレビューで確認したキープレーヤーなどは想定していたプレーをしてきましたが、タックルのスキルが落ちてしまってうまく対処できない場面もあった。トライを獲られたあとなどは、インゴールで「細かなコミュニケーションをもっととろう」「チョップタックルを徹底しよう」といった確認を行って流れを変えようとしたけれど、思うようにはいきませんでした。(トップリーグの感想は)やれていると思いますが、1つひとつのミスが命取りになるというのを強く感じています。(チームを引っ張ってる様子も)新しい風を吹かせるというか、これまでとは違うリコーの雰囲気をつくっていけるのは新人だと思うので。そこは気を使わずに自分を出していこうと思っています。